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Home > 事例・インタビュー> 塚腰運送の働き方改革|離職率0%へ導いた「快適な運行環境」とDX戦略
事例・インタビュー 2026年1月26日

塚腰運送の働き方改革|離職率0%へ導いた「快適な運行環境」とDX戦略

塚腰運送 働き方改革への取り組み、快適な運行環境を整備

離職率0%の衝撃|塚腰運送が厚労省サイトに掲載された理由

物流業界において「人手不足」と「高齢化」は、もはや聞き飽きたほどの共通課題です。しかし、京都市に拠点を置く塚腰運送株式会社が達成した成果は、業界に静かな、しかし強烈な衝撃を与えています。

厚生労働省が開設した過労死等防止啓発特設サイト「しごとより、いのち。」に同社の取り組みが掲載され、その数字が明らかになりました。直近2年間の離職率0%、年間労働時間の13%削減、そして有責事故の激減。これらは単なる精神論や小手先の改善ではなく、社屋の全面改装やDX(デジタルトランスフォーメーション)、そして荷主とのハードな交渉を経た「構造改革」の結果です。

なぜ地方の中小運送会社が、これほど劇的なV字回復とホワイト化を実現できたのか。本記事では、塚腰運送の事例を深掘りし、経営層や現場リーダーが今すぐ取り組むべき「生存戦略」を読み解きます。

【事実整理】過労死ゼロ特設サイト掲載の背景と実績

まずは、今回注目を集めている塚腰運送の取り組みと、その実績を整理します。かつて同社は、ドライバーの高齢化と人手不足、それに伴う事故の多発という「負のスパイラル」に陥っていました。そこから脱却するために断行された改革は、ハード・ソフト両面からのアプローチでした。

項目 詳細内容
企業名 塚腰運送株式会社(京都市)
掲載媒体 厚労省 過労死等防止啓発サイト「しごとより、いのち。」
主な成果(労働環境) 直近2年間(一昨年・昨年)の離職率0%達成。令和6年の年間労働時間を令和4年比で13%削減。有給休暇消化率74%へ向上。
主な成果(安全性) 有責事故件数が平成30年の29件から、一昨年は4件へと激減。
改革の柱1(ハード整備) 社屋の全面改装による快適な休憩・執務スペースの確保。全車両への衝突被害軽減ブレーキなどフル安全装備の導入。
改革の柱2(DX推進) 平成27年にIT点呼制度を導入し、運行管理者の負担軽減と精度向上を実現。平成29年に動態管理システムを刷新し、リアルタイムな状況把握を可能に。
改革の柱3(取引適正化) 荷主に対する待機料請求の徹底、運賃交渉による収益構造の改善。

悪循環からの脱却プロセス

同社が直面していたのは、多くの運送会社が今まさに悩んでいる課題そのものでした。

  • かつての状況:
    • ドライバーの高齢化が進み、若手が入ってこない。
    • 人手不足により一人当たりの負担が増加し、事故が多発(H30年には有責事故29件)。
    • 事故処理コストと保険料がかさみ、労働環境改善への投資ができないジレンマ。

この状況を打破するため、経営陣は「安全と健康」を最優先事項に掲げ、投資の優先順位を劇的に変えました。

  1. 快適な運行環境の整備(ハードウェア):
    トラックに最新の安全装置をフル装備するだけでなく、社屋を改装して「働きたくなる場所」へと変貌させました。これは従業員へのメッセージであると同時に、採用時の強力な武器となります。

  2. IT・DXによる管理の効率化:
    IT点呼や動態管理システムの刷新は、管理者の長時間労働是正にも直結します。運行管理者が疲弊していては、ドライバーの安全を守ることはできません。

  3. 適正運賃・待機料の収受:
    これが最も難易度の高い改革かもしれませんが、同社はこれを断行しました。待機時間の削減や料金請求を行うことで、長時間労働の温床を断ち切っています。

併せて読む: TDBC対談|「値上げ交渉なしは廃業」トラック経営者が語る生存戦略

業界全体への波及効果|「選ばれる運送会社」の基準が変わる

塚腰運送の事例は、一企業の成功談にとどまらず、物流業界全体の構造変化を示唆しています。このニュースが各プレイヤーに与える影響を具体的に見ていきましょう。

運送事業者への影響|採用力における「格差」の拡大

これまでの運送業界では、「給与が高いか」「休みがあるか」が求職者の主な判断基準でした。しかし、今後は「運行環境が快適で、安全が保障されているか」が、極めて重要な採用基準になります。

  • 安全装備の標準化:
    フル安全装備の車両を用意できない会社は、ドライバーだけでなくその家族からも選ばれなくなります。「事故を起こさない仕組み」がある会社に人材は流れます。
  • 社屋・設備の重要性:
    「トラックさえ走ればいい」という考え方は通用しなくなります。休憩室や仮眠室の質、IT点呼によるスムーズな業務フローなど、従業員体験(EX)の質が問われます。

荷主・メーカーへの影響|「待機料請求」が当たり前の時代へ

塚腰運送が成果を出した要因の一つに「荷主への交渉」があります。これは、荷主企業にとっても無視できないトレンドです。

  • コスト負担の受容:
    「働き方改革に取り組んでいる運送会社」を使わなければ、荷主自身のリスク(コンプライアンス違反や輸送品質低下)が高まります。適正運賃や待機料の支払いは、安定輸送を確保するための「必要経費」として認識せざるを得ません。
  • 選別される荷主:
    離職率の低い優良な運送会社は、条件の悪い荷主を選びません。荷主側も、バース予約システムの導入やパレット化など、待機時間削減に向けた協力を惜しむべきではない段階に来ています。

LogiShiftの視点|「ホワイト化」が最強の生存戦略になる未来

ここからは、塚腰運送の事例を踏まえ、今後の物流業界がどう動くべきか、LogiShift独自の視点で考察します。

投資対効果の再定義|安全装備はコストではなく「採用広報費」

多くの経営者が、車両の安全装備や社屋改装を「コスト」と捉えがちです。しかし、塚腰運送の「離職率0%」という数字は、これらが最も効率の良い「採用・定着コスト」であることを証明しました。

求人広告に数百万円をかけても、労働環境が悪ければ人はすぐに辞めます。一方で、快適な環境と最新の車両を用意すれば、今いるドライバーは辞めず、口コミで良い人材が集まります。

  • 事故コストの削減: 有責事故が29件から4件に減れば、車両修理費、貨物賠償、保険料の増額分だけで、相当な投資回収が可能です。
  • 採用コストの削減: 離職がなければ、新規採用コストや教育コストは最小限で済みます。

これからの経営判断においては、PL(損益計算書)上の直接的な経費削減だけでなく、こうした「見えないコストの削減」と「ブランド価値向上」をセットで考える必要があります。

中小企業が目指すべきDXの現実解

塚腰運送はIT点呼や動態管理システムを導入しましたが、「うちは予算がないから無理だ」と諦める必要はありません。近年、既存の資産を活かしながら安価に導入できるDXツールが登場しています。

例えば、既存のデジタコやドラレコを買い替えずにAI化する技術や、工事不要でOBDポートに挿すだけの端末などがその代表例です。

  • スモールスタートの重要性:
    いきなりフルシステムを刷新するのではなく、まずは「点呼」だけ、「動態管理」だけといった部分的なデジタル化から始めることが可能です。重要なのは、「管理者の負担を減らすこと」と「ドライバーを守ること」に直結するツールを選ぶことです。

併せて読む: データ・テック×ティーティス提携|「機器交換なし」でドラレコAI化する衝撃
併せて読む: 都築電気が「挿すだけ」OBDデジタコ発売|工事不要で叶う即戦力DXとは

「快適な運行環境」の本質は「尊厳」の回復

最後に、このニュースが示唆する最も重要な点は、ドライバーという職業の「尊厳(Dignity)」の回復です。

きれいで安全なトラック、清潔な社屋、そして無理のない運行スケジュール。これらはすべて、会社がドライバーを「使い捨ての労働力」ではなく、「大切なプロフェッショナル」として扱っているというメッセージです。この信頼関係こそが、離職率0%の正体ではないでしょうか。

まとめ|明日から意識すべき経営の「覚悟」

塚腰運送の事例は、物流2024年問題に対する一つの明確な解を示しています。それは、「人への投資を惜しまない企業だけが生き残る」という事実です。

明日から意識すべきことは以下の3点です。

  1. 安全投資をケチらない: 最新の安全装備は、事故防止だけでなく、最強の採用ツールになると心得る。
  2. DXで管理者を守る: ドライバーだけでなく、運行管理者の業務負荷を下げるためのITツール導入を検討する。
  3. 荷主と戦う勇気を持つ: 従業員の健康と安全を守るため、不当な待機時間や運賃に対しては、データ(労働時間の実績など)を持って交渉する。

「しごとより、いのち。」という厚労省のキャッチフレーズは、そのまま企業の持続可能性(サステナビリティ)に直結します。塚腰運送の成功は奇跡ではなく、正しい戦略と覚悟が生んだ必然の結果なのです。

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