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事例・インタビュー 2026年1月31日

シップヘルスケア船橋新拠点|医療物流の「2024年問題」解決策とBCP

シップヘルスケア、首都圏の医療材料物流拠点を千葉・船橋に開設

物流業界、特に人命に直結する医療物流の分野において、今、極めて象徴的な動きがありました。
シップヘルスケアホールディングスが千葉県船橋市に開設した次世代型物流拠点「SHIPグランベース東京」です。

2024年2月より本格稼働を開始したこの拠点は、単なる「大きな倉庫」ではありません。AI・ロボティクス・RFIDといった最先端技術を実装し、物流業界最大の課題である「2024年問題」と「深刻な人手不足」に対する明確な回答を示しています。なぜ今、シップヘルスケアのこの動きが業界の注目を集めているのか、その全貌と業界へのインパクトを解説します。

シップヘルスケア「SHIPグランベース東京」の全貌

まずは、この新拠点がどのような施設なのか、公開されている事実情報を整理します。
最大の特徴は、米国発のベンチャー技術と、日本の大手物流企業のノウハウを融合させた「ハイブリッドな技術実装」にあります。

施設概要と導入技術の要点

項目 詳細内容
施設名称 SHIPグランベース東京
所在地 千葉県船橋市(首都圏の戦略的立地)
稼働開始 2024年2月
施設規模 延床面積 1万4129㎡
カバー範囲 首都圏 約60施設(2万6000床相当)
取扱能力 在庫 約7万800品目の管理が可能
中核技術1 Renatus Robotics社製 自動倉庫システム『RENATUS』
中核技術2 日本通運と共同開発したRFID搭載トラック
目的 物流2024年問題への対応。省人化。BCP(事業継続計画)強化

この拠点は、シップヘルスケアグループにおいて東日本のマザーセンターとしての役割を担います。首都圏の約60施設、2万6000床という膨大な医療需要を支える心臓部と言えるでしょう。

業界に与える3つの具体的インパクト

このニュースが物流業界関係者にとって重要である理由は、規模の大きさだけではありません。既存の物流オペレーションが抱える課題を解決するための「具体的なメソッド」が提示されているからです。

1. 『RENATUS』導入による夜間無人化と省人化

特筆すべきは、自動倉庫システム『RENATUS(レナトス)』の導入です。従来の自動倉庫(AS/RS)と比較し、以下の点が画期的と言えます。

  • 段ボール単位の保管とピッキング
    多くの自動倉庫が専用コンテナへの移し替えを必要とする中、RENATUSは段ボールのまま保管が可能です。これにより、入荷時の検品・詰め替え作業という「人手に頼らざるを得なかった工程」を大幅に削減しています。
  • 夜間の自動出荷準備
    人がいない夜間に、ロボットが翌日出荷分のオーダーを整理し、出庫口付近まで移動させておきます(順立て)。これにより、ドライバーや庫内作業員の待機時間が劇的に短縮され、リードタイムの最適化が実現します。

2. RFID×日本通運による「完全トレーサビリティ」

医療材料物流において最も恐ろしいのは「誤配」と「在庫の行方不明」です。これを防ぐため、日本通運と共同開発したRFIDセンサー付きトラックが導入されました。

  • リアルタイム追跡
    カゴ車やオリコンに取り付けられたRFIDタグを、トラック側のセンサーが自動で読み取ります。
  • 検品レスの納品
    「いつ、どのトラックに、何が積まれたか」が自動記録されるため、出荷時および納品時の検品作業が不要になります。これはドライバーの荷役時間を短縮し、配送効率を最大化する施策です。

3. 大阪拠点との連携による強靭なBCP体制

医療物流は「止まること」が許されません。SHIPグランベース東京は、大阪にある既存拠点とシステム・在庫情報を完全に連動させています。

  • 災害時の相互補完
    首都直下型地震などで東京拠点が機能不全に陥った場合でも、即座に大阪拠点からの代替出荷に切り替える体制(複線化)が構築されています。
  • 在庫の最適配置
    東西の在庫状況を可視化することで、過剰在庫の削減と欠品リスクの低減を同時に実現しています。

LogiShiftの視点:今後の物流戦略への示唆

今回のシップヘルスケアの事例は、単なる一企業の設備投資ニュースではなく、今後の物流業界が向かうべき方向性を示唆しています。独自のアングルから3つのポイントを考察します。

スタートアップ技術の「実戦投入」スピード

これまでの物流業界では、実績のある大手マテハンメーカーの機器を導入するのが通例でした。しかし、今回シップヘルスケアは、米国発のベンチャーであるRenatus Robotics社のシステムを採用しました。

  • リスクを取ってでも効率を獲る
    技術革新のスピードが速い現在、「枯れた技術(実績ある技術)」だけを選んでいては、深刻化する人手不足に追いつけません。スタートアップの尖った技術を、日本通運のような大手パートナーと組むことでリスクヘッジしながら導入する。この「ベンチャー×大手×荷主」のトライアングル構造こそが、今後のDX成功の鍵になります。

「保管型」から「スルー型」への機能転換

SHIPグランベース東京の設計思想を見ると、倉庫の役割が変化していることが分かります。

  • 在庫滞留時間の短縮
    『RENATUS』による夜間の順立て機能は、倉庫を「荷物を置いておく場所」から「荷物を流すためのバッファ(調整弁)」へと変えました。
  • トラックとのシームレスな接続
    RFIDトラックとの連携により、倉庫と配送の境界線がデータ上で消滅しています。今後は、倉庫内効率だけでなく、トラック積載率や配送ルートまでを含めた「サプライチェーン全体の最適化」が、倉庫設計の段階で求められるようになります。

医療DXが牽引する物流標準化

医療業界は多品種少量、かつ緊急性が高いという、物流にとって最も難易度の高い分野です。ここでRFIDや完全自動化が成功すれば、他業界への波及効果は計り知れません。

  • 標準化への圧力
    自動倉庫を効率的に動かすには、段ボールサイズや梱包形態の標準化が不可欠です。シップヘルスケアのような大手プレイヤーがこのモデルを確立することで、メーカー側に対する梱包標準化の要請力が強まり、業界全体の物流標準化(JISパレット問題など)が一気に進む可能性があります。

まとめ:明日から意識すべきこと

シップヘルスケアの船橋新拠点開設は、物流2024年問題に対する「守り」の対策ではなく、テクノロジーで競争優位を築く「攻め」の投資です。

経営層や現場リーダーが意識すべきは以下の点です。

  1. テクノロジー採用の柔軟性:大手ベンダーだけでなく、課題解決に直結するスタートアップ技術の採用を検討の遡上に載せること。
  2. データ連携の範囲拡大:倉庫内だけでなく、運送会社(トラック)まで含めたデータ連携・トレーサビリティを設計すること。
  3. BCPの再定義:災害対策を「コスト」ではなく、顧客からの信頼を勝ち取るための「付加価値」として捉え直すこと。

「人手不足だから自動化する」という受動的な姿勢から脱却し、シップヘルスケアのように「止まらない物流」を構築するための能動的なDX戦略が、今こそ求められています。

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