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Home > 輸配送・TMS> アイリスオーヤマ、1100km区間で自動トラックと鉄道連携|幹線省人化が加速
輸配送・TMS 2026年8月5日

アイリスオーヤマ、1100km区間で自動トラックと鉄道連携|幹線省人化が加速

アイリスオーヤマ、1100km区間で自動トラックと鉄道連携|幹線省人化が加速

アイリスオーヤマ、NLP協同組合、T2の3者は、佐賀県鳥栖市から神奈川県川崎市までの約1,100kmに及ぶ長距離区間において、自動運転トラックと貨物鉄道を連携させた「モーダルコンビネーション」の実証実験を実施しました。巨大荷主自らが実証を主導し、長距離輸送における「人手に頼らない幹線網」の成立性を実証したことは、ドライバー不足に悩む物流業界の構造転換を大きく加速させます。

ニュースの背景・詳細:1,100kmを繋ぐモーダルコンビネーション

今回の実証実験は、物流業界が直面するドライバー不足による輸送能力の低下や、脱炭素化(CO2排出量削減)への要請に対応する画期的な取り組みとして実施されました。

実証は2026年7月9日から10日にかけての2日間で行われ、アイリスオーヤマ鳥栖工場(佐賀県鳥栖市)から、神奈川県川崎市の物流拠点「NLP川崎DC」までの約1,100kmを結ぶ大動脈で展開されました。輸送された貨物は、アイリスオーヤマが製造する炭酸水「CRYSTAL SPARK」などの実商流製品です。

本プロジェクトの最大の特徴は、大量輸送を得意とする貨物鉄道と、省人化を可能にする自動運転トラックを融合させた点にあります。さらに、JR貨物とT2が共同開発した「31フィート共用コンテナ」を採用することで、鉄道とトラック間のシームレスな積み替えを実現しました。

モーダルコンビネーションの運行体制と各区間の役割

約1,100kmの全工程は3つの区間に分割され、それぞれの輸送モードの強みを活かした継ぎ目のないオペレーションが検証されました。

行程 担当企業 輸送モード 担当区間と運用の詳細
第1区間 全国通運 トラック陸送(有人) アイリスオーヤマ鳥栖工場(佐賀県)〜 福岡貨物ターミナル駅(福岡県)
第2区間 日本貨物鉄道(JR貨物) 貨物鉄道 福岡貨物ターミナル駅 〜 京都貨物駅(京都府)
第3区間 株式会社T2 自動運転トラック(レベル2) 京都貨物駅 〜 NLP川崎DC(神奈川県)※新名神・亀山西JCT〜東名・綾瀬スマートIC間(約360km)で自動運転

第3区間を担当したT2の自動運転トラックは、新名神高速道路の亀山西ジャンクション(三重県)から東名高速道路の綾瀬スマートインターチェンジ(神奈川県)までの約360kmにわたる高速道路区間で、システムが運転を支援する「レベル2」自動運転走行を行いました。

実証では、懸念されていた「貨物駅でのコンテナ積み替え作業の遅れ」や「長距離走行による荷崩れ」などのトラブルは一切発生せず、計画通りのダイヤと高い輸送品質で運行を完遂しました。

プロジェクト参画企業・団体の役割一覧

本実証には、荷主企業、物流協同組合、テクノロジー企業、鉄道事業者が一丸となって参画しています。

企業・団体名 本プロジェクトにおける主な役割 事業の概要・特徴
アイリスオーヤマ株式会社 発荷主(実証貨物の提供・実証主体) 生活用品・家電大手の製造メーカー
NLP協同組合 着荷主拠点運用・輸送管理 アイリスオーヤマ等の配車・拠点運用を担う物流協同組合
株式会社T2 自動運転輸送・運行管理 自動運転トラック開発を主導するスタートアップ
日本貨物鉄道株式会社(JR貨物) 鉄道幹線輸送・コンテナ開発 幹線鉄道網の提供および31フィート共用コンテナをT2と共同開発
全国通運株式会社 ファーストマイル陸送 鳥栖工場から福岡貨物ターミナル駅までのトラック輸送を担当

モーダルコンビネーション推進の時系列

自動運転トラックと鉄道の融合を目指す「モーダルコンビネーション」は、段階的な検証を経て実用化フェーズへと進展しています。

時期 出来事・取り組み内容
2024年11月 日本通運、全国通運、日本フレートライナー、JR貨物、T2の5社がモーダルコンビネーションの検討開始を発表
2025年6月 第1弾実証として雪印メグミルクの製品を対象に北海道〜関西間での一貫輸送実証を実施
2026年7月 アイリスオーヤマおよびNLP協同組合が参画し、九州〜関東間(約1,100km)での実証に成功
2027年度以降 高速道路におけるレベル4(完全無人運転)商用化を見据え、定期運行化と共同輸配送へ展開予定

今後は、2027年度以降に予定される高速道路上での「レベル4(特定条件下での完全無人運転)」自動運転トラックの商用化を見据え、定期運行化への移行が協議されます。さらに九州地区の他荷主を巻き込んだ「共同輸配送モデル」への拡張を目指しています。

参考記事: アイリスオーヤマが1100km輸送で自動運転と鉄道を融合し長距離物流の省人化が加速

業界への具体的な影響:物流構造を塗り替える3つのインパクト

アイリスオーヤマらによる九州〜関東間約1,100kmの実証成功は、単なる実験の枠を超え、サプライチェーンに関わるプレイヤーのビジネスモデルに変革を促しています。

製造業者・メーカー:自ら輸送ルートを設計する「能動的荷主」への変革

アイリスオーヤマのような巨大製造メーカーが自ら実証の主体となったことは、荷主企業の役割が「運送会社に委託するだけ」の受動的な立場から脱却したことを象徴しています。

長距離トラックの手配難が常態化する中、特定荷主に課される物流統括管理者(CLO)の設置や積載効率向上の要請に応えるためには、荷主自らが「どの区間を鉄道にし、どこを自動運転にするか」という高度な物流デザイン能力を持つ必要があります。炭酸水のように重量があり一定の物量が継続発生する商材において、持続可能な輸送ルートを自ら確保・設計できるメーカーが、今後のコスト競争力と供給安定性を握ることになります。

参考記事: コーナン商事が約520kmの自動運転定期輸送を開始|荷主の輸送力確保に直結

運送事業者:単なる配送受託から「多角輸送のプロデューサー」へ

九州から関東までを1人のドライバーと1台のトラックで走破する従来のスタイルは、労働時間規制や深刻な人手不足により維持が難しくなっています。

運送事業者に求められるのは、自前主義を脱し、自社の強みである地場配送やファースト・ラストワンマイルを軸にしながら、長距離幹線部分には鉄道や自動運転トラックなどのオープンプラットフォームを組み合わせる「輸送プロデューサー」への進化です。過酷な長距離運行からドライバーを解放することで過労や車中泊を削減し、職場環境を劇的に改善できるため、若手や女性ドライバーの採用力強化という構造的メリットも生まれます。

参考記事: 日本郵便の1100km自動運転実証、スワップボディで長距離輸送の省人化に直結

SaaS・テクノロジーベンダー:点と線をリアルタイムに繋ぐ高度な運行調停

自動運転システムや物流SaaSを手掛けるベンダーにとって、主戦場は「車両単体の自動走行技術」から「鉄道と自動運転を同期させる運行管理システム(TMS)」へと拡張しています。

どれほど自動運転トラックが高速道路を円滑に走ろうとも、貨物駅での鉄道コンテナの到着遅延や積み替え時の停滞が発生すれば、全体のリードタイムは崩壊します。貨物列車の運行状況や駅での荷役進捗、自動運転トラックの到着予測時刻(ETA)をリアルタイムにデータ連携させ、運行計画を自動補正するAPIプラットフォームや調停ソフトウェアの需要が急速に高まっています。

参考記事: 株式会社T2が国交省事業に採択、2026年1月からの共同実証で幹線無人化が加速

LogiShiftの視点:単一モード依存からの脱却と物理インフラの標準化

今回の九州〜関東間におけるモーダルコンビネーション実証の成功は、日本の物流が「トラック単体に過度依存する時代」から「複数の既存インフラと最新技術をハイブリッドに組み合わせる時代」へ突入したことを意味しています。

31フィート共用コンテナが実現するインターフェースの標準化

本実証における最大の技術的成果は、JR貨物とT2が共同開発した「31フィート共用コンテナ」の活用です。

従来の鉄道コンテナと大型トラックの荷台は規格や固定方式が異なり、積み替え作業に多大な作業負担と専用設備が必要でした。しかし、大型トラックの標準荷台と同等の容積を持つ31フィートコンテナを共通規格として採用することで、貨物列車にも自動運転トラックのシャーシにもスムーズに積み替えられる環境が整いました。物理的インターフェースの標準化が進んで初めて、異なる輸送モードが相互運用可能なモジュールとなり、真の省人化が達成されます。

接続点(ノード)の同期がボトルネック解消の鍵

長距離輸送で最も事故や遅延が発生しやすいのは、走行中ではなく「輸送モードが切り替わる接続点(ノード)」です。

トラックから列車へ、列車から自動運転トラックへとバトンを渡す際、ダイヤの設定ミスやデータ連携の齟齬があれば数時間のタイムロスが生じます。今回の実証で遅延や荷崩れがなかった背景には、ノードにおける緻密な時間管理と運用プロトコルの統一が存在します。今後は、コンテナの位置や状態(衝撃・温度等)をデジタルで可視化し、異常発生時に迂回ルートを割り当てる高度なデジタルトランスフォーメーション(DX)の徹底が、社会実装の成否を分けます。

鉄道モーダルシフト「D評価」を打開するハイブリッド解

国土交通省が公表した地球温暖化対策計画の進捗点検において、鉄道貨物へのモーダルシフトは目標の約6割にとどまり「D評価」という厳しい結果となっています。鉄道単体へのシフトが進まない背景には、ダイヤの柔軟性のなさや駅から先の「二次輸送の手配難・コスト高」がありました。

今回のモーダルコンビネーションは、鉄道の「大量長距離輸送」と自動運転トラックの「柔軟な陸送」を補完し合うことで、従来のモーダルシフトが抱えていた弱点を解消する現実的な解を提示しています。

参考記事: モーダルシフト完全ガイド|導入メリットと補助金・成功事例まで徹底解説
参考記事: 鉄道シフト163.6億トンキロと国土交通省が示す輸送体制再構築の必須対応

まとめ:明日から意識すべき3つのアクション

九州〜関東間約1,100kmにおけるモーダルコンビネーション実証の成功は、2027年度のレベル4自動運転時代に向けた実用化が着実に進んでいることを証明しました。持続可能な長距離物流を構築するために、明日から取り組むべき具体的なアクションは以下の3点です。

  1. 超長距離ルート(500〜1,000km以上)の可視化とハイブリッド化検討
    自社が抱える長距離幹線の物量、運行ダイヤ、コストをデータ化し、トラック単体依存から「鉄道+自動運転トラック」などの複数モードを組み合わせた体制へ移行可能な区間を早期に可視化する。

  2. 31フィートコンテナや標準パレット(T11型)への対応による荷役分離
    鉄道や自動運転トラックとのシームレスな接続を実現するため、バラ積みからパレット輸送・標準コンテナへ移行し、拠点でトラックを待たせない荷役分離の現場オペレーションを構築する。

  3. 地域荷主や同業他社との共同輸配送プラットフォームへの参画
    単独で輸送枠を占有するのではなく、NLP協同組合の事例のように地域荷主と貨物を集約・混載するオープンなアライアンスへの参画に向けた協議を開始する。

人海戦術に頼る長距離輸送はもはや限界を迎えています。最先端テクノロジーと既存の優良インフラを柔軟に融合させ、自社のサプライチェーンを進化させた企業こそが、これからの物流大競合時代を勝ち抜くことができます。


出典: 物流ウィークリー
出典: PR TIMES
出典: NLP協同組合 公式サイト
出典: アイリスオーヤマ 公式サイト

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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