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物流DX・トレンド 2026年7月22日

鴻池運輸が2026年中20拠点にTMS展開、東阪間の共同配送を加速

鴻池運輸が2026年中20拠点にTMS展開、東阪間の共同配送を加速

鴻池運輸株式会社は2026年7月22日、物流DXを手がける株式会社シマントと協業し、東京-大阪(東阪)間を軸とした往復輸送網の再設計プロジェクトを本格始動したと発表しました。本プロジェクトは、TMS(輸配送管理システム)の活用により配車業務をデジタル化し、拠点整備と集中配車センター化を進めることで、実車率や積載率の向上につなげる共同配送プラットフォームの構築を目指すものです。


東阪間を軸とする往復輸送網再設計プロジェクトの全体像

物流業界が直面するドライバー不足や労働時間規制(いわゆる「2024年問題」に続く「2026年問題」)を背景に、長距離の幹線輸送網における効率化は急務となっています。こうした中、総合物流大手の鴻池運輸と、データ活用による物流DXで注目を集めるシマントがタッグを組み、持続可能な幹線輸送ネットワークの再構築に乗り出しました。

シマントとの協業がもたらすデータ駆動型アプローチ

今回のプロジェクトの最大の狙いは、鴻池運輸が持つ広範な自社幹線網および協力会社の車両と、複数荷主の配送データをシームレスに統合・可視化することにあります。

一般に、幹線輸送においては「曜日ごとの物量変動(曜日波動)」や、往路と復路の不均衡によって生じる「片荷輸送(空車回送)」が、実車率や積載率を低下させる大きな要因となっています。シマントのデータ統合・解析技術を活用することで、これらの動態データをリアルタイムで可視化し、動的な混載、中継拠点の活用、さらにはシャシー(シャーシ)の共有といった柔軟な運行計画を自動的かつ動的に組み上げることが可能になります。

なお、今回のプロジェクトは鴻池運輸とシマントによる業務上の協業であり、両社間に資本提携や出資、親会社・子会社などの資本支配関係は存在しません。純粋に両社の技術とアセットを持ち寄ったオープンなアライアンスです。

2026年中に20拠点へ展開するTMSプロジェクトのロードマップ

本プロジェクトは突発的に立ち上がったものではなく、緻密な計画に基づいて段階的に推進されています。2025年8月に社内の「ロジスティクス戦略委員会」において構想を立ち上げて以来、2026年1月にはTMS(輸配送管理システム)のMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を完成させました。

プロジェクトの主要な時系列と今後のロードマップは、以下の通り整理されます。

時期 実施フェーズ 主な内容
2025年8月 構想の検討開始 ロジスティクス戦略委員会にて、データ駆動型の東阪間幹線輸送網の再設計プロジェクトを起案。
2026年1月 MVPの完成 TMS(輸配送管理システム)のMVPをスピード構築。配車デジタル化の基礎を確立。
2026年3月 協業施策の整理 シマントの伴走支援のもと、具体的な拠点整備と配車一元化の運用モデルを策定。
2026年7月 プロジェクト 본격始動 東京-大阪間を軸とした幹線網再設計および集中配車センター構築プロジェクトの本格始動を発表。
2026年中 20拠点への迅速展開 全国20拠点へTMSを順次導入し、各拠点の配送データの整理・統合を急速に推進予定。

3つの主要プレイヤーに及ぼす業界構造変化へのインパクト

鴻池運輸が推進する「データ駆動型共同配送プラットフォーム」の構築は、物流の需給バランスやプレイヤー間の立ち位置を大きく変える可能性を秘めています。

鴻池運輸が目指す「輸送プラットフォームプロバイダー」への脱皮

実務を担う3PL事業者である鴻池運輸にとって、本プロジェクトは単なる「自社アセットの効率化」に留まりません。

鴻池運輸はこれまでも幹線輸送の効率化に注力しており、直近の2026年5月25日には、サントリーホールディングスおよびダイキン工業と連携した「ダブル連結トラック」による異業種共同往復輸送(群馬〜京都/大阪〜神奈川)のルートを拡大した実績を持ちます。この取り組みは、飲料(重量勝ち)と空調製品(容積勝ち)という、輸送特性が相反する「重軽混載」によるラウンドユースを物理的に実現した画期的な事例でした。

今回のシマントとの協業は、こうした物理的な共同配送の成功体験をシステム上で一元化し、自社車両だけでなく協力会社の車両や異業種の複数荷主データを「集中配車センター」で統合コントロールすることを目指しています。これにより、同社は単なる輸送受託者から、リソースを差配する「物流コーディネーター」および「輸送プラットフォームプロバイダー」としての地位を確固たるものにすることになります。

参考記事: 鴻池運輸とダイキン工業の年間250台削減共同往復輸送、共有インフラ移行が加速

シマントの配車アルゴリズムが広域物流網のハブに

協業相手であるシマントは、配車管理システム「ロジGo」や、ナカノ商会と共同開発した輸配送計画システム「Auto Dispatch」などで豊富な開発実績を持つ、物流IT領域の急成長スタートアップです。2026年2月には、国土交通省のモーダルシフト促進事業において「大阪トラックディスパッチ推進協議会」の幹事企業を務めるなど、複数企業間での共同物流実証において豊富な知見を有しています。

鴻池運輸の巨大なフィジカルネットワークにシマントの動的配車アルゴリズムが組み合わさることで、実地運用のデータをリアルタイムに収集・学習し、複雑な配車計画を自動で高速に最適化するシステムが実現します。

参考記事: TMS(輸配送管理システム)とは?機能から導入メリット・選び方まで完全解説

荷主企業が直面する「自社専用便」からの脱却と重軽混載の必要性

荷主となる製造業者やメーカーにとって、これまで一般的だった「自社専用便」による囲い込みは、もはやコスト的にもドライバー確保の観点からも限界を迎えています。

今後は、自社の出荷予定データや積載データをプラットフォームに提供し、他社との混載や共同配送を許容することが不可欠になります。特に、曜日ごとの需要変動が激しい製品や、片道輸送になってしまいがちな拠点を抱える荷主企業は、このプラットフォームへ参画することで、自社単独では不可能だった「往復輸送のラウンドユース」の恩恵を享受し、持続可能なサプライチェーンを維持できるようになります。

参考記事: 共同配送とは?仕組みやメリット・デメリット、導入成功のポイントを徹底解説


LogiShiftの視点:フィジカルインターネットの進展と「データ標準化の壁」

鴻池運輸の挑戦は、日本政府や業界が目指す究極の効率化モデル「フィジカルインターネット」の極めて実戦的な初期実装フェーズと言えます。しかし、これを業界全体のオープンなインフラへと拡張していくためには、避けて通れない「見えない壁」が存在します。

共有インフラ型物流における非競争領域の協調

物流リソースの枯渇が叫ばれる中、配送手段のシェアリングは「競争」ではなく「協調」の領域へと完全にシフトしています。

個々の企業が個別にトラックを手配する非効率を排除し、複数メーカーの貨物を1つのシャシーに混載して中継拠点をハブに幹線輸送するモデル(ハブ&スポークモデル)は、長距離ドライバーの肉体的負担を軽減し、日帰り運行を可能にする「中継輸送」の普及にも直結します。

参考記事: 幹線輸送とは?ハブ&スポークの仕組みや地場配送との違い、効率化の最新策を徹底解説

複数企業間のデータ共有ルールとAPI連携の整備

しかし、これをグループ外の外部荷主や競合関係にある3PL、協力運送会社へ拡大するにあたり、最大のボトルネックとなるのが「データの共有ルール」と「システムの標準化」です。

各社が保有する運行データや出荷データは、機密情報としての側面も強く、どのような条件で開示・共有し、運賃や削減メリットをどのように配分(レベニューシェアリング)するのかという運用ガイドラインの策定が不可欠です。また、WMS(倉庫管理システム)や各社のTMS間でデータをスムーズに双方向連携させるためには、外装サイズやパレット規格の統一、標準APIの整備といったデジタル基盤の標準化を業界全体で推し進める必要があります。


まとめ:持続可能なサプライチェーン構築に向けて明日から取り組むべきアクション

鴻池運輸とシマントによる今回の往復輸送網再設計プロジェクトは、物流DXが「単なる業務のデジタル化」を超えて、「業界標準のプラットフォーム構築」へと昇華しつつあることを示す好例です。

物流現場の経営層やリーダーが、このパラダイムシフトの波に乗り遅れないために、明日から取り組むべきアクションは以下の3点です。

  • 自社出荷データのデジタル化と可視化
    自社の積載率、実車率、および「曜日波動」の波をデータとして正確に把握・整理してください。可視化されたデータがなければ、共同配送プラットフォームへの適合性を診断することすらできません。

  • 業界標準の規格(パレット・伝票・API)への準拠
    他社との共同配送や混載にいつでも合流できるよう、自社独自の梱包ルールや伝票フォーマットを見直し、業界標準のパレット規格やデジタルフォーマットへの統一化に向けたプロジェクトを立ち上げてください。

  • 非競争領域における「協調」へのマインド転換
    「物流は競合優位性を競うものではなく、共に維持するインフラである」という前提のもと、異業種を含めた他社とのアライアンスの可能性を模索し、対話のチャネルを広く開拓してください。

自社の強みである「商品力」の競争に集中するためにも、届ける手段としての「物流」をいかに共有インフラへとシフトさせ、最適化できるか。このデータ駆動型のロジスティクス戦略こそが、次世代のサプライチェーンにおける生き残りの鍵を握っています。


出典: LOGISTICS TODAY
出典: PR TIMES(シマント プレスリリース)
出典: LNEWS

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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