四国運輸局は2026年9月2日、同年8月付で一般貨物自動車運送事業を新規許可した3事業者を公表しました。建設業や建材・リース業を手掛ける3社が、法令上の最低要件である「5両」で一斉に参入した動きは、2024年問題以降に深刻化する輸送力不足を背景に、実需を持つ荷主企業が自前の輸送インフラ確保へ舵を切り始めた実態を浮き彫りにしています。
四国運輸局による新規許可の概要と参入企業の詳細データ
貨物自動車運送事業法に基づき、トラックを用いて有償で不特定多数の荷物を運ぶ「一般貨物自動車運送事業(霊きゅう限定等を除く)」を営むには、営業所ごとに最低5両以上の事業用自動車(緑ナンバー)を保有することが許可の基準となっています。
四国運輸局が2026年9月2日に発表した最新データによると、2026年8月中に四国エリアで新規許可を受けたのは計3社であり、すべての事業者が参入要件の下限である5両体制でのスタートとなりました。一方、荷主から運送を引き受けて他の実運送事業者に委託する「第一種貨物利用運送事業」の新規登録件数は同月内において0件でした。
【2026年8月度 四国運輸局管内における新規許可事業者の実態】
| 事業者名 | 本社所在地 | 主な事業領域(周辺事業) | 許可車両数 |
|---|---|---|---|
| 有限会社吉野川バラス | 徳島県美馬市穴吹町穴吹字明連9 | 骨材・建材等の販売・採取 | 5両 |
| 有限会社木留リース | 徳島県名西郡石井町石井字城ノ内42-3 | 建設資材・石材・建設機械等リース | 5両 |
| 豊嶋建設株式会社 | 香川県丸亀市飯山町下法軍寺808-1 | 総合建設業(土木・建築) | 5両 |
今回許可を受けた事業者の顔ぶれを見ると、いずれも建設土木や資材調達、建設関連リースなど、重量物や産業資材の輸送ニーズを日常的に自社抱える企業群で構成されています。
香川県丸亀市に本社を置く豊嶋建設は1954年創業の総合建設会社であり、大型土木工事や建築施工を広く手掛けています。また、徳島県美馬市の吉野川バラスは砂利や砕石といった骨材の取り扱いを主力とし、同県石井町の木留リースも建設現場向けの資材や機械リースを取り扱っています。
このように、純粋な物流専業の新規立ち上げではなく、建設・建材という隣接業態からの事業拡張として一般貨物運送事業のライセンスを取得している点が今回の特徴です。
参考記事: 一般貨物運送とは?許可取得の5大要件からDX活用・2024年問題対策までわかりやすく解説
最低保有車両数「5両」参入の制度的背景とハードル
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるためには、法令上定められた厳格な5大要件(人・施設・車両・資金・運行管理体制)をクリアしなければなりません。なかでも車両数については、1営業所あたり原則として5両以上を確保することが義務付けられています。
事業者は車両の確保だけでなく、運行管理者および整備管理者の選任、休憩・睡眠施設の設置、運行管理規程の策定、さらには事業開始に必要な運転資金や法定自己資金の確保(車両費、人件費、燃料費、保険料等の6か月分相当など)を行政へ証明しなければなりません。
建設業やリース業といった実業を持つ事業者が、あえて自社輸送(白ナンバー)にとどまらず、多額の初期投資と管理責任を伴う「緑ナンバー(一般貨物事業)」の許可を取得した背景には、地域輸送における需給逼迫と法令遵守の強化があります。
参考記事: 貨物自動車運送事業法とは?2024・2025年改正の要点と荷主・事業者が取るべき実務対応
異業種参入がサプライチェーン各プレイヤーに及ぼす影響
ドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)が適用された2024年問題以降、物流業界ではドライバー不足と運賃高騰が一段と顕在化しています。こうしたなかで起きた「5両スタートによる一般貨物参入」は、四国地域のみならず全国のサプライチェーン関係者に様々な影響をもたらします。
1. 行政・規制当局:小規模事業者に対する安全管理と法令遵守の指導徹底
四国運輸局をはじめとする規制当局にとって、最低台数である5両で新規参入する事業者への監督体制は極めて重要です。小規模事業者は、運行管理者や整備管理者が他業務と兼任になりやすく、点呼の形骸化や労務管理の不徹底が生じやすいリスクを抱えています。
行政は、許可から一定期間後に実施される「新規許可事業者巡回指導」や監査を通じて、改善基準告示に沿った適正な拘束時間・休息期間の確保、日常点検の実施、デジタルタコグラフ等の適正運用を厳格にチェックしていく方針です。特に近年は「トラック・物流Gメン」による不適切取引の監視が強化されており、名義貸しや過積載運行の防止に向けた指導が一層強まることになります。
2. 既存の地域運送事業者:専門輸送領域における競争激化と協業の模索
建設資材や骨材、重機リース等の特殊輸送を請け負ってきた既存の運送会社にとって、荷主・元請け自身が緑ナンバーを取得して運送事業に参入することは、実質的な「内製化(自社完結)」を意味します。これにより、従来発注されていたスポット便や定期輸送の委託案件が減少するリスクがあります。
しかし、深刻なドライバー不足が続く中では、すべてを自社の5両だけで賄うことは困難です。既存事業者にとっては、自社を単なる下請けではなく、繁忙期の補完や広域輸送を担う「専門パートナー」として位置付け直し、適正な原単価に基づいた運行受託を提案できるかが差別化の鍵となります。
参考記事: 貨物自動車運送事業法第24条と2026年7月9日の原単価方式転換への必須対応
3. 荷主・建設関連企業:「運べないリスク」を回避する垂直統合モデルの台頭
建設業界や資材流通業界では、運送会社への手配難によって「工事現場に必要な資材が工期通りに届かない」「配送コストが読めない」という供給網の機能不全が最大の経営課題となっていました。
今回のように、自社で車両と運行管理者を用意し、緑ナンバーを取得して運送事業化する「垂直統合」は、自社の配送枠を確実に確保しつつ、空き時間や復路(帰り荷)には他社の貨物を有償で受託して車両稼働率を高める狙いがあります。自社物流をコストセンターからプロフィットセンターへ転換させようとする戦略的な動きです。
参考記事: CUBE-LINX調査、中小運送会社の42.2%が収益悪化|正直者が報われない2024年問題の必須対応
4. SaaS・テクノロジーベンダー:新規参入企業への「標準DX装備」の提案機会
新たに一般貨物運送事業に参入した事業者は、過去のアナログな商習慣やレガシーシステムに縛られていないため、クラウド型の物流SaaSや最新の運行管理ツールを受け入れやすい土壌があります。
5両体制の小規模運送事業者では、専任の配車マンや事務員を多数配置する余裕がありません。そのため、スマートフォンを活用したクラウド動態管理システム(TMS)、IT点呼・自動点呼システム、デジタコ連動の日報作成ツール、改正法に対応した「実運送体制管理簿」の自動生成ツールなど、初期費用を抑えて即座に法令遵守体制を構築できるSaaSソリューションの需要が急拡大しています。
LogiShiftの視点(独自考察):自社物流の防衛的「緑ナンバー化」と生き残り要件
四国運輸局が公表した今回の新規許可データは、地方における物流インフラの地殻変動を象徴しています。物流業界が抱える構造的な供給不足に対し、LogiShiftでは今後の事業展開における重要な示唆を以下のように考察します。
「白ナンバー輸送」から「適正な緑ナンバー運用」への構造転換
これまで建設業や建材販売業では、自社の製品や資材を自社の白ナンバートラックで運ぶ「自家用輸送」が多く見られました。しかし、白ナンバーによる有償運送(いわゆる白トラ行為)に対する取り締まりが年々厳格化し、現場のコンプライアンス意識が高まった結果、堂々と他社資材や関連工事の資材を有償運搬できる緑ナンバーを取得する動きが加速しています。
さらに、2026年4月に全面施行された「改正物流効率化法」や荷主に対する物流統括管理者(CLO)の選任義務化などにより、サプライチェーン全体の透明性が強く求められています。自社が運送事業許可を持ち、正規の運送事業者として適正な運賃・料金収受を行うことは、取引先からの信用力向上にも直結します。
5両体制の小規模事業者が直面する「生産性の壁」
一方で、5両という最小単位でのスタートには固有のリスクが存在します。運送事業の固定費(車両維持費、保険料、運行管理者人件費、事務所経費など)は、保有台数が少ないほど1台あたりの負担割合が重くなります。また、ドライバーが1人でも退職・休職すれば、輸送能力が20%喪失するという脆弱性を抱えています。
この「規模の不経済」を克服するためには、徹底したデジタル武装が不可欠です。属人的な運行管理を排除し、配車計画の自動化や動態管理による荷待ち時間の削減、さらには他社との共同配送プラットフォームへの相乗りなど、1運行あたりの実車率と積載率を極限まで高めるオペレーションが求められます。
参考記事: 2030年問題(物流)とは?輸送能力34%不足の危機と企業が今すぐ取るべき対策
まとめ:明日から意識し、実行すべき3つの実務アクション
地域における自社物流の確保や新規参入を成功させ、持続可能な輸送体制を築くために、経営層や現場リーダーが直ちに着手すべき実務アクションを提示します。
1. 自社関連貨物の輸送コストと運行稼働率を精緻に可視化する
外注している輸送費と自社保有車両の維持費を比較するだけでなく、荷待ち時間や実車率などの運行データを精緻に算出し、自社運行と外部委託の最適なポートフォリオを再設計してください。
2. 最低限のリソースで回る「クラウド型運行管理・点呼体制」を即座に導入する
新規参入や小規模体制での運行においては、管理業務の負担を最小限に抑えることが最優先です。IT点呼やクラウドデジタコを活用し、少人数でも法令違反を起こさないデジタル基盤を初期段階から標準装備してください。
3. 近隣の荷主・運送事業者との帰り荷マッチングや共同輸送を模索する
自社の荷物だけを運ぶ片道運行では採算性が悪化します。近隣の建設業者や資材会社と連携し、復路での相互利用や共同配送スキームを立ち上げ、車両5両の生産性を最大化する協調関係を構築してください。
参考記事: 国土交通省など3省の最大25%輸送力不足対策|荷主企業の構造改革が必須対応に



