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Home > ニュース・海外> Amazonが「荷降ろし」ロボ完全統合へ。Rightbot買収が示す非定型貨物攻略の未来
ニュース・海外 2026年1月7日

Amazonが「荷降ろし」ロボ完全統合へ。Rightbot買収が示す非定型貨物攻略の未来

Amazon acquires Rightbot, adds to Robotics Delivery and Packaging Innovation team

物流センターの入出荷口(ドック)で、トラックのコンテナに山積みされた段ボールを一つひとつ手作業で降ろす──。この過酷で単調な作業は、長らく自動化が最も難しい「聖域」の一つとされてきました。しかし、世界最大のEC企業Amazonがその壁を突破しようとしています。

Amazonはこのほど、トラック荷降ろしロボットを開発するスタートアップ「Rightbot」を買収し、同社のRobotics Delivery and Packaging Innovation(RDPI)チームに統合しました。これは単なる技術への投資ではなく、Amazonが自社の物流網に「完全自動化された荷役プロセス」を本格実装するフェーズに入ったことを意味します。

日本国内においても「2024年問題」によるドライバー不足や、トラックの長時間待機(荷待ち時間)が深刻な課題となっています。Amazonのこの一手は、海外物流のトレンドを知るだけでなく、日本の物流現場が目指すべきDXの方向性を探る上で極めて重要な示唆を含んでいます。

本記事では、AmazonによるRightbot買収の背景と、世界で激化する「荷降ろし自動化」競争の最前線を解説し、日本企業が取り入れるべき知見を紐解きます。

米国を中心に激化する「荷降ろし自動化」競争

海外物流、特に北米市場において、トラックやコンテナからの荷降ろし(デパレタイジングや荷役)の自動化は、現在最もホットな投資領域となっています。なぜなら、ここの効率化こそが物流センター(FC)の処理能力(スループット)を決定づけ、かつ最も人材確保が困難な領域だからです。

過酷な労働環境と人手不足の解消

コンテナ内は夏場には40度を超えることもあり、重量物を持ち続ける作業は腰痛などの労働災害リスクと隣り合わせです。米国労働省のデータなどを見ても、倉庫作業員の離職率は依然として高く、企業は常に採用コストに追われています。

こうした背景から、物流大手各社は「人間を補助する」段階から、「ロボットに任せる」段階へとシフトし始めています。Amazonだけでなく、DHLやUPSといった物流巨人も、巨額の投資を行いながら技術検証(PoC)を進めてきました。

以前の記事荷卸し時間97%短縮の衝撃。2025年海外物流「関税と自動化」の二極化でも触れたように、荷役の自動化は単なる省人化だけでなく、サプライチェーン全体のスピードアップに直結する戦略的投資です。

主要プレーヤーの動向と投資規模

現在、この領域ではAmazon以外にも強力なプレーヤーがしのぎを削っています。

  • DHL Supply Chain: Boston Dynamicsの箱移動ロボット「Stretch」を1,000台以上発注する契約を締結済みです。Stretchは吸着パッドを備えたアームを持ち、1時間に800個以上の箱を移動させる能力を持ちます。
  • UPS: 競合であるPickle Robotに対し、約1億2000万ドル(ロボット約400台分に相当する規模)の投資計画があると報じられています。Pickle Robotもまた、コンテナ内の非定型な積み荷を認識し、自動で降ろす技術に特化しています。

このように、欧米の物流現場では「ロボットによる荷降ろし」が実用段階に入りつつあり、今回のAmazonによるRightbot買収は、この競争においてAmazonが「自社専用の最適解」を内製化する決断を下したことを意味します。

AmazonとRightbot:買収による統合のインパクト

では、なぜAmazonは数あるロボティクス企業の中からRightbotを選んだのでしょうか。その理由は、Rightbotが持つ独自の技術的アプローチと、Amazonの既存システムとの親和性にあります。

非定型貨物を攻略する「Rightbot」の技術的強み

Rightbot(米国およびインドに拠点を持つ)は、形状やサイズが一定ではない「非定型貨物」の取り扱いに強みを持ちます。

  • 吸着グリッパーとAIビジョン: Rightbotのロボットは、吸着型のグリッパーと高度なコンピュータビジョンを組み合わせています。これにより、段ボールが整然と積まれていない場合や、崩れかけた荷物であっても、AIが瞬時に最適な把持ポイントを判断し、スムーズにコンベアへ流すことができます。
  • データフィードバック: 単に荷物を降ろすだけでなく、荷物の状態や破損データをリアルタイムでシステムにフィードバックする機能を持ち、在庫管理の精度向上にも寄与します。

投資から「完全統合」へのシフト

Amazonはもともと、2022年に設立した10億ドル規模の「Amazon Industrial Innovation Fund」を通じてRightbotに出資していました。このファンドは、Amazonの物流網を強化できる技術を持つスタートアップを育成することを目的としています。Rightbotはこのファンドから625万ドルの資金調達を実施していました。

今回の買収により、RightbotのチームはAmazonの「Robotics Delivery and Packaging Innovation (RDPI)」部門に統合されます。これは、外部ベンダーの製品としてロボットを導入するのではなく、AmazonのWMS(倉庫管理システム)や他のAGV(無人搬送車)とシームレスに連携する「自社機能」として開発を進めることを意味します。外部依存を減らし、スピード感を持って現場改善を進めるAmazonらしい垂直統合戦略と言えるでしょう。

主要な荷降ろしロボットの比較

世界の物流現場で導入が進む主要な荷降ろしロボットの特徴を整理します。

企業・ロボット名 主な導入企業 特徴・技術的強み 導入状況・投資規模
Rightbot Amazon 吸着グリッパーとAIによる非定型貨物認識。Amazonシステムとの完全統合が強み。 Amazonが買収しRDPIチームへ統合。開発加速へ。
Stretch (Boston Dynamics) DHL Supply Chain 全方向移動可能な台車と強力なアーム。1時間に800個以上の処理能力。 DHLが1,000台以上を発注済み。商用稼働の実績あり。
Pickle Robot UPS (計画) コンテナ内に入り込んで作業可能。人間との協働を前提とした設計。 UPSが大規模投資を計画。約1億2000万ドル規模の展開視野。
Dexterity FedExなど トラックへの積み込み(パレタイジング)と荷降ろしの双方に対応可能な多機能性。 FedExなどが試験導入。複雑な積み付けパターンに対応。

「China set to lead…」レポート解説|人型ロボット覇権を握る中国と日本の物流DXの記事でも解説した通り、中国勢も人型ロボットを含めた物流自動化に猛追していますが、現時点での「荷降ろし専用機」の実装においては、米国勢が具体的な運用フェーズで先行している状況です。

日本の物流現場への示唆と適用可能性

「海外の話だから日本には関係ない」とは言い切れません。むしろ、人手不足が深刻な日本こそ、こうした技術をどのように取り入れるべきか真剣に検討する必要があります。しかし、そのまま導入するにはいくつかの「日本独自の壁」が存在します。

日本特有の障壁:バラ積みとウィング車

欧米のトレーラー輸送では、後方の扉からフォークリフトやロボットが進入して荷役を行うスタイルが一般的です。一方、日本のトラック輸送には以下の特徴があります。

  1. ウィング車の多用: 日本では側面が大きく開くウィング車が主流です。後方から進入するタイプの海外製ロボット(StretchやRightbotなど)は、そのままでは日本のウィング車からの荷降ろしには適合しにくい場合があります。
  2. 極限までのバラ積み: 積載効率を最大化するため、パレットを使わず隙間なく段ボールを手積みする「バラ積み」が依然として多く行われています。これはロボットにとって難易度が高い作業ですが、Rightbotのような「非定型対応」の技術が進めば、解決の糸口になる可能性があります。

日本企業が今すぐ取り組むべき「自動化への準備」

Amazonの事例から日本企業が学ぶべきは、いきなりロボットを買うことではなく、「ロボットが働ける環境」を整備するプロセスです。

  • パレタイズの推進: そもそも「バラ積み」を減らし、パレット輸送(パレチゼーション)を推進することが、荷降ろし時間短縮の最短ルートです。ロボット導入以前に、商習慣の見直しが求められます。
  • データの標準化: 荷物のサイズや形状データをデジタル化しておくことで、将来的にAIロボットを導入した際の学習コストを大幅に下げることができます。
  • ヒューマノイドの可能性: 研究室から現場へ。Hyundai工場でAtlas稼働が示す「ロボット労働」の夜明けで紹介したような人型ロボットは、日本の狭い現場やウィング車のような環境でも、人間に近い動きで作業できる可能性があります。Rightbotのような専用機と、汎用的な人型ロボットの使い分けが将来の鍵になるでしょう。

日本版「荷降ろし自動化」のアプローチ

日本の物流現場で現実的なステップは以下の通りです。

  1. アシストスーツや簡易コンベアの導入: まずは作業員の負担を軽減し、労働力を確保する。
  2. ドックの改修: 将来的なロボット導入を見据え、トラックドック周辺のスペースや電源、通信環境を確保する。
  3. 部分的な自動化: すべてのトラックではなく、定型的な荷物が届く特定のサプライヤーからの入荷ラインに限定して、デパレタイズロボットを試験導入する。

まとめ:ロボットは「導入」から「統合」の時代へ

AmazonによるRightbotの買収は、物流ロボットが「試験的に導入してみるガジェット」から、「事業運営に不可欠なインフラ」へと進化したことを象徴しています。

Amazonは自社のRDPIチームにRightbotを統合することで、ロボット単体の性能だけでなく、倉庫管理システム全体との連携を最適化し、秒単位の効率化を追求していくでしょう。

日本の物流企業にとっても、この流れは他人事ではありません。2024年問題を契機に、荷待ち時間の削減や荷役作業の効率化は待ったなしの課題です。Amazonのような巨額投資は難しくとも、「荷降ろしを自動化する」という明確なビジョンを持ち、パレット化の推進や現場のデジタル化といった「自動化を受け入れるための土壌作り」を今すぐ始めることが、数年後の競争力を決定づけることになるでしょう。

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