2026年8月26日、株式会社CUBE-LINXが実施した調査により、改正物流効率化法の特定事業者に該当する荷主企業の87.0%が、トラック1運行あたりの荷待ち・荷役時間を平均2時間以内に収めている実態が判明しました。法規制への対応が現場レベルで急速に進展する一方、対策コストの価格転嫁や荷役人員の不足といった構造的課題が浮き彫りになっています。
荷主企業の「1運行2時間ルール」対応実態と浮き彫りになった障壁
2026年4月に本格施行された改正物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)では、一定規模以上の特定荷主や特定事業者に対して、トラック滞在時間の削減や物流統括管理者(CLO)の選任が法的に義務付けられました。商用EV導入支援などを手掛ける株式会社CUBE-LINX(東京都日野市、代表取締役:手島岳人)は、制度の本格義務化を受けた荷主企業の対応状況を把握するため、特定事業者に該当する物流部門最終責任者330人を対象としたインターネット調査(調査期間:2026年7月31日〜8月1日)を実施しました。
CUBE-LINX調査結果の主要データ一覧
調査結果から判明した荷主企業の対応実態、効果のあった施策、および直面している課題の数値を以下のテーブルに整理しました。
| 調査項目 | 最多回答と比率 | 次点以降の回答と比率 |
|---|---|---|
| 2時間ルールの達成状況 | 達成済み(平均2時間以内):87.0% | 未対応(2時間超過):13.0% |
| 実施済み・実施中の対策 | パレット化の推進:41.2% | 運行スケジュール調整:40.6%、荷役機器導入:38.5% |
| 最も削減効果を実感した施策 | 運行スケジュールの調整:19.9% | WMS(倉庫管理システム)導入:18.6%、バース予約導入:14.1% |
| 2時間ルール遵守に向けた課題 | 価格転嫁の難しさ:29.1% | 荷役人員の不足:28.8%、時間計測・データ化の遅れ:28.5% |
| 今後最も必要とされる対策 | 人員の増強・配置最適化:19.1% | 荷役作業の機械化・自動化:14.2%、運送事業者連携:13.6% |
現場主導の「物理的改善」からシステムによる「デジタル可視化」へ
荷待ち・荷役時間の短縮に向けて現場で取り組まれている施策としては、「パレット化の推進(41.2%)」や「フォークリフト等の荷役機器導入(38.5%)」といったハード面・物理的なオペレーション改善が先行しています。
しかし、実際に「最も時間削減効果を実感した施策」に目を向けると、単なる現場作業の迅速化だけでなく、「運行スケジュールの調整(19.9%)」に続き、「倉庫管理システム(WMS)の導入(18.6%)」や「バース予約システムの導入(14.1%)」といったデジタルツールの活用が上位を占めました。アナログな人手頼みの運用から、入出荷予定とバース状況をデータで可視化・制御する仕組みへの移行が、滞在時間短縮に直接寄与していることが裏付けられています。
13.0%の未達成企業を阻む「価格転嫁」と「データ計測」の壁
一方で、回答企業の13.0%は依然として「1運行あたり平均2時間以内」の目標を達成できていません。達成を阻む最大の障壁として挙げられたのは「対策費用や運賃上昇分などの価格転嫁の難しさ(29.1%)」でした。パレット化やマテハン導入、バース予約システムの構築には相応の初期投資・運用コストが発生するものの、その費用を自社の販売価格や発注元への取引価格へ反映させることが極めて困難な取引実態がうかがえます。
さらに、「荷役人員の不足(28.8%)」や「荷待ち・荷役時間の正確な計測やデータ化の遅れ(28.5%)」がほぼ同水準で続いています。現場の労働力不足に加え、そもそも自社拠点の滞在時間を正確に把握するデジタル基盤が整っていないことが、改善の着手を遅らせる要因となっています。
参考記事: 改正物流効率化法で2026年4月本格施行される2時間ルールと荷主の3大義務
業界プレイヤーに押し寄せる具体的な影響
特定荷主の87.0%が2時間ルールをクリアしているという実績は、物流効率化が「努力目標」から「達成して当然の最低基準」へと移行したことを意味します。サプライチェーンの各主役には、次の段階を見据えた対応が迫られています。
製造業者・荷主企業:未達成拠点のデジタル化と「全社的な価格転嫁交渉」の本格化
87.0%という高い達成率に安住することはできません。多品種少量生産を行う工場や、敷地・バースに制約がある複雑な物流拠点では、依然として2時間を超過しているリスクが潜んでいます。残された13.0%の未対応領域を放置すれば、行政による是正指導や企業名公表のリスクに直結します。
さらに、物流部門が単独で効率化コストを抱え込む体制は限界を迎えています。物流部門の責任者は、マテハン導入費や運送事業者への適正運賃支払いに伴うコスト増を経営陣へ正確に提示し、営業部門や調達部門と連携して顧客・取引先への「製品価格への物流コスト転嫁」を全社方針として推進する必要があります。
SaaS・テクノロジーベンダー:「簡便な時間計測」と「拠点間データ連携」への需要拡大
課題の第3位に「荷待ち・荷役時間の正確な計測やデータ化の遅れ(28.5%)」が挙がっていることは、テクノロジー企業にとって極めて大きな事業機会を示しています。大がかりな設備投資が難しい中小規模の倉庫や工場向けに、スマートフォンや簡易センサーで即座に車両の入場・着車・退場時刻を記録できる手軽な計測ツールのニーズが急増しています。
また、単独の拠点管理にとどまらず、発荷主の出荷計画、運送事業者の動態管理システム(TMS)、着荷主の倉庫管理システム(WMS)をAPI連携させ、サプライチェーン全体で到着予測を自動同期するプラットフォームの提供が強く求められています。
運送事業者:「削減実績データ」を武器にした適正運賃・待機料交渉の確立
荷主側の荷待ち・荷役時間が短縮されたことは、ドライバーの拘束時間削減に直結する歓迎すべき成果です。しかし、走行距離や拘束時間が短くなったことで、旧来の距離制・時間制運賃のままでは売上が目減りする「効率化のジレンマ」が生じかねません。
運送事業者は、デジタルタコグラフや動態管理システムから得られる「正確な滞在時間削減データ」を客観的エビデンスとして荷主に提示し、基本運賃の引き上げや、荷役作業に対する「付帯作業料」の明確な別建て請求を勝ち取る交渉力が問われています。
参考記事: 荷待ち・荷役・検品の3大課題から紐解く商慣習の壁打破が物流変革に直結
LogiShiftの視点:2時間達成の先にある「コスト負担の再分配」と「透明な取引構造」
特定事業者の87.0%が2時間以内を達成したという今回のデータは、2026年4月の改正物流効率化法施行を契機として、日本の商慣習が急速に近代化へ舵を切った証左といえます。しかし、本調査が示した「最大の課題は価格転嫁(29.1%)」という事実は、物流効率化の負荷が依然としてサプライチェーンの特定プレイヤーに偏っている構造的欠陥を突いています。
現場のオペレーション改善(パレット化やスケジュール調整)によって2時間ルールをクリアするフェーズは一段落しました。今後の競争軸は、効率化に伴って発生したシステム投資費や設備費、適正運賃をサプライチェーン全体でどのように適正配分できるかという「取引慣行の構造改革」へシフトします。
客観的な稼働データを持たない企業は、価格転嫁の正当性を証明できず、コスト増に押し潰されることになります。荷待ち・荷役時間を1分単位でデジタル計測し、どの工程にどれだけの費用が発生しているかをオープンにする「データの透明性」こそが、荷主と運送事業者が対等に共存するための必須条件となります。
参考記事: 改正物流効率化法が2026年に義務化、9万トン超の荷主が取るべき必須対応
明日から現場と経営層が意識すべきアクションプラン
2時間ルールの遵守を定着させ、持続可能な物流基盤を構築するために、明日から着手すべきアクションは以下の通りです。
- 滞在時間データの計測体制を総点検する
自社の全物流拠点において、トラックの「入場・着車・荷役・伝票受渡・退場」の各タイムスタンプがデジタルで正確に記録されているか確認します。手書き受付簿が残っている拠点は、簡易的な受付システムやバース予約ツールの導入を即座に検討します。
- 効率化に伴う発生コストを算出し、価格転嫁の根拠データを作成する
パレット導入費、マテハン機器リース料、バース管理システム運用費、運送事業者への付帯作業料などを一覧化します。物流部門だけでなく経営層・営業部門を巻き込み、取引先に対する価格交渉のロジックを構築します。
- 運送事業者との契約書面における「運賃」と「付帯作業料」を分離する
実車運行に対する「運賃」と、荷役・検品・ラベル貼りなどの「作業対価」を契約上明確に区分します。待機時間が削減された拠点のドライバーに対しては適切な作業料を支払うなど、相互の信頼関係を強固にする取引条件へ見直します。
参考記事: 【2026年最新】ドライバー平均拘束時間は10時間13分に!1時間33分短縮の実態と荷主企業の対応策|国交省発表
出典: LOGISTICS TODAY
出典: PR TIMES(株式会社CUBE-LINX プレスリリース)
出典: 株式会社CUBE-LINX 公式コラム


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