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Home > ニュース・海外> EV・ガソリン混在配車の最適解。最新AIが導く次世代ルート計画の全貌
ニュース・海外 2026年3月19日

EV・ガソリン混在配車の最適解。最新AIが導く次世代ルート計画の全貌

HERE Technologies launches advanced EV planning tools for mixed fleets

日本の物流業界において、サステナビリティへの対応と利益確保の両立は喫緊の課題です。特に温室効果ガス削減に向けた電気自動車(EV)トラックの導入は、多くの物流企業が避けて通れない道となっています。

しかし、実際の現場では「EVを導入したものの、従来のガソリン車やディーゼル車と同じように配車できない」という壁にぶつかっています。航続距離の不安、充電時間の確保、積載量や気温によるバッテリー消費の変動など、EV特有の制約が配車担当者の頭を悩ませているからです。

こうした課題に対し、米国を中心とする海外の物流DX事例では、AIを用いた画期的なアプローチが生まれつつあります。本記事では、位置情報サービスのグローバルリーダーであるHERE Technologiesが発表した最新の「EV特化型配車計画ツール」を紐解き、日本企業が導入期を乗り越え、実務としてEVを運用するためのヒントを解説します。

導入期に立ちはだかる「ミキシド・フリート」の壁

EVトラックの普及が進むとはいえ、ある日突然すべての車両がEVに入れ替わるわけではありません。数年から十数年という長期にわたり、従来のガソリン車やディーゼル車(ICE車:内燃機関車)とEVが混在する「ミキシド・フリート(混成車両群)」の状態で運用することが前提となります。

ガソリン車前提の配車システムが抱える限界

従来の配車システムや、配車担当者の経験則に基づくルート計画は、あくまで「燃料の補給は短時間で済み、航続距離も安定している」というICE車の特性を前提として設計されています。

ここにEVが混ざると、途端にパズルは複雑化します。同じルートを走る場合でも、ICE車には割り当て可能でも、EVでは途中の充電が必要となり、ドライバーの労働時間(シフト)や荷主が指定した配送時間枠(タイムウィンドウ)から逸脱してしまうリスクが発生するからです。結果として、EVは「近距離で安全なルート専用」という限定的な運用に留まり、投資対効果を最大化できないケースが多発しています。

参考記事: EVトラック・太陽光倉庫の導入メリットと、政府補助金活用ガイド【2026年03月版】

海外物流におけるEVルート計画の最新トレンド

米国や欧州、そして中国などの先進市場では、単なる「環境へのアピール」というフェーズを終え、EVをいかに実用的なリソースとして利益の源泉に変えるかという実務最適化の段階に入っています。

日米欧のEV物流・配車計画におけるトレンド比較

各国の物流市場では、それぞれの法規制や地理的条件に応じてEV導入のアプローチが異なります。

地域 EV導入の主な推進力 配車計画における主要な課題 解決に向けた技術アプローチ
米国 州単位の厳しい環境規制と補助金 広大な国土と充電インフラの偏在 AIを活用した動的ルート最適化と予測モデル
欧州 厳格な排出権取引と都市部の進入規制 複数国をまたぐ運行と複雑な法規制 プラットフォーム連携による充電予約の自動化
日本 脱炭素化目標と荷主からのESG要請 勾配の多い地形と属人的な配車業務 実証実験を通じたデータ収集とシミュレーション

特に米国では、カリフォルニア州などの厳格な排ガス規制を背景に、長距離輸送からラストワンマイルまで多様なシナリオでのEV導入が進んでいます。それに伴い、充電インフラの空白地帯をいかに縫って走るか、といった高度なアルゴリズムの需要が急増しています。

先進事例:HERE Technologiesが導く「Agentic AI」の衝撃

こうした市場の要請に応える形で、位置情報データの巨人であるHERE Technologiesは、配送計画ツール「HERE Tour Planning」のプレミアム機能として、EVとICE車が混在するフリートに特化した高度な新機能をリリースしました。

このアップデートの核心は、近年AI業界で大きな注目を集めている「Agentic AI(エージェンティックAI)」の実装と、「物理的なエネルギー消費モデル」の採用にあります。

Agentic AIによる自律的な制約条件の解決

Agentic AI(エージェント型AI)とは、人間が一つひとつの指示を出さなくても、設定された目標(例:すべての荷物を指定時間内に、最小のコストで配送する)に向かって、自律的に思考し、複数のツールを駆使して解決策を導き出すAIのことです。

HERE Tour Planningに搭載されたAgentic AIは、配車担当者の「フォース・マルチプライヤー(力の増幅器)」として機能します。

  • 配送時間枠の厳守
  • ドライバーの休憩時間やシフトの調整
  • 車両の積載重量と容積の制限
  • 特定車両の道路進入規制
  • 充電ステーションの位置と稼働状況
  • 充電にかかる待機時間

これらの数千に及ぶ複雑な制約条件を、Agentic AIはわずか数秒で評価し、何万通りもの組み合わせの中からICE車とEVの双方にとって最適な配車ルートを自律的に生成します。

参考記事: DHLが配送予約を自動化。物流現場を変える「エージェント型AI」の正体

車両固有の「物理モデル」が机上の空論を防ぐ

今回の発表で最も特筆すべきは、EVのバッテリー消費予測において、広範な仮定(例:1km走ると〇%消費する)ではなく、車両ごとの「物理的なエネルギー消費モデル」を採用している点です。

EVのバッテリー消費は、ICE車の燃費以上に外部要因の影響を強く受けます。

  • 荷物の積載量による総重量の変化
  • ルート上の標高差や勾配(アップダウン)
  • 外気温とエアコンの使用状況
  • 渋滞によるストップ&ゴーの頻度

HEREのシステムは、これらの車両固有の物理プロファイルと、高精度な地図データ、リアルタイムの交通情報を掛け合わせることで、極めて精緻なエネルギー消費を計算します。これにより「途中で電欠になるかもしれない」という現場の不安を払拭し、AIが弾き出した計画と実際の走行結果の乖離を最小限に抑えています。

参考記事: AIで「机上の空論」をなくす。欧米で進む物流の「計画と現場」統合とは?

ルート効率最大20%向上の実証データ

この高度な計算モデルにより、HERE Technologiesは新機能を利用したルート計画の効率が最大20%向上し、ETA(到着予定時刻)の精度が最大15%改善されることを実証しました。

無駄な待機時間や過剰な安全マージン(余裕を持たせすぎる計画)を削減し、EVが本来持つポテンシャルをフルに引き出すことで、配送コストの削減と顧客満足度の向上を同時に達成しています。

日本企業への示唆:海外トレンドをどう自社に落とし込むか

この海外の先進事例は、日本の物流企業にとっても決して無縁の話ではありません。日本国内でも2024年問題への対応や、大手荷主からのサプライチェーン全体でのCO2排出量削減(Scope 3対応)の要請により、物流DXとグリーン化の波が同時に押し寄せています。

「what-if(もしも)」シミュレーションの重要性

HEREのツールが優れているもう一つの点は、実地投入前に「what-if(もしも)」シナリオのシミュレーションが可能であることです。

「もし、現在のフリートのうち20%をEVに置き換えたら、既存のルートはどう再編されるか」
「もし、〇〇インターチェンジ付近の充電器が使用不可になった場合、配送網にどれだけの遅延が生じるか」

こうしたシミュレーションを事前に行うことで、物流企業は当てずっぽうな車両購入を避け、自社のビジネスモデルに最適な台数と車種を選定できます。日本企業がEV導入を検討する際も、まずは既存の配車データをシステムに取り込み、デジタル空間上でシミュレーションを行うステップから始めることが成功の鍵となります。

参考記事: 【現地取材】ANA×いすゞEVトラック始動|空港物流を変える「本気」の検証

属人化配車からの脱却が前提条件

一方で、日本の物流現場特有の障壁も存在します。それは配車業務の極端な「属人化」です。

「この道は夕方混むから避ける」「この納品先は裏口からしか入れない」といった現場の暗黙知がデータ化されておらず、ベテラン配車マンの頭の中にしかない企業が依然として多く存在します。最新のAgentic AIや高精度な物理モデルを導入しても、元となる「納品先の制約データ」や「正確な作業時間」がシステムにインプットされていなければ、AIは機能しません。

したがって、日本企業が今すぐ取り組むべきは、EVの購入手配と並行して、日々の配車業務をデジタル化し、自社の運行データを正確に蓄積する基盤を整えることです。

参考記事: 属人化配車を80%削減!運送DXで実現する配送最適化【実践ガイド】

まとめ:EV運用を「エコ」から「ミッション」へ昇華させる

HERE Technologiesが提供するような次世代の配車計画ツールは、EVの導入を単なる「環境対応(エコ)」の枠組みから引き上げ、企業の競争力を左右する確実な「実務(ミッション)」として最適化するフェーズへと物流業界を牽引しています。

ガソリン車とEVが混在する過渡期だからこそ、複雑な制約条件を解きほぐすAIの力が必要不可欠です。日本の物流企業も、海外の最新テクノロジーの動向を注視し、テクノロジーを「フォース・マルチプライヤー」として使いこなすことで、持続可能かつ収益性の高い物流ネットワークを構築していくことが求められています。

出典: FreightWaves

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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