公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は、企業間連携を推進するプラットフォーム「物流統括管理者連携推進会議(J-CLOP)」を創設し、2026年9月10日に東京ビッグサイトで第1回会議を開催します。2026年4月の改正物流効率化法全面施行によって選任が義務化された物流統括管理者(CLO)が、個社の枠組みを越えて実務課題を共有し、共働体制を構築するための実践的な基盤が整います。
物流統括管理者連携推進会議(J-CLOP)の発足背景と第1回会合の全容
2026年4月に全面施行された「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」により、一定規模以上の貨物を取り扱う特定荷主および特定連鎖化事業者に対し、役員クラスの「物流統括管理者(CLO)」の選任が法的に義務付けられました。この制度改正は、物流の課題解決を単なる現場の業務改善にとどめず、経営戦略の中核として位置づけることを求めています。
しかし、サプライチェーンの寸断やトラックドライバーの不足といった構造的危機は、一企業の自社努力(個社最適)のみで解決できるものではありません。荷主企業、運送事業者、システムベンダーなどのステークホルダーが連携し、業界の垣根を越えた「全体最適」の輸送網を再構築することが不可欠となっています。こうした要請を受け、JILSはCLO同士が自主的に学び、情報交換を行い、共働プロジェクトを立ち上げるための常設組織として「J-CLOP」を発足させました。
改正物流効率化法の施行スケジュールと法的義務
物流効率化法は、2025年4月の努力義務化から段階的に適用が進められ、2026年4月に規制的措置を伴う第2段階が本格稼働しました。
| 施行時期 | 対象事業者 | 主な法的義務・規制内容 | 違反時のリスク・措置 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月 | 全荷主・連鎖化事業者・トラック運送事業者 | 荷待ち・荷役時間の短縮、積載率向上の努力義務 | 取引環境改善に向けた行政指導の対象 |
| 2026年4月 | 年間貨物取扱量9万トン以上の特定荷主・特定連鎖化事業者 | 役員級CLOの選任、中長期計画の策定、年1回の定期報告 | 勧告・是正命令、100万円以下の罰金、企業名公表 |
特定事業者に課された義務の中でも、CLOの設置はサプライチェーン統括の最高責任者を明確にする重要な措置です。法令遵守にとどまらず、国が掲げる重要指標(2028年度までに荷待ち・荷役時間を年間125時間削減、積載効率向上により輸送能力16%増加)の達成に向けて、実効的な改革を推進するリーダーシップが求められています。
参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた選任基準と企業が備えるべき実務対策
J-CLOPの組織体系と参加メンバー区分
J-CLOPへの参加は法人単位で受け付けられており、荷主企業のみならず、物流現場を支える多様なパートナーが参画できるオープンな枠組みとして設計されています。
| メンバー区分 | 対象企業・団体 | 第1回会議 参加可能人数 | 年会費(税込) |
|---|---|---|---|
| 荷主メンバー | 特定荷主・特定連鎖化事業者、および特定基準未満の荷主・連鎖化事業者 | 1社あたり2名まで | JILS会員:無料 JILS非会員:年額132,000円 |
| 共働メンバー | 物流事業者(運送・倉庫・3PL)、ソリューションベンダー、研究機関等 | 1社あたり1名 | JILS会員:無料 JILS非会員:年額132,000円 |
※JILS非会員企業が年度途中に参加する場合は、月割計算が適用されます。
J-CLOPは単なるセミナー形式の会合ではなく、以下の4つの柱に基づいた実務支援と研究活動を年間を通じて展開します。
- 知見共有: 各社のCLO体制や中長期計画の策定状況に関する調査・アンケートを実施し、その分析結果をメンバー企業にフィードバック
- 企業間連携: 業界別・地域別のワーキンググループやラウンドテーブルを定期開催し、共同配送やパレット標準化に向けた協調プロジェクトを組成
- 情報発信: 先進的な取り組み事例や関係法令の最新動向を会員向けに発信し、業界内外への広報活動を支援
- 人材育成: 次世代のロジスティクスリーダーやCLOを支える実務スタッフの育成プログラムを企画・提供
2026年9月10日「第1回 物流統括管理者連携推進会議」のプログラム構成
2026年9月10日に東京ビッグサイト(会議棟1階 レセプションホールB)で開催される第1回会議では、小売大手の先行事例共有や関係省庁の挨拶、参加企業同士のネットワーキングが行われます。
| 時間帯 | プログラム項目 | 登壇者・担当 | 主要テーマと内容 |
|---|---|---|---|
| 16:30~17:30 | 開会メッセージ | ファミリーマート 執行役員 物流本部長(物流統括管理者)/JILS 副会長 大野 泰 氏 | 「ここから始まる物流統括管理者の挑戦」:小売現場の視点からCLOの役割と企業間連携の重要性を提起 |
| 16:30~17:30 | 行政挨拶 | 関係省庁(経済産業省・国土交通省等) | 「物流統括管理者への期待」:法執行状況と官民連携によるサプライチェーン強靭化への要請 |
| 16:30~17:30 | 専門講演 | JILS 理事 JILS総合研究所 所長 北條 英 氏 | 「企業価値向上に向けた物流統括管理者の役割」:コスト削減にとどまらない経営管理・ESG視点での価値創出 |
| 16:30~17:30 | 活動説明 | JILS総合研究所 第1部 マネジャー 織田 峻央 氏 | J-CLOPの年間活動計画、部会運営、実務支援メニューの解説 |
| 17:30~18:30 | 情報交換ラウンドテーブル | J-CLOPメンバー企業全参加者 | 荷主・物流事業者・ベンダーが小グループに分かれ、途中で席をシャッフルしながら人的ネットワークを形成 |
| 18:30 | 閉会挨拶 | JILS 専務理事 寺田 大泉 氏 | 今後の活動方針と連携強化に向けた総括 |
参考記事: フィジカルインターネットセンターが示す2026年4月CLO義務化への必須対応
サプライチェーン各プレイヤーに与える実務的影響
J-CLOPの立ち上げとCLO間の連携推進は、荷主企業から運送事業者、テクノロジーベンダーに至るまで、サプライチェーンの全ステークホルダーに大きな実務的変化を促します。
製造業者・メーカー:競合との「協調領域」設定と商物分離の加速
製造業のCLOにとって最大の課題は、社内のサイロ化(生産・営業・物流の分断)を解消すると同時に、他社との共同輸送や拠点共有を経営判断として実行できる体制を整えることです。
従来、配送頻度やリードタイムの設定は営業部門の専権事項とされ、過剰な小口多頻度配送が現場を圧迫していました。しかし、CLOが経営陣として商物分離を主導し、取引条件の標準化を進めることで、競合メーカーとの共同幹線輸送や帰り便を利用したラウンド輸送への参画が現実的になります。J-CLOPのような場を通じて同業・異業種のCLOと直接対話できる環境は、個社では踏み込みにくかった配送網の共有化を一気に加速させる推進力となります。
参考記事: 改正物流効率化法と野村総合研究所が示す輸送費34%増への必須対応
小売業者・チェーンストア:特定連鎖化事業者としての納品条件是正と店舗物流改革
コンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストアなどの小売業者は、特定連鎖化事業者としての法的な社会的責任を負っています。店舗への多頻度配送や納品待機の発生は、運送事業者に対する深刻な負荷となっており、納品リードタイムの見直しやバース予約の導入が急務です。
小売チェーンのCLOは、仕入先メーカーや卸売業者と連携し、統一パレットの採用(T11型など)や納品時間帯の平準化を推し進める必要があります。ファミリーマートの大野泰執行役員がJ-CLOPの旗振り役として登壇することに象徴されるように、小売トップがサプライチェーン全体の持続可能性にコミットする姿勢を示すことで、納品先主導の物流効率化が進むと期待されます。
運送事業者・3PL:下請け構造からの脱却と「共働パートナー」への昇格
運送事業者や3PL企業にとって、J-CLOPへの「共働メンバー」としての参画は、荷主企業との関係性を根本から再構築する契機となります。
従来の運送事業者は、荷主から提示された条件に従う受託者の立場に置かれがちでした。しかし、荷主側に役員級のCLOが配置されたことで、現場レベルでは握り潰されていた「待機時間の削減要請」や「付帯作業料の分離請求」「適正運賃への改定」を経営トップ層へ直接提案できるようになります。運行データやバース滞在時間の実態をエビデンスとして提示し、荷主のCLOに対してサプライチェーンの再設計を共同で働きかけることで、単なるコスト叩きの対象から外れ、長期的な戦略パートナーとしてのポジションを確立できます。
参考記事: 選任が迫る物流統括管理者と改正物流総合効率化法2026年への必須対応
SaaS・テクノロジーベンダー:データ標準化の加速と経営直結ソリューションの展開
テクノロジー企業にとって、J-CLOPは現場向けツールから「経営意思決定支援プラットフォーム」へと提案内容を進化させる場となります。
企業間で共同配送や荷物マッチングを行うためには、発着地データ、積載率、荷待ち時間のタイムスタンプ、ASN(事前出荷情報)などのデータ形式が標準化されていなければなりません。ベンダー各社は、単体機能のシステム提供にとどまらず、他社システムとのAPI連携やオープンなデータ基盤の構築を主導する役割が求められます。CLOが国へ提出する定期報告書のエビデンス作成や、ESG開示に必要なCO2排出量(スコープ3)の算定機能をダッシュボードとして提供できる企業が、市場の支持を集めることになります。
参考記事: 年9万トン超の荷主に改正物流効率化法での物流統括管理者選任が必須対応に
LogiShiftの視点:企業間共働を成功に導くガバナンスと標準化
J-CLOPの発足は、日本の物流が「自前主義・個社最適」から「社会インフラとしての共同利用(フィジカルインターネット)」へ移行するための重要なステップです。この動きを実効的な成果へつなげるために、各企業が押さえるべき論点を考察します。
「名ばかりCLO」を打破する社内権限の明文化
企業間連携を推進する上で最大の障壁となるのは、社内調整の遅れです。CLOが他社との共同配送に合意しても、自社の営業部門が「特定顧客への即日納品」を譲らなかったり、製造部門が「出荷スケジュールの変更」に難色を示したりすれば、協調プロジェクトは頓挫します。
経営トップは、CLOに社内の「物流改善命令権」を職務権限規定として明確に付与しなければなりません。営業都合による突発便の追加コストを営業部門のP/Lに直接配賦するなど、他部門が自発的に物流効率化へ協力する評価ガバナンスを構築することが、CLOが社外の連携会議でリーダーシップを発揮するための大前提となります。
非競争領域の徹底した標準化とアジャイルなスモールスタート
企業間連携を成功させる鍵は、物流を「競争領域」ではなく「協調領域」として割り切る決断です。パレットサイズ、コンテナ規格、伝票フォーマット、バース予約のプロトコルなど、自社独自仕様に固執していてはネットワークの共有化は進みません。
最初から全社・全拠点の物流網を一括して他社と統合しようとすれば、利害調整に膨大な時間がかかります。まずは「特定地域間の幹線輸送1ルート」や「主要取引先1社との共同保管」など、成果が見えやすい領域から6割の完成度でスモールスタートし、成功事例を段階的に広げていくアジャイルなアプローチが求められます。
参考記事: フィジカルインターネットとは?インターネットの仕組みを物流に応用する次世代インフラと導入ステップを解説
明日から経営層・CLOが着手すべき実務アクション
2026年9月10日のJ-CLOP第1回会議の開催、および改正物流効率化法の本格運用に向け、企業の経営層と物流リーダーは以下の3つのステップを速やかに進める必要があります。
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自社の特定荷主該当性と物流データの可視化
自社の年間貨物取扱量(トンキロ・重量ベース)を正確に算出し、特定荷主・特定連鎖化事業者の要件を満たしているか確認します。同時に、トラックの荷待ち時間や実車積載率、顧客別の物流コストをデジタルで集約し、現状のロスを定量化します。 -
J-CLOPをはじめとする社外連携プラットフォームへの参画
社内リソースだけで解決できない輸送力不足や共同化のニーズを整理し、J-CLOPなどの外部プラットフォームを活用して同業・異業種との情報交換ルートを確保します。自社の課題に近いワーキンググループへ積極的に参加し、他社との共働プロジェクトの芽を探索します。 -
社内規程の改定とスモールスタートの実行
CLOの職務権限を明文化し、営業部門や製造部門との利害調整を迅速に行える組織体制を整えます。その上で、特定の配送拠点や主要ルートにおいて、バース予約システムの導入やパレット共通化、他社との共同運行を試験的に立ち上げ、実績データを社内外へ共有します。
出典: 流通ニュース
出典: PR TIMES
出典: 日本ロジスティクスシステム協会(JILS)


