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Home > ニュース・海外> 自動化の盲点は「電力」にあり。米欧物流DXが挑むエネルギー戦略
ニュース・海外 2026年1月8日

自動化の盲点は「電力」にあり。米欧物流DXが挑むエネルギー戦略

The Hidden Energy Challenges Behind Autonomous and Automated Operations

物流業界における「2024年問題」や慢性的な人手不足を背景に、日本国内でもAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)、自動倉庫システムの導入が急速に進んでいます。しかし、省人化と効率化のスポットライトの影で、海外ではすでに「The Hidden Energy Challenges(隠れたエネルギー課題)」と呼ばれる新たなリスクが顕在化していることをご存知でしょうか。

それは、自動化システムの稼働に伴う電力需要の爆発的な増加です。

欧米の先進企業は今、単にロボットを導入するだけでなく、「エネルギーをどう確保し、コストを制御するか」という戦略をDX(デジタルトランスフォーメーション)の核心に据えています。本記事では、海外の最新トレンドと具体的な事例を紐解き、日本の物流企業が直面するであろうエネルギー課題への対策を解説します。

以前の記事では、この現象を「電力爆食」と表現し、PPA戦略の重要性に触れました(参照:物流DXの死角「電力爆食」の衝撃。PPA戦略が自動化の成否を分ける)。今回はさらに視野を広げ、海外の物流現場で起きている具体的な変化と、日本企業が取り入れるべきアクションプランについて深掘りします。

海外トレンド:自動化が招く「累積負荷」の衝撃

欧米や中国の物流市場において、自動化プロジェクトのKPIは「労働時間の削減」から「エネルギー生産性(Energy Productivity)」へとシフトしつつあります。

自動化の背後にある「隠れた消費」

AI搭載のロボットやドローン単体の消費電力は微々たるものに見えるかもしれません。しかし、これらが数百台規模でネットワーク化され、それを制御するサーバーやデータセンター、空調システムが24時間稼働した際の「累積負荷(Cumulative Load)」は甚大です。

米国のエネルギー関連調査によると、完全自動化されたフルフィルメントセンターは、従来の手作業中心の倉庫と比較して、ピーク時の電力需要が3倍から5倍に跳ね上がるケースが報告されています。

脱炭素とコスト増の板挟み

欧州では「Fit for 55」などの環境規制により、物流施設にも厳格な炭素排出削減が求められています。一方で、ウクライナ情勢以降のエネルギー価格高騰が経営を直撃しています。

つまり、「自動化で人件費は下がったが、電気代の高騰で利益が相殺された」という事態が実際に起きているのです。これに対し、欧米企業は再生可能エネルギーの導入とエネルギーマネジメントシステム(EMS)の最適化を、自動化設備の設計段階から組み込むことで対抗しています。

世界3大エリアの物流エネルギー戦略比較

各地域の物流大手がどのようなアプローチをとっているのか、特徴を整理しました。

地域 主な課題意識 アプローチの特徴 キーワード
北米 コスト削減・安定供給 大規模なオンサイト発電とPPA(電力購入契約)による価格固定化 オフグリッド、蓄電池
欧州 環境規制・脱炭素 自動化システムと建物管理(BMS)の完全統合、再エネ義務化 サーキュラーエコノミー
中国 スピード・5G活用 国策によるインフラ整備と連携した、5G+AI物流の急速な実装 スマートグリッド、5G

米国:AmazonとWalmartの「オフグリッド」志向

米国では、電力網(グリッド)への依存度を下げる動きが加速しています。特にAmazonやWalmartといった巨大プレイヤーは、物流センターの屋根全面にソーラーパネルを設置するだけでなく、大容量の蓄電池を併設し、ロボットの充電を自社発電で賄うモデルを構築しています。

これは単なるエコ活動ではありません。電力価格の変動リスクを排除し、長期的な運用コスト(OPEX)を固定化するための財務戦略です。

欧州:DHLに見る「クライメート・ニュートラル」倉庫

ドイツのDHLは、カーボンニュートラルな倉庫設計において世界をリードしています。彼らの最新の自動化倉庫では、ロボットの稼働スケジュールとエネルギー供給がリンクしています。

例えば、太陽光発電の出力が高い日中に集中的にバッテリー充電を行ったり、電力需要がピークに達する時間帯には一部の非優先業務を自動的にスローダウンさせたりする「エネルギーアウェア(Energy-Aware)」な制御システムが導入されています。

先進事例:エネルギー効率を最大化する「設計の転換」

ここでは、特定の技術やプロジェクトに焦点を当て、成功の要因を分析します。

事例1:Ocado(イギリス)の「グリッドロボット」と熱管理

ネットスーパー専業のOcadoは、独自の自動倉庫システム「The Hive」で知られています。数千台のロボットがグリッド上を高速移動しますが、彼らが直面した課題はロボットの発熱と冷却コストでした。

成功のポイント:
* 回生エネルギーの活用: ロボットが減速する際に発生するエネルギーを回収し、他のロボットの加速や倉庫のシステム稼働に再利用する仕組みを構築。
* 高密度化による空調効率向上: 空間利用効率を極限まで高めることで、冷やすべき空間体積を減らし、冷凍・冷蔵倉庫のエネルギー消費を抑制。

事例2:Maersk(デンマーク)のコールドチェーン革新

海運大手Maerskは、陸上物流におけるコールドチェーン(低温物流)の自動化に巨額の投資を行っています。特にニュージャージー州や北欧の新設倉庫では、自動化技術とサステナビリティの融合が見られます。

成功のポイント:
* 屋根上太陽光とPPA: 施設の電力の大部分を太陽光で賄い、不足分をグリーン電力のPPAでカバー。
* AIによる予測冷却: 天候データや入出荷スケジュールをAIが分析し、庫内温度を過剰に冷やすことなく最適値に保つことで、電力消費を大幅に削減。

日本企業への示唆:今、何から始めるべきか

海外の事例は魅力的ですが、日本の事情(狭い敷地、日照条件、複雑な電力契約)にそのまま当てはめることはできません。しかし、本質的な考え方は応用可能です。

日本の「縦割り」が招くリスク

日本企業でよくある失敗パターンは、物流部門が「自動化設備の導入」を進め、総務・施設部門が「電気契約の管理」を別々に行っているケースです。

これでは、稼働後に予想外のデマンド値(最大需要電力)上昇を招き、基本料金が跳ね上がる事態を防げません。海外の成功事例に共通するのは、「ロジスティクス」と「エネルギー」の担当者がプロジェクトの初期段階からチームを組んでいる点です。

明日からできる3つのアクション

  1. エネルギーシミュレーションの実施
    自動化設備(マテハン、ロボット)の選定時に、カタログスペックの処理能力だけでなく、「実稼働時の消費電力プロファイル」をメーカーに要求し、既存の契約電力内で収まるかをシミュレーションしてください。

  2. PPA(電力購入契約)の検討
    初期投資ゼロで再生可能エネルギー設備を導入できる「オンサイトPPA」や、敷地外から再エネを調達する「オフサイトPPA」は、日本でも普及し始めています。自動化による電力増分を再エネで相殺する戦略は、脱炭素経営の観点からも有効です。
    (参考記事:物流DXの死角「電力爆食」の衝撃。PPA戦略が自動化の成否を分ける)

  3. 「充電」を業務フローに組み込む
    AGVやAMRの充電タイミングを「バッテリーが切れたら」ではなく、「電力コストが安い時間帯」や「休憩時間」に合わせるよう、WES(倉庫運用管理システム)の設定を最適化するだけでもコスト削減効果があります。

まとめ:エネルギーは「コスト」ではなく「戦略資源」

「The Hidden Energy Challenges(隠れたエネルギー課題)」は、自動化を進めるすべての物流企業が避けて通れない道です。

海外の先行事例が示しているのは、エネルギー管理を後回しにせず、自動化戦略の一部として統合することで、コスト削減とサステナビリティの両立が可能になるという事実です。

これからの物流DXは、単に「どれだけ速く運べるか」だけでなく、「どれだけエネルギー効率よく運べるか」が企業の競争力を左右する指標となるでしょう。自動化投資を行う際は、ぜひ「電力の出口戦略」もセットで検討してみてください。

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