丸井グループの物流事業会社である株式会社ムービングは、クリーニングチェーン「ホワイト急便」のFC加盟店と連携し、EC商品の受取・返品・発送サービス「トルダス(trds)」を活用したZOZOTOWNの返品受付実証実験を2026年8月21日より順次開始します。消費者の生活動線上に位置するクリーニング店を逆物流のハブとして機能させる試みであり、ラストワンマイルの集荷負荷軽減とアパレルECの顧客体験向上を両立する新たな一手として注目されます。
ホワイト急便4店舗で始動する「トルダス」実証実験の全貌
株式会社ムービングは2026年8月19日、株式会社日本さわやかグループが展開する「ホワイト急便」のFC加盟店である株式会社エス・クリーニングと提携し、店頭でファッションECサイト「ZOZOTOWN」の返品を受け付ける実証実験を発表しました。
従来、「トルダス(trds)」は丸井グループの商業施設(マルイ・モディ)を中心に展開されてきましたが、自社グループ外のインフラへネットワークを拡張する重要なフェーズに入っています。
実証実験の対象店舗と開始スケジュール
今回の実証実験は、埼玉県内のホワイト急便4店舗において2段階で実施されます。
| 対象店舗 | 実証実験開始日 | 店舗立地・特徴 |
|---|---|---|
| 浦和本店 | 2026年8月21日(金) | 住宅街動線上の旗艦路面店 |
| ヤオコー武蔵浦和店 | 2026年8月21日(金) | スーパーマーケット併設型インショップ |
| 南浦和店 | 2026年8月24日(月) | 駅近接・住宅密集エリアの生活拠点 |
| ビバ新都心店 | 2026年8月24日(月) | 大型商業施設・ホームセンター併設拠点 |
参画各社の役割分担
本プロジェクトは、物流プラットフォームを提供するムービング、生活動線上のリアル拠点を運営するエス・クリーニング、そしてEC需要を牽引するZOZOの3者によるアライアンスで成り立っています。
| 参画企業・組織 | 本実証実験における主な役割 |
|---|---|
| 株式会社ムービング (丸井グループ) | サービス「トルダス」のシステム提供、物流オペレーションおよび回収ルートの設計、回収物流の統括管理 |
| 株式会社日本さわやかグループ / 株式会社エス・クリーニング | 「ホワイト急便」FC店舗の店頭窓口提供、タブレット操作支援、返品商品の一次保管および引渡し対応 |
| 株式会社ZOZO (ZOZOTOWN) | 返品対象となるECプラットフォームの提供、購入ユーザーへの店頭返品フロー案内 |
店頭における返品受付の運用フロー
消費者がZOZOTOWNで購入した商品をホワイト急便の店頭から返品するプロセスは、極力摩擦を減らすよう設計されています。
- ECサイト上での申請: 利用者が「ZOZOTOWN」の注文履歴から通常通り返品手続きを行います。
- 店頭への持ち込み: 届いた際のバーコードシール付きビニール袋に商品を入れ、対象のホワイト急便店舗へ持ち込みます。
- タブレット受付と発送完了: 店頭に設置されたタブレット端末で発送手続きを実施し、カウンターで送料を決済して店舗スタッフへ荷物を引き渡します。
参考記事: 逆物流(リバースロジスティクス)とは?動脈・静脈物流との違いと導入メリット・業務効率化の手順
逆物流(リバースロジスティクス)の高度化が迫られる背景
EC市場の拡大に伴い、物流現場では「届ける(動脈物流)」だけでなく「戻す(静脈物流・逆物流)」にかかる業務負荷とコストが急増しています。特にアパレルECにおいては、サイズ違いやイメージ違いによる返品が一定確率で発生するため、返品オペレーションの巧拙が収益性を左右します。
従来の返品手段は、宅配便ドライバーによる個別自宅集荷、あるいはコンビニエンスストアや宅配便営業所への持ち込みが主流でした。しかし、トラックドライバー不足が常態化する中、個宅ごとの集荷対応は集配効率を著しく低下させる要因となっています。
また、消費者にとっても「集荷時間を自宅で待つ」「コンビニのレジ列に並んで伝票を発行する」といった作業は心理的・時間的ハードルが高く、EC利用における大きな不満要因(ペインポイント)となっていました。クリーニング店という「衣服を預け、受け取る」習慣が根付いた生活インフラを活用することは、双方の課題を解決するアプローチといえます。
参考記事: 返品処理の標準フローと効率化手法|検品自動化から返金・再販まで徹底解説
サプライチェーン各プレイヤーへの具体的な影響
本実証実験がもたらす影響は、EC事業者、運送事業者、リアル小売・サービス事業者の3つの視点から整理できます。
EC事業者:返品体験の向上によるLTV改善と離脱防止
EC事業者にとって、返品プロセスの簡素化は顧客ロイヤリティ(LTV)向上に直結します。アパレル購入において「返品が面倒だから買わない」という購買障壁を取り除くことは、新規顧客の獲得やリピート率の改善を後押しします。
さらに、生活導線上の店舗に集約されることで、返送にかかる日数のばらつきが抑えられ、倉庫側での検品・再販(在庫復活)までのリードタイムが短縮されます。季節商材のライフサイクルが短いアパレルにおいて、返品在庫の早期再販化は在庫評価減リスクの低減に寄与します。
参考記事: 返品送料の決定ルールとは?特定商取引法に基づく注意点と実務コスト対策を解説
運送事業者:個宅集荷の削減とラストワンマイル集約による生産性向上
運送会社にとって、時間指定や不在リスクが伴う個宅への集荷作業は、配送ルートの効率を阻害する大きな要因でした。
クリーニング店舗が一時的な荷受ハブとして機能すれば、運送事業者は決まった拠点から複数個口をまとめて一括回収できるようになります。1件あたりの集荷生産性が向上し、走行距離の短縮やCO2排出量の抑制、ドライバーの労働時間削減につながります。
小売・サービス業者:ついで利用の誘発とアセットの多目的化
クリーニング店舗を運営する事業者にとっては、店舗空間と接客リソースを活用した「ついで来店」の創出が最大の恩恵となります。
EC商品の返品を目的に来店した消費者が、そのまま自社のクリーニングサービスを利用したり、併設スーパーで買い物をしたりする波及効果が期待できます。人口減少に伴い来店客数の維持が課題となるリアル店舗において、物流タッチポイントを兼ねることは店舗資産の稼働率を高める有効な施策です。
参考記事: 米Uber Eatsの返品回収に学ぶ!日本の小売が迫られる逆物流DXの3つの示唆
LogiShiftの視点:マイクロハブ化が変えるラストワンマイルの構造
今回のムービングによる取り組みは、物流の起点が「玄関先」から「生活導線上の共有マイクロハブ」へとシフトする構造変化を象徴しています。
従来のラストワンマイルは「自宅まで届ける」「自宅から引き取る」という個別完結型の設計が中心でした。しかし、人手不足と運賃高騰が続く物流環境下では、すべての個宅対応を維持することは物理的に困難になりつつあります。
ムービングがマルイ・モディという自社アセットにとどまらず、ホワイト急便のような日常密着型チェーンと組んだ点は極めて合理的です。衣服のケアを担うクリーニング店とファッションECの返品は親和性が高く、消費者の行動パターンに無理がありません。
今後は、単なる返品窓口の提供にとどまらず、クリーニング店での「簡易検品」や「再プレス・再包装」を経て、最寄りの配送拠点へ戻さずに直接次の購入者へ発送するような、分散型フルフィルメントへの発展性も秘めています。生活インフラを物流ネットワークに組み込むオープンなアライアンスが、持続可能なECロジスティクスを支える基盤となります。
まとめ:逆物流改革に向けた今後の指針
丸井グループのムービングによるホワイト急便での「トルダス」実証実験は、リアル店舗の生活インフラとしての価値を再定義し、ECの逆物流を効率化する実効性の高い試みです。
荷主企業および物流担当者は、以下の視点を自社のサプライチェーン戦略に取り入れることが求められます。
- 動脈物流と静脈物流を一体で設計する
配送リードタイムの短縮だけでなく、返品・回収の摩擦を減らす仕組みをECプラットフォームと連携して構築する。 - 異業種アセットを活用したマイクロハブの検討
自社拠点だけに依存せず、コンビニ、クリーニング店、駅ナカ等の生活動線拠点を取り入れたアセットライトな回収網を模索する。 - 返品データの早期回収と再販スピードの極大化
店頭受付時点で返品データをWMS等に即時反映させ、倉庫側の検品・再販オペレーションとシームレスに同期させる。
出典: LOGI-BIZ online
出典: PR TIMES
出典: Impress Watch


