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ニュース・海外 2025年12月15日

【海外事例】Henry Scheinの顧客体験向上に学ぶ!次世代DCの最新動向と日本への示唆

Discover How Henry Schein Elevated Customer Experience With Next-Level DC Technologyについて

導入:なぜ今、物流は「顧客体験」を語るべきなのか?

2024年問題や深刻化する人手不足に直面する日本の物流業界。多くの企業が「効率化」や「コスト削減」を至上命題にDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めています。しかし、世界の最前線では、物流の役割はすでに次のステージへと移行し始めています。それは、物流を「顧客体験(CX = Customer Experience)向上のための戦略的武器」と捉える視点です。

この潮流を象徴するのが、最近発表された2つの大きな動きです。

  1. Henry Schein社の挑戦: 米国の医療・歯科製品大手Henry Schein社は、次世代の配送センター(DC)テクノロジーを導入。これにより、単なる業務効率化に留まらず、顧客である医療従事者へのサービス品質を劇的に向上させ、ビジネスの競争優位性を確立しました。
  2. Maersk社の戦略的人事: 世界的な海運・物流大手Maersk社は、ロジスティクスの専門家を新たな最高財務責任者(CFO)に任命。これは、サプライチェーン戦略と物流の知見が、もはや現場レベルの話ではなく、企業の財務戦略や経営そのものを左右する重要な要素であると宣言したに等しい出来事です。

これらの動きは、物流が単なる「コストセンター」から、顧客との関係を強化し、収益を生み出す「プロフィットセンター」ひいては「バリューセンター」へと進化している現実を突きつけています。

本記事では、海外の物流トレンドウォッチャーとして、Henry Schein社の事例を深掘りしつつ、世界の物流DXがどのように顧客体験を向上させているのかを解説。日本の経営層やDX推進担当者が、このグローバルな潮流から学び、自社の戦略に活かすための具体的なヒントを提供します。

海外の最新動向:顧客体験を軸に進化する世界の物流DX

世界では、物流が顧客体験を決定づける重要な要素として認識され、テクノロジー投資が加速しています。特に米国、中国、欧州では、それぞれ異なるアプローチで物流DXが進展しています。

スピードと利便性を極める米国

米国では、Amazonが築き上げた「即日配送」や「簡単な返品」がもはや当たり前の基準となり、BtoCだけでなくBtoBの領域にもその波が押し寄せています。AIによる需要予測で在庫を最適配置し、ロボットが24時間稼働するフルフィルメントセンターは、顧客の「今すぐ欲しい」という期待に応えるためのインフラです。今回の主役であるHenry Schein社の取り組みも、この米国市場の厳しい要求水準の中で生まれた必然と言えるでしょう。

オンラインとオフラインを融合させる中国

中国では、Alibabaの「ニューリテール」戦略に代表されるように、ECとリアル店舗の垣根が消えつつあります。物流ネットワーク「Cainiao(菜鳥)」は、ビッグデータを駆使して、最適な配送ルートをリアルタイムで計算。注文があれば、倉庫からだけでなく、顧客に最も近い店舗からも商品を発送する「店倉一体」の仕組みを構築しています。これにより、都市部では30分以内の配送も実現しており、物流が購買体験そのものをデザインしています。

サステナビリティと多様性を重視する欧州

欧州では、環境意識の高まりを背景に、サステナビリティが顧客体験の重要な要素となっています。ドイツのファッションEC大手Zalandoは、配送オプションに「エコ配送」を加えたり、PUDO(Pick-Up, Drop-Off)ポイントの活用を促進したりすることで、顧客が環境に配慮した選択をできるようにしています。物流の効率化と環境負荷の低減を両立させることが、企業ブランドと顧客満足度を高める鍵となっています。

海外の物流センターの動向については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
参照: 物流の最前線|AIロボットが動かす海外物流センター徹底レポート

国・地域 CX向上の特徴 主要プレイヤー/事例
米国 スピードと利便性の徹底追求 Amazon、Henry Schein
中国 オンラインとオフラインのシームレスな融合 Alibaba (Cainiao)、JD.com
欧州 サステナビリティと配送選択肢の多様性 Zalando、DHL

先進事例:Henry Scheinは如何にして顧客体験を革新したか

今回注目するHenry Schein社は、歯科医院や動物病院などに医療関連製品を供給するフォーチュン500企業です。彼らの顧客は、日々の診療で多忙を極める医療従事者。彼らにとって重要なのは、「必要な製品が、必要な時に、間違いなく届く」という絶対的な信頼性です。この信頼こそが、最高の顧客体験に他なりません。

課題:BtoB特有の要求とオペレーションの限界

Henry Scheinが直面していたのは、BtoB物流特有の課題でした。

  • 膨大なSKU(在庫管理単位): 何十万点にも及ぶ製品を管理。
  • 緊急性の高い注文: 手術や治療で急に必要になった製品への即時対応。
  • 厳格な精度要求: 誤った製品を届けば、医療現場の業務に支障をきたす。

従来の人的オペレーション中心のDCでは、これらの要求に応え続けることに限界が見え始めていました。ピッキングミスや出荷遅延は、顧客の信頼を損なう致命的なリスクでした。

解決策:次世代DCテクノロジーへの戦略的投資

そこで同社は、顧客への価値提供を最大化するため、最先端テクノロジーを導入した新しい配送センターの構築に踏み切りました。導入されたテクノロジーは、個別の機器の導入に留まらず、プロセス全体を最適化する統合的なソリューションです。

導入されたテクノロジー(推測を含む)

  • 高度自動倉庫(AS/RS): 商品を高密度に保管し、ロボットが自動で入出庫。省スペース化と効率化を両立。
  • Goods-to-Person(GTP)ロボット: 作業者の元へ商品棚が自動で移動。歩き回る時間をゼロにし、ピッキング作業を劇的に高速化・高精度化。
  • 統合WMS(倉庫管理システム): 全ての機器とプロセスを統合管理。在庫状況や作業進捗をリアルタイムで可視化し、最適な指示を出す司令塔。
  • AIによるデータ分析: 過去の注文データから需要を予測し、在庫配置を最適化。緊急注文にも即応できる体制を構築。

成功要因:テクノロジーがもたらした顧客価値の向上

この改革がもたらしたのは、単なる「コスト削減」や「効率化」ではありませんでした。

  1. 圧倒的な注文精度の実現: 自動化によりヒューマンエラーを極小化。顧客は「Henry Scheinに頼めば、必ず正しい製品が届く」という安心感を得ました。
  2. リードタイムの大幅な短縮: ピッキングから梱包までの時間が短縮され、注文当日の出荷率が向上。急な要望にも応えられるようになり、顧客の事業継続性を支えました。
  3. プロアクティブな情報提供: 顧客はオンラインで自分の注文が今どのステータスにあるかを正確に追跡可能に。これにより、問い合わせの手間が省け、透明性の高いサービスが実現しました。

結果として、顧客である医療従事者は、物品管理の心配から解放され、本来の専門業務である患者の治療に集中できるようになりました。Henry Scheinは、単なる製品サプライヤーから、医療現場を支える「信頼できるパートナー」へとその価値を高めることに成功したのです。

この事例は、物流DXへの投資が、顧客の課題を解決し、エンゲージメントを深め、結果的に自社の競争力を強化するという好循環を生み出すことを明確に示しています。

日本への示唆:海外事例を国内で活かすための3つの視点

Henry Scheinの成功事例は、日本の物流企業にとって多くのヒントを与えてくれます。しかし、海外の成功事例をそのまま日本に持ち込むだけではうまくいきません。日本の商習慣や市場環境を踏まえ、自社にどう適用するかを考える必要があります。

1. 「効率化の先にある価値」を定義する

日本の物流DXは、依然として「人手不足の解消」や「コスト削減」が主目的になりがちです。しかし、Henry Scheinの事例が示すように、これからの投資は「そのテクノロジーが、顧客にどのような新しい価値を提供できるか?」という問いから始めるべきです。

  • BtoB企業の場合: 顧客の在庫管理負担を軽減できないか? 顧客の生産計画に合わせたジャストインタイム納品をより高いレベルで実現できないか?
  • BtoC企業の場合: 多様な受け取り方法を提供できないか? 返品プロセスをよりストレスフリーにできないか?

自社の顧客が本当に困っていること、求めていることを起点に、物流DXの目的を再定義することが第一歩です。

2. スモールスタートとデータ活用の両輪を回す

Henry Scheinのような大規模なDCへの一括投資は、多くの日本企業にとってハードルが高いかもしれません。重要なのは、完璧を目指すのではなく、小さく始めて改善を続けることです。

日本企業が今すぐ真似できること

  • ボトルネック工程の特定と部分最適化: まずは自社の物流プロセスの中で、最も時間がかかっている、あるいはミスが多い工程(例:ピッキング、検品)を特定し、そこに特化したソリューション(例:ハンディターミナル、画像認識検品システム)を導入する。
  • 顧客接点のデータ化: 顧客からの問い合わせ、クレーム、要望などを一元的にデータとして蓄積・分析する。そこに、顧客体験を損なっている原因が隠されています。
  • WMS/TMSの機能拡張: 現在使用しているシステムで、顧客への情報提供(正確な出荷通知、配送状況のリアルタイム追跡など)を強化できないか検討する。小さな改善でも、顧客の安心感は大きく向上します。

倉庫の自動化を検討する際は、自社の課題と照らし合わせて最適なソリューションを選ぶことが重要です。
参照: 【担当者必見】倉庫 オートメーションの選び方完全版|4つの重要軸で徹底比較

3. パートナーシップによる「持たざる経営」

自社だけで全てのテクノロジーやノウハウを揃える必要はありません。むしろ、専門性を持つ外部パートナーとの連携が、成功の鍵を握ります。

  • 3PL事業者との協業: 最新の自動化設備を持つ3PL事業者に物流業務を委託することで、自社で大規模な投資をすることなく、高度な物流サービスを顧客に提供できます。
  • テクノロジーベンダーとの連携: SaaS型のWMSやTMSを提供するベンダーを活用すれば、低コストかつスピーディーにシステムの高度化を図ることが可能です。

重要なのは、自社のコアコンピタンスは何かを見極め、それ以外の部分は積極的に外部の専門性を活用するという戦略的視点です。

まとめ:物流は、ビジネスを成長させる「エンジン」である

Henry Scheinの事例は、私たちに物流の未来像を力強く示しています。もはや物流は、単にモノを右から左へ動かすだけのバックヤード業務ではありません。テクノロジーを駆使して顧客体験を創造し、ビジネスの成長を牽引する戦略的な「エンジン」なのです。

今後、AIやIoT、ロボティクスの進化により、サプライチェーンはさらにスマート化・自律化していくでしょう。その時、企業間の競争優位性を決めるのは、どれだけ高度なテクノロジーを導入したかではなく、そのテクノロジーを使って、どれだけ深く顧客を理解し、優れた体験を提供できるかにかかっています。

日本の経営者、そしてDX担当者の皆様へ。
まずは自社の物流を見つめ直し、「どこを改善すれば、お客様はもっと喜んでくれるだろうか?」と問いかけることから始めてみてはいかがでしょうか。その問いの先にこそ、2024年問題の克服と、その先の持続的な成長への道が拓けているはずです。

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