12月16日、物流業界にとって極めて重要な意味を持つ「2025年度補正予算」が成立しました。今回の補正予算では、次期総合物流施策大綱の策定を見据え、「物流の集中改革推進」に向けた大型予算が確保されています。
2024年問題への対応が一巡しつつある今、国は「持続可能な物流」の構築に向け、資金面での強力なバックアップ体制を鮮明にしました。特に注目すべきは、自動運転トラックの実装支援や港湾DX、そして現場のコスト負担に直結する「高速道路の大口・多頻度割引の延長」です。
本記事では、経営層や現場リーダーが押さえておくべき予算のポイントと、それが業界構造に与えるインパクトについて解説します。
物流集中改革推進に向けた予算の全体像
今回の補正予算は、単なる経済対策にとどまらず、日本のサプライチェーン強靱化に向けた構造改革への意思表示と言えます。まずは、今回決定した主要な施策と事実関係を整理します。
2025年度補正予算の主要ポイント(5W1H)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| いつ(When) | 2024年12月16日成立(2025年度補正予算)。高速割引は2027年3月末まで延長。 |
| 誰が(Who) | 日本政府(国土交通省等が主導)。 |
| 何を(What) | 「物流の集中改革推進」として、自動運転、モーダルシフト、商慣行是正、港湾DXなどに予算配分。高速道路の大口・多頻度割引(最大50%)を継続。 |
| どこで(Where) | 全国規模の物流網、高速道路ネットワーク、主要港湾、地域の中継拠点など。 |
| なぜ(Why) | 2024年問題以降の人手不足深刻化に対応し、次期総合物流施策大綱に基づく強靭なサプライチェーンを構築するため。 |
| どのように(How) | ハード(自動運転車・AIターミナル)とソフト(法改正・デジタル化)の両面から資金的・制度的に支援。 |
高速道路料金の大口・多頻度割引延長
運送事業者にとって即効性のあるニュースは、高速道路料金の大口・多頻度割引(最大割引率50%)が2027年3月末まで延長されたことでしょう。
燃料費高騰や人件費上昇が続く中、この割引措置の終了は経営の根幹を揺るがすリスクでした。国としても、物流ネットワークの維持にはコスト支援が不可欠であると判断した形です。しかし、これはあくまで「時間的猶予」が与えられたに過ぎません。この期間中にいかに生産性を向上させるかが、企業の存続を左右します。
次期総合物流施策大綱を見据えた投資領域
今回の予算は、単なる延命措置だけでなく、未来への投資が色濃く反映されています。具体的には以下の領域への重点配分が見られます。
- 自動運転トラックの導入支援: 実証実験フェーズから、社会実装を見据えたインフラ整備や車両導入への補助。
- 中継輸送・モーダルシフト: ドライバーの労働時間短縮と輸送網維持を両立するための拠点整備やシステム導入。
- 港湾DX(サイバーポート): 「ヒトを支援するAIターミナル」の推進など、輸出入物流の結節点におけるデジタル化。
各プレイヤーへの具体的な影響と対策
この「物流の集中改革推進」予算は、サプライチェーンに関わる各プレイヤーにどのような変化を促すのでしょうか。
運送事業者:コスト削減とテクノロジー投資の両立
高速道路割引の延長により、当面のキャッシュフローには安堵感が広がりますが、同時に「改正物流関連法に基づく商慣行の見直し」への対応が急務となります。
特に、多重下請け構造の是正や荷待ち時間の削減に向けた管理体制の強化は待ったなしです。従来のアナログな管理から脱却し、デジタルツールを活用した運行管理や労務管理へのシフトが求められます。
また、自動運転技術への関心も高める必要があります。自社ですぐに導入できなくとも、幹線輸送の一部が自動化される未来を見据え、中継拠点の活用などを検討すべきでしょう。
参考記事:From Pilot to Production: 自動運転トラック導入5つのステップとメリットを物流担当者向けに…
荷主(メーカー・小売):商慣行見直しと共同物流
荷主企業に対しては、改正物流二法(物流効率化法・トラック適正化法)の遵守に向けた圧力が一層強まります。予算には商慣行見直しのための調査や支援も含まれており、国は「荷主責任」を厳しく問う姿勢です。
単独での効率化には限界があるため、同業他社や異業種との「共同輸送」や「モーダルシフト」への転換が加速するでしょう。これらはもはやコスト削減手段ではなく、商品を運び続けるためのBCP(事業継続計画)対策となります。
参考記事:ブルボンなど5社/冷蔵コンテナ活用のラウンド輸送開始、持続可能な物流へについて|5社連携の衝撃
参考記事:丸紅I-DIGIO/26年4月の改正物効法施行へ、対策ソリューションを提供開始|現場の負担減を徹底解説
倉庫・港湾事業者:サイバーポート化とAI活用
港湾分野では、「サイバーポート」化とAIターミナルの推進に予算が投じられます。これは、紙や電話で行われていた手続きをデジタル化し、AIによる最適化でコンテナの搬出入時間を短縮しようとする動きです。
倉庫事業者や港湾運送事業者は、こうした国のプラットフォームと連携できるシステム基盤を整える必要があります。海外では既に港湾の無人化が進んでおり、日本の港湾DXも遅れを取り戻すべく加速する見込みです。
参考記事:【海外事例】Trunk Tech香港上場へ|港湾無人化と自動運転トラックの衝撃
LogiShiftの視点:2027年までの「猶予期間」をどう使うか
今回の補正予算成立を受け、LogiShiftでは今後の業界動向を以下のように考察します。
「延命」ではなく「構造転換」への投資期間
高速道路の割引延長は一見すると事業者保護の「延命措置」に見えますが、本質は「構造転換のための時間稼ぎ」と捉えるべきです。
2027年3月末までの約2年間で、自動運転やAI、ロボティクスといった次世代技術を現場に実装できる企業と、旧態依然とした人海戦術に頼り続ける企業との間で、決定的な格差が生まれるでしょう。割引で浮いたコストを内部留保にするのではなく、DXや人材育成、省力化機器へ再投資する経営判断が、3年後の生存率を分けます。
参考記事:ティアフォー、台湾の自動運転スタートアップに出資について|物流現場の無人化が加速
自動運転トラックの実装が「点」から「線」へ
これまでの自動運転トラックの実証実験は、特定の区間や条件下での「点」の取り組みが中心でした。しかし、次期大綱を見据えた今回の予算措置により、新東名高速道路の自動運転レーン活用など、「線」としての社会実装が現実味を帯びてきます。
特に、人手不足が深刻な長距離幹線輸送において、有人運転と無人運転(または隊列走行)を組み合わせたハイブリッドな輸送モデルが標準化していく可能性があります。運送会社は、自社がこの新しいエコシステムの中でどの役割(ラストワンマイル、支線輸送、拠点管理など)を担うのか、戦略を再定義する必要があります。
データ連携なき物流は淘汰される
港湾のサイバーポート化や改正法対応ツールの普及は、物流データの標準化と共有を前提としています。「紙の伝票でないと仕事が回らない」という現場は、デジタル化されたサプライチェーンから疎外されるリスクが高まります。
今後は、荷主、運送会社、倉庫、港湾がデータをリアルタイムに共有し、全体最適を図るプラットフォームへの参加が、取引条件の一つになる時代が到来します。
まとめ:明日から意識すべきアクション
2025年度補正予算は、物流業界に対し「守り(割引延長)」と「攻め(先端技術投資)」の両面提示を行いました。
明日から意識すべきこと:
- 投資計画の見直し: 高速割引延長によるコストメリットを試算し、その分をDXや省力化投資へ振り向ける計画を立てる。
- 情報収集の強化: 次期総合物流施策大綱の動向や、自動運転・モーダルシフトに関する補助金情報を常にウォッチする。
- パートナーシップの再構築: 荷主や協力会社と、改正法対応や共同物流の可能性について協議を始める。
国の支援策を最大限に活用し、2024年問題の「その先」にある持続可能な物流体制を構築していきましょう。


