2026年4月から施行される「改正物流総合効率化法(以下、改正物効法)」。特定事業者(荷主・物流事業者)に対し、荷待ち・荷役時間の把握と定期報告が義務化されるこの「Xデー」に向け、物流現場では対応への焦りが高まっています。
そのような中、2025年12月19日、丸紅ネットワークソリューションズ(丸紅I-DIGIOグループ)が発表した「新物流効率化法対策ソリューション」が業界内で注目を集めています。最大の特長は、「大規模なLAN配線工事が不要」である点です。
なぜ今、このソリューションが重要なのか。そして、この技術は物流現場の「2026年問題」をどう解決するのか。本記事では、物流ニュースコメンテーターの視点から、新ソリューションの全貌と業界へのインパクトを解説します。
ニュースの背景:改正法対応の「時間的猶予」がない
まず、今回の発表がなぜ「速報」として価値があるのか、その背景にある規制のスケジュールと新製品の仕様を整理します。
2025年度より、既に荷待ち・荷役時間の計測は「努力義務」としてスタートしており、2026年4月からは罰則付きの法的義務(定期報告)へと移行します。多くの現場では「手書き台帳」からの脱却が進んでおらず、自動化システムの導入コストと工期が大きなハードルとなっていました。
丸紅ネットワークソリューションズの新提案
今回発表されたソリューションは、車番検知カメラとクラウドを組み合わせ、トラックの入退場時刻を自動で取得・記録するものです。
ソリューションの概要と特徴
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 提供企業 | 丸紅ネットワークソリューションズ(丸紅I-DIGIOグループ) |
| 製品名 | 新物流効率化法対策ソリューション |
| 中核技術 | 車番検知カメラ + AIBOX + クラウド |
| 取得データ | トラックの入場・退場時刻(自動タイムスタンプ) |
| 最大の強み | 現場のLAN配線工事が不要(LTE/4G通信等を利用) |
| 対応法規制 | 改正物流総合効率化法(荷待ち・荷役時間の把握義務) |
| 拡張性 | APIによる既存システム(WMS、バース予約等)との連携 |
これまでの類似システムでは、カメラとサーバーを結ぶための有線LAN工事が必要で、特に敷地の広い物流センターでは工事費だけで数百万円、工期も数ヶ月かかるケースが珍しくありませんでした。本ソリューションはこの「物理的な壁」を取り払う点に革新性があります。
関連する技術トレンドとして、他社事例も参考になります。
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物流現場への具体的な影響と導入メリット
このソリューションが普及することで、物流現場のオペレーションはどう変わるのでしょうか。ステークホルダーごとのメリットを解説します。
1. 施設管理者・倉庫事業者:導入ハードルの劇的低下
最も大きな恩恵を受けるのは、実際にシステムを導入する施設側です。
- テナント型倉庫での導入が容易に
賃貸物件(テナント倉庫)の場合、建物に穴を開ける配線工事はオーナー許可が必要で難航しがちです。配線不要のシステムであれば、電源さえ確保できれば設置可能となり、テナント入居企業でも迅速に導入できます。 - 初期投資の抑制
掘削や配管を含むLAN工事費がカットできるため、導入コストを大幅に圧縮できます。これは、中小規模の拠点にとって強力な後押しとなります。
2. 荷主企業(CLO):コンプライアンス遵守の証拠確保
改正物効法では、特定荷主に対しても物流効率化の計画策定と報告が求められます。
- 正確なデータの自動蓄積
「いつ、どの運送会社のトラックが、どれくらい待機したか」という客観的なデータ(エビデンス)が自動でクラウドに蓄積されます。これは、当局への報告義務を果たすための必須資料となります。 - 改善サイクルの高速化
手入力データの集計を待つことなく、リアルタイムに近い形で滞留状況を把握できるため、現場への改善指示を即座に出すことが可能になります。
3. 運送事業者:待機時間の「見える化」による交渉力
運送会社にとっても、メリットは無視できません。
- 「言った言わない」のトラブル解消
入場時刻と退場時刻が映像とともに記録されるため、長時間待機の事実証明が容易になります。これは、待機料請求や条件交渉における強力な武器となります。
本件に関する詳細なスペックや技術的背景については、以下の記事でも詳しく解説しています。
See also: 丸紅I-DIGIO/26年4月の改正物効法施行へ、対策ソリューションを提供開始|現場の負担減を徹底解説
LogiShiftの視点:単なる「記録」を超えたDX基盤へ
ここからは、事実報道を超えて、このニュースが示唆する物流業界の未来について考察します。
「守りのDX」から「攻めのDX」への転換点
多くの企業が改正法対応を「義務だからやる(守りのDX)」と捉えがちです。しかし、丸紅I-DIGIOの狙いは、その先にあると推測されます。
今回のソリューションは、単に時間を記録するだけでなく、API連携を前提とした「拡張性の高いDX基盤」として設計されています。
例えば、以下のようなシステム連携が視野に入ります。
- バース予約システムとの連携
「予約時間」と「実際の到着時間」を突合し、予実管理を自動化する。 - トラックスケール(計量機)との連携
「いつ来たか」だけでなく「何をどれだけ積んで帰ったか(積載率)」まで紐づけて管理する。
配線不要でスモールスタートし、段階的に機能を拡張できる点は、予算確保に苦しむ物流現場の事情を深く理解した設計と言えるでしょう。
物流施設の「スマート化」が加速する
今後、物流不動産の価値基準が変わる可能性があります。これまでは「立地と坪単価」が主な判断基準でしたが、今後は「計測インフラが整っているか(スマート倉庫か)」がテナント選定の重要な要素になるでしょう。
丸紅I-DIGIOのソリューションは、既存の古い倉庫であっても、大規模改修なしに「スマート倉庫化」できるツールです。これは、新築倉庫への移転が難しい多くの企業にとって、現実的なDXの解となります。
まとめ:明日から意識すべきこと
丸紅ネットワークソリューションズの新ソリューションは、改正物効法の施行迫る物流業界に対し、「工事不要」という切り口で現実的な解決策を提示しました。
2026年4月の完全義務化まで、残された時間はわずかです。経営層や現場リーダーは、以下の3点を直ちに行動に移すべきです。
- 現状の把握: 自拠点の荷待ち時間把握が「手書き」か「自動」か、再確認する。
- 工事制約の確認: LAN配線工事が可能か、無線化が必要かを施設管理部門と協議する。
- 拡張性の検討: 単なる記録ツールではなく、将来的にバース予約やWMSと連携できるシステムを選定する。
法対応を単なるコスト増と捉えず、現場の生産性を抜本的に見直すチャンスに変えていきましょう。


