SGホールディングスグループでロジスティクス事業を展開する佐川グローバルロジスティクス株式会社は2026年8月3日、茨城県つくば市に倉庫面積7,048.47坪の「つくば営業所」を開設し、8月より本格稼働を開始したと発表した。複数拠点に分散していた荷主の物流機能を一元化し、独自開発のWMS(倉庫管理システム)で保管・出荷プロセスを可視化する本拠点は、輸送コスト上昇と労働力不足に直面する物流現場の構造改革を強力に後押しする戦略拠点となる。
ニュースの背景と「つくば営業所」の概要
近年、物流業界ではトラックドライバーの時間外労働上限規制に伴う「2024年問題」に続き、2026年4月に本格施行された改正物流効率化法(改正物効法)への対応が最優先課題となっています。深刻な労働力不足や燃料価格の高騰を背景に、従来の分散型物流ネットワークから、輸送距離の縮小と庫内オペレーションの高度化を両立させる「拠点集約型」への見直しが急速に進んでいます。
こうした市場環境のもと、3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)大手である佐川グローバルロジスティクス(本社:東京都品川区、代表取締役社長:坂上公彦)は、首都圏および東日本エリアの輸送網を補強する新拠点として「つくば営業所」を開設しました。
「つくば営業所」の基本スペックと立地特性
本拠点は、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)や常磐自動車道へのアクセスに優れ、広域配送拠点として高い地政学的アドバンテージを有しています。
| 項目 | 詳細内容 | 補足・実務上の利点 |
|---|---|---|
| 拠点名称 | 佐川グローバルロジスティクス株式会社 つくば営業所 | 2026年8月より本格稼働(8月3日発表) |
| 所在地 | 茨城県つくば市さくらの森25番地2 | つくばエリアの物流集積地に位置 |
| 賃借面積 | 倉庫:7,048.47坪(約23,301㎡) 事務所:195.06坪(約645㎡) | 大型貨物や多品種在庫に対応可能な大容量 |
| 主なアクセス | TX「つくば」駅 約3.5km 圏央道「つくば中央」IC 約8.0km(車約20分) 常磐道「土浦北」IC 約8.5km(車約15分) 常磐道「谷田部」IC 約13km(車約30分) | 首都圏全域および東北方面への幹線輸送・中継に好立地 |
電動工具メーカーの事例:2拠点集約による課題解消
「つくば営業所」の本格稼働において象徴的なのが、開設にあわせて入居した大手電動工具メーカーの物流改革事例です。
このメーカーでは、従来、複数の物流拠点に在庫を分散配置して運用していました。しかし、拠点間で頻繁に発生する「横持ち輸送(拠点間移動)」に伴う輸送コストの増加や、拠点ごとに分断された在庫管理の複雑化が経営上の大きなネックとなっていました。
佐川グローバルロジスティクスは、これらの課題解決に向けて、2拠点に分散していた物流機能を「つくば営業所」へ1拠点集約するソリューションを提案・構築しました。集約によって拠点間輸送そのものを削減(横持ちのゼロ化)し、物流コストの最適化を推進。さらに同社が自社開発した独自のWMS(倉庫管理システム)を導入することで、入荷・保管・ピッキング・出荷に至る一連のプロセスをリアルタイムでデジタル可視化しました。これにより、高精度な在庫管理体制と安定した出荷オペレーションの両立を実現しています。
参考記事: 横持ちとは?物流現場で発生する無駄なコストの原因とDXによる削減手法を徹底解説
参考記事: WMS(倉庫管理システム)とは?在庫管理システムとの違いや導入メリット、選定手順を解説
2026年における佐川グローバルロジスティクスの大型拠点展開
今回稼働した「つくば営業所」は、佐川グローバルロジスティクスにとって2026年だけで4件目となる大型営業所の開設実績となります。同社は荷主企業の事業拡大や供給網の再構築に応えるため、全国で急速なネットワークの拡充を続けています。
| 開設・発表日 | 拠点名称 | 所在地 | 規模・開設の主な目的 |
|---|---|---|---|
| 2026年6月29日発表(7/1開設) | Logi東松山営業所 | 埼玉県東松山市 | 約1万坪。ラグジュアリーブランドの物量拡大に対応 |
| 2026年7月1日開設(7/2発表) | 千葉宮野木営業所 | 千葉県千葉市 | 「coca公式ストア」向け拠点。ECと店舗物流の統合・自動化 |
| 2026年7月2日発表 | 札幌米里営業所 | 北海道札幌市 | 北海道エリアの需要拡大に伴う配送網・保管体制の増強 |
| 2026年8月3日発表(8月稼働) | つくば営業所 | 茨城県つくば市 | 倉庫約7,048坪。電動工具メーカーの2拠点集約と独自WMS運用 |
このように、特定の荷主の成長フェーズや課題に合わせた最適なアセット配置と、自社開発システムを組み合わせた高付加価値3PLサービスの提供が同社の強力な成長エンジンとなっています。
参考記事: SGシステムの中小向け倉庫運用システムで脱アナログ!現場DXを加速する3つの影響
サプライチェーンを構成する主要プレイヤーへの具体的な影響
「つくば営業所」の開設と拠点集約ソリューションの稼働は、荷主企業(メーカー・製造業)、3PL・倉庫事業者、そして現場の運送事業者やドライバーに対し、それぞれ異なる観点から重大なインパクトをもたらします。
1. 製造業者・メーカーへの影響:無駄な輸送費の排除と在庫の一元可視化
改正物流効率化法により、指定を受けた特定荷主企業には役員クラスの物流統括管理者(CLO)の選任や、中長期計画の策定・報告が法的義務として課されています。荷主企業にとって「トラックの手配困難」や「輸送費用の上昇」は単なる現場の課題ではなく、事業の継続性を揺るがす経営リスクです。
電動工具メーカーの事例に見られるような拠点集約は、以下のメリットをもたらします。
- 拠点間移動(横持ち)コストの根本的削減
倉庫間で物品を移動させるだけの「付加価値を生まない輸送コスト」を大幅に削減またはゼロ化できます。 - 在庫の一元化によるキャッシュフローの改善
複数拠点に分散していた安全在庫を統合・削減(安全在庫のルート法則による圧縮)し、適正な在庫レベルを維持できます。 - 独自WMSによるデータの精度向上
荷主側の基幹システム(ERP)と3PL側のWMSが連動することで、全社の在庫状況や出荷進捗が可視化され、欠品防止やリードタイム短縮に直結します。
荷主企業は、自社の物流拠点が「分散による無駄」を生んでいないかを再検証し、戦略的な拠点集約へ踏み切ることが求められています。
参考記事: 7月15日始動、佐川グローバルロジスティクス新サービスで特定荷主の法対応が加速
2. 倉庫事業者・3PLへの影響:「場所貸し」からの完全脱却とソリューション競争の激化
従来の倉庫事業者の主なビジネスモデルは、坪単位でスペースを提供する受託型の保管業務(場所貸し)が中心でした。しかし、荷主企業が高度な効率化と法対応を求める現在、単に倉庫を所有しているだけの事業者は選ばれなくなっています。
佐川グローバルロジスティクスのように、以下の要素を統合して提供できるかが3PL事業者の勝敗を分ける基準となっています。
- 自社開発WMSによるプロセス可視化
荷主ごとにカスタマイズやデータ連携をスムーズに行えるデジタル基盤の提供。 - データに基づく拠点再編コンサルティング
荷主の配送データや出荷実績を分析し、最適な拠点立地や集約案(横持ち削減など)を定量的に示せる分析力。 - SGホールディングスグループの総合力連携
佐川急便の幹線輸送・集配網や、SGシステムのITソリューションと連動したワンストップサービスの展開。
3PL企業は、自社のアセット(倉庫)にデジタル(WMS)とコンサルティングを掛け合わせ、荷主の事業成長を支援する「パートナー型ロジスティクスプロバイダー」へと脱皮することが不可欠です。
3. 運送事業者・ドライバーへの影響:無駄な走行・待機時間の削減と輸送力の有効活用
全国的なドライバー不足と時間外労働規制の強化が進む中、限定された輸送リソースをいかに効率的に運用するかが物流業界全体の死活問題です。
拠点集約と独自WMSの導入は、最前線の配送現場に対しても明確なプラスの効果をもたらします。
- 無駄な短距離走行(横持ち)の排除
拠点間のピストン輸送に割かれていたトラックとドライバーを、本来の製品出荷や幹線輸送へ振り向けることができます。 - 庫内作業の高度化による荷待ち時間の緩和
WMSによって入荷・出荷のタイミングが精緻に管理されることで、倉庫に到着したトラックの荷待ち時間(待機時間)や荷役作業時間が短縮されます。 - 幹線ハブ網との親和性向上
つくばエリアは圏央道・常磐道へのアクセスに優れているため、佐川急便の「関東ハブセンター」などの大型中継拠点と連動した高効率な幹線輸送網にスムーズに接続できます。
無駄な運行や待機時間を削減することは、ドライバーの労働環境改善に直結し、コンプライアンス順守と輸送力の維持に大きく貢献します。
参考記事: 佐川急便、江東区に8.7万㎡の関東ハブセンターを稼働し幹線輸送網強化が加速
LogiShiftの視点(独自考察):物流拠点は「単なる保管庫」から「サプライチェーン全体のデータ制御塔」へ
佐川グローバルロジスティクスの「つくば営業所」開設と電動工具メーカーの拠点集約事例は、今後の日本のロジスティクス戦略が目指すべき方向性を明確に示しています。LogiShiftの視点から、このニュースが示唆する構造変化と今後の展望を解説します。
「つくば」という立地が持つ地政学的価値と圏央道ネットワーク
今回開設された「つくば営業所」の立地(茨城県つくば市さくらの森)は、単に土地が確保できたから選ばれたのではありません。つくばエリアは、圏央道「つくば中央IC」および常磐道「土浦北IC」「谷田部IC」の至近に位置しており、首都圏の環状ネットワークと東日本を結ぶ重要結節点(ノード)です。
都心部に大きな倉庫を構えるコストを回避しつつ、圏央道経由で東名・中央・関越・東北の各自動車道へダイレクトにアクセスできるため、東日本全域をカバーする広域配送拠点、あるいは幹線輸送の「中継拠点」として極めて効率的な配置と言えます。今後も圏央道沿線エリアへの物流集積と、都心部からの拠点の分散・集約(ハブ&スポーク構造の再編)は加速していくと考えられます。
「無駄な横持ちの排除」が、荷主企業CLOの法的評価を左右する
2026年4月にスタートした改正物流効率化法では、特定荷主に対してトラックの荷待ち・荷役時間の削減や積載効率の向上など、具体的な数値改善が求められています。
従来、見過ごされがちだった「工場から一時保管倉庫への移動」や「複数倉庫間の在庫移動」といった「横持ち輸送」は、二酸化炭素(CO2)を排出するだけでなく、ドライバーのリソースを無駄に消費し、荷待ちを発生させる最大の原因の一つでした。
つくば営業所の事例のように、「複数拠点を1拠点へ集約し、横持ちをゼロにする」という決断は、荷主企業のCLO(物流統括管理者)が行政に提出する「中長期計画」や「定期報告」において、極めて明快で効果の高い削減実績となります。単なるコスト削減を超え、「コンプライアンス順守とサステナビリティの証明」として拠点集約の重要性が跳ね上がっています。
WMSによる「庫内データの可視化」がフィジカルインターネットの前提条件となる
佐川グローバルロジスティクスが独自WMSを軸にソリューションを展開している点は、今後の物流プラットフォーム構築において重要です。
将来的に業界全体でトラックや倉庫スペースをシェアリングする「フィジカルインターネット」を実現するためには、各拠点の在庫状況、入荷・出荷のタイミング、荷物の容積データなどが標準化され、リアルタイムで外部と連携できる状態でなければなりません。
独自WMSによってプロセス全体の「データ化」と「可視化」を推進することは、自社内の作業効率化にとどまらず、将来的に他社との共同配送や幹線輸送シェアリングへスムーズに接続するための「デジタルパスポート」を手に入れることを意味します。拠点の集約とデジタル化をセットで進める同社の手法は、次世代物流インフラの標準モデルと言えるでしょう。
参考記事: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須
まとめ:明日から経営層と実務リーダーが実践すべき3つのアクション
佐川グローバルロジスティクスの「つくば営業所」本格稼働と拠点集約事例は、輸送力の不足とコスト上昇に直面するすべての企業にとって、自社の物流構造を見直す絶好の契機となります。
経営層や物流部門のリーダーは、明日から以下の3つのアクションに取り組むべきです。
- 自社サプライチェーンにおける「横持ち輸送」の完全な洗い出し
自社の工場、一次倉庫、二次倉庫、外部委託倉庫の間で発生している「拠点間移動(横持ち)」の年間走行距離、発生費用、CO2排出量を数値として可視化する。 - 拠点集約に向けた「安全在庫」と「配送リードタイム」の再設計
複数拠点を1〜2カ所の大型拠点へ集約した場合の在庫圧縮効果と、主要納品先への配送リードタイムへの影響をシミュレーションし、部分最適(拠点ごと)から全体最適へのシフトを検討する。 - データ連携を前提とした「高機能WMS」の導入・刷新アセスメント
単に伝票を発行するだけの古い倉庫システムから脱却し、入荷から出荷までの全プロセスをリアルタイムで可視化・データ共有できるWMS基盤(または対応可能な3PL事業者)の選定に着手する。
物流を単なる「発生するコスト」として捉える時代は終わりました。アセットの集約とデジタル技術を組み合わせ、持続可能で強固なロジスティクス構造を自ら構築する企業こそが、2026年以降の厳しい市場環境を勝ち抜くことができるのです。
出典: 佐川グローバルロジスティクス株式会社(SGホールディングス公式)
出典: 佐川グローバルロジスティクス株式会社 公式サイト
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS


