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Home > マテハン・ロボット> 椿本チエイン/冷凍・冷蔵食品仕分け3Dソータ試験導入|物流業界への衝撃を徹底解説[企業はどう動く?]
マテハン・ロボット 2025年12月16日

椿本チエイン/冷凍・冷蔵食品仕分け3Dソータ試験導入|物流業界への衝撃を徹底解説[企業はどう動く?]

椿本チエイン/冷凍・冷蔵食品仕分け3D立体クロスベルトソータ試験導入について

【導入】コールドチェーンの常識が変わる。冷凍・冷蔵仕分け「最後の砦」に風穴

物流業界、特にコールドチェーンの現場に激震が走るニュースが飛び込んできました。椿本チエインとKDDIの合弁会社であるNexa Wareが、これまで自動化の「最後の砦」とされてきた冷凍・冷蔵食品のピース単位での仕分け作業において、画期的な3D立体クロスベルトソータ「3D Nexus Sorter」の試験導入を開始したのです。

人手不足が深刻化し、2024年問題が重くのしかかる中、なぜこのニュースがこれほどまでに重要なのでしょうか。それは、限られたスペースと過酷な作業環境という二重苦に悩まされてきた冷凍・冷蔵倉庫のオペレーションを根底から覆すポテンシャルを秘めているからです。

本記事では、この「3D Nexus Sorter」試験導入の全貌を解き明かし、倉庫事業者、荷主、運送会社といった各プレイヤーに与える具体的な影響、そして我々物流関係者が今、何を考え、どう動くべきなのかを、独自の視点で徹底解説します。

ニュースの背景と詳細:何が、なぜ起きているのか?

まずは今回の発表内容を、客観的な事実に基づいて整理しましょう。今回の試験導入のポイントは以下の通りです。

項目 内容
実施企業 Nexa Ware株式会社(椿本チエインとKDDIの合弁会社)
導入ソリューション GINFON社 開発・製造「3D Nexus Sorter」(3D立体クロスベルトソータ)
導入場所 株式会社流通サービス 騎西物流営業所
主な目的 冷凍・冷蔵食品(チルド・フローズン)仕分け業務の自動化・効率化
処理能力 最大6,000点/時間
特筆すべき機能 省スペース設計、昇降コンベヤによる立体的な仕分け、柔軟なレイアウト変更・拡張性、リアルタイム監視・リモートサービス

なぜ「冷凍・冷蔵」の仕分け自動化は難しかったのか?

このソリューションの革新性を理解するためには、まず従来の課題を把握する必要があります。冷凍・冷蔵倉庫での仕分け自動化が遅々として進まなかった背景には、主に3つの壁がありました。

  1. スペースの制約: 建設・維持コストが高い冷凍・冷蔵倉庫では、大規模な自動化設備を導入するスペースの確保が困難でした。
  2. 多様な商品特性: 冷凍食品は、形状、重量、包装形態が多岐にわたり、結露によるスリップなども発生しやすいため、汎用的な自動仕分け機での対応が難しかったのです。
  3. 過酷な労働環境: マイナス25℃にもなる環境での作業は、作業員の身体的負担が大きく、人材の確保と定着が極めて困難でした。

今回の「3D Nexus Sorter」は、これらの課題、特に「スペースの制約」を立体的な構造で克服し、高い処理能力を実現した点に大きな意義があります。

業界への具体的な影響:あなたのビジネスはこう変わる

この技術が本格的に普及した場合、物流業界の各プレイヤーにどのような影響が及ぶのでしょうか。立場別に見ていきましょう。

倉庫事業者(3PL・物流子会社)への影響

コスト構造の変革と収益性向上

最も直接的な影響を受けるのが倉庫事業者です。省スペース設計により、既存倉庫の限られた面積でも高い仕分け能力を確保できます。これは、坪当たりの生産性向上に直結し、保管料だけでなく、高付加価値な仕分け作業で収益を上げる新たなビジネスモデルの構築を後押しします。

労働環境の劇的な改善

冷凍・冷蔵倉庫は、物流業界の中でも特に離職率が高い現場の一つです。自動化によって、作業員が極寒環境に長時間滞在する必要がなくなり、身体的負担が大幅に軽減されます。これにより、人材の定着率向上はもちろん、これまで敬遠されがちだった層からの新規採用も期待でき、人手不足問題の根本的な解決に繋がります。

EC・中食市場への対応力強化

増加するECや中食(なかしょく)向けの多品種少量・高頻度出荷のニーズに、人海戦術で対応するには限界があります。時間あたり最大6,000点という高速仕分け能力は、こうした複雑なオーダーにも迅速かつ正確に対応することを可能にし、荷主からの新たな需要を取り込む強力な武器となるでしょう。

荷主(食品メーカー・小売業)への影響

サプライチェーン全体のコスト最適化

倉庫事業者側の効率化は、巡り巡って荷主のコスト削減に繋がります。物流委託費用の見直しだけでなく、誤出荷の減少による返品・再配送コストの削減、リードタイム短縮による在庫最適化など、サプライチェーン全体でのコスト圧縮が期待できます。

サービスレベルの向上と販売機会の最大化

高速・高精度な出荷体制は、店舗への納品リードタイム短縮や、EC利用顧客への迅速な配送を可能にします。これは、欠品による販売機会損失を防ぎ、顧客満足度を向上させる上で極めて重要です。特に鮮度が求められるチルド商品などでは、その効果は絶大でしょう。

運送会社への影響

荷待ち時間(待機時間)の削減

倉庫内の出荷準備が効率化されることで、トラックドライバーの待機時間、いわゆる「荷待ち時間」が短縮される可能性があります。これは、2024年問題で厳格化される労働時間管理に苦しむ運送会社にとって、ドライバーの拘束時間を削減し、実運送に時間を充てるための福音となり得ます。

LogiShiftの視点:単なる自動化ではない、物流DXの本質とは

このニュースを単なる「新しいマテハン機器の登場」と捉えてはいけません。私たちは、この動きの背景にある2つの大きな潮流を読み解くべきだと考えています。

予測1:コールドチェーンの自動化は「点」から「線」、「面」へ

これまで冷凍倉庫の自動化は、自動倉庫(AS/RS)による保管や、AGV(無人搬送車)による搬送といった「点」の取り組みが中心でした。事実、以前当サイトで解説した「江崎グリコ/関西フローズンの冷凍倉庫にAGV導入、社員の負荷軽減へについて」の事例も、搬送工程の自動化が焦点でした。

しかし、今回の「3D Nexus Sorter」は、ピース単位の「仕分け」という、これまで人手に頼らざるを得なかった工程を自動化するものです。これにより、「入荷→保管→搬送→仕分け→出荷」という一連のプロセスを「線」として繋ぐ、一気通貫の自動化が現実味を帯びてきました。今後は、これらの自動化機器群をWMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行システム)が統合制御し、倉庫全体を最適化する「面」でのDXへと進化していくでしょう。

予測2:ハードとソフトの融合が「サービスとしての自動化(RaaS)」を加速させる

今回のプロジェクトを推進するのが、マテハン大手の椿本チエイン(ハードウェア)と通信大手のKDDI(ソフトウェア・通信)の合弁会社であるNexa Wareである点は、非常に示唆に富んでいます。

これは、単に機器を「売り切る」ビジネスモデルから、リアルタイム監視やリモートメンテナンス、データ分析といったサービスを付加価値として提供する「RaaS(Robotics as a Service)」モデルへの移行を加速させる動きです。
企業は、高額な初期投資をせずとも、サブスクリプション型で最新の自動化ソリューションを利用できるようになるかもしれません。ソータから得られる膨大な仕分けデータをAIで分析し、需要予測や人員配置の最適化に繋げる、といった高度なデータ活用も標準となる未来がすぐそこまで来ています。

提言:企業は今、どう動くべきか?

この変革期において、企業は以下の視点を持つべきです。

  • 経営層・事業責任者の方へ
    自動化は、もはや単なるコスト削減策ではありません。人手不足に対応し、事業を継続するための「戦略的投資」であり、新たな顧客価値を創造する「攻めのDX」です。自社のサプライチェーンにおけるボトルネックはどこか、特にコールドチェーン領域での課題を再定義し、中長期的な視点で投資計画を策定すべき時です。

  • 現場リーダー・物流担当者の方へ
    最新ソリューションの情報収集はもちろん重要ですが、それ以上に「自社の現状把握」が不可欠です。取り扱う商品のSKU数、形状・重量のばらつき、物量の繁閑差などをデータに基づいて正確に把握しなければ、最適なソリューションは選べません。部分最適に陥らず、倉庫全体のプロセスを見据えた上で、どのような自動化が最適なのかを検討する必要があります。
    具体的なソリューション選定に悩まれている方は、ぜひ「【担当者必見】倉庫 オートメーションの選び方完全版|4つの重要軸で徹底比較」の記事も参考にしてください。自社に合った機器を見極めるための具体的な指針が得られるはずです。

まとめ:明日から意識すべきこと

椿本チエインとKDDIによる今回の挑戦は、コールドチェーン物流におけるゲームチェンジの号砲です。これは、単なる一企業の取り組みではなく、業界全体が抱える構造的な課題に対する、テクノロジーを駆使した一つの解です。

私たちが明日から意識すべきことは、シンプルです。
「自社の冷凍・冷蔵オペレーションは、この変化の波に乗り遅れないか?」
この問いを自らに投げかけ、まずは情報収集を強化し、信頼できるパートナー企業(3PL、マテハンメーカー、システムインテグレーター)との対話を始めてみてはいかがでしょうか。

人手不足とコスト上昇が常態化するこれからの時代において、自動化への投資はもはや「オプション」ではありません。事業を存続させ、成長を遂げるための「必須科目」なのです。この歴史的な転換点を、自社の飛躍の機会と捉えられるかどうかが、今後の企業の明暗を分けることになるでしょう。

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