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物流DX・トレンド 2025年12月11日

物流DXの進め方とは?失敗しない5つの手順とメリットを徹底解説

物流DXの進め方

「日々の残業が減らない」「ベテランの退職で現場が回らなくなる」「誤出荷が多くてクレーム対応に追われている」

物流の現場を支えるリーダーや経営層の皆様は、このような根深い課題に頭を悩ませていないでしょうか。人手不足やコスト高騰、そして「2024年問題」という大きな変化の波が押し寄せる今、旧来のやり方だけでは限界が見えています。

この記事では、そうした課題を解決する鍵となる「物流DXの進め方」について、具体的な5つのステップに沿って分かりやすく解説します。

この記事を読めば、物流DXの全体像から自社で実践するための具体的なアクションまでが明確になり、持続可能な物流体制を構築する第一歩を踏み出せます。

物流DXとは何か?基本を理解しよう

物流DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、単にデジタルツールを導入することではありません。AIやIoT、ロボットなどのデジタル技術を活用して、物流業務のプロセスや、さらにはビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を創造する取り組み全体を指します。

「デジタル化」と「DX」の違い

よく混同されがちですが、「デジタル化(デジタライゼーション)」と「DX」は目的が異なります。

  • デジタル化: アナログな業務をデジタルに置き換えること。
  • 例:紙の伝票をスキャンしてPDFで保存する、日報をExcelで管理する。
  • 目的:業務の効率化(部分最適)

  • DX: デジタル技術を前提に、業務プロセスや組織、ビジネスモデルを変革すること。

  • 例:WMS(倉庫管理システム)を導入し、在庫データをリアルタイムで分析。需要予測に基づいた自動発注や人員配置の最適化を行う。
  • 目的:競争優位性の確立、新たな価値創造(全体最適)

物流DXとは、デジタル化を一歩進め、データに基づいた意思決定によって物流全体の最適化を目指す戦略的な取り組みなのです。

物流プロセスにおけるDXの全体像

物流は「入荷」「保管」「ピッキング」「検品」「梱包」「出荷」「配送」といった多くの工程が連鎖しています。物流DXは、これらの各工程、または工程間をデジタル技術でつなぎ、効率化・最適化を図ります。

物流プロセスの図解イメージ
(入荷 → 保管 → ピッキング → 出荷 → 配送)

各工程に特化したWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)などのツールを導入し、それらを連携させることで、サプライチェーン全体の可視化と最適化が可能になります。

なぜ今、物流DXが最重要課題なのか?

「DXの重要性は分かっているが、日々の業務で手一杯だ」と感じる方も多いかもしれません。しかし、物流業界を取り巻く環境は、待ったなしの状況です。

避けて通れない「物流の2024年問題」

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限が適用されました。これにより、一人のドライバーが運べる荷物量や距離が減少し、輸送キャパシティの低下が懸念されています。

国土交通省の試算では、対策を講じなければ2030年度には国内の輸送能力が約34%不足する可能性が指摘されており、運賃の上昇や、そもそも荷物が運べなくなる事態も現実味を帯びています。

深刻化する労働力不足と高齢化

日本の生産年齢人口は年々減少しており、物流業界も例外なく深刻な人手不足に直面しています。特に、庫内作業やトラックドライバーは有効求人倍率が高止まりしており、人材確保は困難を極めます。人に依存したオペレーションでは、事業の継続自体が危ぶまれる時代です。

多様化する消費者ニーズとコスト構造の変化

EC市場の拡大に伴い、物流現場では多品種少量・高頻度・短納期の配送への対応が求められています。一方で、燃料費や人件費は高騰を続けており、企業の利益を圧迫しています。

こうした外部環境の変化に対応し、競争力を維持・強化するためには、物流DXによる抜本的な生産性向上が不可欠なのです。

物流DXがもたらす4つの主要メリット・効果

物流DXを推進することで、企業は具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは代表的な4つの効果をご紹介します。

1. 業務効率化と生産性の劇的な向上

手作業や個人の経験に頼っていた業務をデジタル化・自動化することで、作業時間を大幅に短縮し、生産性を向上させます。

  • WMS(倉庫管理システム): 在庫のロケーション管理を最適化し、ピッキングの移動距離を短縮。
  • TMS(輸配送管理システム): 最適な配送ルートや積載計画を自動で算出し、配車業務を効率化。
  • 自動化ロボット(AGV/AMR): 人に代わって荷物を搬送し、作業者の負担を軽減。

これらの導入により、「配車計画の作成時間が半分になった」「ピッキング作業時間が30%削減された」といった定量的な効果が期待できます。

2. 人件費や輸送費などのコスト削減

業務効率化は、直接的なコスト削減につながります。

  • 残業時間の削減: 作業の標準化と効率化により、不要な残業を減らす。
  • 誤出荷の防止: バーコード検品などでヒューマンエラーをなくし、再配送コストや信頼の失墜を防ぐ。
  • 燃料費の抑制: TMSによる最適ルートでの配送で、無駄な走行距離を削減。

結果として、ROI(投資収益率)の高い経営を実現できます。

3. サービス品質と顧客満足度の向上

正確でスピーディーな物流は、顧客満足度を大きく左右します。

  • トレーサビリティの確保: 荷物が今どこにあるかをリアルタイムで追跡可能にし、顧客からの問い合わせに即座に対応。
  • 納期の遵守: 正確な在庫管理と配送計画により、欠品や配送遅延を防ぐ。

安定した物流サービスを提供することで、顧客からの信頼を獲得し、リピートオーダーや取引拡大につながります。

4. データ活用による経営判断の高度化

物流DXの真価は、蓄積されたデータを活用することにあります。

  • 需要予測: 過去の出荷データなどを分析し、将来の需要を高い精度で予測。過剰在庫や欠品を防止。
  • KPIの可視化: 倉庫の稼働率や実車率、誤出荷率などをダッシュボードで可視化し、課題を即座に把握。
  • 新たな価値創造: データを活用し、物流サービスそのものを収益源に変えるビジネスモデルも可能です。

海外では、データを駆使して倉庫の利用効率を最大化し、大きな収益を上げる企業も登場しています。詳しくは以下の記事も参考にしてください。
参考: Lineage社の1.1億ドル増益戦略に学ぶ!海外倉庫DX最前線と日本への示唆

失敗しない!物流DX導入・実践の5ステップ

物流DXは、やみくもに進めても成功しません。ここでは、失敗を避け、着実に成果を出すための5つのステップを紹介します。

ステップ1: 現状把握と課題の明確化

最初のステップは、自社の物流プロセスを「可視化」し、どこに課題があるのかを正確に把握することです。

  • 業務フローの洗い出し: 「誰が」「いつ」「何を」「どのように」行っているかを書き出す。
  • 課題の定量化: 「残業が多い」ではなく、「〇〇部署の月間平均残業時間が45時間」のように、課題を数値で捉える。
  • KPIの設定: 課題を測るための指標(KPI)を設定する。(例: 誤出荷率、在庫回転率、車両実車率など)

現場の担当者へのヒアリングも重要です。彼らが日々感じている「やりにくさ」や「無駄」の中に、DX化のヒントが隠されています。

ステップ2: DX化の目的とゴールの設定

次に、ステップ1で明確になった課題に対し、「DXによって何を達成したいのか」という目的(ゴール)を具体的に設定します。

  • SMARTな目標設定:
    • Specific(具体的): 誤出荷を減らす
    • Measurable(測定可能): 誤出荷率を0.01%以下にする
    • Achievable(達成可能): (現実的な目標か)
    • Relevant(関連性): 顧客満足度向上という経営目標に関連
    • Time-bound(期限): 導入から1年以内に
  • 経営層と現場の合意形成: DXは全社的な取り組みです。経営層が示すビジョンと、現場が求める改善点が一致するよう、ゴールを共有することが成功の鍵です。

ステップ3: スモールスタートでのツール選定と導入計画

いきなり全社的に大規模なシステムを導入するのはリスクが伴います。まずは最も課題の大きい特定の業務や拠点に絞って、小さく始める「スモールスタート」が賢明です。

  • PoC(概念実証)の実施: 小規模な環境でツールを試験的に導入し、効果や課題を検証します。
  • 課題に合ったツールの選定: 自社の課題とゴールに最適なツールを選びます。代表的な物流DXツールには以下のようなものがあります。
システム/ツール名 主な機能 対象業務
WMS(倉庫管理システム) 在庫管理、ロケーション管理、入出荷管理、ピッキング支援 倉庫内のオペレーション全般
TMS(輸配送管理システム) 配車計画、運行管理、動態管理、運賃計算 輸配送業務全般
YMS(バース管理システム) トラックの入場予約、バース誘導、待機時間の可視化 倉庫のトラック荷待ち問題の解消
自動倉庫/マテハン AGV/AMR(無人搬送車)、自動ピッキングロボット、ソーター 倉庫内の搬送、保管、仕分け作業

ツールの選定では、機能だけでなく、サポート体制や既存システムとの連携性、導入コストも総合的に比較検討しましょう。

倉庫の自動化については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
参考: 物流倉庫の自動化とは?メリットと失敗しない5つの導入手順【2024年問題対策】

ステップ4: 現場への導入と定着化

どんなに優れたツールも、現場で使われなければ意味がありません。導入プロセスでは、現場の従業員を巻き込むことが不可欠です。

  • 丁寧な説明と動機付け: 「なぜこのツールを導入するのか」「導入によって現場の仕事がどう楽になるのか」を丁寧に説明し、変化に対する不安を取り除きます。
  • 十分なトレーニング: 操作方法に関する研修や分かりやすいマニュアルを用意します。
  • 導入後のサポート体制: 導入初期は混乱やトラブルがつきものです。質問や相談にすぐ応じられる社内担当者や、ベンダーのサポート窓口を明確にしておきましょう。

ステップ5: 効果測定と改善(PDCAサイクル)

物流DXは「導入して終わり」ではありません。むしろ、ここからがスタートです。

  • 効果測定: ステップ1で設定したKPIを元に、導入前後の数値を比較し、効果を客観的に評価します。
  • 課題の分析: 目標が達成できなかった場合は、その原因を分析します。(例: 使い方が浸透していない、設定が業務に合っていないなど)
  • 改善策の実行: 分析結果に基づき、運用方法の見直しや追加のトレーニング、システムの再設定など、改善策を実行します。

この「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続けることで、DXの効果を最大化し、継続的な業務改善を実現できます。

まとめ:未来のために、今こそ物流DXの第一歩を

物流業界は今、2024年問題や人手不足といった構造的な課題に直面しており、変革が待ったなしの状況です。物流DXは、これらの課題を克服し、厳しい競争を勝ち抜くための最も有効な戦略です。

この記事で解説した5つのステップを参考に、まずは自社の課題を洗い出すことから始めてみてください。

  1. 現状把握と課題の明確化
  2. DX化の目的とゴール設定
  3. スモールスタートでのツール選定と導入計画
  4. 現場への導入と定着化
  5. 効果測定と改善(PDCAサイクル)

完璧な計画を待つよりも、まずは小さな一歩を踏み出すことが重要です。社内で課題を議論するチームを作る、外部の専門家やシステムベンダーに相談してみるなど、今日からできるアクションを起こし、持続可能な未来の物流を築いていきましょう。

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