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事例・インタビュー 2026年7月15日

カインズが進める物流DXと2026年問題に直結する協調配送戦略

カインズが進める物流DXと2026年問題に直結する協調配送戦略

「運賃の上昇が止まらず、物流コストが利益を圧迫している」
「ドライバー不足で、従来通りの配送スケジュールが維持できない」
物流部門のリーダーや経営層の皆様は、このような深刻な課題に直面していませんか。

近年、物流業界を取り巻く環境は激変しています。
従来の「自社専用のトラックで個別に運ぶ」モデルは、限界を迎えつつあります。

こうした物流危機のなか、ホームセンター大手の株式会社カインズが進める「物流DX」と「共同配送」の取り組みが、業界内で大きな注目を集めています。
同社は、競合の壁を越えた協調領域の構築やデータ活用により、強靭なサプライチェーン(SCM)を再構築しています。

本記事では、カインズが実践するロジスティクス戦略の核心を、具体的な事例やメリットとともに入り口から分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、自社の物流効率化を阻む壁を乗り越え、持続可能な配送網を再構築するための具体的なヒントが得られます。


基礎知識:カインズが主導する物流DXと共同配送の全体像

カインズが挑む「物流DXを活用したSCM・ロジスティクス戦略」とは、一言で表すと「競争から協調へのシフト」と「データによる物理的制約の克服」です。

同社の戦略は、単に自社倉庫内を自動化するだけにとどまりません。
企業間や業界の壁を越えてデータと物理アセット(配送網・拠点)を共有する、極めて高度なロジスティクスを構築しています。

その中核となるのが、以下の2つのアプローチです。

  • 帰り荷の相互活用による共同配送
  • 配送データの共有とITによる最適化

これらがどのような仕組みで動いているのか、図解をイメージした以下の整理表で確認してみましょう。

カインズの共同配送・SCM戦略の基本構造

戦略のアプローチ 具体的な実施内容 解決する物理的課題
帰り荷の相互活用(水平連携) 競合他社の物流センターを中継ハブとし、納品後の空きトラックに相手方の荷物を積載して運行する。 復路における「空車回送(荷物を積まずに走る状態)」の無駄。
データ基盤の共有と最適化 拠点間の運行ルート、出荷量、到着時間などの配送データを物流事業者やパートナー企業とシームレスに連携。 属人的な配車業務による積載率の低下と、納品先での荷待ち時間。

これまで、小売・流通業界において物流網は各社の「差別化の源泉」であり、競合他社には立ち入らせない自社専用の「城」でした。
しかし、カインズはこの固定観念を捨て、物流を社会全体でシェアすべき「協調領域(パブリックインフラ)」として位置づけています。

中立的な3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者と連携し、自社の配送網をオープン化することで、積載効率を極限まで高めることに成功しています。


なぜ今重要なのか:法改正と深刻化するリソース不足

カインズがこれほどまでに物流DXと共同配送を急ぐ背景には、単なる企業のコスト削減要請を超えた、外的なタイムリミットが存在します。
それが、物流の「2024年問題」および「2026年問題」、そして法改正による義務化の波です。

1. 2026年問題とトラックドライバーの不足

2024年4月から施行されたドライバーの年間残業時間上限規制に加え、日本の労働力人口は急速に減少しています。
これにより、2026年には「これまでの運賃ではトラックを確保すらできない」という深刻な局面を迎えています。
日本の営業用トラックの平均積載率は約38%台に低迷しており、各社がバラバラにトラックを手配する従来のやり方では、物流崩壊を免れません。

2. 改正物流効率化法の本格施行

2026年4月に本格施行された「改正物流効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」により、一定規模以上の荷主企業には以下の義務が課されています。

  • CLO(物流統括管理者)の選任
  • 中長期的な物流効率化計画の策定と定期報告

物流の効率化は、もはや任意のアクションではなく、企業のコンプライアンス(法令順守)における最重要項目となりました。
カインズが進める「二酸化炭素(CO2)排出削減」と「積載率の向上」は、まさにこの法規制をクリアするための戦略的先手なのです。


メリット・効果:カインズの「アークランズ連携」にみる劇的変化

カインズのロジスティクス戦略を語る上で、最も象徴的な事例が「アークランズ株式会社との店舗向け共同配送」です。

ホームセンター業界で激しいシェア争いを繰り広げるカインズとアークランズ(ムサシ・ビバホームを運営)は、近畿・東海地方において、競合の壁を越えた画期的な「帰り荷の相互活用」モデルを構築しました。

この取り組みによって得られている具体的な定量・定性効果を整理します。

アークランズ×カインズ共同配送の概要と効果

項目 具体的な内容
連携モデル カインズの「桑名流通センター(三重県)」とアークランズの「猪名川センター(兵庫県)」を相互の中継拠点として活用。自社店舗へ納品した後の「帰り便」で相手方の荷物を運ぶ。
運行パートナー 佐川急便、高末(運行管理とマッチングを担う3PL事業者)
定量効果(年間見込) ・運行回数の削減:年間312回削減 ・環境負荷の低減:CO2排出量 約34.1t削減
定性効果(現場の変化) ・往路と復路の双方で荷物を積むため、実車率が劇的に向上。 ・荷待ち時間(待機時間)の削減による「ホワイト物流」の実現。

なぜこの共同配送は成功したのか?

ホームセンターで扱う商材は、トイレットペーパーのような軽量かさ高品(容積勝ち)から、木材やネジといった重量物(重量勝ち)まで極めて多岐にわたります。
これらは形状がバラバラで、混載(積み合わせ)の難易度が非常に高いのが特徴です。

しかし、両社は同じホームセンター業態であるため、荷姿や荷扱い、配送先店舗のバックヤード構造などの「ローカルルール」やノウハウが共通していました。
つまり「競合だからこそ、荷物やオペレーションの相性が最も良かった」という、逆転の発想が成功を支えているのです。

参考記事: 共同配送とは?仕組みやメリット・デメリット、導入成功のポイントを徹底解説


実践/導入のポイント:失敗しないための3つの重要ステップ

カインズのような共同配送やデータ活用を自社に導入し、物流コスト削減と効率化を成功させるためには、どのようなステップを踏むべきでしょうか。
実務担当者が押さえるべき、失敗しないためのポイントを3つのステップで解説します。

Step 1:自社の配送データと「納品条件」の可視化

最初に行うべきは、自社の出荷物量、運行ルート、コストの可視化です。
しかし、それ以上に重要なのが「納品先独自のローカルルール(納品条件)」の洗い出しです。

  • 納品先での平均待機時間(荷待ち時間)は何時間か
  • パレット納品か、バラ積み・手降ろしを強要されているか
  • 伝票やラベルのフォーマットはどうなっているか

これらの現場データを正確に把握していなければ、他社と配送網をシェアするための交渉テーブルにつくことはできません。

Step 2:非競争領域における「標準化」の推進

他社と共同配送を組むにあたり、最大の障壁となるのが、各社独自の仕様の不一致です。
以下の3点を業界標準に合わせて「標準化」することが、共同物流のパスポート(乗車券)となります。

  • パレット規格の統一:11型(T11)パレットや、レンタルパレットシステムの導入
  • 伝票の共通化:電子受領システムや業界統一伝票への移行
  • サービスレベル(SLA)の緩和:営業部門と連携し、過度な多頻度小口配送や厳格な時間指定を見直す

参考記事: 卸大手9社が共同配送へ!効率20%増を実現する異業種連携と3つの影響

Step 3:信頼できる3PL事業者・テクノロジーの選定

カインズとアークランズの連携でも、佐川急便や高末といった中立的な物流事業者が運行管理を担うことでスムーズな運営が成立しています。
また、複数の荷主間で出荷データを共有する際は、売れ行きや新製品情報といった機密情報が競合に漏れないための「データガバナンス」が不可欠です。

セキュアな外部クラウドを活用し、データをマスキングした上で最適な積載パターンやルートを算出できる、高度な輸配送管理システム(TMS)や3PL事業者を選定することが重要です。


まとめ:持続可能なサプライチェーン構築に向けて

カインズが挑む物流DXと共同配送の取り組みは、これまでの「自社単独での最適化」から、「企業間でリソースをシェアし合う全体最適」へと物流モデルが完全にシフトしたことを示しています。

物流は、もはや単なるコストセンターではありません。
事業の継続性(BCP)を担保し、企業の社会的責任(ESG・CO2削減)を果たすための「最重要の経営戦略領域」です。

この大変革期を乗り越えるため、まずは以下のファーストステップから行動を開始しましょう。

  1. 自社の「復路(帰り便)の空車率」や「待機時間」の実態を数字で把握する
  2. 配送エリアや納品先が重なる、近隣の他社や異業種企業との「協調」の可能性を模索する
  3. 社内の営業部門と物流の危機感を共有し、過度な時間指定などの納品条件を見直す検討を始める

自社の物流をオープン化し、他社との「共創」に一歩を踏み出すことこそが、これからの時代を生き抜く強靭なサプライチェーンを築く鍵となります。

参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説


出典: LogiShift – アークランズ×カインズ共同配送

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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