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ニュース・海外 2025年12月11日

【海外事例】Mercado LibreのDigit導入に学ぶ!ヒューマノイド活用最前線と日本への示唆

Digit humanoid joins Mercado Libre warehouseについて

【Why Japan?】なぜ今、日本企業がヒューマノイドロボットの海外トレンドを知るべきなのか

2024年問題や深刻化する労働力不足に直面する日本の物流業界にとって、「省人化」「自動化」はもはや選択肢ではなく、事業継続のための必須課題です。これまでAGV(無人搬送車)やGTP(Goods to Person)ロボットがその主役でしたが、今、その次の潮流として「ヒューマノイドロボット(人型ロボット)」が現実的な選択肢として浮上しています。

かつてはSFの世界の産物であったヒューマノイドが、なぜ今、注目されるのか。その答えを示す象徴的な出来事が、ラテンアメリカのeコマース大手、Mercado Libre(メルカドリブレ)によるAgility Robotics社製ヒューマノイド「Digit」の物流倉庫への導入です。

これは単なる実証実験(PoC)ではありません。大手物流企業が、実際のオペレーションにヒューマノイドを組み込むという、実用化フェーズへの移行を告げる号砲です。本記事では、このMercado Libreの先進事例を深掘りし、世界のヒューマノイド開発競争の最新動向を俯瞰しながら、日本の物流企業が今何を学び、どう備えるべきかを具体的に解説します。

ヒューマノイドロボット導入の基本的なメリットや課題については、以下の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
参考: 物流現場への人型ロボット導入についてメリットと課題を経営層・担当者向けに徹底解説

海外の最新動向:激化するヒューマノイド開発競争

Mercado Libreの事例は氷山の一角に過ぎません。世界では、物流現場での活用を視野に入れたヒューマノイドロボットの開発競争が、米国と中国を中心に激化しています。

米国:実用化でリードする先進技術の巨塔

米国では、スタートアップから巨大テック企業までが開発にしのぎを削っています。

  • Agility Robotics: 今回の主役である「Digit」の開発元。Amazonのイノベーションファンドからの出資を受け、GXO Logisticsの倉庫で10万個以上のトートを処理した実績を持つなど、実用化で他社をリードしています。2024年にはThe Robot Report誌の「Robot of the Year」に選出されるなど、業界からの評価も非常に高い企業です。
  • Boston Dynamics: アクロバティックな動きで知られる「Atlas」を、油圧式から完全電動式へ刷新。より静かで強力、そして商業利用に適したモデルへと進化させ、自動車メーカーのヒョンデの工場などで実用化を目指しています。
  • Tesla: イーロン・マスク氏が率いるテスラも「Optimus」の開発を加速。自社の自動車工場での活用を最初のターゲットとしており、製造業・物流業への大きなインパクトが予想されます。

中国:量産化とコストで市場を狙う新興勢力

中国は、政府の強力な後押しを受け、驚異的なスピードでキャッチアップを進めています。

  • AgiBot: 「Lingxi X2」は既に5,000台の出荷実績を誇り、量産化フェーズに突入しています。低コストを武器に、自動車製造ラインや倉庫での活用事例を急速に増やしており、その動向は無視できません。
  • UBTECH Robotics: サービスロボットで培った技術を応用し、産業用ヒューマノイド「Walker S」を開発。NIO(上海蔚来汽車)の工場に導入されるなど、実用化の動きが活発化しています。

詳しくは、当ブログのこちらの記事もご参照ください。
参考: AgiBotのロボット量産化最前線|米中の物流DX事例と日本への示唆

各国の開発競争まとめ

ヒューマノイドロボット開発は、各国がそれぞれの強みを活かして競争する、まさに技術覇権争いの様相を呈しています。

国 主要プレイヤー 特徴
米国 Agility Robotics, Boston Dynamics, Tesla 実用化と先進技術で先行。大手テック企業が参入。
中国 AgiBot, UBTECH Robotics 低コスト量産化とスピーディな市場投入が強み。
欧州 Neura Robotics AI連携や協働ロボットの知見を応用。産業用途に強み。

先進事例:Mercado Libreはなぜ、どうやってDigitを導入したのか?

それでは、今回の本題であるMercado Libreのケーススタディを深掘りしていきましょう。この事例から、日本企業が学ぶべき成功要因が見えてきます。

導入の背景:急成長ECが求める「次世代の自動化」

Mercado Libreは「ラテンアメリカのAmazon」とも呼ばれる巨大eコマース企業です。その急成長を支える物流ネットワークの効率化と高度化は、同社の最重要課題の一つでした。AGVやソーターといった既存の自動化技術だけでは対応しきれない、より柔軟で適応性の高いソリューションを模索する中で、ヒューマノイドロボット「Digit」に白羽の矢が立ちました。

具体的なタスク:「トート搬送」から始める理由

Mercado LibreがDigitに最初に与えたタスクは「tote handling(トート搬送)」、つまり商品が入ったプラスチック製の箱(トート)を棚からコンベアへ、あるいはその逆のルートで運ぶ作業です。

なぜこの作業だったのでしょうか。

  • 反復性が高く負荷も大きい: 人間にとっては単調で、腰などへの身体的負担も大きい作業です。
  • 柔軟性が求められる: 決まったルートを走るAGVとは異なり、人と通路を共有し、障害物を避けながら、様々な場所にある棚へアクセスする必要があります。
  • 自動化の「隙間」: GTPシステムが商品をピッキングステーションへ運ぶ一方で、その前後の工程(棚への補充や、空になったトートの片付けなど)には依然として人手が必要でした。Digitは、この「自動化の隙間」を埋める役割を期待されています。

成功要因の分析:周到な戦略と現実的なアプローチ

Mercado Libreの導入が注目されるのは、その戦略性にあります。

①スモールスタートによるリスク低減

最初から全社展開を目指すのではなく、テキサス州の一施設で、かつ「トート搬送」という限定的なタスクから始めました。これにより、導入効果を正確に測定し、運用ノウハウを蓄積しながら、リスクを最小限に抑えることができます。

②実績と安全性が担保されたロボットの選定

Digitは、GXO Logisticsの施設で10万個以上のトートを処理した実績がありました。さらに、米国の労働安全衛生庁(OSHA)が認定する国家認証試験機関(NRTL)の承認を取得済みです。この「実績」と「安全性」が、導入の意思決定を後押ししたことは間違いありません。Digitの可搬重量は約15.8kg(35 lb.)であり、物流現場で扱われる多くの商材に対応可能です。

③既存インフラへの適応能力

最大のポイントは、Digitが「人間のために設計された空間で働ける」ことです。二足歩行により階段の上り下りや狭い通路の移動が可能なため、倉庫のレイアウトを大幅に変更する必要がありません。これは、導入コストと期間を劇的に圧縮する上で、極めて重要な要素です。

④未来への布石としてのデータ収集

Mercado Libreは、今回の導入を単なる作業代替とは考えていません。Digitが現場で稼働することで得られる膨大なデータを収集・分析し、将来的にはピッキングや梱包といった、より複雑な作業へ応用することを見据えています。これは、未来の物流センターのあり方を定義するための、戦略的な投資なのです。

日本への示唆:海外事例から何を学び、どう行動すべきか

Mercado Libreの事例は、日本の物流企業にとっても多くの学びを与えてくれます。海外のトレンドを対岸の火事と捉えるのではなく、自社の未来を創造するためのヒントとして活用することが重要です。

日本市場に適用する場合のポイント

  • 「隙間工程」の特定から始める: 自社の倉庫や工場で、AGVや既存の自動化設備ではカバーしきれていない「隙間」の工程がないか洗い出してみましょう。例えば、コンテナからの荷下ろし(デバンニング)、カートへの積み付け、不定形な場所への補充作業などは、ヒューマノイドが価値を発揮しやすい領域です。
  • ハイブリッドな自動化を目指す: 全ての工程をヒューマノイドで置き換える必要はありません。GTPやAGVといった得意分野を持つロボットとヒューマノイドを組み合わせ、それぞれの長所を活かす「ハイブリッドな自動化」こそが、現実的な最適解となるでしょう。

乗り越えるべき障壁

  • 高額な初期投資とROI: ヒューマノイドロボットは依然として高価です。導入にあたっては、人件費削減効果だけでなく、生産性向上、作業品質の安定化、労働災害リスクの低減といった多角的な視点からROI(投資対効果)を慎重に試算する必要があります。
  • 安全基準と法規制の壁: 人とロボットが同じ空間で働く「協働」が前提となるため、安全性の確保が最優先課題です。米国のOSHAのような安全認証は一つの目安になりますが、日本の労働安全衛生法規に準拠した安全基準の確立や、リスクアセスメントの実施が不可欠です。
  • 運用・保守体制の構築: 高度なロボットを安定稼働させるためには、専門知識を持つメンテナンス人材の育成が欠かせません。日本の商習慣では、メーカーやインテグレーターによる手厚いサポート体制が求められる傾向が強く、この点も導入前に確認すべき重要事項です。

日本企業が「今すぐ」できること

ヒューマノイドの本格導入はまだ先だとしても、未来に備えて今から着手できることは数多くあります。

  1. 徹底的な業務プロセスの可視化: まずは「ヒューマノイドありき」で考えるのではなく、自社の物流工程のどこにボトルネックや非効率が存在するのかをデータに基づいて可視化・分析することから始めましょう。
  2. PoC(概念実証)パートナーの模索: 国内外のロボットメーカーやインテグレーターと情報交換を開始し、Mercado Libreのように限定的なタスクで小規模なPoCを実施できないか検討します。これにより、自社環境での有効性や課題を早期に把握できます。
  3. ロボットフレンドリーな環境整備: 将来的なロボット導入を見据え、通路幅の確保、床面の平滑化、5Gなどの通信環境の整備といった、物理的な環境改善に少しずつ着手することも有効な一手です。

まとめ:ヒューマノイドは「労働力の代替」から「物流の進化」を促す触媒へ

Mercado LibreによるDigitの導入は、ヒューマノイドロボットが物流業界において「実験」の段階を終え、「実用」のフェーズへと確かに移行したことを示すマイルストーンです。

今後、AI技術のさらなる進化により、ヒューマノイドは単一の反復作業をこなすだけでなく、状況を自律的に判断し、より多様で複雑なタスクに対応できるようになるでしょう。これは、単なる人手不足の解消策にとどまりません。24時間365日稼働可能な労働力は、リードタイムの短縮や需要変動への柔軟な対応を可能にし、物流オペレーション全体の最適化と、サプライチェーンのレジリエンス(強靭性)強化に直結します。

日本の物流企業にとって、この大きな地殻変動をどう捉え、どう備えるか。今、その戦略的な視点が問われています。海外の最前線の動きを常に注視し、自社の未来像を描くための一歩を踏み出す時が来ています。

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