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Home > ニュース・海外> トワード、タイから3人の外国人ドライバーを採用|特定技能による定着率重視の戦略とは
ニュース・海外 2026年3月30日

トワード、タイから3人の外国人ドライバーを採用|特定技能による定着率重視の戦略とは

トワード タイから3人の外国人ドライバーを採用

物流業界において、慢性的な人手不足という大きな壁に直面する中、2024年12月に「特定技能」の対象分野として自動車運送業が追加されたことは記憶に新しいでしょう。この制度改正を契機に、各企業は外国人材の確保に向けて本格的に動き出しています。

その中で、佐賀県神埼市に拠点を置く物流企業「トワード」が、タイ王国から3名の外国人ドライバーを採用したというニュースが業界の注目を集めています。この取り組みは、単に不足する労働力を補うだけの一過性の対策ではありません。官民連携の枠組みを活用し、「文化的な親和性」と「定着率」を最重要視した戦略的な採用モデルとして、地方物流の維持に向けた一つの最適解を提示しています。

本記事では、このトワードによるタイ人ドライバー採用の背景や詳細なロードマップを紐解きながら、今後の物流業界、特に地方運送企業や荷主企業にどのような影響を与えるのかを深く考察します。

トワードによるタイ人ドライバー採用の全貌

ニュースの概要と事実関係の整理

まずは、今回のトワードによる外国人ドライバー採用に関する事実関係を整理します。単なる企業独自の採用活動にとどまらず、地域社会全体を巻き込んだプロジェクトであることがわかります。

項目 詳細内容 背景・戦略的意図 今後のロードマップ
採用の概要 タイ国籍のドライバー3名を採用(特定技能制度を活用) 深刻化する2024年問題に対する地方物流の維持・確保 佐賀・福岡エリアにおける食料品の工場間・店舗配送への従事
活用スキーム 佐賀型ドライバー人材受入チャレンジ事業(官民連携プロジェクト) 単なる労働力補填ではなく地域社会への定着モデルの構築 地方自治体と連携した継続的な生活支援と育成の実施
国籍選定の理由 日本と同じ「左側通行・右ハンドル」であり宗教や生活習慣の親和性が高い スムーズな運転技能の習得と日本社会・地域コミュニティへの早期融和 即戦力に近いポテンシャルを活かした早期戦力化
資格取得目標 座学や実地研修を経て6か月以内に日本の外免切替と中型免許を取得 外国免許からのスムーズな移行と国内の安全基準を満たした運行体制の確立 免許取得後の実務研修および単独乗務へのステップアップ

なぜ「タイ」なのか?定着を見据えた戦略的国籍選定

現在、日本国内で就労する外国人材の多くはベトナムやインドネシア出身者が占めていますが、トワードがタイを選定したのには明確な理由があります。最大の要因はハード面の共通点です。タイは日本と同様に「左側通行・右ハンドル」の交通ルールを採用しており、ドライバーにとって最も重要かつ感覚的なハードルである「車両感覚」や「交差点での視線移動」をスムーズに適応させることが可能です。

さらに、宗教観や精神面での親和性の高さも重要な要素です。国民の多くが仏教徒であるタイは、和を重んじる気質や他者への配慮という点で日本の地域社会や企業文化と馴染みやすいとされています。地方都市における物流業務では、配送先での荷主や地域住民とのコミュニケーションが不可避であり、こうした文化的な親和性は中長期的な定着率を大きく左右します。

外免切替から単独乗務までのロードマップ

採用された3名は、日本語通訳の経験者やタイ本国での大型トラック運転経験者など、非常に高いポテンシャルを秘めた人材です。しかし、日本の公道でトラックを運転するためには、日本の運転免許の取得が必須となります。

トワードは入社後、座学や実地研修を徹底し、6か月以内に「外免切替(外国免許からの切り替え)」と「中型免許の取得」を目指す明確なロードマップを設定しています。免許取得後は、佐賀と福岡を結ぶエリアにおいて、食料品の工場間配送や店舗配送に従事する計画です。食品配送は時間指定が厳しく、温度管理などの特殊なノウハウも求められますが、段階的な研修と資格取得のサポートを通じて、安全かつ確実な配送網の維持を図る構えです。

外国人ドライバー受け入れがもたらす物流業界への影響

運送企業における新たな国籍選定基準の確立

特定技能によるドライバー採用が解禁されて以降、多くの運送企業が手探りで採用活動を進めています。今回のトワードの事例は、「どの国から採用するか」という問いに対して、単なる送り出し機関の規模やコストだけでなく、交通ルールの共通性や文化的な親和性といった「現場への適応力」を基準にするという新たな視点を提供しました。

右側通行の国出身者を採用した場合、運転感覚の矯正に多大な時間とコストがかかり、最悪の場合は重大事故に直結するリスクがあります。タイをはじめとする左側通行国(マレーシア、インドネシア、オーストラリアなど)からの採用は、今後の運送業界において一つのトレンドになる可能性があります。
参考記事: ナカノ商会、特定技能でベトナム人ドライバー採用|人材確保の新たな一手

荷主企業や物流センターに求められる受け入れ態勢の変化

運送企業が多国籍なドライバーを採用するようになると、荷物を引き渡す荷主企業や物流センターの現場にも変化が求められます。これまで「阿吽の呼吸」や日本語の張り紙だけで成立していた業務指示は通用しなくなります。

積込手順書や安全ルールの多言語化、スマートフォンの翻訳アプリを活用したコミュニケーション、あるいは言葉の壁を越えて直感的に理解できるピクトグラムの導入など、受け入れ側である荷主の協力が不可欠です。外国人ドライバーが迷わず、安全に作業できる環境を整えることは、結果的にトラックの待機時間削減や物流品質の向上にも直結します。
参考記事: 西濃運輸が特定技能ドライバーの路線単独乗務を開始|成功を導く多国籍育成システム

地方自治体主導による官民連携プロジェクトの波及効果

今回の採用が「佐賀型ドライバー人材受入チャレンジ事業」という官民連携プロジェクトの一環である点も見逃せません。地方における物流の崩壊は、そのまま地域住民の生活インフラ(スーパーやコンビニへの商品供給など)の崩壊を意味します。

一企業だけの自助努力で外国人材の採用・育成・定着を図るには、資金面でもノウハウ面でも限界があります。地方自治体が旗振り役となり、受け入れスキームの構築や生活支援をバックアップするこのモデルは、同様に人手不足に悩む全国の自治体にとって強力な成功事例となるでしょう。今後、各都道府県で独自の「〇〇型ドライバー受け入れ事業」が立ち上がる起爆剤となることが予想されます。

LogiShiftの視点:定着率を左右する「生活インフラ」と「キャリア支援」

単なる労働力補填からの脱却と地域社会への融和

トワードのタイ人ドライバー採用に関するニュースから読み取るべき本質は、「労働力を輸入した」のではなく、「地域を支える新しい仲間を迎え入れた」という姿勢です。特定技能制度は最長5年の在留が可能ですが、彼らがその期間を全うし、さらにその先のキャリアを描けるかどうかは、仕事以外の時間、すなわち地域社会での生活満足度に大きく依存します。

言葉の壁による孤独感や、生活習慣の違いから生じる地域住民との摩擦を防ぐためには、企業側が積極的に地域のコミュニティ(町内会や自治体イベントなど)との橋渡しを行う必要があります。

住環境や生活サポートがもたらす離職防止効果

外国人ドライバーが安心して業務に集中するためには、安定した「住環境」の提供が不可欠です。特に地方都市においては、公共交通機関が乏しいため、職場への通勤手段の確保(自転車の貸与や送迎)や、スーパーや病院などへのアクセスの良さが生活の質を決定づけます。

また、賃貸契約の連帯保証人問題など、外国人であるがゆえのハードルを企業がどのようにクリアするかも重要です。自社で社宅を借り上げる、あるいは不動産を取得して専用の寮を整備するなど、生活インフラに対する投資は、採用コストを無駄にしないための「最強の離職防止策」と言えます。
参考記事: ダイセーセントレックス不動産買収|外国人ドライバー採用を制する「住居インフラ」戦略

外免切替の壁と長期的な育成スキームの構築

ロードマップに掲げられた「6か月以内の外免切替と中型免許の取得」は、決して容易な目標ではありません。外免切替には、知識確認(学科試験に相当)と技能確認(実技試験)がありますが、特に日本の実技試験は交通ルールの厳格な遵守が求められ、合格率は決して高くありません。

企業は、教習所と連携した特別カリキュラムの編成や、多言語での学科試験対策サポートなど、手厚い伴走支援が求められます。また、日本の雪道や山間部特有の道路事情に対する教育など、母国にはない環境への適応訓練も必須です。採用前の段階からこれらの育成スキームを構築しておくことが、早期戦力化の鍵を握ります。
参考記事: サカイ引越の「入国前育成」に学ぶ。外国人ドライバー確保を制するグローバル人材戦略

まとめ:明日から物流現場が取り組むべき外国人材戦略

佐賀県のトワードによるタイ人ドライバーの採用は、2024年問題以降の物流業界に新たな希望と道筋を示す重要なマイルストーンです。交通ルールの共通性や文化的な親和性を軸とした採用戦略、官民連携によるバックアップ、そして免許取得に向けた明確なロードマップは、他社にとっても大いに参考になるはずです。

明日から意識すべきアクションとして、以下の点が挙げられます。

  • 採用ターゲットの見直し
    自社の業務特性(車両サイズ、配送エリア、接客の有無)を分析し、それに最も適した文化的・制度的背景を持つ国籍を選定する。
  • 受け入れインフラの再点検
    マニュアルの多言語化やピクトグラムの導入だけでなく、住居手配や生活サポート体制が整っているか、社内リソースを確認する。
  • 自治体や外部機関との連携模索
    自社単独での抱え込みを避け、地域の支援制度や官民連携プロジェクトへの参画を積極的に検討する。

外国人ドライバーの存在は、これからの日本物流を支える不可欠なピースとなります。彼らが「日本で、そしてこの地域で働き続けたい」と思えるような環境づくりこそが、次世代の物流企業の競争力に直結していくのです。
参考記事: 外国人ドライバー100人の現実と物流の5年後|人手不足解決への導入戦略

出典: 物流ウィークリー

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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