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輸配送・TMS 2026年8月12日

ロボトラック、52億円調達と260km無介入走行で加速する自動運転実装

ロボトラック、52億円調達と260km無介入走行で加速する自動運転実装

大型トラック向け自動運転システムを開発する株式会社ロボトラックが、神奈川県の厚木南ICから愛知県の豊田JCTまでの高速道路約260kmにおいて、ドライバーの操作介入なしでの自動運転走行に成功しました。政府が掲げる「2030年度までに自動運転トラック1,000台導入」という目標に向け、国産AI技術を軸としたレベル4幹線輸送の社会実装がいよいよ現実的なフェーズへと突入しました。

厚木南IC〜豊田JCT間260kmでの無介入走行成功と技術的背景

今回の公道実証走行は、日本の物流における最重要大動脈である関東〜中部間の長距離幹線において、大型トラックの自動運転システムが実際の交通環境下で安定かつ継続的に自律走行できるかを検証する目的で実施されました。

実証の基本的な枠組みおよび走行実績の概要は以下の通りです。

構成項目 実証内容・詳細 物流業界における意義・実用性
実施時期・区間 2026年5月実施(2026年7月発表)。厚木南IC(神奈川県)〜豊田JCT(愛知県)間の約260km。 新東名高速道路を中心とする日本の物流大動脈における連続自律走行の信頼性を証明。
運行体制・実績 大型トラック(単車)を使用。セーフティドライバー同乗のもと、手動操作介入ゼロで完遂。 長距離幹線輸送において、システム制御のみで完全自律走行が可能であることを立証。
検証シナリオ ETC料金所通過後の本線合流、車線維持、車間調整、低速車追い越し、JCT分岐、割り込み対応。 高速道路での実運行時に遭遇する、複雑かつ高難易度な全交通パターンへの対応力を検証。
関係省庁の視察 国土交通省および経済産業省の幹部・行政官、投資家向けに現地視察会を開催。 政府の「2030年度1,000台導入」目標に向けた技術評価の確立と官民連携の推進。

長距離走行でクリアした高度な走行シナリオ

実証走行では、単に直線本線を定速走行するだけでなく、長距離の幹線輸送においてドライバーが日々直面する多様な交通シチュエーションへの対応が検証されました。

具体的には、ETC料金所を通過した直後の加速とスムーズな本線合流、基本となる左側車線の維持および適切な車間距離の自動調整、先行する低速車両に対する安全な追い越し操作、ジャンクション(JCT)における複雑なルート選択・分岐・再合流、さらには他車両からの急な割り込みに対する即応的なブレーキ・ステアリング制御などが含まれます。これらすべてのシナリオにおいて、システムは一度もドライバーの操作介入を必要とせず、意図通りの制御で260kmの区間を完遂しました。

株式会社ロボトラックの歩みと約52億円の資金調達

2024年4月に設立された株式会社ロボトラックは、日本の複雑な道路環境や物流現場のニーズに適合した大型トラック向け自動運転システムを提供するスタートアップです。

同社は本実証の成果公表とあわせ、2026年7月31日にシリーズA(ファーストクローズ)において第三者割当増資による約52億円の大規模な資金調達を実施したことを発表しました。JICベンチャー・グロース・インベストメンツをリード投資家とし、スパークス・アセット・マネジメントや三菱UFJキャピタルなどが参画しています。

同社の設立から今回の実証成功に至る主なマイルストーンを以下に整理します。

時期 出来事・実証実績 主な内容と戦略的意義
2024年4月 株式会社ロボトラック設立 大型トラック向け自動運転システムを提供する独立系スタートアップとして創業。
2024〜2025年 官民実証事業への参画 新東名高速等で公道走行やセミトレーラー実証を重ね、走行データを蓄積。
2026年2〜4月 物流コンソーシアムへの参画 豊田通商主導のコンソーシアム等で西濃運輸や福山通運らと自動運転実証を推進。
2026年5月 経産省・NEDO「GENIAC」採択 ロボット基盤モデル研究開発支援事業として国産AI基盤モデルの開発に着手。
2026年5月 関東〜中部約260km走行完遂 厚木南IC〜豊田JCT間にて運転操作介入なしの自動走行を成功裏に完遂。
2026年7月 国交省「実装支援事業」に採択 走行区間を厚木南IC〜京都南IC(約430km)へ拡大する計画を発表。
2026年7月 シリーズA約52億円資金調達 実証車両の増備やE2E AI・世界モデル等のフィジカルAI開発投資を加速。

国産フィジカルAIと政府方針「2030年度1,000台導入」

ロボトラックの技術的特徴は、事前にプログラムされた条件分岐に依存する従来の「ルールベース」制御に加え、複雑な環境認識を行う「モジュール型AI」、センサー入力から操作出力を直接学習する「E2E AI(End-to-End AI)」、さらに将来の環境変化を高度に予測する「世界モデル(World Models)」といった最新のフィジカルAI技術を融合させている点にあります。これにより、山間部の連続トンネルや複雑なJCT、頻繁な合流・割り込みが発生する日本特有の道路環境(エッジケース)への適応力を飛躍的に高めています。

日本政府は2026年3月31日に閣議決定した「総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)」において、2030年度までに自動運転トラック1,000台を導入する目標を掲げました。ロボトラックはこの政府方針に基づき、国産AI技術を活用して安全性を最優先にしつつ開発速度を最大化し、高速道路の幹線輸送から物流施設接続の一般道、さらには施設構内までを一気通貫でカバーする国産レベル4システムの実装を目指しています。

参考記事: 株式会社ロボトラックが260km無介入走行達成で幹線輸送の自動化が加速

物流サプライチェーンの主要プレイヤーに及ぶ構造変化

関東〜中部間260kmでの無介入走行成功と、大規模資金調達による開発の加速は、物流に関わる主要プレイヤーのビジネスモデルに大きな構造的変化をもたらします。

運送事業者:自社アセット保有型から「幹線プラットフォーム利用」への転換

長距離大型ドライバーの不足と労働時間規制の強化に伴い、長距離幹線便の維持は多くの運送事業者にとって喫緊の経営課題となっています。

今回の実証成功は、運送事業者が高額な大型車両を自社で所有・維持する従来の固定費型モデルから、自動運転システムが運用される幹線パイプラインに荷物を載せる「サービス利用型(MaaS型)」ビジネスへの転換を可能にします。夜間の過酷な長距離輸送を自動運転プラットフォームに委託することで、自社の貴重なドライバーリソースを地場集配や精密な運行管理などの高付加価値業務へ集中させることが可能になります。

荷主・EC事業者:輸送の「止まらない化」と物理インターフェースの標準化

EC市場の拡大に伴い、セール時などの需要変動(波動)に対する輸送力確保は荷主企業にとって戦略的価値を持ちます。幹線輸送がAIによって24時間安定化すれば、輸送能力のボトルネックが解消され、サプライチェーンの止まらないインフラ化が進みます。

一方で、自動運転トラックの稼働率を最大化するためには、拠点で車両を長時間停車させない仕組みが不可欠です。荷主企業やEC事業者は、手積み・手降ろしを完全に排除する「T11型標準パレット」への100%移行や、トラックの車体(トラクタ)と荷台(コンテナ)を物理的に分離できる「スワップボディ車両」の導入など、荷役分離への対応を急ぐ必要があります。

SaaS・テクノロジーベンダー:単体制御から「運行オーケストレーション」へ

自動運転車両の走行技術が確立されるにつれ、次なる競争軸は動体管理や運行制御を担うソフトウェア群へとシフトします。

渋滞、天候、通行止め情報、車両ステータスなどをリアルタイムで統合し、高精度な到着予測時間(ETA)を算出するフリートマネジメントシステム(FMS)の重要性が高まります。さらに、これらのデータを倉庫側の倉庫管理システム(WMS)や輸配送管理システム(TMS)とAPI連携させ、現場の荷役作業と自動運転トラックの到着をミリ秒単位で同期させる「運行オーケストレーション」ツールの需要が急増します。

行政・規制当局:レベル4社会実装に向けたデータ蓄積とインフラ支援の加速

260kmという長距離区間で得られた無介入走行データは、国土交通省や警察庁などの規制当局にとっても、レベル4自動運転の安全基準策定や法整備に向けた強力な定量的根拠となります。

政府が掲げる「2030年度1,000台導入」目標に向け、新東名高速道路などにおける自動運転優先・専用レーンの整備や、IC近郊における有人・無人ドライバーの切替拠点(トランスゲート等)の環境整備に対する予算配分と法整備がさらに加速する見通しです。

参考記事: 株式会社T2が国交省自動運転支援事業に採択|2027年度の幹線レベル4実装が加速

参考記事: 荷役分離とは?2024年問題に立ち向かうメリットと現場での導入ステップを徹底解説

参考記事: スワップボディコンテナとは?仕組みやトレーラーとの違い、導入メリットをわかりやすく解説

LogiShiftの視点:幹線自動化1,000台時代を勝ち抜くための本質的要素

ロボトラックによる厚木南IC〜豊田JCT間260kmの無介入走行達成は、単なる1台の技術検証(PoC)の完了にとどまりません。日本における幹線自動輸送が「技術ができるか」のフェーズを終え、「いかに1,000台規模で社会インフラに組み込むか」という事業化フェーズへ移行したことを示しています。この転換期において、企業が押さえるべき本質的な要素は以下の3点です。

国産フィジカルAIによる日本の道路環境への完全適合

米国や中国の広大なストレート主体のハイウェイ網と異なり、日本の幹線道路は山間部の連続トンネル、極めて狭小なJCTのカーブ、頻繁に発生する工事規制や流出入車両の割り込みなど、複雑極まりない環境下になります。

ロボトラックが実証した「モジュール型AI+E2E AI・世界モデル」のハイブリッド構成は、事前ルールだけでは処理しきれない稀少な道路事象(エッジケース)をAIが予測・判断し、極めてスムーズな挙動を実現できることを証明しました。日本特有の道路環境に最適化された国産フィジカルAIの存在は、海外勢に対する強力な参入障壁となり得ます。

一般道および施設構内との「シームレスな接続」が握るROI

高速道路の本線走行が自動化されても、ICから先の一般道や物流センター構内での走行・待機・荷役オペレーションが分断されていては、トータルのリードタイム削減やコスト削減は達成されません。

完全な無人物流の実現には、高速道路区間をレベル4自動運転で走行し、IC直近のトランスファーハブ(中継拠点)で有人ドライバーや構内誘導システムへと引き継ぐ「地上インフラと車両制御の完全同期」が不可欠です。今後は車両単体だけでなく、拠点の管理システムと連動したシームレスな移行プロセスが競争力の源泉となります。

荷役分離と24時間ピストン運用の融合

今回実証で用いられた大型単車トラックによる長距離走行成功は重要なステップですが、物流オペレーションの抜本的効率化をもたらすのは「セミトレーラー」や「スワップボディ車両」を用いた荷役分離モデルです。

自動運転トラクタ(頭)部分の稼働率を極限まで高め、積載・取り降ろしは拠点側で待機させた荷台(シャーシ)に対して行う運用を組み合わせることで、自動運転システムへの初期投資に対するROI(投資対効果)を最大化できます。技術開発と現場の物理インターフェース標準化を同時に推進することこそが、今後の幹線輸送自動化における勝ち筋となります。

参考記事: デジタル庁、2030年自動運転1万台提示で幹線輸送自動化が加速

参考記事: 自動運転トラックの幹線最適化が加速、経済産業省が8月3日に公募開始

まとめ:明日から意識し着手すべき3つのアクション

ロボトラックによる260kmの無介入走行達成と大型資金調達は、幹線輸送の自動化が数年以内に「実用的な社会インフラ」として定着することを示しています。経営層や現場リーダーが明日から自社のサプライチェーンにおいて取り組むべき具体アクションは以下の3点です。

  1. 自社幹線輸送ルートのデータ化と自動運転ラインへの移行シミュレーション
    現在自社で運行または委託している長距離路線(関東〜中部、関東〜関西等)の物量・運行ダイヤ・コストを詳細にデータ化し、将来的に主要高速道路のICや中継拠点(トランスゲート等)を経由する自動運転ラインへどの区間を移行できるか、シミュレーションを開始する。
  2. 「荷役分離」を前提としたバラ積みの撲滅と物理インターフェースの標準化
    手積みを前提とした出荷・納品フローを見直し、100%パレタイズ(T11型等)を徹底する。また、トラックの待機時間を最小化するため、スワップボディ車両やトレーラーを活用した「車体と荷台の分離運用」の可能性を荷主・運送会社間で協議する。
  3. 高速道路IC直近の中継ハブを意識した「拠点戦略」の再編
    今後新たに物流センターや配送デポを開設・賃貸する際は、単に消費地からの距離や賃料だけでなく、整備が進む自動運転専用レーンや有人・無人切替拠点がある高速道路ICからアクセスしやすい立地選定を行う。

出典: スマートモビリティJP
出典: PR TIMES

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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