NTTドコモビジネス、NTTモビリティ、NTTドコモの3社と愛知県は、名古屋市都心部において自動運転車両3台とオンデマンド配車システムを組み合わせた実証実験を2026年9月11日より開始します。交通量が多く複雑な都市環境における走行制御の高度化と対話AIによる車内無人化対応を一体的に検証する本取り組みは、深刻化する乗務員不足を克服し、将来の都市型MaaSやラストワンマイル移動・配送網の構造転換を加速させる重要な実証事例となります。
名古屋都心部で挑むレベル4を見据えたオンデマンド自動運転実証の全貌
愛知県が実施主体となって推進する本プロジェクトは、過密な都市部において自動運転ソフトウェアとオンデマンド配車システムを高度に連動させ、実運用に近いサービスモデルを検証する先進的な取り組みです。
複雑な交通環境における走行制御とシステム連携の検証
本実証の舞台は、名古屋駅周辺をはじめとする交通量の多い名古屋市都心部です。実証では、米国で無人自動運転の運行実績を持つMay Mobility(メイ・モビリティ)社の自動運転ソフトウェアを搭載した車両を使用します。交差点における右折時の対向車検知や、信号が変化するタイミングの予測精度の向上など、将来の「自動運転レベル4(特定条件下における完全無人運転)」の社会実装に向けて避けては通れない技術的課題の克服を目指します。
実際の運行においては、事故防止と安全性確保の観点からセーフティドライバーが運転席に乗車する「レベル2」の形態をとりますが、検証する制御ロジックや遠隔配車連携はレベル4を見据えた高度な仕様となっています。
また、利用者の予約状況に応じて車両を効率的に巡回させるため、NTTドコモビジネスが提供するオンデマンド配車システムと自動運転ソフトウェアを連携させます。名古屋鉄道が提供するマイクロMaaSアプリ「デライド」を介してユーザーからの予約を受け付け、3台の自動運転車両(トヨタ「シエナ」をベースにした改造車)を最適な乗降地点へリアルタイムに配車します。これにより、従来のタクシーに近い柔軟なオンデマンド運行を自動運転で再現します。
乗務員不在時を想定した対話AIキャラクターによる車内案内の導入
将来の完全無人運行を見据え、車内空間の「UI/UX(利用者体験)」向上に向けた検証も行われます。車内に設置されたタブレットシステムには、NTTドコモが提供する「対話AIキャラクター」が搭載されます。
事前のアンケート情報から利用者の乗車目的や知りたい情報を把握し、対話AIキャラクターが自然なコミュニケーションを通じて適切なタイミングで案内を提供します。乗務員が不在となる将来の車内環境においても、利用者が不安を感じることなく快適に移動できる接客・案内サービスの受容性を評価します。
産官学8者が結集するプロジェクト体制と実施スケジュール
本実証は、愛知県やNTTグループに加え、地元の交通事業者や教育機関が参画する産官学連携の体制で実施されます。車両の外観デザインや対話AIキャラクターのデザイン、PR素材の制作には、名古屋駅前にキャンパスを構えるHAL名古屋・国際工科専門職大学や、IGアリーナ前に位置する名古屋造形大学の学生が参加し、地域と一体となった社会実装が進められています。
以下に、実証実験の運用スペック、参画事業者の役割分担、およびタイムラインを整理したMarkdownテーブルを示します。
実証実験の運行・運用スペック一覧
| 項目 | 詳細スペック | 補足・運用の特徴 |
|---|---|---|
| 運行期間 | 2026年9月11日(金)〜2027年3月19日(金) | 土・日・祝日および年末年始(12月26日〜1月6日)を除く平日のみ |
| 運行時間帯 | 10:00 〜 17:00 | 都心部の昼間時間帯における実交通環境下で実施 |
| 使用車両・台数 | トヨタ「シエナ」ベース自動運転車両 3台 | 定員5名(セーフティドライバー除く)、貸切方式で運用 |
| 走行ルート | 5カ所の乗降地点を結ぶ20ルート(延べ約33km) | 名古屋駅前、STATION Ai、愛知芸術文化センター等の主要拠点 |
| 利用料金 | 無料 | アプリ「デライド」にて乗車日の31日前から事前予約が可能 |
参画事業者と詳細な役割分担一覧
| 組織・企業名 | 本実証における主な役割 |
|---|---|
| 愛知県 | 本実証の実施主体・全体統括 |
| NTTドコモビジネス | プロジェクトマネジメント、オンデマンド配車システムの提供および自動運転連携(幹事会社) |
| NTTモビリティ | 自動運転車両の提供および導入・運用支援 |
| NTTドコモ | 対話AIキャラクターおよび車内タブレットシステムの提供 |
| May Mobility, Inc. | 自動運転ソフトウェアの提供 |
| 名古屋鉄道 | マイクロMaaSアプリ「デライド」の提供・予約基盤構築 |
| 名鉄タクシーホールディングス (名鉄交通第一、名鉄交通第二) | 交通事業者としての現場運行支援・安全管理 |
| 学校法人日本教育財団 (国際工科専門職大学 名古屋キャンパス、HAL名古屋) | 車両・対話AIキャラクター・ポスター・PR動画のデザイン制作、地域連携 |
| 名古屋造形大学 | 車両デザイン制作、地域連携 |
実証実験のタイムライン
| 実施時期 | プロジェクトの進捗・予定事項 |
|---|---|
| 2026年8月12日 | 愛知県およびNTTグループ等による実証実験公表 |
| 2026年8月25日正午 | なごやMaaSアプリ「デライド」にて一般予約の受付開始 |
| 2026年9月11日 | 名古屋市都心部における自動運転オンデマンド配車実証の運行開始 |
| 2026年12月中旬予定 | 車内タブレットへの「対話AIキャラクター」案内機能の追加実装 |
| 2027年3月19日 | 実証実験の終了(予定) |
参考記事: NTTモビリティが2026年6月実証、複数台遠隔監視が物流の採算向上に直結
タクシー・運送・自治体・ITベンダーへ迫る構造的変化
名古屋都心部という過酷な公道環境で開始される自動運転とオンデマンド配車の融合実験は、旅客輸送のみならず、都市型の小口物流や地域インフラのあり方にも直接的な影響を及ぼします。
交通・運送事業者|乗務員不足の打破とオンデマンド配車による車両稼働率の極大化
タクシーやバスなどの旅客輸送業界、さらにはラストワンマイルを担うトラック運送事業者は、深刻なドライバー不足に直面しています。従来の「指定路線を定時に巡回する」あるいは「ドライバーの直感に基づいて街中を流し営業する」手法では、限られた人件費と車両アセットを効率的に運用することが困難になっています。
本実証で採用されている「オンデマンド配車と自動運転の組み合わせ」は、運送・交通事業者のアセット稼働率を劇的に引き上げるソリューションとなります。
稼働率向上をもたらす具体的な要素
- リアルタイム配車最適化による無駄な回送の削減
予約データに基づいてAIが最適な走行ルートと配車順序を即座に算出するため、空車状態での走行時間を最小化できます。 - 人件費依存からの脱却と24時間運用の可能性
セーフティドライバーを必要としないレベル4が確立されれば、夜間や早朝を含めた稼働時間の制約が撤廃され、車両1台あたりの採算性が大幅に向上します。 - 人流と物流の融合(貨客混載)への展開
オンデマンド配車の仕組みを配送業務と共有化することで、昼間は旅客輸送、夜間や閑散時間帯は荷物の自動配送を行う「マルチパーパス運行」が可能になります。
参考記事: ラストワンマイル完全ガイド|2024年・2026年問題に向けた実務知識と解決策
自治体・行政|都市部の交通混雑緩和と持続可能なラストワンマイルモデルの構築
人口集中が進む都市部では、自家用車の流入による交通混雑や、配送トラックの街頭停車による渋滞が慢性的な問題となっています。一方で、郊外や都市のポケットエリアにおいては公共交通網の維持が難しくなっており、「都市型移動困難者」の発生が懸念されています。
愛知県が主導する今回の実証は、都市部における道路空間の効率的な利用モデルを示すものです。
行政施策へのフィードバックと波及効果
- 主要拠点間をつなぐ新たなミドル・ラストワンマイルインフラの検証
名古屋駅や「STATION Ai」、愛知芸術文化センターといった重要拠点をオンデマンド自動運転で結ぶことで、都市内の回遊性を高め、自家用車への依存を低減させます。 - 自動運転専用走行環境や乗降拠点の整備指針
交通量の多い交差点や乗降スポットにおける安全確保のデータを収集することで、今後の都市計画や道路整備(自動運転優先レーンやモビリティ・ハブの設置)に関する具体的なガイドラインが得られます。
参考記事: 国土交通省が2026年6月24日に示す都市交通施策は物流の3大構造改革に直結
SaaS・テクノロジーベンダー|制御・配車・車内UI/UXを統合するプラットフォーム争い
これまでの自動運転実証の多くは、車両側のセンサー性能や単体での自動走行技術の向上に主眼が置かれていました。しかし、サービスとして社会実装を進めるフェーズにおいては、「配車アルゴリズム」「MaaSアプリ」「車内UI/UX」をいかに統合するかが最大の競争軸となります。
統合プラットフォームに必要な3つの要素
- 配車最適化エンジンと自動運転OSの高度なAPI連携
ユーザーの乗降リクエストを受け取るMaaSアプリ(デライド等)と、車両の自動走行制御(May Mobility等)をリアルタイムかつミリ秒単位の低遅延で通信・調律するバックエンドシステムが不可欠です。 - 無人環境における「対話AI」による接客の標準化
NTTドコモが提供する車内タブレットの「対話AIキャラクター」のように、乗客の安心感を醸成し、乗車中のニーズに応えるデジタル接客システムは、今後の無人モビリティの標準スペック(必須UI)となります。 - マルチベンダー・マルチモビリティへの拡張性
特定の車両や単一の制御ソフトに依存せず、多様なメーカーの自動運転車や配送ロボットを一元管理できる運行管理システム(FMS)の構築が求められます。
参考記事: 自動運転でウーバー・テクノロジーズが1.6兆円を投資する物流DXの必須対応
LogiShiftの視点:都市部カオス環境における「配車最適化」と「車内無人化」の同時検証が持つ意味
本プロジェクトを単なる「名古屋で行われる地域実証の一つ」と捉えるべきではありません。過密な都市部という過酷なリアル環境下において、「自動走行制御」「オンデマンド配車」「車内対話AI」を三位一体で検証する点に、業界構造を転換させる極めて重要な示唆が含まれています。
「走行技術」から「統合サービスオペレーション」への完全なシフト
これまでの自動運転テストは、見通しの良い郊外道路や画一的なクローズド空間を中心に行われてきました。しかし、名古屋駅周辺のように、歩行者、タクシー、路線バス、配達車両、自家用車が不規則に交錯する「カオス環境」を攻略できなければ、都市部での商業化は永遠に不可能です。
今回の実証において、米国の実戦で鍛えられたMay Mobilityのソフトウェアを投入し、右折時の対向車検知や信号変化の予測制御に踏み込む意義は極めて大きいと言えます。
さらに重要なのは、車両の制御(走る・曲がる・止まる)だけでなく、MaaSアプリ「デライド」を通じた予約受入から、NTTドコモビジネスのアルゴリズムによる最適ルート設定、さらには車内タブレットでの対話AI案内まで、ユーザーの利用体験全体を一気通貫で設計している点です。
自動運転時代の勝ち筋は、単に「自立走行できる賢い車を作る」ことではなく、「既存の都市交通や配車ネットワークへいかに滑らかに組み込み、無人オペレーションを成立させるか」というサービス統合力へと完全にシフトしています。
人流MaaSのインフラはそのまま「都市型小口物流の無人化」へと接続する
物流関係者が注視すべきは、このオンデマンド配車および自動運行管理の仕組みが、将来的にそのまま「都市型ラストワンマイル物流」のプラットフォームに転用できるという事実です。
名古屋市内で構築される「乗降地点を結ぶ動的な配車ネットワーク」は、荷物の集荷・配達ポイントを結ぶ配送ネットワークと構造的に全く同じです。昼間の時間帯は利用者の移動(人流)を担い、早朝や夜間、あるいは配車枠の空き状況に応じて小口荷物の緊急配送や拠点間輸送(物流)を引き受ける「貨客混載の完全自動化」への物理的・システム的土台となります。
「ドライバーという労働力」に全面的に依存してきた従来の配送オペレーションから脱却し、通信ネットワークとAIアルゴリズムによって都市全体の移動・搬送アセットを制御する「装置産業」へと物流が転換する未来が、この名古屋の実証の先に明確に描かれています。
次世代モビリティとラストワンマイル変革に向けて明日から取り組むべきアクション
愛知県およびNTTグループによる名古屋都心部での実証実験は、自動運転とオンデマンド制御が実験室を飛び出し、都市機能の一部として組み込まれるフェーズに入ったことを物語っています。
この構造変革の波を捉え、自社の輸配送ネットワークや事業モデルを適合させていくために、運送事業者や物流企業の経営層・現場リーダーが明日から取り組むべき具体的なアクションを提示します。
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自社輸配送エリアにおける「オンデマンド型共同配送」の適合性評価
既存の固定ルート配送を見直し、配送拠点から納品先までのルートにおいて、オンデマンド配車アルゴリズムを適用した場合の「走行距離・車両台数の削減効果」を試算してください。自社単独での運用に固執せず、地域交通事業者や他社との共同配車・共同配送ネットワークへ参加するための課題整理に着手することが重要です。 -
配車管理システム(TMS)および倉庫管理システム(WMS)のAPI開放とクラウド化
将来的に自動運転車両や外部のオンデマンド配車プラットフォーム(MaaS基盤等)と自社の荷物データをリアルタイムで同期できるよう、車載端末や既存の基幹システムをオープンAPI対応のクラウド基盤へ移行・更新してください。システムが分断されている企業は、自動化インフラの恩恵から取り残されるリスクがあります。 -
「荷役分離(受入体制の標準化)」による無人運行前提の現場オペレーション構築
ドライバーによる手積み・手降ろしや複雑な附帯作業に依存している現場作業を排し、パレット化(T11型等)やコンテナ・スワップボディの活用による「荷役分離」を推進してください。車内や荷台が無人となる自動運転時代において、車両を即座に発着・折り返し稼働させられるオペレーション基盤の整備こそが、将来の最大の競争力となります。
都市部の交通・配送網が「AIと自動運転によるサービスとしての移動(MaaS・LaaS)」へと変貌を遂げる中で、いち早く自社のシステムとオペレーションを標準化・デジタル化させた企業こそが、人手不足時代を生き抜く強固なサプライチェーンを築き上げることができます。
出典: LOGI-BIZ online
出典: NTTモビリティ
出典: 愛知県
出典: 名古屋鉄道


