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サプライチェーン 2026年7月6日

改正物流効率化法10月末計画提出に日清食品など3000社超が挑む必須対応

改正物流効率化法10月末計画提出に日清食品など3000社超が挑む必須対応

2026年4月に控える「物流統括管理者(CLO)」の選任義務化を見据え、対象となる特定荷主3,000社超に課せられた最大の関門である「中長期計画」の初提出期限(2026年10月末)が目前に迫っています。

この歴史的な節目を前に、荷主企業は単なる形式的な法対応(書類作成)にとどまらず、持続可能なサプライチェーンを維持するための「経営戦略としてのロジスティクス再設計」を余儀なくされています。現場や取引先、営業部門との摩擦を乗り越え、いかに実効性のある計画を策定するか。食品業界を代表する日清食品と、ジャストインタイム(JIT)生産の極致にある自動車業界のSUBARUが示す最先端の戦略と、自社努力の限界を突破するための「共有インフラ」の重要性を紐解きます。


10月末「中長期計画」初提出の全体像と直面するジレンマ

改正物流効率化法の本格施行に伴い、特定事業者に指定された荷主は2026年10月末までに、中長期的な物流効率化に向けた計画書を国へ提出しなければなりません。本制度の5W1Hと直面する課題を以下のテーブルに整理しました。

項目 詳細な内容 制度が狙う背景・目的 現場・実務層が直面するジレンマ
提出期限と対象 2026年10月末(初提出)。年間貨物取扱重量9万トン以上の特定荷主3,000社超。 業界影響力の大きい大企業に義務を課し、サプライチェーン全体の抜本改革を促す。 形式的な「絵に描いた餅」になりやすく、社内調整が難航。
義務化される項目 荷待ち・荷役時間の削減(目標2時間以内)。積載率の向上など具体的なKPI設定。 1運行平均3時間の待機時間を削減し、実質的な国内輸送力を底上げする。 営業部門の「即納約束」や製造部門の「押し出し生産」との整合性が取れない。
違反時のペナルティ 義務違反や改善命令無視の際に執行される「企業名の公表」および最大100万円の罰金。 法的強制力を持たせることで、物流部門をコストセンターから経営課題へ格上げする。 「運んでもらえない荷主」として市場から淘汰される生存リスクに直結。

主要プレイヤーが描く「中長期計画」実効化への道筋

異なるサプライチェーン構造を持つ2大産業のリーダーと、それを支える外部パートナーは、この難局を乗り越えるために極めて精緻なアプローチを開始しています。

日清食品:「製配協働」を軸にした営業部門との合意形成と組織変革

日清食品の深井雅裕専務取締役CLOは、CLOを単一の役職ではなく、財務やIT、調達の専門家を巻き込んだ「チーム機能」として定義しています。
食品流通に根強く残る「急激な需要波動」や「短納期発注」をクリアするため、同社は2026年6月に食品卸最大手の三菱食品と「共創型データ連携プロセス」を本格始動しました。AIを用いた需要予測と受発注の自動化により、配送トラック台数を約30%削減する試算を示しています。
物流効率化を阻む営業部門の「無理な即日配送約束」に対し、物流コスト負荷をデータで可視化。営業や生産部門を巻き込み、「全体最適コスト」に基づく組織変革をトップダウンで断行しています。

SUBARU:JIT生産と「2時間ルール」の高度な両立

自動車業界を牽引するSUBARUの村田眞一執行役員CLOは、極限まで無駄を削ぎ落とした「ジャストインタイム(JIT)生産」の維持と、法改正が求める「荷待ち・荷役時間2時間以内」という制約の両立に挑んでいます。
部品の調達から完成車の出荷に至るまで、秒単位で管理される自動車サプライチェーンにおいて、トラックの待機時間削減は生産ラインの停止リスクと隣り合わせです。SUBARUは、運行データや拠点スペックを精緻に計画に落とし込み、デジタルツールの活用によって入出荷バースの完全平準化を図ることで、JIT生産の精度を落とさずに「2時間以内」をクリアする高精度な運行モデルを構築しています。

NX総合研究所:「フィジカルインターネット」へ接続する羅針盤

NX総合研究所の川本文一シニアコンサルタントは、個別企業の「自前主義」の限界を指摘。政府が2030年の実現を目指す、究極の共同物流網「フィジカルインターネット」への接続を提唱しています。
LPD(ロジスティクス・プロデューサー)の概念に基づき、企業が自社の物流網をオープンな標準規格(パレットサイズ、データフォーマットなど)へ移行させるためのロードマップを提示。個社完結の効率化から、業界横断の「協調領域」への参画を強く促しています。

野村不動産:自社努力の限界を突破する「共有インフラ」の提供

中長期計画を「実行」に移すための最大のボトルネックが、着荷主側の受け入れ態勢や、拠点スペックの不一致です。
デベロッパーの枠を超えた野村不動産(和田吉朗氏、藤﨑潤氏)は、個別企業が莫大な投資をせずとも共同配送や効率的な積み替え(クロスドック)が行える「共有物流インフラ」を提供。ハード面からの支援策として、マルチテナント型施設の高度活用や共同配送ハブの整備を進め、荷主企業の中長期計画の数値目標(KPI)達成を強力にバックアップしています。

参考記事: 改正物流効率化法は2026年4月施行、特定荷主に迫るCLO選任の必須対応


業界別・プレイヤー別に波及する地殻変動

2026年10月末の中長期計画初提出は、サプライチェーンに関わる全てのプレイヤーに対して不可避の行動変容を迫っています。

製造業者・メーカー

CLOの指揮のもと、営業・調達・生産部門を巻き込んだ「物流起点」の事業計画への組み替えが必要です。これまで物流部門に押し付けられていた「しわ寄せ」を根絶するため、営業が獲得した非効率な小口取引の割増コストを原因部門のP/Lに直接跳ね返させるなど、評価制度を含めたガバナンス改革が不可避となります。

物流施設デベロッパー

個別企業の「自前主義」による物流倉庫の構築は終焉を迎えます。デベロッパーは、入出荷の平準化を支援する「トラック予約受付システム」や「共有配車スペース」などをあらかじめ組み込んだ高機能な「共用インフラ」を荷主へ提供し、サプライチェーンの標準化をハード・ソフトの両面から牽引する存在へと進化していきます。

行政・規制当局

国は、特定荷主3,000社超の「中長期計画」および年1回の定期報告を厳格に監視します。トラックGメンの増員と合わせ、規格(パレットやJANコードなど)がバラバラだった荷主たちを、フィジカルインターネットという国策の統一規格へと強制的に引き寄せていく方針を崩していません。

参考記事: 2026年施行!改正物流効率化法で発・着荷主が負う3大義務と罰則回避の必須対策


LogiShiftの視点:中長期計画を「形骸化」させないための3つの要諦

10月末の計画提出を「単なる役所向けの書類仕事」と捉えている企業は、2030年の輸送力不足(運びきれないリスク)の波に間違いなく飲まれます。LogiShiftでは、提出する計画を「動く戦略」にするための3つの処方箋を提言します。

①:営業部門との対立を避けるな、「物流ペナルティ」の内部課金制度を作れ

「積載率の向上」や「多頻度小口配送の是正」を進める際、最大の敵は顧客の要望を無条件に受け入れる自社の「営業部門」です。CLOは社内規定を改定し、営業が独断で引き受けた「緊急・小ロット・時間指定配送」の超過コストを、物流費ではなく「営業部門の販管費」へダイレクトに計上する仕組みを明文化すべきです。金銭的痛み(ペナルティ)を共有して初めて、営業は能動的に着荷主とリードタイム延長の交渉を開始します。

②:「着荷主」を巻き込む垂直連携へシフトせよ

メーカー(発荷主)同士のヨコの共同配送(水平連携)は、商習慣の違いや新商品情報の取り扱いなど調整コストが高く、頓挫するケースが多々あります。
日清食品が提唱するように、需要と発注データを一元的に握る「着荷主(卸・小売)」を起点とし、複数メーカーの納品条件を着荷主主導で設計し直す「水平×垂直連携」へシフトすべきです。着荷主側にも改正法の責任(着荷主としての荷待ち削減義務)が発生しているため、今こそ共同改善を提案する最大の好機です。

③:共有インフラに「乗る」ための標準化を急げ

自社専用の仕様に固執する限り、共同配送やフィジカルインターネットの恩恵は受けられません。伝票の電子化、パレットサイズの業界標準(T11型)への統一、商品コードの標準化を直ちに実行し、いつでも野村不動産やCODE(共同配送コンソーシアム)のような「共有インフラ」に乗り入れられる「標準化パスポート」を手に入れる必要があります。

参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた対象基準と実務対応を徹底解説


まとめ:明日から意識すべきアクションプラン

10月末の「中長期計画」初提出に向け、残された時間はわずかです。経営層および物流現場リーダーは、明日から以下のステップを実践してください。

  • 自社の貨物取扱実績の正確な再集計:自社(およびグループ全体の横持ち物量)が年間9万トンの「特定荷主」に該当するか、実績をダッシュボード化する。
  • CLO(物流統括管理者)への「社内改善命令権」の付与:営業や生産部門の計画に対し、物流視点から拒否権や改善命令を出せる権限を職務権限規程に明文化する。
  • 共有インフラやプラットフォームへの参画検討:自前での効率化限界を認識し、デベロッパーの共有インフラ活用や異業種コンソーシアムへの合流に向けた対話を開始する。

物流はもはや企業のコストセンターではなく、経営の継続性を左右する「戦略資産」です。他社の先進的な実効策をベンチマークにし、10月末の計画提出を自社のサプライチェーンを強靭化する最大の契機へと昇華させましょう。

出典: LOGISTICS TODAY

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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