アース製薬、鈴与、T2の3社は2026年7月21日から23日にかけ、茨城県古河市と兵庫県赤穂市を結ぶ約680kmの区間で自動運転トラックとスワップボディ車を連携させた中継輸送実証を行い、T2が担当する神奈川県~兵庫県の区間で「1日1往復」のオペレーションに成功しました。洗口液「MONDAMIN(モンダミン)」を対象とした本実証は、将来のレベル4自動運転を見据えた日用品幹線輸送の能力倍増と、中継拠点を活用した高度な物流インフラ化を力強く手繰り寄せるものです。
ニュースの背景・詳細:自動運転区間における「1日1往復」検証の全貌
今回の実証実験は、将来的なレベル4(特定条件下の完全無人)自動運転トラックによる幹線輸送サービスの商用化を想定し、極めて実務的な運用設計のもとで実施されました。
日本の主要大動脈である関東〜関西間において、荷主企業であるアース製薬、物流事業者の鈴与、テクノロジーベンダーのT2が三位一体となり、実商流の貨物を積載して中継輸送の成立性を確認した点に大きな意義があります。
実証実験の概要と5W1H
実証の基本構造と関係者の役割、対象区間の仕様は以下の通り整理できます。
| 項目 | 詳細情報 | 物流業界における意義・目的 |
|---|---|---|
| 実施主体 | アース製薬株式会社(荷主)、鈴与株式会社(物流事業者)、株式会社T2(自動運転技術・サービス開発) | 荷主・物流・技術ベンダーが協調し実商流オペレーションを検証 |
| 実証実施期間 | 2026年7月21日(火)〜23日(木) | 実ダイヤに合わせた高稼働ピストン運行の成立性を確認 |
| 輸送品目 | 洗口液「MONDAMIN(モンダミン)」 | 需要変動(デマンド)が大きく安定供給が求められる日用品 |
| 対象区間 | 茨城県古河市(アース製薬関東倉庫)〜兵庫県赤穂市(アース製薬赤穂工場)の往復(片道約680km) | 関東〜関西圏を貫く超長距離幹線輸送ルート |
| 主な検証テーマ | レベル4導入時の「関東〜関西間での1日1往復運行」およびスワップボディによるコンテナ移し替え | 従来のドライバー1名体制での限界を打破する高稼働化と省人化 |
輸送行程の内訳と自動運転区間の詳細
片道約680kmにおよぶ全行程は、役割や走行環境に応じて区間ごとに最適な技術とオペレーションが組み合わされました。
古河市(関東倉庫)〜海老名市(T2車庫)[約120km]
鈴与の通常トラック(有人運転)が、アース製薬関東倉庫で「MONDAMIN」を積載したスワップボディコンテナを回収し、神奈川県海老名市にあるT2自社車庫まで輸送。
海老名市(T2車庫)でのコンテナ移し替え
T2自社車庫において、鈴与のトラックとT2の自動運転トラックの双方のエアサスペンション機能を活用し、スワップボディコンテナを自力で着脱・移し替える「荷役分離」を実施。
海老名市(T2車庫)〜赤穂市(赤穂工場)[約560km]
T2のレベル2自動運転トラックにコンテナを接続し、兵庫県赤穂市のアース製薬赤穂工場まで輸送。
レベル2自動運転適用区間
東名高速道路・綾瀬スマートIC(神奈川県)から名神高速道路・吹田JCT(大阪府)までの約440kmの高速道路区間において、レベル2自動運転システムによる走行を実施。
トランスゲート拠点への立ち寄り検証
神奈川県綾瀬市の「トランスゲート綾瀬」および兵庫県神戸市の「トランスゲート神戸西」に往路・復路ともに立ち寄り。将来のレベル4(無人走行)導入時を見据え、高速道路(無人)と一般道(有人)を切り替える際のドライバー乗降および車両運用のプロセスを検証。
参考記事: 国内初!T2自動運転切替拠点「トランスゲート」設置で運送・倉庫業に迫る3つの影響
関係企業の背景と「1日1往復」がもたらす構造的進化
今回の実証に参加した3社は、それぞれ明確な背景と狙いを持ってこのプロジェクトに参画しています。
荷主・アース製薬の背景
アース製薬が取り扱う洗口液や殺虫剤などの日用品は、季節変動やプロモーションによる需要の増減(需要急増)が著しく、近年のトラックドライバー不足や長距離運賃の上昇による影響を強く受けやすい環境にあります。自社の安定したサプライチェーン(物流BCP)を維持するため、荷主として早期から自動運転ネットワークの活用に乗り出しています。
物流事業者・鈴与の背景
鈴与は自動運転スタートアップであるT2の株主(出資企業)であり、自動運転トラックを活用した物流オペレーション構築の主要パートナーです。2025年11月からは、京都府から神奈川県間において顧客である月桂冠の日本酒を定期輸送する商用運行を開始しています。今回の実証は、重量物である日本酒とは異なる特性を持つ「日用品(洗口液)」へと自動運転中継の適応範囲を拡大する重要なステップとなります。
技術ベンダー・T2の背景
T2は、2027年度以降のレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービスの商用化を目指しています。
| 比較項目 | 従来の有人トラック運行(ドライバー1名) | レベル4自動運転による将来運行(T2構想) |
|---|---|---|
| 運行の限界 | 改善基準告示(拘束時間規制)により片道輸送(約500〜600km)が限界 | 高速道路区間の無人走行により1日1往復(約1,000〜1,300km)が可能 |
| 車両稼働率 | 荷卸し待機やドライバーの休憩・車中泊により稼働率が低下 | 車両をほぼ24時間連続稼働させることが可能 |
| 1台あたりの輸送能力 | 基準(1日片道1便) | 従来の約2倍(1日往復2便分) |
| ドライバーの役割 | 全区間の過酷な長距離運転と荷役を担当 | トランスゲート周辺の地場配送や切り替え管理に特化 |
参考記事: 株式会社T2が国交省事業に採択、2026年1月からの共同実証で幹線無人化が加速
業界への具体的な影響:プレイヤー別に生じる地殻変動
アース製薬、鈴与、T2が成し遂げた「関東〜関西間680kmでの自動運転中継実証」は、サプライチェーンに関わるあらゆるプレイヤーに対してビジネスモデルの再構築を求めています。
製造業者・メーカー:自らの「運ぶ力」を構築する「戦略的荷主」への進化
これまで多くの製造業者にとって、物流は運送会社へ全面的に委託する「コストセンター」という位置づけが一般的でした。しかし、ドライバー不足や改正物流効率化法の施行により、「運賃を払ってもトラックが手配できない」リスクが顕在化しています。
アース製薬のように、自ら自動運転ベンダーや物流会社と組み、初期の実証から運行ルートや荷姿の検証に関与する姿勢は、自社の製品を確実に市場に届けるための「能動的な輸送力確保」に直結します。
特に日用品や消費財を展開するメーカーにとって、安定した幹線輸送枠を自動運転プラットフォーム上に確保しておくことは、将来の競合優位性を左右する決定的な差となります。
運送事業者:自前主義から「中継オペレーションの内製化」へのシフト
長距離幹線輸送を自社のトラックと自社雇用のドライバーだけで完結させる旧来の自前主義は、コストとコンプライアンス(改善基準告示遵守)の両面で限界を迎えつつあります。
運送会社は、自動運転トラックを競合脅威として排除するのではなく、中継輸送とスワップボディ車を組み合わせた新たなオペレーションを自社の強みとして取り込むことが不可欠です。
長距離の過酷な深夜高速運転を自動運転システムに委ね、自社ドライバーは「拠点(トランスゲート)から集荷先・納品先までのミドルマイル・ラストワンマイル」に集中配置することで、労働環境の劇的な改善と若手・女性ドライバーの採用力強化を両立させることができます。
参考記事: スワップボディコンテナとは?仕組みやトレーラーとの違い、導入メリットをわかりやすく解説
SaaS・テクノロジーベンダー:単なる技術提供から「現場調停システム」の提供へ
自動運転技術を開発するテクノロジーベンダーや物流SaaS企業にとって、単に「車両を走行させるアルゴリズム」の提供だけでは不十分です。荷主や物流会社の実オペレーションに深く潜り込み、共同で現場検証を行う重要性が急増しています。
どれほど自動運転トラックが高速道路を24時間走り続けようとも、中継拠点でのスワップボディコンテナの移し替えや、有人トラックとのドッキングでタイムロスが生じては、高額な自動運転車両のROI(投資対効果)が低下します。
今後は、車両の到着予定時刻(ETA)をミリ秒単位で高精度に予測し、拠点でのコンテナ着脱や有人トラックの手配をリアルタイムで調停・最適化するTMS(運行管理システム)やWMS(倉庫管理システム)とのAPI連携プラットフォームが強い価値を持つようになります。
LogiShiftの視点(独自考察):装置産業化する物流と「物理インターフェース」の標準化
アース製薬・鈴与・T2による今回の成功事例に基づき、日本の幹線物流が辿るべき構造的変化について独自の視点から解説します。
「人依存の労働集約型」から「高稼働の装置・システム産業」への構造転換
本実証の最大の核心は、将来のレベル4自動運転を見据えた「1日1往復(約1,300km規模の稼働)」が現実的な運用フローとして成立することを示した点にあります。
従来の日本の物流は、ドライバー個人の体力と時間外労働に頼る「人依存の労働集約型モデル」でした。しかし、自動運転トラックとスワップボディ車、そして「トランスゲート」という切替拠点が物理的に統合されることで、物流は「高度なアセットとシステムをいかに24時間365日休まず回すか」という「装置産業」へと完全に変貌します。
この装置産業化された物流网においては、トラック1台あたりの輸送能力が従来の2倍に跳ね上がります。この高稼働な自動化パイプラインへ自社の貨物を接続できる企業と、従来の非効率な手作業・直行便に固執する企業との間には、将来的に圧倒的なコストと輸送スピードの格差が生じることになります。
参考記事: 東レ株式会社が520km自動運転トラック商用運行、自社輸送力確保が加速
成功の分かれ目は「スワップボディ等の物理的インターフェースの共通化」
レベル4自動運転による「1日1往復」の高稼働オペレーションを実現するためには、走行技術以上に「拠点での待ち時間ゼロ化」が絶対条件となります。
今回の実証でT2自社車庫(海老名市)において実施されたスワップボディコンテナの移し替えは、まさに「荷役分離(アンバンドル化)」の象徴的な解決策です。重機を使わずにエアサスペンションでコンテナを自力着脱する仕組みは、車両のダウンタイム(待機時間)を最小化します。
しかし、これを業界全体の共通インフラとして普及させるには、コンテナの寸法やドッキング部の仕様、エアサスペンションの制御規格といった「物理的インターフェースの標準化」が不可欠です。特定企業内だけで閉じた独自規格ではなく、複数荷主や異業種間で相互利用できるオープンプラットフォーム化を主導できたプレイヤーこそが、次世代の幹線物流のデファクトスタンダードを掌握することになります。
参考記事: 日本郵便の1100km自動運転実証、スワップボディで長距離輸送の省人化に直結
まとめ:自動運転中継の社会実装に向け、明日から意識すべき3つのアクション
アース製薬、鈴与、T2による実証成功は、自動運転トラックが実験段階を超え、実用的な「物流インフラ」として機能し始めていることを証明しました。
この変化の波に乗り遅れないために、物流に関わる経営層や現場リーダーが明日から意識・実践すべき具体的アクションは以下の3点です。
自社幹線ルートの可視化と高稼働プラットフォームへの適応検討
関東〜関西間をはじめとする自社の長距離輸送ルートの物量、ダイヤ、輸送コストをデータ化し、将来的にトランスゲート間などの自動運転中継ネットワークへ移行できる区間を早期に特定する。
「荷役分離」を可能にするパレタイズ・スワップボディ対応の推進
バラ積み・手作業による積載慣行を廃止し、パレット輸送への完全移行や、車体と荷台を物理的に分離できるスワップボディ車両・トレーラーを活用した荷役分離の現場体制を構築する。
切替拠点「トランスゲート」周辺を意識した拠点の立地戦略
今後の物流拠点開発や配送デポ選定において、単なる消費地へのアクセスだけでなく、主要高速道路ICや「トランスゲート」などの有人・無人切替拠点へのアクセスの良さを重要な評価基準に加える。
自動運転と中継輸送の融合は、ドライバー不足に対する対症療法にとどまらず、日本のサプライチェーン全体を飛躍的に進化させる最大のイノベーションです。変化を静観するのではなく、自社のオペレーションを次世代インフラへ接続するための最初の一歩を今すぐ踏み出すことが求められています。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: PR TIMES
出典: T2 公式サイト
出典: トラックニュース

