物流業界における「自動化」が、実証実験のフェーズを終え、本格的な実装期に突入したことを示す重要なデータが発表されました。
日本産業車両協会が発表した「2024年の無人搬送車システム納入実績」によると、システム全体の納入件数は前年割れとなったものの、「運輸・倉庫業」向けの構成比が前年の3.6%から7.3%へと倍増に近い急伸を見せました。
製造業のライン搬送が主戦場だった無人搬送車(AGV/AMR)が、ついに物流センターのオペレーション中核へとシフトし始めたのです。本記事では、最新の統計データをもとに、物流現場で今何が起きているのか、そして企業はこのトレンドをどう読み解くべきかを解説します。
2024年 無人搬送車システム納入実績の全貌
まずは、日本産業車両協会が発表したデータの事実関係を整理します。全体としての市場規模は調整局面にあるものの、その中身(内訳)に劇的な変化が生じています。
数字で見る市場トレンド
2024年の納入実績を以下のテーブルにまとめました。
| 項目 | 2024年実績 | 前年比・詳細 |
|---|---|---|
| 納入システム件数 | 762システム | 4.7%減 |
| 納入台数 | 2,906台 | 6.4%減 |
| 運輸・倉庫業向けシェア | 7.3% | 前年(3.6%)から3.7ポイント増 |
| 1システム平均台数 | 国内:3.6台 | 海外向け(5.4台)と比較し小規模 |
| 車両タイプ別 | 台車型:53.0% | 無人フォークリフト:8.7%(2年連続増) |
なぜ「全体減」なのに「倉庫向け」は増えたのか
全体の納入件数が減少した主な要因は、主要顧客である製造業の設備投資が一服したことや、世界的な景気減速の影響と考えられます。しかし、その逆風下であっても「運輸・倉庫業」向けが約2倍のシェアを獲得したという事実は、物流業界における人手不足(2024年問題)への危機感が、具体的な投資行動へと変わったことを裏付けています。
これまでは「とりあえず1台入れてみる」という試験導入が多かった物流倉庫ですが、2024年は「業務フローに組み込む」ための導入が進んだ年と言えるでしょう。
業界への具体的な影響とセグメント別の動向
この統計結果は、今後の物流現場にどのような変化をもたらすのでしょうか。車両タイプや現場のニーズから深掘りします。
無人搬送車(台車型)が過半数を維持する理由
納入台数の53.0%と過半数を占めたのが「無人搬送車(台車)」タイプです。これは、カゴ車やパレットの搬送を自動化するAGVやAMR(自律走行搬送ロボット)が含まれます。
倉庫内では、ピッキングした商品を梱包エリアまで運ぶ長距離搬送や、入荷エリアから棚までの横持ち搬送での利用が定着しつつあります。特に、冷凍・冷蔵倉庫のような過酷な環境下での導入事例も増えており、作業員の負荷軽減が直接的な導入動機となっています。
江崎グリコ/関西フローズンの事例に見られるように、マイナス環境下での自動化は、単なる省人化以上に「人が働けない環境をロボットが補う」という意味で不可欠なインフラになりつつあります。
参考記事:江崎グリコ/関西フローズンの冷凍倉庫にAGV導入、社員の負荷軽減へについて
無人フォークリフト(AGF)の2年連続増加が示すもの
注目すべきは、無人フォークリフトが構成比8.7%まで拡大し、2年連続で増加している点です。
有人フォークリフトオペレーターの不足は年々深刻化しており、採用難易度も高騰しています。これに対し、定型業務(パレットの積み下ろしや格納)を無人フォークリフトに置き換える動きが加速しています。導入コストは高いものの、人件費の高騰と採用コストを天秤にかけた際、ROI(投資対効果)が見合うフェーズに入ってきたと言えます。
LogiShiftの視点|統計から読み解く「次の一手」
ここからは、単なるデータの羅列ではなく、このトレンドが示唆する2024年以降の物流戦略について、LogiShift独自の視点で考察します。
1. 「大規模導入」への壁をどう突破するか
統計データの中で懸念すべき点は、1システムあたりの平均台数が「国内向け3.6台」に対し「海外向け5.4台」と差が開いていることです。
日本の物流現場は、依然として「部分最適」な導入に留まっている傾向があります。海外では倉庫全体を設計段階から自動化前提で構築するケースが多い一方、日本では既存倉庫の空きスペースに少数を導入するケースが目立ちます。
しかし、2025年以降は、数台のロボットが走り回るだけでなく、WMS(倉庫管理システム)と高度に連携し、数十台規模で群制御する「全体最適」への移行が、競争力の分水嶺となるでしょう。
2. 車両価格上昇と自動化投資のバランス
自動化ニーズが高まる一方で、機器自体のコストも上昇傾向にあります。例えば、業界最大手の豊田自動織機は、原材料費や物流費の高騰を受け、2026年3月からのフォークリフト値上げ(最大15%)を発表しています。
これは有人機だけでなく、ベースとなる車体価格の上昇により無人機(AGF)の導入コストにも影響を与える可能性があります。
参考記事:豊田自動織機、26年3月値上げへ|フォークリフト最大15%増の衝撃と対策
経営層は、「機器が安くなるのを待つ」のではなく、「人件費上昇リスクと機器値上げリスク」の両面を見据え、早期に投資判断を下す必要があります。遅れれば遅れるほど、導入コストも機会損失も膨らむ構造になりつつあります。
3. 「機種選定」が成否を分ける時代へ
運輸・倉庫業向けのシェア急増は、プレイヤーの裾野が広がったことを意味します。それは同時に、「自社の現場に合わない機種を選んでしまい、失敗する」リスクが増えていることも示唆しています。
市場には多種多様なAGV/AMRが登場しており、カタログスペックだけで判断するのは危険です。実際の現場で「段差を越えられるか」「停止精度は十分か」「既存システムと連携できるか」を見極める選定眼が、これまで以上に重要になります。
Robowareのような実機比較ができる体験会などを活用し、現場適合性を導入前に徹底的に検証するプロセスが不可欠です。
参考記事:「最適なAMRがその場で分かる」Roboware体験会から学ぶ、失敗しないAMR選び方【4つの視点で徹底比較】
まとめ:明日から意識すべきこと
2024年の実績データは、物流業界において自動化が「選択肢の一つ」から「必須の生存戦略」へと変わったことを明確に示しました。
経営層・現場リーダーが今意識すべきポイント:
- **部分から全体へ**:数台の試験導入で終わらせず、倉庫全体のオペレーション変革(DX)として計画をスケールさせる。
- **タイミングの見極め**:車両価格の上昇トレンドを考慮し、投資決定を先送りしない。
- **現場適合性の検証**:スペックだけでなく、実際の運用フローに耐えうるかを実機ベースで検証する。
物流の自動化は、待ったなしの状況です。他社の動向を横目に見る段階は終わりました。自社の現場における「自動化の最適解」を見つけるためのアクションを、今日から加速させていきましょう。

