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Home > ニュース・海外> 店舗×ECの「波」を制す。スイス発・100台のロボット物流革命
ニュース・海外 2026年2月18日

店舗×ECの「波」を制す。スイス発・100台のロボット物流革命

Dosenbach-Ochsner deploys Exotec robots at Swiss site

物流業界における最大の敵は「変動」です。季節ごとの需要の波、EC特有の突発的なキャンペーン需要、そして人手不足という供給リソースの変動。これらをいかに「固定費」を抑えつつ乗り切るかが、現代の物流DXにおける最重要課題となっています。

スイスのスポーツ・靴小売大手Dosenbach-Ochsner社が、この課題に対して一つの答えを出しました。Exotec社の3次元立体走行ロボット「Skypod」を100台導入し、店舗への定期補充と、予測困難なEC需要を「ひとつのシステム」で完遂する体制を構築したのです。

なぜ今、このスイスの事例が日本企業にとって重要なのでしょうか。それは、日本の物流現場が直面している「2024年問題」以降の労働力不足と、コロナ禍を経て定着した「オムニチャネル化」の課題を解決するヒントが詰まっているからです。

本記事では、Dosenbach-Ochsnerの成功事例を紐解きながら、日本の物流企業が取り入れるべき「柔軟な自動化戦略」について解説します。

世界の物流トレンドは「効率」から「柔軟性」へ

欧米や中国の物流先進国では、自動化設備の選定基準が大きく変化しています。かつては「いかに大量の物を速く流すか(スループットの最大化)」が重視され、巨大なコンベアラインや固定式の自動倉庫(AS/RS)が主流でした。

しかし現在は、「いかに需要変動に合わせて拡張・縮小できるか(スケーラビリティと柔軟性)」が最優先事項となっています。これは、EC市場の成熟に伴い、ブラックフライデーや独身の日(11月11日)のような極端なスパイク需要への対応が経営課題となったためです。

主要国における物流自動化のアプローチ比較

世界の物流トレンドを俯瞰すると、各国とも「人手に頼らない柔軟性」を模索していることがわかります。

地域 主な課題 自動化のトレンド 注目される技術・キーワード
欧州 土地不足・高人件費 高密度保管と省人化の両立 Exotec、AutoStore、Cube Storage
米国 圧倒的な物量・人手不足 既存倉庫への後付け自動化 AMR(自律走行搬送ロボット)、RaaS(Robot as a Service)
中国 スピード・EC比率の高さ 垂直方向の活用と超高速処理 ACR(ケース搬送ロボット)、Hai Robotics
日本 労働人口減少・多頻度小口 既存オペレーションとの融合 GTP(Goods to Person)、オムニチャネル統合

中国のトレンドに関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。ACRのような「高さを活かす」技術は、日本の倉庫事情とも親和性が高い分野です。

併せて読む: 中国ユニコーン上場が示す「倉庫の立体化」革命。日本企業が選ぶべき次世代DX

スイスDosenbach-Ochsner社のオムニチャネル戦略

欧州最大の靴小売Deichmannグループ傘下であるDosenbach-Ochsner社は、スイス国内に約380店舗を展開しています。同社が抱えていた課題は、実店舗への安定的な在庫供給と、急成長するEC(eコマース)事業の両立でした。

これらを解決するために導入されたのが、フランス発のユニコーン企業Exotec(エグゾテック)社の「Skypodシステム」です。

100台のロボットが支える17.4万保管ロケーション

このプロジェクトは、物流コンサルティング大手Miebach Consultingの支援のもと進められました。導入されたシステム規模は以下の通りです。

  • 導入機器: Exotec Skypodロボット 100台
  • 保管能力: 約174,000箇所のビン(保管ロケーション)
  • 対象拠点: ルターバッハ(Luterbach)の物流センター

特筆すべきは、このシステムが「店舗用」と「EC用」に分かれていない点です。ロボットたちは、17万個以上の保管場所を縦横無尽(床面走行+ラック昇降)に動き回り、店舗向けの補充商品も、個人宅向けのEC注文商品も、同じ仕組みでピッキング作業者の元へ運びます。

波動を吸収する「スケーラビリティ」の勝利

EC物流において最も恐ろしいのは、予測を超えた注文殺到による出荷遅延です。Dosenbach-Ochsner社がSkypodを選定した最大の理由は、その「スケーラビリティ」にありました。

従来の固定式自動倉庫(スタッカークレーン等)では、処理能力を上げるためには大規模な工事が必要でした。しかし、Skypodのような自律走行ロボット群であれば、需要のピーク時に合わせてロボットの台数を一時的に増やす(あるいは稼働率を最大化する)だけで、スループットを調整可能です。

実際に同社では、導入直後から期待を上回るパフォーマンスを発揮しており、急激なEC需要の波と、定期的な店舗納品の波を、互いに干渉させることなくスムーズに処理しています。

日本国内でも、古本EC大手のバリューブックスが同様のExotecシステムを導入し、一点物の管理という難題に挑んでいます。

併せて読む: Exotec×バリューブックス|Skypod導入で変わる古本EC物流の自動化戦略

日本企業への示唆:オムニチャネル物流DXの要諦

Dosenbach-Ochsner社の事例は、日本の物流現場にどのような示唆を与えているでしょうか。「スイスだからできた」と片付けるには早計です。ここには、日本企業が直面する「壁」を突破するヒントがあります。

「店舗在庫」と「EC在庫」の壁を壊す

日本の多くの小売企業では、未だに「店舗物流」と「EC物流」が別々の倉庫、あるいは別々のオペレーションで管理されているケースが少なくありません。

  • 課題: ECで欠品しているのに店舗用在庫には余剰がある、あるいはその逆が発生し、機会損失と過剰在庫を同時に抱える。
  • 解決策: Dosenbach-Ochsner社のように、在庫プールを統合し、ピッキング工程をロボットで共通化する。

ExotecのようなGTP(Goods to Person)システムは、オーダーが「店舗補充(ケース単位)」であっても「EC出荷(ピース単位)」であっても、人間に対して「必要な商品が入った箱」を運んでくるだけです。つまり、ロボット側が需要の違いを吸収してくれるため、在庫の一元管理が容易になります。

コンサルティングを活用した全体設計

本事例のもう一つの成功要因は、Miebach Consultingという専門家がプロジェクトに伴走した点です。

日本の物流現場では、現場の改善活動(カイゼン)が優秀であるがゆえに、自動化設備の導入も自社だけで完結させようとする傾向があります。しかし、数百台規模のロボット導入と業務プロセスの刷新は、現場の延長線上ではなく「経営戦略」としての設計が必要です。

外部の知見を取り入れ、ROI(投資対効果)だけでなく、将来の拡張性まで含めたグランドデザインを描くことが、失敗しないDXの条件と言えます。

まとめ:変動に強い「柔らかな物流」へ

Dosenbach-Ochsner社の事例が教えてくれるのは、最新のロボットを導入すること自体が目的ではないということです。真の目的は、店舗とECという異なる特性を持つ需要を統合し、どんな需要の波が来ても耐えうる「柔軟な供給網」を作ることでした。

  • 統合: 店舗とECの在庫・オペレーションを分けない。
  • 柔軟性: 固定設備ではなく、台数調整が可能なロボットを選ぶ。
  • 拡張性: 将来の成長に合わせて保管数を増やせる構造にする。

日本企業もまた、「人を集めて波を乗り切る」時代から、「システムが波を吸収する」時代へと移行する必要があります。Exotecのような3次元走行ロボットや、その他のAGV/AMR技術は、そのための強力な武器となるでしょう。

2025年以降、物流は単なるコストセンターではなく、企業の成長を支える「エンジンの役割」を担うことになります。海外の先行事例を参考に、自社の物流を「柔らかなインフラ」へと進化させる時が来ています。

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