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事例・インタビュー 2026年7月21日

サンゲツが2.5時間出荷で証明した自動化による人材採用力強化の要諦

サンゲツが2.5時間出荷で証明した自動化による人材採用力強化の要諦

「注文を受けてから発送までに時間がかかりすぎる」
「毎日のように不揃いな資材を手作業で裁断し、梱包するのが限界だ」
このような、リードタイムの長期化や過酷な作業に悩む倉庫管理者や経営層は多いのではないでしょうか。

労働力不足や法規制の強化が重なる中、人海戦術によるアナログな運用は崩壊しつつあります。
この深刻な課題に対し、劇的な成果を上げているのが内装材最大手のサンゲツです。

同社が大阪市に構える「関西ロジスティクスセンター」は、物流システムのトップメーカーであるダイフクの技術を全面採用。
入庫から加工、出庫までの工程をほぼ完全に自動化しました。
その結果、受注から出荷までのリードタイムをわずか2.5時間に短縮。
さらに、「自動化で人が集まる」という新しいコンセプトを具現化しています。

本記事では、この先進的な物流自動化モデルを徹底解剖します。
人手不足の時代を勝ち抜くための、具体的なヒントと実践ポイントを詳しく解説します。

サンゲツ「関西ロジスティクスセンター」の自動化モデルとは?

サンゲツが大阪市淀川区に構築した「関西ロジスティクスセンター(関西LC)」は、西日本エリアのコア拠点です。
延床面積約4万3,880平方メートルの巨大な施設には、壁装材や床材など約12,000点の商品が在庫されています。

この関西LCにおいて、同社はダイフクが構築した先進的な物流システムを採用。
自動倉庫をはじめ、無人搬送車(AGV)、自動裁断機(自動長尺カット機)、自動包装機(自動梱包機)が高度に連携しています。
これにより、注文が入ってからわずか2.5時間で出荷できる体制を確立しました。
従来の「人が歩き回り、手作業で裁断して梱包する」プロセスを根本から刷新した、業界注目のモデルケースです。

2.5時間出荷を支える主要システム

関西LCの圧倒的なスピードと高い自動化を支える主な機能や設備を、以下の表に整理しました。

設備・ロボット 役割・機能 導入による変化
自動倉庫とGTP ロボットが在庫棚を作業者まで搬送 歩行と探索をなくし作業時間を大幅削減
自動裁断機 壁紙などの長尺・重量物を自動で裁断 重作業をなくし品質確認に専念
自動包装機 裁断された製品を自動で素早く梱包 包装のスピードと品質を均一化
無人搬送車(AGV) 裁断から包装、出庫までの搬送を自動化 庫内の搬送プロセスを完全に無人化

このように、バラバラに稼働しがちな各設備がシームレスに連携。
一気通貫した自動化ラインが、2.5時間という驚異的なリードタイムを実現しています。

なぜ今「自動化で人が集まる」アプローチが重要なのか?

物流業界が直面している最大の問題は、極めて深刻な労働力不足です。
さらに、荷待ち時間の短縮や積載率の向上が求められるなど、環境は激変しています。

このような状況下で、サンゲツのロジスティクス部門を率いる内藤孝二執行役員(CLO)は、自動化に対する認識を大きく変えました。
自動化を「省人化の手段(リストラ)」としてではなく、「職場の魅力を高める投資(採用・定着化)」へと再定義したのです。

人間にしかできない「付加価値の高い作業」への特化

内藤氏は「自動化していないのは、壁紙の微細なダメージの有無を確認しながら裁断するといった繊細な作業くらいだ」と語ります。
過酷な肉体労働や、単純な繰り返し作業はロボットやシステムにすべて任せる。
人間は、ダメージの有無をチェックする「繊細な品質確認」といった、高い付加価値を持つ作業に専念します。
これにより、過酷な労働環境が排除され、誰もが安全かつ快適に働ける職場環境が実現しました。

逆転の発想が優秀な人材を惹きつける

「自動化を進めると働く場所が失われる」という従来のイメージ。
これに対し、サンゲツは「最先端の自動化設備が整っているからこそ、働きやすく、人が集まる」という逆転の発想を提示しました。

実際、サンゲツでは「ロジスティクス職」の専門採用枠を設け、若手人材の自社育成に成功しています。
この「人中心のDX」という視点は、これからの採用競争を勝ち抜く上で極めて強力な武器となります。

参考記事: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須
参考記事: 自走式ロボットで生産性向上!コープ自然派に学ぶ「人中心のDX」3つの拠点戦略

サンゲツが実現した劇的なメリットと定量・定性効果

関西LCにおける高度な自動化は、単なる作業の高速化にとどまりません。
企業経営やサプライチェーン全体に対しても、極めて大きなメリットをもたらしています。

1. リードタイム「2.5時間」を武器にする差別化

従来、複雑な裁断加工を伴う建材物流は、出荷までに多大な時間がかかっていました。
関西LCでは、受注から出荷準備の完了までが2.5時間に短縮されました。
この圧倒的なスピード自体が、競合他社との強力な差別化要因となっています。
「必要なときに、必要な量や長さで、すぐに届く」という価値を顧客に提供できるようになりました。

2. 「Vパレ」システムによるトラック荷役の劇的効率化

サンゲツは関西LCの庫内自動化に加え、2025年7月に、内装材特化のパレット輸送システム「Vパレ」を発表しました。
従来は1本あたり約20kgある長尺・重量物の壁紙を、トラックへ手作業で「ばら積み・ばら降ろし」していました。
これを、回転フォークリフトと「Vパレ」を組み合わせることで一挙にパレット輸送化。

これにより、トラックへの積み込み・積み降ろし作業時間が約240分から約30分へと劇的に短縮(約87.5%削減)されました。
この取り組みにより、ドライバーの拘束時間を大幅に削減。
2026年4月に本格施行された改正物流効率化法の「荷待ち時間2時間以内」という規制に、高いレベルで準拠しています。

3. 採用コストの削減と従業員の定着率向上

過酷な肉体労働が徹底的に排除されたため、現場スタッフの離職率が低下しました。
女性や高齢者、若手など、多様な人材が無理なく活躍できる環境が整ったことで、求人に対する応募者数が増加。
結果として、採用コストの大幅な抑制に繋がっています。

参考記事: サンゲツが推進する荷待ち時間2時間以内と積載率20%向上の必須対応

倉庫の自動化を進める3つの実践ポイント

サンゲツとダイフクによる先進的な自動化モデルは、他業界の現場リーダーにとっても大いに参考になります。
しかし、高価な設備をただ導入するだけでは、同様の成果を得ることはできません。
自動化投資を成功に導くための、3つの実践ポイントを解説します。

ポイント1. 自動化する工程と「人の手」を明確に切り分ける

すべての作業を無理にロボット化しようとすると、システムが過度に複雑化し、導入コストが跳ね上がります。
サンゲツのように、「重労働や搬送、単純作業は機械に任せ、微細な傷の確認は人間が行う」という明確な役割分担が重要です。

コンテナからの過酷な荷降ろし作業をAIロボットが担う「デバンニング自動化」なども、同様の思想に基づいています。
自社倉庫におけるボトルネック作業を明確にし、人と機械の適材適所を設計しましょう。

参考記事: サンワサプライ、30kg対応ロボ導入で50℃の過酷現場を自動化し人員半減に直結

ポイント2. 商品の「標準化」と正確なマスターデータの整備

マテハン機器や自動倉庫を自律的に連携させるためには、商品の正確なデータが不可欠です。
商品の三辺サイズ、容積、重量などが正しくWMS(倉庫管理システム)に登録されていなければ、機械は稼働しません。

特に建材やアパレルのように、荷姿が一定でない商品を扱う場合、自動化の前にまず「データの標準化と整備」に徹底して取り組む必要があります。
今後実装が進むとされるヒト型ロボット(ヒューマノイド)なども、この正確なマスターデータがあって初めて真価を発揮します。

参考記事: ヒト型ロボットが仕分け・梱包へ!ダイフクの工場無人化・3年後実証の衝撃

ポイント3. ハードとソフトをシームレスに繋ぐ「全体最適の設計」

自動倉庫、AGV、自動裁断機などの優れた「ハードウェア」を単体で導入しても、それらを制御する「ソフトウェア」が連動していなければ、ラインにボトルネック(停滞)が発生します。
入荷から出荷バースまで、システムが「線」として繋がるような全体最適の設計が不可欠です。

近年、大手マテハンメーカーなども、ハードウェアの製造から、ソフトウェアやデータ連携までをワンストップで提供する「物流DXパートナー」へと変革を進めています。
マルチベンダーの組み合わせによるトラブルを防ぐためにも、システム連携のしやすさを最優先の評価軸に据えましょう。

参考記事: 豊田自動織機が5月25日新体制で推進する物流DXへの変革加速

まとめ:労働環境への投資が「物流難民化」を防ぐ最大の防衛策

サンゲツの関西ロジスティクスセンターが示した自動化の形。
それは、単なる「コスト削減のための省人化」ではなく、従業員の快適性と作業の付加価値を最大化する「人中心の投資」でした。

リードタイムを2.5時間に短縮する強固な仕組み。
そして、過酷な作業から人間を解放し、「人が自然と集まる職場」を構築するアプローチ。
これらは、労働力不足がさらに加速する2026年以降の時代において、企業が生き残るための明確な羅針盤となります。

現場のリーダーや経営層の皆様が、明日から取り組むべきアクションは以下の3点です。
– 自社倉庫の作業を「3K作業(きつい・汚い・危険)」と「付加価値の高い作業」に仕分ける
– 商品マスターデータの正確性をチェックし、自動化システムの連携に向けた基盤を整える
– 非競争領域における「標準化パレット(Vパレ等)」などの、業界を跨いだ協調の仕組みについて情報収集を始める

「運べない・出荷できない」という経営リスクが目の前に迫っています。
サンゲツの自動化モデルを参考に、自社の物流拠点を「人が集まり、価値を生み出す戦略拠点」へとアップデートしていきましょう。


出典: 日経クロステック(xTECH)
出典: LOGI-BIZ online
出典: PR TIMES(サンゲツ プレスリリース)

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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