パレットとは?2024年問題を解決する選び方と実務の基礎知識とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:パレットとは、荷物をまとめて載せ、フォークリフトなどで効率よく運搬・保管するための荷役台のことです。物流現場では単なる板ではなく、サプライチェーン全体の生産性を左右する重要なインフラとして機能します。
  • 実務への関わり:パレットを活用することで、手作業によるバラ積みを防ぎ、ドライバーの荷待ち時間や身体的負担を大幅に削減できます。また、倉庫のレイアウトやマテハン機器と組み合わせることで、保管・入出荷のスピードが劇的に向上します。
  • トレンド/将来予測:物流2024年問題への対応として、出荷から納品まで荷物をパレットに載せたままにする「一貫パレチゼーション」が急務となっています。今後は標準化が進み、RFIDタグなどを用いたトラッキングや自動倉庫連携といった物流DXの基盤となるでしょう。

物流業界において、最も基礎的でありながら最も深い戦略性を求められるマテリアルハンドリング機器、それが「物流パレット」です。一見すると単なる「荷物を載せる板」に過ぎませんが、その選定や運用方法一つが、サプライチェーン全体の生産性、ひいては企業の利益率を劇的に左右します。特に「物流2024年問題」が本格化し、ドライバーの労働時間規制が厳格化された現在、手荷役からの脱却と一貫パレチゼーションの実現は、あらゆる荷主企業・物流企業にとって待ったなしの経営課題となっています。本記事では、パレットの基本定義から最適なサイズ・材質の選び方、自社保有とレンタルの財務的最適解、DX推進時の組織的課題、そして現場の積載効率を最大化する実務テクニックに至るまで、日本一詳しく徹底解説します。

目次

物流パレットとは?基本定義と「2024年問題」解決の切り札となる理由

物流パレットの定義とサプライチェーンにおける役割

物流パレットとは、物品を荷役・輸送・保管するために単位数量にまとめて載せる面と、フォークリフトやハンドリフトの爪を差し込むための差込口を備えた荷役台を指します。日本国内においては1,100mm×1,100mmサイズのT11型(JIS Z 0601)が標準規格として広く普及していますが、現場の実務においてパレットは単なる「荷物を置く板」ではありません。サプライチェーン全体の血流を制御し、企業の物流コストやリードタイムを根本から左右する重要なインフラです。

実際の物流現場では、パレットの仕様が倉庫のレイアウトやフォークリフトの動線に直結します。例えば、高さを活かした保管を行うためのネステナー(スチール製の保管ラック)に格納する際、パレットが二方差し・四方差しのどちらであるかが作業効率を劇的に左右します。通路幅が限られた倉庫では、四方差しパレットを採用することで多方向からのアプローチが可能となり、フォークリフトの旋回によるタイムロスを削減できます。

ここで実務上、多くの企業が直面する組織的課題があります。それは「営業部門と物流部門の利害対立」です。物流部門が現場の効率化のためにパレット化を推進しようとしても、営業部門が「トラックへの積載量を最大化して1個あたりの運送費を極限まで下げること」を優先し、顧客に対してバラ積み輸送を約束してしまうケースが後を絶ちません。パレット化を成功させるためには、これを単なる現場のカイゼン運動ではなく、全社的なサプライチェーン戦略(SCM)としてトップダウンで推進し、KPI(回転率、パレット当たりの積載重量、滞留日数など)を全社で共有することが不可欠です。

手荷役(バラ積み)の撲滅:荷待ち時間削減とドライバーの負担軽減

今、パレットがかつてないほど注目を浴びている最大の理由が物流2024年問題への対応です。時間外労働の上限規制が適用される中、ドライバーの拘束時間を長引かせている元凶が手荷役(バラ積み)と、それに伴う長時間の「荷待ち」です。

手荷役からの脱却は日本の物流網を維持するための絶対条件です。10トントラックに段ボールをバラ積みする場合、積み込みに約2時間、納品先での荷下ろしに約2時間もの重労働がドライバーにのしかかります。これをパレット化することで、フォークリフトを使った作業により15〜20分へと劇的に短縮され、ドライバーの疲労軽減とトラックの「車両回転率(1日あたりの運行回数)」の向上が同時に実現します。

ただし、現場への導入には泥臭い課題が山積しています。最も厄介なのが、納品先でのデパレタイズ(パレットから荷降ろしする作業)に関する「責任分解点の曖昧さ」です。契約上、ドライバーの業務範囲が明確に定義されていないと、結局フォークリフトの空きを待つ間にドライバーが手作業で下ろさせられるハメになります。物流のプロフェッショナルは、附帯業務としてのデパレタイズ作業に対する運賃以外の「荷役料金収受」を契約書に明記し、コンプライアンスを徹底させています。

一貫パレチゼーションがもたらす入出荷スピードの劇的向上

本記事において一貫パレチゼーションとは、「製造元(発地)から小売・消費者(着地)に至るまで、荷物をパレットに載せたまま一度も積み替えを行わずに輸送・保管を完結させる仕組み」と定義します。これはサプライチェーン最適化の究極の形です。

一貫パレチゼーションの導入は、入出荷スピードを劇的に向上させます。トラックが到着した瞬間にフォークリフトで引き込み、そのまま自動倉庫やネステナーへ格納できるため、入荷検品からロケーション登録までのリードタイムが半減します。しかし、現場が最も頭を抱えるのが以下の3点です。

  • トラック積載効率の低下: バラ積みなら隙間なく詰め込める荷物も、パレットの厚みやデッドスペースにより積載効率が10〜20%低下します。低下した積載率を「荷役時間短縮による運行回数の増加」でいかにカバーするかの配車手腕が問われます。
  • 空パレットの回収・循環コスト: 着地に溜まった空パレットを誰が、どのタイミングで、誰の費用負担で回収するのか。業界ごとの共同回収システム(JPRなど)に相乗りする判断が利益率を左右します。
  • 荷姿の標準化(モジュール化): パレットの寸法に合わせて外装段ボールの底面サイズを再設計しなければ、はみ出し(オーバーハング)が発生し、荷崩れや保管効率の悪化を招きます。
比較項目 手荷役(バラ積み) 一貫パレチゼーション
荷役時間(10t車) 約2〜3時間(重労働による疲労・離職リスク大) 約15〜20分(フォークリフト作業のみ)
積載効率 極めて高い(天井すれすれまで積載可能) やや低下(パレットの厚みや隙間が生じる)
荷物へのダメージ 人の手による落下リスク、下段の圧潰リスクあり ストレッチフィルム等で面固定されるため極めて低い
現場運用上のネック ドライバーの確保難、長時間の荷待ち・バース占有 空パレットの回収スキーム構築、初期モジュール統一の苦労

物流パレットの選び方(1):標準サイズと材質による耐荷重・耐久性の違い

日本の標準「T11型」とJIS規格(JIS Z 0601)の圧倒的シェア

前セクションで解説した一貫パレチゼーションを実現するうえで、現場が最初に直面するハードルが「サイズと材質」の選定です。日本の物流現場において、T11型(1,100mm×1,100mm)は圧倒的なシェアを誇ります。その最大の理由は、日本の標準的な大型トラックの荷台内幅(約2,350mm)に対し、T11型であれば2枚(2,200mm)を横に並べて隙間なく積載できるからです。

昨今導入が進む自動倉庫(AS/RS)やロボットによるデパレタイズ設備も、原則としてT11型を前提にティーチング(動作設定)されています。現場に規格外のサイズ(T12型など)がわずか数パーセント混入するだけで、センサーが誤検知を起こし、ライン全体が緊急停止する致命傷を招きます。そのため、標準サイズからの逸脱は現代の自動化物流において許容されないリスクとなっています。

材質別比較:木製、プラスチック製、金属製、紙製

サイズが決まった後、次に頭を悩ませるのが材質選びです。各材質の特性だけでなく、「LCC(ライフサイクルコスト)」や近年重視される「ESG対応(環境配慮)」の視点を含めて評価する必要があります。

材質 耐荷重・耐久性 実務上のメリット・デメリットとESG視点
木製 耐荷重: 中〜高
耐久性: 中
安価で補修が容易ですが、経年劣化による木くずや釘の飛び出しが発生します。食品・医薬品業界では異物混入リスクから敬遠されます。また、雨天時に水分を含むと自重が数キロ変動し、トラックスケールでの重量計量に深刻な誤差が生じる落とし穴があります。
プラスチック製 耐荷重: 高
耐久性: 高
高圧洗浄が可能で衛生的。RFIDタグの埋め込みが容易です。初期費用は高いですが、耐用年数が長くLCCに優れます。近年ではScope3(サプライチェーン排出量)削減の観点から、100%再生プラスチックを使用した環境配慮型パレットへの移行が加速しています。
金属製(スチール等) 耐荷重: 極高
耐久性: 極高
建材や機械部品などの超重量物向け。ネステナーでの多段積み時でもたわみません。ただし自重が重く、フォークリフトの金属製の爪と接触した際に滑りやすいため、急ブレーキ時の荷崩れや労災リスクに厳重な注意が必要です。
紙製(段ボール) 耐荷重: 低〜中
耐久性: 低
非常に軽量でワンウェイ(使い捨て)輸送に最適。リサイクル可能ですが水濡れに極端に弱く、湿度の高い日本の倉庫環境での長期保管には不向きです。結露対策(除湿剤の併用など)が必須となります。

輸出入における注意点:木製パレットの燻蒸規制と代替素材

グローバルサプライチェーンにおいて、パレット選びのミスは「税関での通関ストップ」という最悪の事態を招きます。輸出入実務において最も神経を尖らせるのが、木製パレットに対する熱処理・燻蒸規制(ISPM15基準)です。

未処理の木製パレットを使用すると、マツノザイセンチュウなどの病害虫が国境を越えて生態系を破壊する恐れがあるため、輸出前に熱処理または臭化メチル燻蒸処理を行い、処理済みを証明するIPPCマークを押印しなければなりません。「国内輸送用の未処理パレットでうっかりバンニング(コンテナ詰め)し、仕向地の税関でシップバック(積み戻し)を命じられ数百万の損害が出た」というトラブルは、現場で頻発しています。

こうした手続き漏れを完全に回避するため、輸出用には燻蒸規制の対象外となる代替素材を使用するのが定石です。重量物には「合板パレット(接着剤で加工された木材は規制対象外と見なされる)」、軽量物には「強化段ボール製パレット」や安価な輸出用ワンウェイプラパレを採用するなど、積載重量や仕向地の環境に応じて素材を戦略的に使い分ける高度な判断が求められます。

物流パレットの選び方(2):形状・構造とマテハン機器との連携

形状の種類:平パレット(スキッド)からロールボックスパレットまで

物流業界において、パレットのサイズや材質以上に現場の生産性を直接的に左右するのが「形状・構造」とマテハン機器(マテリアルハンドリング機器)との適合性です。

下部の板(デッキボード)を持たない「スキッド」は、ハンドリフトの爪を差し込みやすく、狭い現場での取り回しに優れています。しかし、スキッドを段積みする際、上段の脚が下段の荷物に直接荷重をかけるため、段ボールの天面が陥没する商品事故が頻発します。また、昨今導入が進むAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)は、パレットの下に潜り込んで持ち上げる機構を持つものが多いため、ロボットの全高とパレット底面の空間高さをミリ単位で適合させる事前検証が必須となります。

一方で、店舗配送などのラストワンマイルで主役となるのがロールボックスパレット(カゴ車)です。入荷した平パレット上の荷物を自動機でデパレタイズし、そのままカゴ車へ積み替えるラインを構築できれば後工程が劇的に効率化します。ただし、カゴ車運用で現場が最も泣かされるのが「滞留・紛失」です。これを防ぐため、カゴ車本体にIoTタグを装着するだけでなく、色付きの結束バンド等で「配送先エリア」を視覚的に識別できるアナログなバックアップ体制を併用することが、システム障害時にも出荷を止めない現場の鉄則です。

現場のフォークリフト運用に直結する「二方差し」「四方差し」の選定

パレットの構造設計において、フォークリフトの爪を挿入できる方向(二方差し・四方差し)の違いは、庫内レイアウトと作業動線に決定的な差を生み出します。

差込方向 構造の特徴と現場のメリット 運用上の致命的なリスク・デメリット
二方差し 桁(けた)が貫通しており、圧倒的な曲げ強度を誇る。重量物や長期間の段積みに耐え、たわみによる落下事故が起きにくい。 特定方向からしか爪を入れられないため、トラックバース等でパレットの向きを直す「手回し」作業が頻発し、タイムロスとなる。
四方差し ブロック(駒)で支えられており、前後左右どの向きからでもアクセス可能。狭小スペースやトラック奥の荷役で絶大な威力を発揮。 フォークリフトの爪を斜めに進入させ、ブロックを破壊する(通称:足モゲ)事故が多発し、修繕コストが跳ね上がる。

現場では「取り回しの良さ」を優先して四方差しを一斉導入したものの、オペレーターの運転技術が追いつかず、わずか半年でパレットの2割が破損してしまったという失敗談は枚挙にいとまがありません。導入時は、フォークリフトの爪の長さを適切なものに交換する、あるいは爪の差し込み限界位置に目印のマーキングを施すといった「安全と品質を守るための運用ルールの徹底」がセットで求められます。

ネステナーやラックシステムとの組み合わせによる保管効率の最大化

パレットは単体で床に置く(平置き)だけでは、倉庫の「高さ」という空間資産をドブに捨てることになります。そこで必須となるのが、ネステナーや重量ラックシステムとの連携です。特に、直積みが不可能な不定形貨物や、ロットが細かく多品種を保管する現場では、パレットごと格納できるネステナーが絶大な威力を発揮します。

最下段の空間に直接パレットを置ける「逆ネステナー」を利用すれば、下段のピッキング作業をフォークリフトの到着を待たずにハンドリフトだけで完結させることができ、ピッカーの待機時間と動線ロスが劇的に減少します。ただし、重量ラックにパレットを載せる際、桁の弱い安価な片面平パレットを選ぶと、中央部がたわんでパレットごと落下する大事故に繋がります。ラック保管を前提とする場合は、底面にサポートバーが入った両面使用型、あるいは内部に金属補強材が組み込まれた高剛性な構造を選択するのがセオリーです。

運用フェーズの最大の壁:「自社保有」か「レンタル」かの最適解

自社パレット管理の落とし穴:紛失・未返却リスクと修繕コスト

物流2024年問題への対応として一貫パレチゼーションを推進する際、ハードウェアの選定以上に財務・企画部門を悩ませるのが、「パレットを自社資産として保有するべきか、レンタルに頼るべきか」という問題です。

数千枚規模の自社パレットを導入した企業の多くが、導入後1〜2年で「帳簿上はあるはずのパレットが現場にない」というミステリーに直面します。業界平均で年間5〜10%のパレットが紛失・流出していると言われています。納品先のセンターで「後日まとめて返す」と持ち越しにされ、そのまま他社ネットワークへ流出するケースは日常茶飯事です。さらに、フォークリフトの爪による破損に対する修繕・廃棄に関わる「隠れたコスト」も重くのしかかります。結果として、資産管理(B/S)の圧迫と、月末棚卸しでパレット探しに専任担当者を割くという本末転倒な事態に陥るリスクを孕んでいます。

レンタルパレット移行による初期投資抑制と管理業務の外部化

こうした自社保有の落とし穴を回避するため、JPRなどが提供する共同回収スキームを利用したレンタルパレットへの移行が急加速しています。最大の財務的恩恵は、莫大な初期投資を抑え、固定資産から利用実績に応じた変動費(P/L)へと転換できる点にあります。

現場の実務面でも、納品先からの回収業務やメンテナンスといった非生産的な管理業務を丸ごと外部化できるメリットは絶大です。また、年末年始や突発的な特需で出荷量が急増する繁忙期において、自社保有ではパレットがショートし、やむを得ず手荷役に逆戻りする悲劇が起こり得ますが、レンタルならスポット増車で柔軟に防ぐことができます。広域回収網を利用することこそが、一貫パレチゼーション維持の生命線となります。

パレット単位のロケーション管理と自社・レンタルのハイブリッド運用

しかし、「すべてレンタル化すれば万事解決」という単純な話ではありません。サプライチェーンの規模と特性に応じた「自社保有×レンタル」のハイブリッド運用が最適解となります。自社倉庫内の自動倉庫で長期間保管される備蓄在庫や、自社の工場・物流センター間のみを循環する「閉鎖された拠点間ループ」では、LCCに優れる自社保有が適しています。一方、外部取引先へ出荷され流出リスクが高い領域にはレンタルを充てます。

この高度なハイブリッド運用を支えるのが、RFID/IoTタグを活用したパレット単位のロケーション管理です。しかし、実務者が最も警戒すべきは「システムがダウンした時のBCP(事業継続計画)」です。パレット管理システムが通信障害で止まっても、目前のトラックへの積み込みは止められません。システム停止時に出荷作業全体を止めないよう、ゲート通過時のエッジ端末へのオフライン記録や、アナログな紙の「パレット出庫台帳」への切り替え手順をマニュアル化しておくことが、現場を混乱させないプロの鉄則です。

現場の効率を最大化する実務テクニック:積載効率の維持と荷崩れ防止

パレット輸送のジレンマ「積載効率の低下」をどう補うか?

サプライチェーン全体でパレット化を推進する際、現場の配車担当が最初に直面する壁が「トラックの積載効率低下」という強烈なジレンマです。手荷役(バラ積み)であれば荷台の天井スレスレまで詰め込めましたが、パレット化すると上部や側面に巨大なデッドスペースが発生します。例えば、T11型(1,100mm)を荷台幅約2,350mmの大型トラックに2列で積むと、中央や側面に約150mmの隙間が生じ、カーブの遠心力による荷崩れリスクが高まります。

この課題を乗り越えるため、実務現場では以下のようなテクニックが駆使されています。

  • ピンホイール積み(風車積み): 四方差しパレットの特性を活かし、荷台寸法に合わせて縦横の向きを互い違いに組み合わせることで、隙間を最小限に抑え込みます。
  • ネステナーを用いた空間の二層化: 上部のデッドスペース対策として、トラック庫内でポータブルラック(ネステナー)を噛ませ、擬似的に荷台を二段に分けることで、積載率をバラ積み時代の80〜85%水準まで引き上げます。

ストレッチフィルムや専用バンドを用いた確実な荷崩れ防止策

積載効率を追求しつつ、輸送中の振動から貨物を守るためには、ストレッチフィルムや専用バンドによる「面での固定」が不可欠です。しかし、ただグルグル巻きにするだけの過剰梱包は、資材コストの無駄と納品先でのデパレタイズ時の負担(大量の廃プラゴミ処理など)を爆発的に増大させます。正しいフィルムの巻き方の鉄則は、「パレットの台座部分と最下段の段ボールを一体化させるように強いテンションをかけて巻くこと」です。

近年は環境配慮とコスト削減の観点から、繰り返し使えるマジックテープ式の専用バンド(エコバンド)の導入も進んでいます。初期投資はかかりますが、約300〜500回の反復使用でペイでき、ゴミが出ないためデパレタイズ作業が劇的に改善します。ただしエコバンドの場合、荷物の一部が隠れてしまうため、WMS(倉庫管理システム)停止時の目視確認用として、外側に現品票や出荷伝票を括り付けるアナログな工夫が必要となります。

ドライバー・作業員を守るパレット荷役の安全基準

2024年問題への対応として荷役時間の削減が至上命題となっていますが、「早く積まなければ」という現場の焦りが重大な労働災害を引き起こす要因になっています。パレットとカゴ車を併用するトラックバースでは、必ずカゴ車のキャスターストッパーをロックし、フォークリフトの動線から完全に隔離するレイアウト設計が必須です。

また、着荷主側の現場で最も過酷なのがデパレタイズ作業です。パレット化によってトラックからの荷下ろしは数分で終わっても、結局庫内でバラして棚入れする際に作業員の腰に多大な負担がかかります。ここではエルゴノミクス(人間工学)の観点から、パレットの高さを自動調整するスプリング式リフターの導入や、腰の高さを維持して作業できる昇降台車の活用が有効です。「パレット化=すべて解決」ではなく、導入後に発生する新たな実務課題に対して先手で安全基準を設けることが、現場オペレーションを止めない最大の秘訣です。

【LogiShift流】パレット標準化を起点とした物流DX・自動化の実装手順

AI・デパレタイズロボット・自動倉庫導入の絶対条件としてのパレット標準化

物流業界において「DX」や「自動化」という言葉が先行しがちですが、その土台となるのは足元の物理的なマテリアルハンドリングの標準化です。最新のAI搭載デパレタイズロボットを導入したとしても、入荷するパレットの規格がバラバラであれば、AIカメラがパレットの底面高さを誤認し、吸着パッドの衝突エラーや荷崩れによるライン停止を頻発させます。

多くの企業が「PoC(概念実証)」の段階で頓挫するのは、現場のパレット寸法精度という泥臭い変数を甘く見ているからです。自動化の恩恵を最大限に引き出すためには、T11型への完全統一と、使い込まれたパレットの「数ミリの寸法ズレ」や「たわみ」を排除する厳格な品質管理が不可欠です。この物理的なハードルを越えない限り、どれほど高額な自動倉庫(AS/RS)を導入してもコンベヤ上での搬送エラーは無くなりません。

RFID・IoTタグを活用したパレットトラッキングと紛失ゼロの実現

企業間をまたぐパレットの紛失リスクを解決するため、RFIDやIoTタグの導入が急増していますが、机上の空論通りにはいきません。現場実装において最も頭を抱えるのが、「フォークリフトの爪によるタグの物理的破壊」と「金属反射・水濡れによる読み取り精度の低下」です。そのため、RFIDタグはパレットの表面ではなく、桁(ブロック部)の内部空間に専用の治具で埋め込むか、耐衝撃設計の筐体で保護する運用が実務のセオリーです。

さらに、ゲート型のRFIDリーダーがWMSと通信断絶した場合に備え、リーダー側にローカルストレージ機能を持つエッジPCを噛ませる「エッジ処理」の実装が必須です。システム復旧までの間、ハンディターミナル内でデータをキャッシュとしてローカル保存し、ネットワーク復旧後に非同期でWMSへバッチ処理送信するフローを構築することで、いかなる状況下でも「止まらない物流」を実現します。

次世代サプライチェーン構築:データ連係による全体最適化

パレットに付与されたIDは、上に積載された荷物(ケース単位のバーコード情報)と紐付けることで、サプライチェーン全体の最適化へと波及します。倉庫内のネステナーでの高層保管や、カゴ車への積み替えピッキングなど、あらゆる物流アセット全体をIDで体系化することで、「何が・どこに・どの資材に載っているか」をリアルタイムで100%可視化できます。国際物流においても、木製パレットの燻蒸処理証明書データをIDと紐付けてクラウド管理することで、通関時の書類照合業務を自動化する高度な運用が始まっています。

DX推進部門と現場の間にはしばしば深い溝(抵抗感)が生じますが、これを解決するには、まずは一部の拠点間ループで成功体験を積むスモールスタート(ボトムアップ)と、規格統一という痛みを伴う決断を下す経営層の強いリーダーシップ(トップダウン)の融合が不可欠です。「T11型パレットによる一貫パレチゼーション」という強固な物理的標準化の上に、RFID/IoTタグによるデータ連係を被せること。現場の「爪の衝突」「寸法ズレ」「不意の通信障害」といった実務的課題を一つずつ潰すことこそが、真の自動化と「物流2024年問題」を乗り越える最短かつ唯一のルートなのです。

よくある質問(FAQ)

Q. 物流パレットとは何ですか?

A. 物流パレットとは、荷物をまとめて載せ、輸送や保管を行うための台座のことです。フォークリフト等のマテハン機器と連携することで手作業による荷役を撲滅し、入出荷スピードを劇的に向上させます。「物流2024年問題」によるドライバーの労働時間規制に対応するための切り札として、多くの企業で導入が急務となっています。

Q. パレットの標準サイズはいくつですか?

A. 日本国内におけるパレットの標準サイズは、1,100mm×1,100mmの「T11型」です。JIS規格(JIS Z 0601)として定められており、国内物流において圧倒的なシェアを持っています。この標準サイズをサプライチェーン全体で統一して運用(一貫パレチゼーション)することで、トラックの積載効率や倉庫での保管効率を最大化できます。

Q. 木製パレットとプラスチック製パレットの違いは何ですか?

A. 木製パレットは導入コストが安く補修も容易ですが、輸出入の際には害虫を防ぐための燻蒸処理など厳しい規制をクリアする必要があります。一方、プラスチック製パレットは耐久性や衛生面に優れ、輸出入時の検疫規制も受けません。用途や耐荷重、海外取引の有無などの条件に合わせて最適な材質を選定することが重要です。


監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。