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Home > サプライチェーン> 危険物倉庫でも物流の“センター”担う東海大府について|物流業界への影響を徹底解説[企業はどう動く?]
サプライチェーン 2025年12月18日

危険物倉庫でも物流の“センター”担う東海大府について|物流業界への影響を徹底解説[企業はどう動く?]

危険物倉庫でも物流の“センター”担う東海大府について

2025年10月、野村不動産が同社最大規模となる物流施設「Landport東海大府I」を竣工させました。

単なる「巨大倉庫の完成」であれば、そこまで大きなニュースにはなりません。しかし、この施設が業界に衝撃を与えている理由は、「危険物倉庫」を敷地内に併設し、それをサプライチェーンの中核(THE CENTER)として機能させるという明確な戦略にあります。

これまで「港湾部の厄介者」として扱われがちだった危険物を、あえて消費地に近い物流センターに取り込む動きは、EC(電子商取引)の拡大やEV(電気自動車)普及に伴う物流ニーズの構造変化を象徴しています。

本記事では、危険物倉庫でも物流の“センター”担う東海大府について、その全貌と業界に与えるインパクト、そして企業がこれから取るべき戦略について解説します。

Landport東海大府Iが注目される理由と基本スペック

まずは、なぜこの施設が「次世代のモデルケース」と呼ばれるのか、その事実関係を整理します。

「生産・消費・港湾」の結節点という立地優位性

「Landport東海大府I」最大の特徴は、その立地です。名古屋港から約5.4km、伊勢湾岸自動車道「豊明IC」から約500mという場所に位置しており、これはまさに「生産拠点(西三河)」「輸入拠点(名古屋港)」「消費地(名古屋市街)」のすべてにアクセスできる結節点です。

従来、危険物倉庫は安全確保や法規制の観点から、人里離れた港湾地区や工業地帯の奥地に隔離される傾向にありました。しかし、本施設はあえて物流の動脈とも言えるIC直近に危険物倉庫を配置することで、リードタイムの大幅な短縮を狙っています。

施設概要と危険物倉庫のスペック

野村不動産が展開する「Landport」シリーズの中でも最大規模となる本施設のスペックは以下の通りです。

項目 詳細内容
施設名称 Landport東海大府I
所在地 愛知県大府市(豊明ICより約500m)
竣工時期 2025年10月
延床面積 約24万6550平方メートル(同社最大)
危険物倉庫 敷地内に併設(延床約917.53平方メートル)
対応危険物 消防法第1類〜第6類(幅広い品目に対応)
稼働状況 本棟稼働率は竣工時で9割超

特筆すべきは、併設された危険物倉庫が消防法第1類から第6類まで幅広く対応している点です。これにより、特定の商品に限らず、多様な荷主のニーズに応えることが可能となっています。

危険物倉庫併設がもたらす物流業界への3つの衝撃

なぜ今、「一般倉庫+危険物倉庫」の一体型運用が重要視されているのでしょうか。物流実務の視点から、具体的な影響を読み解きます。

EC拡大と「生活密着型危険物」の急増への対応

「危険物」と聞くとドラム缶に入った化学薬品を想像しがちですが、現代の物流においてその定義は大きく変化しています。

  • リチウムイオン電池: モバイルバッテリー、ハンディファン、EV関連部品
  • スプレー缶: 制汗剤、整髪料、殺虫剤
  • アルコール類: 化粧品、消毒液、香水

これらはECサイトで日常的に購入される「日用消費財」です。しかし、消防法上は危険物に該当するため、一般倉庫での保管量には厳しい制限があります。

これまでは、こうした商品を一般商品とは別の遠隔地の危険物倉庫から出荷するか、法規制の範囲内で小分けにして管理する非効率が発生していました。「Landport東海大府I」のような一体型施設であれば、一般商品と危険物(スプレー等)を同じ拠点でピッキングし、同梱して出荷することが可能になります。これは配送コストの削減と顧客満足度(配送スピード)の向上に直結します。

サプライチェーンの中核(THE CENTER)としての機能転換

キーワードにある「THE CENTER」とは、単なる保管場所ではなく、サプライチェーンの制御塔としての役割を意味します。

名古屋港エリアは自動車産業を中心とした「ものづくり」の集積地です。EVシフトが進む中、バッテリーや関連部材の保管需要は爆発的に増加しています。港から輸入した部材(危険物)を、港湾地区の倉庫に寝かせるのではなく、加工・配送拠点であるセンターに直接引き込むことで、製造ラインへのジャストインタイム納入や、アフターパーツの即日配送が可能になります。

防災拠点としてのBCP(事業継続計画)対応

危険物を扱う以上、安全性と防災機能は最優先事項です。本施設は、免震構造や非常用発電機の設置など、BCP対応が徹底されています。

近年、物流施設の火災リスクに対する関心が高まっています。以下の記事でも解説した通り、自動化が進む大規模施設では、ひとたび火災が発生すれば甚大な被害となります。

See also: アマゾン倉庫火災が突きつける“自動化の死角”について|物流業界への影響を徹底解説[企業はどう動く?]

「Landport東海大府I」では、危険物倉庫を本棟から独立した別棟として敷地内に配置することで、万が一の事故の際も本棟への類焼リスクを最小限に抑えつつ、一体運用に近い効率性を確保する設計となっています。

LogiShiftの視点:今後どうなるか、企業はどう動くべきか

ここからは、本ニュースを踏まえた独自の考察と、物流プレイヤーが取るべき戦略を提言します。

「危険物倉庫のサテライト化」が進む

これまでの危険物倉庫は「保管」が主目的でしたが、今後は「スルー型(通過型)」の機能が求められます。「Landport東海大府I」の成功は、同様の「IC直結・消費地近接型の危険物併設センター」の開発競争を加速させるでしょう。

特に、都心部へのラストワンマイル配送を見据えた場合、首都圏や関西圏のIC周辺でも、同様の施設の争奪戦が始まると予測されます。荷主企業は、今のうちから「危険物を取り扱える拠点の確保」を中期経営計画に盛り込む必要があります。

物流事業者に求められる「複合管理能力」

3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者にとっては、大きなチャンスであると同時に試練でもあります。

一般貨物のWMS(倉庫管理システム)と、危険物特有の在庫管理(指定数量の倍数管理など)をシームレスに連携させるシステムの構築が不可欠です。また、危険物取扱者の資格を持つスタッフの確保・育成も急務となります。単に「場所があります」だけでなく、「コンプライアンスを遵守しながら、一般貨物と同じリードタイムで危険物を出荷できるオペレーション能力」が、選ばれる物流企業の条件となるでしょう。

荷主企業は「在庫分散」から「機能集約」へ

メーカーやEC事業者は、在庫戦略の見直しが必要です。

これまでは「一般品はA倉庫、スプレー缶はB倉庫」と在庫を分散させていた運用を、こうした高機能倉庫に集約することで、横持ち輸送費の削減や管理コストの圧縮が可能になります。特に2025年以降、ドライバー不足や物流コスト高騰が常態化する中で、「拠点の集約による輸送効率化」は最強の防衛策となります。

まとめ:明日から意識すべきこと

野村不動産の「Landport東海大府I」は、危険物倉庫が「特殊な施設」から「物流センターの標準機能」へと進化する転換点を示しています。

最後に、物流担当者が明日から意識すべきポイントを整理します。

  1. 自社の取扱品目の再点検:
    • 一般貨物として扱っている商品の中に、将来的に危険物倉庫での管理が推奨されるもの(リチウムイオン電池内蔵製品など)が含まれていないか確認する。
  2. 拠点戦略のアップデート:
    • 次期物流拠点の選定において、「危険物倉庫の併設」または「敷地内増設の余地」を選定基準に加えることを検討する。
  3. 安全管理と効率化の両立:
    • 危険物を取り扱うリスクを正しく理解し、自動化設備導入の際は火災リスク等の安全対策をセットで考える(参照記事の教訓を活かす)。

「危険物倉庫でも物流の“センター”担う東海大府について」の事例は、物流施設が単なる「箱」から、高度な戦略を実現する「プラットフォーム」へと進化したことを証明しています。このトレンドに乗り遅れないよう、自社の物流網を見直す契機としてください。

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