Skip to content

LogiShift

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • マテハン・ロボット
  • サプライチェーン
  • 海外トレンド
  • 事例
Home > ニュース・海外> 返品は「収益源」へ。ウォルマートが挑む在庫価値回復の物流DX
ニュース・海外 2026年1月10日

返品は「収益源」へ。ウォルマートが挑む在庫価値回復の物流DX

Returns as a revenue engine: A playbook for margin recovery

物流業界において「返品(リバースロジスティクス)」は、長らく「必要悪」あるいは「コストセンター」として扱われてきました。売上に貢献せず、処理に手間がかかり、保管スペースを圧迫する存在――。多くの日本企業が抱くこの常識に対し、世界の小売・物流巨人は全く異なるアプローチで挑み始めています。

「返品物流をコストではなく、新たな収益源(Revenue Engine)に変える」

この大胆なパラダイムシフトを提唱するのは、世界最大の小売企業ウォルマートのラストワンマイル責任者、Sai Teja Yerapothina氏です。物流の2024年問題やコスト高騰にあえぐ日本企業にとって、この「守り」を「攻め」に転じる思考法は、次なるDXの突破口となる可能性を秘めています。

本稿では、ウォルマートの最新提言である「マージン回復のプレイブック」を軸に、海外の返品物流トレンドと、日本企業が導入すべき具体的なアクションプランを解説します。

世界の返品物流トレンド:「処理」から「価値再生」へ

日本国内のEC化率は年々上昇していますが、それに比例して返品リスクも高まっています。しかし、海外市場における返品の規模と、それに対するテクノロジーの進化は、日本の数年先を行っています。

米・中・欧のリバースロジスティクス比較

各国の市場環境によって、返品物流の進化の方向性は異なります。以下の表は、主要地域のトレンドを整理したものです。

地域 市場特性と課題 最新トレンド・キーワード 日本への示唆
米国 返品大国 NRFによると2022年の返品総額は約8160億ドル(約120兆円)。寛容な返品ポリシーが利益を圧迫。 Re-commerce(再販) 返品即再販、または「Keep it(返品不要)」ポリシーの導入。 返品を「中古在庫」として即座に市場に戻すスピード感が重要。
中国 ライブコマースの弊害 衝動買いによる大量返品が発生。物流網のパンクが頻発。 エッジ・ソーティング AIを活用し、集荷段階で「良品/不良品」を瞬時に選別。 大量処理を前提とした、人手を介さない自動化技術の導入。
欧州 環境規制の厳格化 廃棄に対する規制が強く、サステナビリティが最優先。 Circular Economy(循環経済) デジタルプロダクトパスポートによる履歴管理と修理・再生。 「捨てる」コストが増大するため、修理やリサイクルへの転換が急務。
日本 「新品信仰」と人手不足 検品品質への要求が高く、処理に時間がかかる。 センター集約型 一度物流拠点に戻してから判断するため、リードタイムが長い。 海外のような「現場判断」の仕組みを取り入れ、物流負荷を下げる必要あり。

世界的な共通項は、「いかに早く商品を再流通させるか」という点に集約されます。特に米国では、返品処理の遅れによる商品価値の下落(Depreciation)を防ぐことが、物流DXの最重要課題となっています。

関連して、返品に伴う不正リスクへの対策も急務です。AIを活用した不正検知については、以下の記事でも詳しく解説しています。

参考記事:AIが暴く「すり替え返品」の真実。UPS最新事例に学ぶ物流DX

先進事例:ウォルマートが提唱する「返品意思決定ツリー」

ここからは、ウォルマートのラストワンマイル担当シニアディレクター、Sai Teja Yerapothina氏が提唱する具体的な戦略を深掘りします。彼のアプローチは、従来の「とりあえず倉庫に送り返す」という常識を否定することから始まります。

従来の「中央集権型処理」が招く価値毀損

多くの企業では、店舗や顧客から回収した返品商品を、一度中央の物流センター(返品センター)に集約します。そこで専門スタッフが検品し、処分方法を決定します。

しかし、Yerapothina氏はこのプロセスに警鐘を鳴らします。

  • 輸送コストの無駄: 廃棄処分になる商品を、わざわざコストをかけてセンターまで運んでいる。
  • 時間の浪費: センターに到着し、検品待ちの列に並んでいる間にも、季節商品や電子機器の市場価値は下がり続ける。

彼は、商品は時間が経つほど価値が下がる「生鮮食品」のようなものだと捉え、「初動(First Mile)」での意思決定こそが利益確保の鍵であると説きます。

現場で即断する「4つの分岐ルート」

ウォルマートが推進するのは、店舗や回収拠点(エッジ)で、DXツールを用いて即座に処理ルートを確定させる「返品意思決定ツリー」の導入です。

スタッフはハンディスキャナーやPOSシステムを使い、商品の状態を入力します。システムはアルゴリズムに基づき、以下の4つのルートから最適なものを瞬時に指示します。

  1. Resell(再販)

    • 状態が良い場合、その場で「再販在庫」として計上し、店頭やオンラインのアウトレットで販売する。センターへの戻し輸送をカットし、機会損失を最小化する。
  2. Repair(修理・再生)

    • 高額な電子機器などで、軽微な不具合がある場合。専門の修理ベンダーへ直送するルートを指示し、再商品化のサイクルを回す。
  3. Recycle(リサイクル)

    • 再販不可だが資源価値がある場合。廃棄ではなく、素材ごとのリサイクル業者へ回す。これにより企業のサステナビリティ目標達成に寄与する。
  4. Donate / Liquidate(寄付・清算)

    • 再販も修理もコストが見合わない場合、地域の慈善団体への寄付や、一括買取業者(リキデーター)への売却を選択する。保管コストを即座にゼロにする。

戦略的サブセットとしての「トレードイン(下取り)」

この意思決定ツリーを支える重要な要素が「トレードイン(下取り)」プログラムです。Yerapothina氏は、下取りを単なるサービスではなく、能動的な仕入れ戦略と位置づけています。

現場スタッフは以下の3つの基準で即時査定を行います。

  • Cosmetic(外観): 傷や汚れの有無
  • Functional(機能): 電源が入るか、動作するか
  • Version(バージョン): 市場での需要があるモデルか

顧客はその場でクレジット(店舗ポイントなど)を受け取れるため、新たな購買(アップセル)につながります。企業にとっては、質の良い中古在庫を低コストで確保できる手段となります。

追うべきKPIの転換

このモデルを成功させるためには、物流管理指標(KPI)の変更が不可欠です。

  • Before: 1単位あたりの処理コスト(Cost per Unit)
  • After:
    • 処理スピード(Cycle Time): 返品受領から再販売可能になるまでの時間
    • 利益回復率(Recovery Rate): 商品原価に対し、最終的にいくら回収できたか
    • 埋め立て回避率(Landfill Diversion Rate): 環境負荷低減の指標

単なるコスト削減ではなく、「いかに価値を救い出したか」を評価軸に据えることが、現場の行動変容を促します。

日本企業への示唆:今すぐ始められる「攻め」の返品物流

ウォルマートの事例は巨大企業の論理に見えるかもしれません。しかし、そのエッセンスは日本の物流現場にも十分適用可能です。

日本特有の「壁」とその乗り越え方

日本には「一度人の手に渡ったものは敬遠される」という商習慣が根強くありました。しかし、メルカリ等のCtoCプラットフォームの普及により、「状態が良ければ中古でも構わない(むしろ安くて賢い)」という消費行動が若年層を中心に定着しつつあります。

この土壌の変化は、企業による「認定中古品(Refurbished)」や「アウトレット再販」を受け入れるチャンスです。

明日から検討できる3つのアクション

  1. 返品ルールの「デジタル化」と「現場開放」

    • すべての返品を本社倉庫に戻していませんか? 店舗や地域の小規模拠点で「簡易検品」を行い、良品はその場でワゴンセールに回す、あるいは近隣店舗の在庫として計上する権限を現場に持たせる。これだけで横持ち輸送コストは激減します。
  2. ECシステムと物流のAPI連携

    • 返品申請が来た時点で、AIが「返品不要(返金のみ)」や「廃棄指示」を出す仕組みの構築。低単価商品の場合、物流コストの方が高くつくケースは日本でも多発しています。
    • こうしたバックエンドの自動化については、以下の記事で紹介している「Swap Commerce」のようなソリューションが参考になります。

    参考記事:半年で150億円調達。「Shopifyキラー」が示すEC物流の自動化トレンド

  3. 「スピード」を最優先KPIに設定する

    • 「丁寧に検品して1ヶ月後に再販」するより、「簡易検品で1週間後に2割引きで売る」方が、トータルの利益(キャッシュフロー含む)が良い場合があります。在庫の鮮度意識を物流部門だけでなく、営業・財務部門と共有することが重要です。

まとめ:サーキュラーエコノミー時代の物流戦略

ウォルマートの「Returns as a revenue engine」という考え方は、物流部門が単なる「運び屋」から、企業の利益を守り、創出する「ガーディアン」へと進化することを意味しています。

商品を右から左へ流す動脈物流(販売物流)の効率化は、多くの企業でやり尽くされた感があります。一方で、静脈物流(返品・回収)は、いまだアナログで非効率な「宝の山」です。

  • エッジでの即時判断
  • 再販・再生ルートの多様化
  • 価値回復率へのコミット

これらをテクノロジーで実装することで、返品はコストの穴ではなく、サステナビリティと収益性を両立する強力なエンジンとなり得ます。日本の物流リーダーたちも、今こそ「戻り荷」の中に眠る価値に目を向けるべき時が来ています。

Share this article:

関連記事

The future of industrial robot programming: Easier, faster, more intuitive
2025年12月20日

専門家不要の衝撃。米欧で加速する「ロボット・ノーコード化」の全貌

自動運転技術
2025年12月5日

【海外事例】自動運転技術|米・中の最新動向と日本企業への示唆

韓国 物流 スタートアップ
2025年12月6日

【徹底解説】韓国の物流スタートアップ|協業メリットと最新動向

最近の投稿

  • 運送会社立ち上げは新規許可よりM&A?「想定していなかった負債が」を防ぐ配送内製化の秘策
  • 都築電気が「挿すだけ」OBDデジタコ発売|工事不要で叶う即戦力DXとは
  • 野村不動産|最新マテハン16種と「免震」を実機検証する2/4開催デモ会の全貌
  • アジア発「物流メガ連合」誕生。SF・J&T資本提携が迫る日本への変革
  • データ・テック×ティーティス提携|「機器交換なし」でドラレコAI化する衝撃

最近のコメント

表示できるコメントはありません。

LogiShift

物流担当者と経営層のための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • マテハン・ロボット

もっと探す

  • サプライチェーン
  • 海外トレンド
  • 事例

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • LogiShift Global
  • FinShift

© 2026 LogiShift. All rights reserved.