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Home > 物流DX・トレンド> フマキラー・JPRの伝票電子化|WMS連携で挑む「検品レス」の衝撃
物流DX・トレンド 2025年12月19日

フマキラー・JPRの伝票電子化|WMS連携で挑む「検品レス」の衝撃

フマキラー、JPRの納品伝票電子化・共有システム導入

物流業界における「紙の伝票」からの脱却は、長年の課題でありながらも、現場の慣習という厚い壁に阻まれてきました。しかし、その壁を突き崩す決定的な事例が生まれようとしています。

殺虫剤大手のフマキラー、愛宕倉庫、日本パレットレンタル(JPR)、そしてTSUNAGUTE(ツナグテ)の4社が連携し、納品伝票電子化・共有システム「DD Plus」の本格導入を発表しました。このニュースが業界に衝撃を与えている理由は、単なる「ペーパーレス化」にとどまらず、WMS(倉庫管理システム)とのAPI連携による完全自動化を実現した点にあります。

これは、物流2024年問題の核心である「ドライバー待機時間」の削減と、将来的な「検品レス」体制構築への布石です。本記事では、この先進的な取り組みの全容と、物流経営者が今読み解くべき「DXの次の一手」について解説します。

詳細な背景については、以下の過去記事でも触れています。
フマキラー・JPR等が伝票電子化|WMS連携で実現する「検品レス」への道

ニュースの背景と4社連携の全容

今回の発表は、メーカー、倉庫、パレットレンタル、ITプロバイダーというサプライチェーンの主要プレイヤーが一体となって課題解決に動いたモデルケースです。まずは事実関係を整理します。

導入プロジェクトの概要

項目 内容
参画企業 フマキラー(荷主)、愛宕倉庫(倉庫)、JPR(パレット)、TSUNAGUTE(システム)
導入システム 納品伝票電子化・共有システム「DD Plus」(TSUNAGUTE提供)
技術的特徴 愛宕倉庫のWMSとDD PlusをAPI連携。伝票データの自動送信を実現
主な目的 伝票発行業務の削減、ヒューマンエラー防止、トラック待機時間の短縮
将来展望 パレット管理のワンストップ化、ASN(事前出荷情報)活用による検品レス化

従来のアナログ業務が抱えていた課題

これまでの物流現場、特に愛宕倉庫のような大規模拠点でフマキラー製品を取り扱う現場では、以下のようなアナログ作業がボトルネックとなっていました。

  • 手作業による発行: 出荷のたびに事務所で大量の紙伝票を印刷・仕分けする工数。
  • 情報の分断: パレット伝票と納品伝票が別々に管理されており、整合性の確認に時間を要する。
  • ドライバーの待機: 荷積み作業が終わっても、伝票の発行・手渡しが完了するまでトラックが出発できない。

今回の「DD Plus」導入とAPI連携は、これらのプロセスをデジタルの力で「流れるように」つなぐものです。

各プレイヤーへの具体的な影響とメリット

このシステム導入は、単一企業の利益にとどまらず、サプライチェーン全体に波及効果をもたらします。それぞれの立場でどのような変化が起きるのかを分析します。

倉庫事業者(愛宕倉庫)における庫内作業の変革

倉庫現場にとって最大の影響は、「伝票発行」という物理作業からの解放です。

従来、WMSからデータを出力し、プリンターで印刷、ページを揃えてドライバーに渡すという一連の作業は、出荷ピーク時には専任スタッフが必要なほどの負担でした。API連携により、WMSで出荷確定した瞬間にデータが「DD Plus」へ飛び、ドライバーのスマートフォン等で閲覧可能になります。

これにより、事務所スタッフの工数が削減されるだけでなく、渡し間違いや紛失といったヒューマンエラーが根絶されます。

運送会社・ドライバーへの待機時間削減効果

運送会社にとって、このシステムは「待機時間削減」の切り札となります。

  • 出発の迅速化: 荷役終了後、事務所に立ち寄って紙を受け取る必要がなくなります。
  • 受領作業の効率化: 納品先での受領サインも電子化されれば、紙の持ち帰りや郵送の手間も消失します。

物流2024年問題で労働時間規制が厳格化される中、荷待ち時間の短縮はドライバーの稼働効率を直結して向上させる要素です。

荷主(フマキラー)が目指すサプライチェーンの可視化

メーカーであるフマキラーにとっては、物流品質の向上とコンプライアンス遵守が主眼です。電子化により、いつ、誰が、何を運んだかがリアルタイムでデータ化されます。また、JPRが関与することで、パレットの回収・循環管理も同一プラットフォーム上で効率化できる可能性が高まります。

LogiShiftの視点:API連携が示唆する物流DXの未来

今回のニュースを単なる「伝票電子化の成功事例」として片付けてはいけません。LogiShiftでは、以下の2点が今後の業界標準を決定づける重要なポイントであると考察します。

CSVからAPIへ:リアルタイム連携の重要性

これまでの多くの「伝票電子化」は、CSVデータを手動でアップロードする形式が主流でした。しかし、これでは「データのアップロード忘れ」や「タイムラグ」が発生し、完全な自動化とは言えません。

今回の事例で特筆すべきは、WMSとプラットフォームがAPIで直接つながったことです。人の手を介さずにシステム同士が会話することで、真のリアルタイム性が確保されます。今後は、自社のWMSが外部システムとAPI連携できるかどうかが、荷主から選ばれる倉庫・運送会社の基準になっていくでしょう。

「検品レス」こそが最終ゴール

4社が将来展望として掲げている「ASN(事前出荷情報)を活用した検品レス」こそ、物流DXの本丸です。

  1. 出荷側(WMS)から正確なデータがAPIで送られる。
  2. 運送側は改ざん不可能なデジタル伝票で運ぶ。
  3. 着荷側はデータと現物が一致しているという前提で、開梱検品を省略(検品レス)する。

この信頼チェーンが構築できれば、着荷主(卸・小売)側の検品作業員不足も解消できます。今回のフマキラー・JPR等の取り組みは、この「信頼のデジタル化」に向けた重要な一歩と言えます。

まとめ:経営者が明日から意識すべきこと

フマキラーとJPR、愛宕倉庫、TSUNAGUTEによる連携は、物流業界における「協調領域」の拡大を象徴しています。最後に、経営者や現場リーダーが意識すべきポイントをまとめます。

  1. 自社システムの「接続性」を見直す:
    現在使用しているWMSや基幹システムは、API等で外部と連携可能ですか? 閉じたシステム(レガシーシステム)は、今後のサプライチェーンから孤立するリスクがあります。
  2. 「紙」のコストを再計算する:
    用紙代やトナー代だけでなく、「印刷・仕分け・手渡し・待機・保管」にかかる人件費と時間的損失を直視してください。電子化のROI(投資対効果)は、これらを含めて算出する必要があります。
  3. パートナー企業との対話:
    荷主、倉庫、運送会社が単独でDXを進めるには限界があります。今回の事例のように、ステークホルダーを巻き込んだプロジェクトチームを組成できるかが鍵となります。

「伝票電子化」はゴールではなく、その先にある「検品レス」「全体最適」への入り口です。業界のトップランナーたちが切り開いたこの道を、自社にどう取り入れるか検討を開始してください。

詳しくは以下の記事でも解説しています。
フマキラー・JPR等が伝票電子化|WMS連携で実現する「検品レス」への道

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