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事例・インタビュー 2026年9月24日

SM物流研究会、ドライDC荷待ち0.7%へ抑制|パレットとASNで検品レス推進

SM物流研究会、ドライDC荷待ち0.7%へ抑制|パレットとASNで検品レス推進

首都圏や関西の食品スーパー24社が参画する「SM物流研究会」は、2026年9月24日の活動報告会において、常温保管型物流センター(ドライDC)における1時間を超える荷待ちトラックの割合が0.7%まで低減したと発表した。バース予約システムの定着によって2023年10月時点の14.8%から大幅に抑制されており、今後はパレット納品と事前出荷情報(ASN)の連携による検品レス化へ注力する方針を示している。

ドライDCの待機率0.7%を達成したSM物流研究会の歩みと定量データ

SM物流研究会は、首都圏や関西の主要食品スーパーが企業の垣根を越えて物流課題の解決を目指す任意団体である。ライフコーポレーション、サミット、ヤオコー、マルエツの4社が2022年8月に立ち上げた協議会を母体とし、2023年3月に正式発足した。

2026年4月に改正流通業務総合効率化法(物効法)が全面施行され、年間取扱貨物量9万トン以上の「特定荷主」に対する物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の提出が義務化された。これに伴い、着荷主側にも荷待ち時間や荷役時間の短縮への法的責任が課されている。

SM物流研究会では、参加各社の物流センターにおける車両待機の実態を定量的に把握するため、2023年10月より定点観測を継続してきた。

【SM物流研究会における改善の歩み】
2022年8月   首都圏大手4社(ライフ、サミット、ヤオコー、マルエツ)で協議開始
2023年3月   「首都圏SM物流研究会」正式発足、後に全国・関西へ拡大
2023年10月  加盟各社センターでの荷待ち時間定点観測を開始(1時間超が14.8%)
2025年5月   荷待ち・荷役作業等平均時間の測定を開始
2026年3月   チルド食品業界製配販行動指針を策定
2026年6月   ドライDCの1時間超待機率が0.7%に低下
2026年9月   2026年度上期活動報告会を開催、パレット化・ASN推進を公表

2026年6月時点の調査では、バース予約システムの導入と活用浸透が進んだ結果、ドライDCにおける荷待ち時間の長大化が抑制されていることが判明した。

調査項目 集計開始時 2026年6月時点 改善幅
ドライDC 荷待ち1時間超過率 14.8%(3,438台) 0.7%(183台) 14.1ポイント改善
荷待ち・荷役合計2時間超過率 ― 0.8%(209台) ほぼ解消
ドライDC 平均荷待ち・荷役時間 34.6分(2025年5月) 29.5分 約5.1分短縮
ドライTC 平均荷待ち・荷役時間 52.8分(2025年5月) 47.6分 約5.2分短縮

バース予約システムによって事前にトラックの到着時間帯が平準化され、構内作業員とフォークリフトの配置計画があらかじめ確定できる体制が整ったことが、待機時間の抑制につながった。

参考記事: キリン湘南工場も導入、2026年4月の荷待ち義務化を越えるバース管理

パレット納品拡大と検品レス化に向けた実証実験の進捗

荷待ち時間の抑制に一定の成果が出たことを受け、研究会は作業プロセスの大半を占める「荷役作業時間」の短縮へ施策の軸足を移している。具体的には、バラ積み手降ろしの解消を目指す「パレット納品の拡大」と、納品時の突き合わせ作業を省く「ASN(事前出荷情報)活用による検品レス化」である。

サミットの武田哲志物流統括責任者(首都圏座長)は、製造・配送・販売の各層で協議を重ねた結果、パレット化と同時に事前出荷情報を共有しなければ、現場での検品作業が滞り荷役短縮の効果が減殺される点を指摘した。

関西エリアでは、株式会社万代と即席麺メーカーによるパレット納品の実証実験が実施された。平和堂の財田晃物流部長(関西座長)によると、この取り組みによって積み込みおよび荷下ろし作業時間は約30分まで短縮された。

一方で、パレット積載に伴うデッドスペースの発生により、車両の積載率が当初約60%まで低下するという課題が浮き彫りになった。これに対し、実証実験では発注ロット単位の変更や段ボールの積み付けパターンの見直しを実施し、積載率を90%まで引き上げる運用設計を完了させた。

既存トラックの空きスペースを融通し合う共同配送インフラ「みんなのトラック」事業も進められている。2026年7月までに第5弾の実証運行が実施され、運行回によって積載効率が13%から38%向上した。

参考記事: パレット標準化とは?物流2024年問題を解決するメリットと導入のステップ

小売・メーカー・運送各層における実務オペレーションへの影響

荷待ち削減から荷役短縮・データ連携へと踏み込む動きは、サプライチェーンを構成する事業者のオペレーションに影響を与えている。

小売事業者(着荷主):受入プロセスの完全デジタル化

小売側の配送センターでは、バース予約システムの導入によって突発的な入荷車両の滞留が解消されつつある。次の段階として求められているのが、ASNを活用した検品作業の省略である。

従来の運用では、納品伝票と現物のバーコードを1ケースずつ照合する作業に多くの時間を費やしていた。ASNデータを事前に受信し、メーカー出荷時のデータと連携できれば、入庫時の全数検品を原則廃止(抜き取り検査または完全検品レス)できる。これにより、荷受バースの回転率が向上し、同一設備での処理能力を高めることが可能となる。

食品メーカー・製造業者:積載率維持とデータ送信の義務化

食品メーカー側では、小売から求められるパレット納品に応じる過程で、積載効率の低下による輸送コスト増のリスクを抱えている。特に即席麺やスナック菓子のような軽量嵩高品では、パレット化によってトラックの容積上限に達する前に空間の無駄が生じやすい。

そのため、万代と即席麺メーカーの実証事例のように、ケース寸法のモジュール化や発注単位(パレット単位での発注)の合意形成を小売側と結ぶ実務が必須となる。また、出荷確定と同時にASNデータを送信できる倉庫管理システム(WMS)の改修も求められる。

運送事業者:拘束時間の抑制と実車率向上

運送事業者にとっては、荷待ち・荷役時間の合計が2時間を超えるトラックが0.8%にとどまったことにより、改善基準告示で定められた拘束時間上限を遵守しやすい環境が整った。手作業による荷下ろしからフォークリフトを用いたパレット荷役への移行が進めば、ドライバーの肉体的負荷が軽減される。

「みんなのトラック」のような共同配送インフラへの参画が進めば、納品完了後の復路における空車回送を削減し、実車率および1台あたりの運送収益を底上げできる。

参考記事: 荷待ち・荷役・検品の3大課題から紐解く商慣習の壁打破が物流変革に直結

LogiShiftの視点:荷待ち削減の先にある「積載率90%」とデータ同期化の壁

SM物流研究会が示したドライDCでの荷待ち1時間超0.7%という実績は、着荷主主導のバース予約システム運用が待機時間対策として機能することを証明した。しかし、今後の焦点となるパレット化と検品レス化は、物流センター単体の設備運用だけでは完結しない。

万代の実証が示した「パレット化に伴う積載率60%への急落」は、手積みを前提として設計されてきたトラック輸送の構造的弱点を示している。積載率が低下したまま運行を続ければ、輸送1トンあたりの原価が跳ね上がり、ドライバー不足をかえって助長する。万代が積載率90%への引き上げを達成できた要因は、発注ロットの改定とパレット積み付けパターンの再計算にメーカーと小売双方が合意した点にある。

ASNによる検品レス化についても、日本スーパーマーケット協会で議論が続く「商品マスターの統一」が進まなければ、取引先ごとに異なるデータ形式を読み替えるコストが発生する。

単一企業の改善にとどまる「荷待ち削減」の段階から、発注単位やデータ形式を揃える「サプライチェーン同期化」の段階へと移行できるかどうかが、実効性を左右する。

参考記事: 日本スーパーマーケット協会でメーカーの8割がLT2移行しデータ標準化へ

明日から現場で着手すべき実務対応

SM物流研究会が公表した指標と施策を参考に、各事業者は以下の実務対応を検証する必要がある。

  1. 自社拠点における滞在時間の区分集計
    荷待ち時間と荷役作業時間を分離して計測し、ドライDCで29.5分、ドライTCで47.6分という研究会の平均水準と自社実績の乖離を特定する。
  2. パレット納品時の積載率シミュレーション
    バラ積みからパレット積みに切り替えた際の車両積載率を算出し、容積効率が極端に低下する品目については発注ロット単位の変更を着荷主へ打診する。
  3. 出荷確定データの即時連携プロセスの確立
    納品先センターでの検品レス運用を見据え、自社WMSから出荷確定後速やかにASNデータを生成・送信できるインターフェースの整備を進める。

バース予約の運用定着によってトラック待機問題に一定の目途が立った現在、荷役時間の圧縮とデータ連携の確立が現場の処理能力を左右する。


出典: 物流ニュースのLNEWS
出典: 流通ニュース

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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