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事例・インタビュー 2025年12月18日

【徹底解説】日本通運、コメリ/国際輸送で一貫パレチゼーション、海上コンテナ荷役は年1016時間減へについて

日本通運、コメリ/国際輸送で一貫パレチゼーション、海上コンテナ荷役は年1016時間減へについて

物流業界における「永遠の課題」とも言える輸入コンテナのデバンニング(荷降ろし)作業に、一つの革命的な解決策が提示されました。

NIPPON EXPRESSホールディングス(日本通運)、ホームセンター大手のコメリ、そして日本パレットレンタル(JPR)の3社が手を組み、国際輸送における「一貫パレチゼーション」の導入を発表しました。これまで多くの現場で常態化していた「人力によるバラ積み・バラ降ろし」を廃止し、海外の出荷拠点から日本の店舗・センターまで、レンタルパレットに載せたまま商品を運ぶスキームです。

この取り組みは、単なる業務改善ではありません。「積載効率」を最優先してきた従来の国際物流の常識を、「作業時間と人手不足解消」を優先する形へと転換させる象徴的な出来事です。物流2024年問題への対応が急務となる中、このモデルケースが業界にどのような衝撃を与えるのか、そして貴社のサプライチェーンにどう活かせるのか、詳細に解説していきます。

ニュースの全容:日本通運、コメリ/国際輸送で一貫パレチゼーション、海上コンテナ荷役は年1016時間減へについて

今回の発表は、輸入物流におけるボトルネック解消と環境負荷低減を同時に実現するモデルとして非常に注目度が高いものです。まずは事実関係を整理します。

3社協業によるスキームの概要

今回のプロジェクトは、コメリが輸入する商品の物流フロー全体を最適化するものです。従来は、中国の工場でコンテナに商品を隙間なく詰め込む「バラ積み」が行われていました。これをJPRのレンタルパレットを使用したパレット積みに切り替えることで、フォークリフトによる一貫作業を可能にしています。

▼ プロジェクト概要まとめ

項目 詳細内容
参加企業 荷主: コメリ 物流事業者: NIPPON EXPRESSホールディングス(日本通運) パレット提供: 日本パレットレンタル(JPR)
対象ルート 中国の生産・出荷拠点 〜 日本国内のコメリ物流センター
使用資材 JPRレンタルパレット(循環利用モデル)
導入前の課題 コンテナ内での手作業によるバラ積み・バラ降ろしによる長時間荷役。 使い捨て木製パレットの廃棄コストと環境負荷。
主な効果(効率) 海上コンテナ荷役時間を年間約1016時間削減。 40FTコンテナ1本あたり約2時間の作業短縮。
主な効果(環境) 年間約2万枚のパレット廃棄をゼロ化。 CO2排出量を年間約170トン削減。

なぜ「バラ積み」からの脱却が重要なのか

これまで国際輸送、特にアジアからの輸入では、海上コンテナの容積を最大限活用するために「バラ積み(Loose Loading)」が主流でした。パレットを使うとパレット自体の高さや隙間で積載率が落ち、輸送コストが割高になるためです。

しかし、国内の深刻な人手不足により、「輸送費の安さ」よりも「荷役作業の削減(人件費・待機時間の削減)」の方が経済合理性が高いという逆転現象が起き始めています。今回のコメリの事例は、このパラダイムシフトを明確に裏付けるものです。

業界への具体的な影響とメリット

このニュースは、小売・流通業だけでなく、製造業や3PL事業者にとっても重要な示唆を含んでいます。各プレイヤー視点での影響を深掘りします。

1. 荷主・倉庫現場:デバンニング作業の劇的な効率化

最も直接的なメリットは、入荷現場での負担軽減です。

  • 作業時間の短縮: 40フィートコンテナ1本あたり約2時間の短縮は、1日に入荷できるコンテナ数の増加を意味します。
  • 重筋労働からの解放: バラ降ろしは過酷な肉体労働であり、腰痛などの労災リスクや離職の主要因でした。パレット化によりフォークリフト作業が中心となれば、女性や高齢ドライバー・作業員でも対応可能となり、雇用確保につながります。
  • 荷待ち時間の削減: 荷降ろしが早まれば、トラックやドレージ車両の回転率が向上します。

これは、先日取り上げたキリンビールの事例とも共通する「現場の生産性向上」への強い意志と言えます。
(参考:キリンビール全工場に新ピッキングシステム導入、荷待ち待機時間削減について|物流業界への影響を徹底解説[企業はどう動く?])

2. 環境経営(ESG)への貢献

年間約2万枚のワンウェイ(使い捨て)パレットの削減は、企業のサステナビリティ評価に直結します。
従来は、輸入時に使用された安価な木製パレットは、国内到着後に産業廃棄物として処理されるケースが大半でした。これを丈夫なレンタルパレットに切り替え、JPRのネットワークで循環させることで、廃棄物ゼロとCO2削減(170トン/年)を達成しています。脱炭素が取引条件になりつつある現在、このスキームは強力な武器となります。

3. 物流事業者(日本通運)の役割変化

フォワーディング業務にとどまらず、パレットの回収・循環管理までを含めたソリューション提案力が問われるようになります。単に「運ぶ」だけでなく、顧客のSCM(サプライチェーンマネジメント)全体を設計し、資材管理まで請け負うことで、荷主とのパートナーシップはより強固になります。

LogiShiftの視点:一貫パレチゼーションが示す未来

ここからは、ニュースの表層的な情報だけでなく、LogiShiftとしての独自考察を加えます。この事例は、今後の国際物流における「標準化」の分岐点になる可能性があります。

考察1: 「積載率」vs「荷役効率」の損益分岐点が移動した

長年、物流担当者のKPIは「いかにコンテナに隙間なく詰めるか(積載効率)」でした。しかし、国内の人件費高騰と「物流2024年問題」による労働時間規制により、「デバンニングにかかるコストとリスク」が「コンテナ輸送費の節約分」を上回る時代が到来しました。

コメリのようなホームセンター商材は、かさばる割に単価が低いものが多く、本来は輸送費を抑えたいはずです。そのコメリがパレット化(=積載率は下がる)に踏み切った事実は、「カネ(輸送費)を払ってでも時間(人手)を買う」という経営判断が正解になりつつあることを示唆しています。

考察2: レンタルパレット(RTI)による「アジア物流圏」の確立

今回の鍵はJPRのレンタルパレットです。自社所有パレットの場合、中国から日本へ来たパレットを空のまま送り返すコスト(逆物流)が発生し、採算が合いません。
しかし、JPRのようなプール制(レンタル)であれば、日本国内で回収されたパレットを他の企業の国内輸送や輸出に回すことが可能です。

これは、「パレットを所有せず、シェアする」という考え方が、国内だけでなく国際間でも成立し始めたことを意味します。特に日中韓やASEAN地域において、標準パレット(主にT-11型)による一貫輸送網が整備されれば、アジア全体の物流がシームレスにつながる未来が見えてきます。

考察3: 次の課題は「梱包サイズ」のモジュラー化

パレット化が進むと、次に問題になるのが「商品の箱サイズ」です。パレットからはみ出したり、逆に余りすぎたりすると崩落のリスクや効率低下を招きます。
今後は、商品開発の段階から「1100mm×1100mmのパレットにきれいに収まるサイズ(モジュール寸法)」でパッケージを設計する動きが、メーカーや小売PB(プライベートブランド)開発において必須になるでしょう。物流部門が商品開発部門に対して発言権を持つことが求められます。

まとめ:明日から意識すべきアクション

「日本通運、コメリ/国際輸送で一貫パレチゼーション、海上コンテナ荷役は年1016時間減へについて」のニュースは、国際物流における「人手不足対策」と「環境対応」のベストプラクティスです。

このトレンドを踏まえ、物流リーダーや経営層は以下の点を見直すべきです。

  1. 輸入コンテナのコスト計算式の再考:
    単純な海上運賃だけでなく、デバンニング人件費、待機料、廃棄パレット処理費を含めた「トータルコスト(TCO)」で、バラ積みとパレット積みを比較検討する。
  2. 海外サプライヤーとの交渉:
    現地でのパレタイズ(パレット積み)作業を依頼するための交渉や、パレットサポーター(レンタル業者)の選定を開始する。
  3. 現場負担の可視化:
    「荷降ろしに何時間かかっているか」「ドライバーを何時間待たせているか」を数値化し、投資対効果を経営層に提示する。

時間は待ってくれません。物流2024年問題の解決策は、国内輸送の見直しだけでは不十分です。国境を越えた「資材の標準化」と「作業の機械化」にこそ、生き残りのヒントが隠されています。

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