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Home > 輸配送・TMS> ハコベル株式会社調査で97.1%が影響実感、副資材高騰に伴う荷主選別加速。
輸配送・TMS 2026年6月17日

ハコベル株式会社調査で97.1%が影響実感、副資材高騰に伴う荷主選別加速。

ハコベル株式会社調査で97.1%が影響実感、副資材高騰に伴う荷主選別加速。

米イランの停戦合意と原油価格の急落。世界的な「好材料」に沸くマクロ経済の裏側で、国内の物流現場は全く異なる未曾有の危機に直面しています。

2026年6月15日、米国とイランが戦闘終結に関する合意に達したことで原油価格は急落し、エネルギー市場は一時的な落ち着きを見せました。しかし、同日にハコベル株式会社が公表した調査結果は、国内運送事業者の97.1%が「中東情勢の悪影響」を感じており、さらに4割超の事業者が「不採算荷主との取引削減」や「新規受け入れ拒否」というドラスティックな「荷主選別」に踏み切っているという衝撃の実態を浮き彫りにしました。

この深刻な機能不全の正体は、原油安という表面的なニュースと、現場で続く「エンジンオイル」や「アドブルー(AdBlue)」などの石油由来副資材の不足・コスト高騰というミクロな実態との乖離(情報の非対称性)にあります。本稿では、物流サプライチェーンを揺るがす利害の衝突と、これからの荷主企業・運送事業者が進むべきパートナーシップの再構築について徹底的に検証します。


ニュースの背景:原油安報道と「現場の副資材高騰」という深刻な乖離

2026年6月15日午前、パキスタンなどの仲介を通じて米国とイランが戦闘終結に関する覚書に合意したとの発表が世界を駆け巡りました。アジア市場ではブレント原油が急落し、エネルギー価格には一時的な落ち着きが広がりました。日本政府もこれを受け、英仏独伊4か国の共同声明への参加を決定するなど、事態の収束に向けた楽観的な見方が広がりました。

しかし、同日にハコベル(東京都中央区)が公表した運送事業者の経営環境に関する調査は、世界情勢の表面上の改善とは対照的に、国内の現場で深刻な機能不全が進行している実態を示しました。中東情勢による悪影響を実感している運送会社は、予兆を含めて97.1%に達していたのです。

なぜ、原油価格が下がっているにもかかわらず、国内の物流現場は混乱し、4割を超える事業者が「条件の合わない荷主との取引を減らす」「新規の受け入れを拒む」といった「荷主選別」に踏み切っているのでしょうか。

その最大の要因は、原油価格の変動以上に、現場で消費される「エンジンオイルの不足・入手困難(53.7%)」や、ディーゼル車の排ガス浄化液である「アドブルーの不足・入手困難(30.9%)」、さらには石油由来のプラスチックパレットや梱包資材といった「副資材の制約とコスト高騰」が続いている点にあります。さらに、流出した米イランの覚書案では、海上封鎖の解除やホルムズ海峡の再開には30日以内の猶予が設けられており、供給網が平常に戻るまでには物理的な時間差が生じます。

ここで、本ニュースおよび調査に関わる事実関係をテーブルで整理します。

項目・時系列 主な事実と実態 現場への影響と示唆
2025年4月 物流新法(改正流通業務総合効率化法)が施行 適正運賃への転嫁圧力が法的に強化。荷主責任の明確化。
2026年6月15日 米イラン停戦合意の発表、原油価格が4%前後急落 マクロ指標の急激な下落。荷主側に「運賃引き下げ」への期待が生まれる。
2026年6月15日 ハコベルが運送事業者調査を公表 中東情勢の影響を実感する運送会社が97.1%に達していると判明。
現場の資源制約 エンジンオイル不足:53.7%、アドブルー不足:30.9% 燃料費以外の副資材調達が極めて困難であり、実質的なコスト増。
荷主選別の実態 4割超の事業者が取引削減や新規拒否を実施 運送事業者が「採算の取れない荷主」をシビアに切り捨てる時代へ。

このデータが示すように、テレビやネットで流れる「原油安・停戦」というマクロデータから値下げや据え置きを求める荷主と、現場の「副資材高騰・入手困難」に喘ぐ運送事業者の間で、深刻な情報の非対称性が生じており、これが交渉の決裂、ひいては荷主選別を加速させています。


業界への具体的な影響:三者三様の利害衝突と構造転換

この「原油安の楽観」と「現場コストの高騰」という乖離は、サプライチェーンに関わる各プレイヤーにそれぞれ異なるレベルで甚大な影響を与えています。

1. 運送事業者:「何でも運ぶ」の終焉と、企業規模による交渉力格差の露呈

深刻な物資不足とコスト高騰に直面する運送事業者は、もはや短期的な売上や稼働率の低下を許容してでも、不採算な取引を減らす対応を取らざるを得なくなっています。

しかし、その防衛策をすべての運送事業者が等しく講じられているわけではありません。ハコベルの調査によると、燃料費の変動を適切に運賃に反映させる「燃料サーチャージ」の導入率は、保有車両31台以上の企業では50.7%に達しているのに対し、30台以下の企業では29.6%にとどまっています。小規模な事業者ほど荷主に対する交渉力が弱く、副資材のコスト増を自社で吸収しきれずに経営危機に陥る「二極化」が鮮明になっています。

2. 製造業者・メーカー:物流難民化リスクと「外部委託変動費モデル」の崩壊

これまで、物流を「いつでも安価に手配できる、便利な外部委託の変動費」として捉えてきた荷主企業は、今まさに供給網の崩壊(物流難民化)という現実に直面しています。

原油安のニュースだけを盾に、運賃の据え置きや値引きを求め続けた荷主に対し、運送事業者は静かに、しかし断固として「取引削減」や「新規引き受け拒否」を通告しています。特に、長時間の待機時間を放置している荷主や、附帯作業(検品、棚入れ、ラベル貼りなど)を無償で強要している荷主は、選別の対象として最優先で切り捨てられています。目先のコスト削減と、事業継続に必要な輸送力の確保との間で、荷主企業は極めてシビアな判断を迫られています。

3. 行政・規制当局:価格転嫁の監視強化と、物流難民発生による景気停滞のジレンマ

行政は、2025年4月に施行された物流新法(改正流通業務総合効率化法)などを通じて、荷主企業に対する「適正な価格転嫁」の監視を強めています。特に2026年4月からは、一定規模以上の特定荷主に対して物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられるなど、荷主側の責任追及は厳格化の一途をたどっています。

しかし、現場で荷主の選別が急速に進めば、地方の中小メーカーや一次産業などの「資金力が弱く、物流効率化に遅れた企業」から順に輸送手段を失っていきます。これが日本全体の物価上昇や地域経済の停滞につながる懸念もあり、規制当局は「取引適正化の断行」と「物流が止まることによる経済への打撃」の狭間で、より繊細かつ踏み込んだ産業支援策の立案を求められています。

参考記事: 改正貨物自動車運送事業法が2026年4月に施行!過積載の撲滅が適正運賃に直結


LogiShiftの視点:表層的な「原油安」に惑わされず、現場の資源制約を直視せよ

ここからは、業界動向を俯瞰するLogiShift独自の視点で、今回の混乱がもたらす本質的な意味と、企業が取るべき戦略について考察します。

「マクロデータ信仰」を捨て、ミクロな実態原価に基づいた交渉への移行

なぜ多くの荷主企業が運賃交渉で失敗し、運送会社から選別されてしまうのでしょうか。その原因は、荷主が「ブレント原油などのマクロ指標が下がったのだから、物流コストも下がるはずだ」という、現場の実態から乖離した「マクロデータ信仰」に陥っているためです。

運送事業者のコスト構造において、燃料費(軽油)は大きな割合を占めますが、それだけがすべてではありません。現場では、
– 石油由来の化学製品である「エンジンオイルやアドブルー、梱包用資材の調達難と急激な価格高騰」
– 深刻な人手不足に伴う「ドライバーや倉庫作業員の労務費・採用コストの増加」
– 荷主都合の長時間の「荷待ち時間」や、無償で行わされる「契約外の荷役・附帯業務」による機会損失

といった、マクロの原油価格には決して連動しない「ミクロな見えないコスト」が幾重にも積み重なっています。

これからの価格交渉において、荷主企業が「運べないリスク」を回避するための唯一の手段は、運送原価の「内訳」を明らかにし、それに基づいた「メニュープライシング」へ移行することです。

メニュープライシングが交渉の決裂を防ぐ

運賃を一括りで「1チャーターあたり〇万円」とするどんぶり勘定から脱却し、「基本運賃」「燃料サーチャージ」「副資材サーチャージ」「荷役料・待機料(超過分)」を切り分ける契約形態へ移行する必要があります。これにより、原油価格が下がった場合は燃料サーチャージを適正に下げる一方で、現場で発生している副資材コストの増加分や待機時間に応じたコストを正当に支払うという、エビデンス(客観的データ)に基づいた、双方が納得できる取引が可能になります。

「中継輸送」の導入を阻むアナログな壁:法的・心理的ボトルネックの解消

ハコベルの調査で極めて注目すべきは、ドライバーの拘束時間を劇的に削減できる期待の星である「中継輸送(一つの運行を複数のドライバーでリレーする手法)」の導入率が、わずか20%にとどまっているという事実です。

導入にあたって現場が挙げた課題は以下の2点に集中しています。

  • 「ドライバーの心情面(他ドライバーの車両に乗りたくない、清掃状態が気になるなど)」(81.5%)
  • 「車両とドライバーの所属企業が異なることによる、事故の際の責任問題」(77.8%)

このデータは、どれほど国や経営陣が「物流DX」や「共同化」を叫んでも、現場が抱える「生理的な抵抗感」や「万が一の事故における保険・法的責任の曖昧さ」という泥臭いボトルネックを解決しなければ、効率化は1ミリも進まないという実務のリアルを示しています。

この課題を克服するためには、荷主や元請け企業が主導し、以下の対策をパッケージで設計することが急務です。

  • 運行管理と保険制度のプラットフォーム化:複数企業が参画する中継輸送において、事故時の過失割合や賠償を包括してカバーする「共同運行専用保険」の構築。
  • ハードウェアの標準化(スワップボディーコンテナの活用):他人の運転席(キャビン)に入る必要がなく、荷台(コンテナ)部分だけをワンタッチで切り離して交換できる「スワップボディー車」を共同で導入・投資する。これにより、ドライバーの心情的ハードルはほぼゼロになります。

参考記事: 無償の荷待ち・荷役は解消されるのか?着荷主規制の衝撃と物流企業が取るべき対策


明日から意識すべき3つの具体的なアクション

現在進んでいる「荷主選別」は、不当に低い運賃や非効率な取引を市場から強制退場させ、産業全体の健全化をもたらす側面を持つ一方で、準備を怠った企業の供給網を根底から破壊する「両刃の剣」です。明日から現場リーダーや経営層が取り組むべきアクションをまとめます。

1. 燃料・副資材を含めた「原価構成の明確化」とデータ共有

運送事業者は、自社のコストを「燃料費」「オイル・アドブルー等の副資材費」「人件費」「待機ロス」に細分化し、データとして荷主に提示してください。荷主企業は、「原油安=運賃一律値下げ」という旧来の交渉スタンスを即刻破棄し、これらの実態コストに真摯に向き合う必要があります。

2. 自社拠点の「待機時間・附帯作業」のログ収集とバース予約システム導入

運送会社から「選ばれる荷主」になるため、まずは自社の荷受け・出荷拠点において、トラックが何分待機し、ドライバーがどのような作業(検品、仕分け等)を行っているかを正確に測定してください。SaaS型の安価なトラック予約受付システムなどを特定の主力拠点にテスト導入し、客観的な「データ」として待機時間を可視化することが、運送事業者や取引先とエビデンスに基づく対等な共同改善を行う第一歩となります。

3. 「マクロ安・現場高」のズレを埋める全社横断プロジェクトの立ち上げ

物流部門だけの努力には限界があります。営業部門が求める「多頻度小口配送」や、調達部門が指定する「急な出荷スケジュール」が、現場でどのような非効率(運送事業者への無理な要求)を生んでいるかを全社で共有してください。2026年のCLO選任義務化を見据え、役員クラスの主導のもと、物流を「外部委託費」ではなく、自社の生存を左右する「最重要インフラ」として再定義する全社プロジェクトを立ち上げましょう。

「いつでも、安く、運送会社に丸投げすれば運んでくれる」という昭和型・平成型の物流モデルは完全に消滅しました。原油安というマクロの甘い幻想を捨て、現場の副資材不足や労働環境といったミクロな真実に誠実に向き合い、対等なパートナーシップを築けた企業だけが、これからの厳しい物流淘汰の時代を生き抜くことができるのです。

出典: au Webポータル

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監修者プロフィール
近本 京

近本 京

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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