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Home > ニュース・海外> 米墨物流の衝撃。市場価格6割の「価格破壊」と適者生存のポートフォリオ戦略
ニュース・海外 2026年1月18日

米墨物流の衝撃。市場価格6割の「価格破壊」と適者生存のポートフォリオ戦略

Borderlands Mexico: Volatile trade, rising carrier costs reshaping shipping strategies

米国とメキシコ、いわゆる「米墨(Borderlands)」間の物流が今、かつてない激動の時を迎えています。

これまでこの地域の物流といえば、NAFTA(現USMCA)の恩恵を受けた安定的なルートが主流でした。しかし現在、関税の不透明性や運送コストの高騰、そして中国系物流プラットフォーマーの参入により、その常識が覆されつつあります。

「特定の運送会社に任せれば安心」という時代は終わりました。

なぜ日本の物流企業や荷主が、地球の裏側のトレンドを注視すべきなのでしょうか?それは、ここで起きている「極端な価格競争(デフレ)」と「付加価値配送への回帰(インフレ)」の二極化が、2025年以降の日本の物流市場でも再現される可能性が高いからです。

本記事では、米墨国境で起きている最新の物流変革と、そこから日本企業が取り入れるべき「ポートフォリオ戦略」について解説します。

米墨国境で進む「物流の二極化」と「マルチキャリア化」

現在、北米の物流市場は「ニアショアリング(生産拠点の近隣移転)」の活況に伴い、物量が急増しています。しかし、その内実は単純な好景気ではありません。インフレによるコスト増と、新規参入による価格破壊が同時に進行するカオスな状態です。

「特定企業への依存」から「ポートフォリオ戦略」へ

最大の変化は、荷主(特にEコマース事業者)が、単一の運送会社との固定契約(レートカード)に見切りをつけている点です。ShipStationの調査によると、多くの中小企業(SMB)が、コストとスピードのバランスを最適化するために、複数の配送業者を動的に切り替える「マルチキャリア戦略」へと移行しています。

これは、金融資産を分散投資するように、物流リソースも状況に応じて使い分ける「機動的なポートフォリオ戦略」への転換を意味します。

米国・中国・日本の物流トレンド比較

この動きを理解するために、各国の現状を整理しました。

トレンド 米国・メキシコ(北米)の現状 日本への示唆・現状
キャリア戦略 マルチキャリア化 AIツールで最安・最短ルートを荷物ごとに自動選択。単一依存からの脱却。 特定業者への依存 「いつもの業者」への依存度が高いが、2024年問題以降、分散化の必要性が急増。
価格競争 破壊的価格の出現 中国系企業の参入により、市場平均の60%という価格設定が登場。 運賃値上げ基調 人件費高騰で値上げが続くが、外資参入による価格破壊のリスクも潜在。
越境EC DDP(関税元払い)の標準化 購入時に関税込みの総額を提示し、カゴ落ちを防ぐ。 DDU(関税着払い)が主流 受取時の支払いトラブルが多く、DXによる可視化が急務。
配送品質 ホワイトグローブ配送 大型品などは自社社員が設置まで行う高付加価値サービスへ回帰。 「置き配」と「設置」の二極化 効率化と高齢化社会対応(設置・組立)の両立が求められる。

先進事例:価格破壊の「Cainiao」と品質特化の「Speedora」

この市場環境において、対照的な2つの戦略が注目を集めています。一つは圧倒的な「コスト」で攻める中国のアリババグループ、もう一つは「品質」で差別化する米国の新興企業です。

事例1:Cainiao(菜鳥)による市場価格60%の衝撃

アリババ傘下の物流部門であるCainiao(菜鳥ネットワーク)は、米墨間のクロスボーダー物流において、驚異的なサービスを開始しました。

  • 市場平均の約60%という価格設定
  • メキシコ全土の99%をカバー
  • 中国からメキシコへの配送を最短12営業日で完了

彼らは既存の物流網を利用するだけでなく、仕分けセンターや配送拠点への大規模な投資を行い、テクノロジーによる徹底的な効率化でこの価格を実現しています。これは、既存の北米系キャリアにとって脅威であり、荷主にとっては「コスト削減のための強力な選択肢」が一つ増えたことを意味します。

この動きは、単なる安売りではありません。これまでアクセスできなかった地方都市(メキシコのカバー率99%)までEC市場を拡大させる、インフラとしての性格を持っています。

事例2:Speedoraによる「ホワイトグローブ配送」の復権

一方で、安さとは真逆の価値を提供する動きもあります。アリゾナ州のSpeedoraは、家具などの大型商品(Big-and-Bulky)に特化した配送サービスを展開しています。

彼らの特徴は、Uberのようなギグワーカーや下請けを使わず、自社のアセット(トラック)と自社の従業員で配送を行う点です。

  • ホワイトグローブ配送: 玄関先で置いて帰るのではなく、室内への搬入や設置までを行う。
  • 破損リスクの低減: 大型品は通常の宅配網に乗せると破損しやすいため、専用の取り扱いを行うことで返品率を下げる。

Eコマースにおいて「返品」は利益を圧迫する最大の要因です。配送料が高くても、確実に届け、返品を防ぐことが結果的にトータルコストを下げるという判断が、このビジネスモデルを支えています。

併せて読む: 「返品」を利益に変えるDHL。物流を価値創出へ導く逆転の戦略

事例3:DDP(関税元払い)による「カゴ落ち」防止

また、クロスボーダー物流においては、テクノロジーの活用が進んでいます。特に重要なのがDDP(Delivery-Duties-Paid / 関税元払い)機能の実装です。

海外通販で「商品到着時に関税を追加で請求された」という経験は、顧客満足度を著しく下げます。米国の最新トレンドでは、Eコマースのチェックアウト画面で関税・税金・配送料を含めた「総支払い額(Landed Cost)」を確定させることが、コンバージョン率(購入完了率)向上の鍵となっています。これを実現するには、各国の複雑な税制をリアルタイムで計算するAPI連携が不可欠です。

日本企業への示唆:今すぐ始めるべき「機動的な物流戦略」

これらの海外事例は、対岸の火事ではありません。日本国内においても、物流コストの上昇とドライバー不足により、これまでのやり方が通用しなくなっています。では、日本企業は何をすべきでしょうか。

1. 「単一業者依存」からの脱却とマルチキャリアツールの導入

日本では長らく、大手宅配業者1社と特約を結ぶのが一般的でした。しかし、これからは「A社は小型荷物が安い」「B社は長距離に強い」「C社は大型品の設置が可能」といった特徴を組み合わせる必要があります。

  • アクション: 複数の配送キャリアを一元管理し、荷物条件に合わせて自動で最適な業者を選択できる「配送管理システム(TMS)」や出荷ツールの導入を検討してください。これにより、運賃変動リスクを分散できます。

併せて読む: 米国運賃「実質27%安」の代償。2026年の供給逼迫と日本企業への警告

2. 「安さ」か「品質」か、戦う土俵を明確にする

Cainiaoのように徹底的にコストを削るのか、Speedoraのように高付加価値で勝負するのか。中途半端なポジショニングは、これからの物流市場で埋没します。

  • アクション: 自社の商品特性を見直してください。低単価な日用品なら自動化と低コスト配送を追求し、高単価な家具や家電なら「設置・回収」を含めたプレミアム配送をサービスの一部として価格転嫁する勇気が必要です。

3. クロスボーダーECにおける「透明性」の確保

日本から海外へ販売する場合、DDP対応は必須になりつつあります。「届くまでいくらかかるか分からない」状態は、もはやグローバルスタンダードでは許容されません。

  • アクション: 越境ECプラットフォームを選定する際、関税計算機能(Landed Cost Calculator)の実装状況を確認し、顧客に「サプライズのない請求」を提供できる体制を整えましょう。

併せて読む: 2026年「攻めの物流」5つの潮流。USMCAと自律AIが分ける勝敗

まとめ:変動を前提とした「しなやかな物流」へ

米墨国境の事例が教えてくれるのは、「固定的な契約や古い商習慣にしがみつく企業は淘汰される」という現実です。

Cainiaoのような破壊的プレイヤーの出現は、市場の勢力図を一晩で書き換えます。一方で、テクノロジーを駆使して複数の選択肢(ポートフォリオ)を持っていれば、どのような市場変化にも対応できます。

2025年以降、日本の物流企業や荷主に求められるのは、変化を恐れることではなく、変化を前提とした「可変性の高い物流網」を構築することです。まずは自社の配送戦略が「一本足打法」になっていないか、見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

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