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物流DX・トレンド 2025年12月16日

キリンビールほか/ピッキングシステム刷新でパレット年間9万枚削減見込むについて

キリンビールほか/ピッキングシステム刷新でパレット年間9万枚削減見込むについて

【導入】物流DXの新たな地平線へ。キリンビールが投じた「年間パレット9万枚削減」という衝撃

物流業界が「2024年問題」という構造的な課題に直面する中、また一つ、業界の常識を覆す先進的なDX事例が登場しました。キリンビール、キリングループロジスティクス、NTTデータの3社が共同で構築した新ピッキングシステムが、稼働後わずか3ヶ月でトラックドライバーの荷待ち時間を合計約1万時間削減し、さらに年間約9万枚ものパレット削減を見込んでいるというニュースです。

これは単なる一企業の成功事例ではありません。ドライバー不足、物量の多品種少量化、そして環境負荷低減という、物流業界が抱える複合的な課題に対し、テクノロジーがいかにして具体的な解決策を提示できるかを示した、まさに「未来の物流現場の縮図」と言えるでしょう。

本記事では、このキリンビールの取り組みがなぜこれほど注目されるのかを深掘りし、運送会社、倉庫事業者、そして荷主企業にとってどのような影響があるのか、そして我々はどう動くべきなのかを、独自の視点で徹底解説します。

ニュースの背景と詳細:何がどう変わったのか?

今回の取り組みは、単なるシステムの入れ替えではありません。長年の課題であった「荷待ち時間」と「庫内作業の非効率性」に正面から向き合った、大規模なサプライチェーン改革です。まずは、その概要を5W1Hで整理しましょう。

項目 内容
Who(誰が) キリンビール、キリングループロジスティクス、NTTデータの3社
When(いつ) 2024年7月より本格稼働開始
Where(どこで) キリンビール国内全9工場
What(何を) 新たなピッキングシステムを構築・導入
Why(なぜ) トラックドライバー不足、少量多品種化によるピッキング作業の複雑化と荷待ち時間の増加という課題を解決するため
How(どのように) AIを活用し、最適なパレットへの積み付け方法を自動算出・指示。さらに作業員の熟練度に応じて、人とロボットへの作業割り当てを自動化

新システムの2つの革新的機能

この改革の心臓部と言えるのが、以下の2つの機能です。

  1. 最適パレタイズの自動指示:
    従来、どのような順番でどの商品をパレットに積むか(パレタイズ)は、現場の熟練作業員の経験と勘に大きく依存していました。しかし、商品の種類が増えるほどその組み合わせは爆発的に増加し、最適な積み付けは困難になります。新システムでは、AIが出荷データや商品サイズ、重量を瞬時に計算し、最も積載効率が高く、かつ荷崩れしにくい積み付けパターンを自動で割り出し、作業員に指示します。これにより、パレット1枚あたりの積載量が増加し、使用するパレットの総数を大幅に削減できるのです。

  2. 熟練度に応じた作業割り当て:
    もう一つの特徴は、単なる自動化ではなく「人とロボットの最適な協働」を実現した点です。システムが各作業員のスキルレベル(熟練度)を把握し、「複雑な作業はベテラン作業員に」「単純な繰り返し作業は新人作業員やロボットに」といった形で、最も効率的なタスクの割り振りを自動で行います。これにより、新人でもすぐに戦力化でき、全体の作業生産性が平準化・向上します。

業界への具体的な影響:あなたのビジネスはこう変わる

このキリンビールの事例は、サプライチェーンに関わるすべてのプレイヤーにとって重要な示唆を含んでいます。

運送会社への影響:荷待ち時間の撲滅がもたらす収益改善

運送会社にとって、荷待ち時間は収益を圧迫する最大の要因の一つです。今回の事例で3ヶ月で1万時間削減という成果は、まさに福音と言えるでしょう。

  • 運行生産性の劇的な向上: 荷待ち時間が削減されることで、ドライバーは本来の業務である「輸送」に集中できます。1運行あたりの時間短縮は、車両の回転率向上に直結し、売上増加に貢献します。
  • ドライバーの労働環境改善: 長時間労働の是正は、ドライバーの離職率低下や新規採用における魅力向上につながり、「2024年問題」で懸念される人材不足への有効な対策となります。
  • 輸配送計画の精度向上: 出荷時間が正確になることで、より精度の高い輸配送計画の立案が可能になり、無駄な走行距離や燃料費の削減も期待できます。

倉庫事業者への影響:属人化からの脱却と生産性の標準化

倉庫現場が抱える「スキルの属人化」という根深い課題に対し、このシステムは明確な回答を示しています。

  • 省人化・省力化の実現: 最適な作業割り当てにより、従来よりも少ない人数で同等以上の作業量をこなすことが可能になります。これは、慢性的な人手不足に悩む倉庫現場にとって大きなメリットです。
  • 教育コストの削減と即戦力化: システムが作業をナビゲーションするため、新人作業員でも短期間で一定の生産性を発揮できるようになります。これにより、トレーナーの負担や教育にかかる時間・コストを大幅に削減できます。
  • 品質の安定化: AIによる最適な積み付け指示は、荷崩れなどの輸送品質トラブルを減少させ、誤出荷のリスクも低減します。

荷主(メーカー)への影響:コスト削減とサステナビリティ経営の両立

荷主企業は、物流コストの最適化と環境配慮という二つの要請に同時に応える必要があります。

  • 物流資材コストの大幅削減: 年間9万枚のパレット削減は、パレットの購入・レンタル費用、管理コストの直接的な削減につながります。これは利益率の改善に大きく寄与するでしょう。
  • 環境負荷の低減 (SDGs/ESG経営への貢献): パレット使用枚数の削減は、木材資源の保護に貢献します。また、積載率向上によるトラック運行台数の削減は、CO2排出量の削減にもつながり、企業の環境目標達成やESG評価の向上に貢献します。
  • サプライチェーン全体の強靭化: 物流拠点の作業が安定・効率化することで、欠品リスクの低減やリードタイムの短縮が期待でき、より強靭で競争力のあるサプライチェーンを構築できます。

この荷待ち時間とパレット削減の効果については、当ブログの別記事「荷待ち時間とパレットを大幅削減!キリンビールの新ピッキングシステム導入事例【実践ガイド】」でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

LogiShiftの視点:このニュースから読み解くべき3つの未来

単なる事例紹介で終わらせず、この取り組みが物流業界の未来にどのような変革をもたらすのか、3つの視点から考察します。

1. 「点のDX」から「線のDX」へ:共創モデルの本格化

今回のプロジェクトは、荷主(キリンビール)、物流事業者(キリングループロジスティクス)、ITベンダー(NTTデータ)という3者が、それぞれの知見と技術を持ち寄って初めて実現しました。これは、自社単独で課題解決を目指す「点のDX」から、サプライチェーン全体で課題を共有し、連携して解決する「線のDX」へと移行する象徴的な事例です。
今後は、業界の垣根を越えたパートナーシップを構築し、データやシステムを連携させて全体最適を目指す「共創モデル」が、DX成功の必須条件となるでしょう。

2. 人とAIの「ハイブリッド型オペレーション」が標準に

このシステムの核心は、AIが人間に取って代わるのではなく、人間の能力を最大化する点にあります。AIが複雑な計算や単純作業を担い、人間はより高度な判断やイレギュラー対応に集中する。ベテランの経験値とAIの計算能力を融合させる「ハイブリッド型オペレーション」は、生産性と働きがいを両立させる、これからの物流現場のスタンダードモデルとなる可能性を秘めています。企業は「全てを自動化する」という発想から、「人とAIの最適な役割分担は何か」という視点へと考えをシフトさせる必要があります。

3. 「パレット」が物流改革の新たなトリガーになる

これまで物流効率化の議論は、輸配送や倉庫内オペレーションが中心でした。しかし、今回の「パレット9万枚削減」というインパクトは、パレットという「ユニットロード」そのものが、コスト削減と環境負荷低減の大きなポテンシャルを秘めていることを業界に強く印象付けました。
今後は、パレットの積載率をデータで可視化・分析し、AIで最適化する動きが他業界にも広がるでしょう。レンタルパレットの利用最適化や、共同輸送における積載率向上など、「パレット起点」の新たな物流改善ソリューションが登場する可能性があります。

まとめ:明日から意識すべきこと – あなたの会社はデータで戦えるか?

キリンビールの新ピッキングシステム導入は、もはや対岸の火事ではありません。この事例が示すのは、勘と経験に頼った旧来の物流マネジメントの限界と、データを活用したDXがいかに強力な競争優位性を生み出すかという事実です。

物流関係者の皆様が明日から意識すべきことは、以下の3つです。

  1. 自社の「非効率」を特定する: あなたの現場の荷待ち時間、パレットの積載率、作業員のスキル差による生産性のバラつきは、具体的に数値で把握できていますか?まずは課題をデータで可視化することから始めましょう。
  2. データ活用の準備を始める: AIやシステムを導入する以前に、活用すべきデータが収集・整備されていなければ意味がありません。WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)のログ、作業実績データなど、社内に眠る「宝の山」を整理することから着手すべきです。
  3. パートナーとの対話を開始する: 自社だけで解決できない課題は、外部の専門家を巻き込むのが成功への近道です。信頼できる3PL事業者やITベンダーに相談し、最新のテクノロジー動向や他社事例について情報収集を始めましょう。

物流業界の変革は、すでに始まっています。この大きな潮流に乗り遅れることなく、自社の未来を切り拓くための第一歩を、今こそ踏み出す時です。


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