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ニュース・海外 2026年6月10日

世界大手DSVの事例から学ぶ4地域比較が3PLの柔軟な自動化への必須対応

世界大手DSVの事例から学ぶ4地域比較が3PLの柔軟な自動化への必須対応

日本の物流現場は今、2024年問題に伴うトラックドライバー不足だけでなく、倉庫内における「深刻な労働力不足」と「高騰する人件費」という二重苦に直面しています。こうした状況下で、多くの企業が倉庫の自動化(DX)を模索していますが、そこには大きなジレンマが存在します。

「数億円から数十億円規模の設備投資を行っても、荷主との契約が数年で終了したら投資が回収できない」
「一度導入した固定式の自動倉庫(スタッカークレーンなど)は、取り扱う商材の変化や需要の波動に柔軟に対応できない」

こうした「システムの硬直化」への懸念から、自動化への一歩を踏み出せない3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者や小売・EC事業者は少なくありません。

しかし、世界の物流最前線では、この常識を覆す新しいアプローチが急速に普及しています。世界的な物流プロバイダーであるDSVが、オランダ・フェンローの物流センターで完了した自動化プロジェクトは、まさに「既存倉庫の改修を最小限に抑え、需要に合わせて後から拡張できる柔軟な自動化」を体現した先進事例です。

本記事では、DSVの最新事例を徹底解剖し、欧米で加速する「アドオン(後付け)型」自動化のトレンドを紐解きながら、日本の物流企業が次世代の競争力を確保するための具体的な教訓を解説します。

参考記事: 3PL(サードパーティ・ロジスティクス)完全ガイド|基礎知識から導入メリット・失敗しない選び方まで


海外の最新動向:固定型マテハンから「モジュール型・アドオン型自動化」へのシフト

かつての倉庫自動化といえば、新築の巨大倉庫に最新鋭の大型マテハン設備をフルインストールする「グリーンフィールド(新規開発)型」が主流でした。しかし現在、インフレに伴う建設コストの高騰や土地不足、金利上昇を背景に、欧米を中心に「ブラウンフィールド(既存施設)型」の投資が急増しています。

これに伴い、自動化技術そのものも「一度入れたら変えられない固定設備」から、既存の稼働中倉庫に後から追加でき、必要に応じてロボットの増減やレイアウト変更が可能な「モジュール型・アドオン型」へとパラダイムシフトが起きています。

以下の表は、主要国・地域における現在の空間活用および物流ロボットの導入トレンドを比較したものです。

地域 物流現場の主な課題 自動化のトレンドとアプローチ 日本の3PLへのヒント
欧州 土地不足・高い人件費・厳しい労働規制。既存施設の有効活用が最優先される。 高密度保管と人間工学(エルゴノミクス)の両立。既存の稼働中倉庫に「アドオン型」でロボットを追加する。 敷地を拡張せず、デッドスペースになりがちな上部空間を活用した3D自動化。
米国 圧倒的な物量・年間約50%に達する極めて高い倉庫作業員の離職率。 必要な時期にロボットを増減させる「RaaS(Robot as a Service)」や、WESによるマルチロボットの統合制御。 投資リスクをOPEX(運用費)に転換し、需要ピーク時にのみ処理能力を拡張するアジリティの確保。
中国 スピード至上主義・EC比率の高さ。他社に勝つための圧倒的な出荷処理能力。 垂直空間のフル活用と群制御による超高速処理。ケース搬送ロボット(ACR)やモバイルマニピュレーター。 高頻度小口配送に耐えうる、垂直方向を活かした高密度・超高速ピッキング。
日本 労働人口の急減・多頻度小口配送。SIer主導による独自のカスタマイズ過多。 既存オペレーションとロボットの融合。人とロボットが作業を分担する協働型(GTP)モデル。 自前主義を脱却し、世界標準の柔軟なパッケージシステムに業務を適応させる。

このように、特に欧州や米国では、「システムの硬直化(一度決めたら変えられないこと)」を最も恐れ、ビジネスルールや荷主の変化に合わせて姿を変えられる「アジリティ(俊敏性)」を重視した投資が主流となっています。

参考記事: 物流自動化完全ガイド|導入メリットから失敗しない選び方・事例まで徹底解説


先進事例:DSVフェンロー拠点が示す「Goods-to-Person」近代化の全貌

オランダの物流ハブであるフェンロー(Venlo)において、DSVが実施した近代化プロジェクトは、まさにこの「アジリティ」を最優先に設計された好事例です。

100台のロボットと9万個のビンが支える「マルチクライアント運用」

DSVは、フランス発のユニコーン企業であるExotec(エグゾテック)社と提携し、同センターに自律型走行ロボット(ASRS)「Skypod」システムを導入しました。このシステムは、約100台の自律型ロボット(Skypod)と、約90,000個のビン・トレイで構成されています。

特筆すべきは、この倉庫が単一の荷主専用ではなく、複数の小売ブランドのフルフィルメント業務を同時に支える「マルチクライアント(複数荷主同居型)倉庫」である点です。荷主ごとに取り扱う商材の形状、出荷頻度、SLA(サービスレベル合意)が異なる環境において、従来型の固定式マテハンを導入することは極めて困難です。

しかし、Goods-to-Person(GTP、商品が作業者の元に届く)方式であるSkypodシステムは、ラックの構成やビンの割り当てをソフトウェア側で瞬時にコントロールできるため、複数の異なるブランドの在庫を一元的に、かつ高効率に処理することが可能です。

施設改修なしで拡張できる「柔軟性」と「スケーラビリティ」

DSVが本プロジェクトで最も重視したのは、大規模な施設改修を伴わずに「保管密度」と「処理能力(スループット)」を段階的に拡張できる点です。

一般的な自動倉庫(スタッカークレーン型など)では、処理能力を高めるためにクレーンを追加しようとすると、通路全体の工事が必要になり、その間は倉庫の稼働を止めなければなりません。これに対し、Skypodシステムは「保管棚(ラック)」「ロボット(Skypod)」「作業ステーション」がそれぞれ独立したモジュールとなっています。

たとえば、クリスマスやブラックフライデーなどの季節的な繁忙期(ピーク期)に一時的に処理能力を高めたい場合、倉庫の床を掘り返すような大がかりな工事をすることなく、ロボットの台数を追加するだけで処理スピードを向上させることができます。また、取り扱う製品ラインナップ(アソートメント)の変化や荷主の事業成長に合わせ、保管ラックを後から増設することも容易です。

参考記事: 40億円投資!LyrecoがSkypod100台で実現した「疲れない物流」3つの鍵

逆物流(返品処理)と自動化付帯プロセスのシームレスな統合

DSVフェンロー拠点のもう一つの卓越した特徴は、出荷プロセスだけでなく、3PLにとって最大のボトルネックとなりやすい「逆物流(リバースロジスティクス=返品処理)」や梱包の前後プロセスまで、自動化が高度に統合されている点です。

具体的には、以下の3つの先進的な仕組みが組み込まれています。

  • 返品処理専用メザニン階の設置:EC比率が高まる小売物流において、返品対応は無視できないコスト要因です。DSVは倉庫の上部空間を活用して返品処理に特化したメザニン(中二階)を設計。入荷した返品商品を迅速に検品・再保管できる動線を確保しました。
  • 自動箱開封・封緘(ふうかん)機能の統合:入荷したケースの開封から、出荷時の梱包、テープ貼り(封緘)までをロボットで自動化しています。
  • 自動ラベル貼り機能:仕向け地や運送会社ごとの配送ラベル貼付を自動化し、作業者の手作業によるミスを排除しています。

このように、ピッキング作業という「点」の自動化にとどまらず、入荷・返品・梱包といった「線(プロセス全体)」の自動化をシームレスにつなぎ合わせることで、フルフィルメント全行程の効率化とコスト抑制を同時に達成しています。

同地域(欧州)に広がる「柔軟な自動化」への投資加速

このDSVの取り組みは孤立した事例ではありません。同じオランダ国内のアルメロ(Almelo–Newton)地区では、大手3PLのBleckmann(ブレックマン)も最新のASRS(自動倉庫システム)の本格稼働を発表しています。

欧州の厳しい労働法制と高騰する地価、そして人手不足を背景に、3PL大手が競うように「スケーラブルで柔軟な自動化」へ投資を加速させている事実は、物流インフラの近代化が「競争力の維持」に直結するフェーズに入ったことを示しています。

参考記事: 全面刷新は不要。英国3PLが実践した「部分自動化」でROIを最大化するDX戦略


日本への示唆:既存倉庫の価値を最大化する「3つの教訓」

DSVフェンロー拠点が示した「柔軟な自動化」の成功は、労働力不足と投資リスクの板挟みになっている日本の物流経営層やDX推進担当者にとって、非常に実践的なロールモデルとなります。

日本企業がこの海外事例を自社のDX戦略へローカライズし、適用するための「3つの教訓」を解説します。

教訓1:「全か無か」の二元論から脱却し、アドオン型で部分自動化を狙う

日本の多くの物流現場では、「自動倉庫を入れるなら倉庫全体を建て替えなければならない」「システムを全面的に刷新しなければ導入できない」といった、極端な「全か無か(ゼロ百)」の思考に陥りがちです。しかし、既存のマルチクライアント倉庫で他荷主の稼働を止めずに、巨額の投資を実行するのはリスクが高すぎます。

日本企業が今すぐ取り入れるべきは、DSVや英国の事例が示すような「アドオン(後付け)型の部分自動化」です。

既存の倉庫レイアウトや他荷主の動線を邪魔しないエリアに、必要な規模だけでグリッド型のASRSやAMR(自律走行搬送ロボット)を導入し、まずは特定の優良荷主や、作業効率の低い特定のプロセス(例:小物ピッキング、返品処理など)からスモールスタートします。

稼働中の現場を完全に止めるリスクを避け、「小さく生んで大きく育てる」手法こそが、投資回収(ROI)を最短化し、不確実性の高い現代のビジネス環境に適応する最善策です。

教訓2:「リバースロジスティクス(逆物流)」を最初からプロセスに設計する

日本のEC・小売物流において、返品処理は「イレギュラー作業」として人手による属人的な対応に依存しているケースがほとんどです。しかし、多品種少量かつ高頻度なEC物流においては、返品のスピードが在庫の回転率やキャッシュフローに甚大な影響を与えます。

DSVのように、自動化システムを導入する初期設計の段階から、「返品処理専用エリア」をメザニン階などを利用して立体的に組み込んでおくことが重要です。

ピッキング用ロボットが、出荷だけでなく「返品された商品をいかに素早く高密度ラックに再保管するか」という逆物流のアルゴリズムをあらかじめ設計に組み込むことで、倉庫全体のスペース効率と作業員の負担軽減を同時に達成できます。

教訓3:APIファーストによる「システム連携(オーケストレーション)」の確保

「自動化ロボットを導入したものの、特定のベンダーのシステムに縛られてしまい、後から別のメーカーのロボットや最新のAIツールを追加できない」というベンダーロックインは、日本の物流現場が最も陥りやすい失敗パターンです。

これを防ぐためには、ハードウェア(ロボット本体)に依存しないオープンなシステム環境を維持する「APIファースト」の視点が不可欠です。

WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行システム)を中核(オーケストレーター)とし、異なるメーカーのAMR、ASRS、自動梱包機、そして人間の作業員を、ソフトウェアの力でリアルタイムに最適に指揮(オーケストレーション)する体制を整えます。

これにより、将来的に新たなロボティクス技術が登場した際も、プラグ・アンド・プレイ(繋げばすぐ動く状態)で迅速に取り込むことが可能になり、倉庫全体の「硬直化」を完全に防ぐことができます。

参考記事: 離職率50%の米国3PLに学ぶ!倉庫の硬直化を防ぐ「柔軟な自動化」3つの回避策


まとめ:将来の展望

オランダのDSVフェンロー拠点で実現された近代化プロジェクトは、これからの物流自動化が「所有する固定資産」から、「需要に応じて伸縮可能な、アジリティの高い柔軟なインフラ」へと進化していることを明確に示しています。

少子高齢化による圧倒的な労働力不足に直面する日本において、かつてのような「人海戦術」や「気合いと根性」による現場の維持はもはや不可能です。しかし、だからといって数年後に陳腐化するかもしれない巨大な固定設備に、経営を脅かすほどの巨額資金を投じるのも賢明ではありません。

これからの日本企業に求められるのは、既存の倉庫アセットを活かしながら、必要な時に、必要な分だけ、パズルのように組み合わせて拡張できる「柔軟な自動化」の思想です。

自社の倉庫レイアウトを「平面」から「立体(3D)」で捉え直し、APIを活用したソフトウェア主導のオープンな制御基盤を整えること。このマインドチェンジこそが、2024年問題の先にある激しい競争を勝ち抜き、荷主から選ばれ続ける「次世代物流」を創り出すための最大の鍵となるでしょう。

参考記事: 1兆円投資の米Exolが実現!共有型AI倉庫FaaSの全貌と日本企業3つの勝機


出典: Logistics Manager

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監修者プロフィール
近本 京

近本 京

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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