コクヨは2026年9月29日、滋賀県愛荘町において同社最大規模となる「(仮称)コクヨ新滋賀配送センター」の造成工事に着工したと発表した。総投資額約176億円を投じる本施設は、大型トラックが直接2階フロアへ乗り入れ可能な専用スロープを備えた低層構造を採用し、2029年9月の本稼働を目指す。
(仮称)コクヨ新滋賀配送センターの建設計画と施設仕様
コクヨが進める「国内供給体制強化策」(総投資額345億円)の中核を担う施設として、滋賀県愛知郡愛荘町に「(仮称)コクヨ新滋賀配送センター」が整備される。オフィス家具需要の拡大に対応しつつ、国内物流ネットワークの再編と基幹機能の集約を図る目的がある。
施設諸元と施工・管理体制
敷地面積約6万6000平方メートルに対し、延床面積約4万5000平方メートルの鉄骨造地上2階建て物流施設を建設する。建物の最高高さは約16メートルに抑えられ、低層構造を活かした平面動線が設計されている。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 施設名称 | (仮称)コクヨ新滋賀配送センター |
| 所在地 | 滋賀県愛知郡愛荘町(国道8号線隣接) |
| 総投資額 | 約176億円 |
| 構造・規模 | S造・地上2階建て(最高高さ約16m) |
| 敷地面積・延床面積 | 敷地約66,000㎡、延床約45,000㎡ |
| 主要用途 | ファニチャー製品の保管・配送、国内物流機能の集約 |
| CM | 日建設計コンストラクション・マネジメント |
| 造成・設計・施工 | 設計:新洲 / 造成・建築施工:鹿島建設 |
国道8号線に隣接する立地特性を備え、関西・中部両経済圏へのアクセス性を確保している。大型トラックが直接2階フロアへ進入できる専用ランプウェイ(スロープ)を敷設し、上下階での荷役を完全分離する動線計画が採用された。
造成着工から本稼働までのスケジュール
2026年9月24日に造成工事を着工しており、約2年半の造成・建築期間を経て2029年2月の竣工を予定している。竣工後はマテハン設備の据付や保管システムの立ち上げ、配送網の移管作業を進め、2029年9月に正式稼働を迎える見通しである。
| 年月 | 工程・マイルストーン |
|---|---|
| 2026年9月24日 | 造成工事着工 |
| 2026年9月29日 | 造成工事着工を公式発表 |
| 2029年2月 | 施設竣工(予定) |
| 2029年9月 | 新配送センター本稼働(予定) |
構内動線と環境配慮設計
本施設では、搬出入の効率化とトラックドライバーの待機時間極小化を両立させるため、敷地内に広大な荷捌きスペースを配備する。大型車両の周回ルートを一方通行化し、敷地内での切り返しや交差待ちを排除するレイアウトを採用した。2階へ直接アクセス可能なスロープ構造により、1階バースと2階バースが独立して機能するため、荷役作業の競合が発生しない。
また、隣接する一級河川・愛知川(えちがわ)流域の自然環境保護を目的とした「愛知川河畔林再生プロジェクト」を推進する。地域に生息する希少種カヤネズミの生息環境を保全・創出する緑地整備を実施するほか、屋根面への自家消費型太陽光発電設備の設置など、脱炭素化に向けた環境設備が組み込まれる。
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サプライチェーン関係者への実務的影響
荷主企業による自社基幹拠点への巨額投資と構内設計の刷新は、製品を供給するメーカー自身だけでなく、実運送を担う事業者や運行ドライバーの実務環境に直接変化をもたらす。
製造業者・メーカー:物流網集約による拠点管理コストと安全在庫の圧縮
オフィス家具はデスク、チェア、キャビネットなど大型で不定形な荷姿が多く、保管効率の低下や輸送時の容積勝ち(積載重量に達する前に荷室が満杯になる現象)が起きやすい商材である。従来、地域ごとに分散していた保管・配送拠点を愛荘町の基幹センターへ集約することで、製品ごとの安全在庫を一元管理できるようになる。
在庫拠点の統合は、多品種にわたるファニチャー製品の在庫重複を削減し、保管コストの圧縮につながる。同一エリアの納品先に対する配送を本拠点から一括して組み直すことで、工場から各配送デポへの横持ち輸送が削減され、サプライチェーン全体のリードタイム短縮と物流コスト低減が両立される。
参考記事: パナソニックホールディングス、関西9拠点集約で年10億円超の削減へ
運送事業者:2階直結スロープと広い荷捌き場による車両回転率の向上
運送会社の実務において、大型車両が安全かつ円滑に接車できるバース環境の有無は、日々の運行収益を左右する要素である。本拠点では大型トラックが2階へ直接乗り入れ可能な専用スロープが設置され、フロアごとのバース数が十分に確保される。
広大な荷捌きスペースにより構内待機列の発生が抑制され、車両の進入から接車、荷役、退出までの構内滞在時間が短縮される。1運行あたりの拘束時間が短縮されることで、運送事業者は車両の1日あたりの回転率を引き上げることが可能となり、保有車両の稼働効率向上につながる。
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ドライバー:荷待ち・荷役時間の削減と拘束時間の適正化
国土交通省が2026年7月に公表した調査によると、トラックドライバーの荷待ち・荷役・付帯作業時間の合計は1運行あたり平均2時間2分となっている。国が定める「荷待ち・荷役時間原則2時間以内(努力目標1時間以内)」の基準を達成するためには、現場での物理的な作業ボトルネック解消が欠かせない。
本センターの平面的な低層設計と専用スロープ構造は、エレベーターや垂直搬送機の空き待ちに伴う積載待ち時間を排除する。荷捌き場の拡張によってフォークリフトの荷役作業が円滑化され、ドライバーが手作業で荷物を積み下ろしする付帯作業や長時間の荷待ちから解放される環境が整えられる。
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LogiShiftの視点:荷主主導のハード投資が変える持続可能基準
2026年4月に本格施行された改正物流効率化法では、年間貨物取扱重量9万トン以上の特定荷主に対して物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の策定、荷待ち・荷役時間の定期報告が義務付けられた。荷主企業は運送事業者への条件改善要求にとどまらず、自社のサプライチェーン構造そのものを法律の求める基準へ適合させる責務を負っている。
コクヨグループでは、オフィス通販事業を手掛ける株式会社カウネットが2026年8月に社長直轄の物流改革体制を公表し、当日配送の見直しや2時間を超える荷降ろし時間の94%削減といった実績を示している。今回の新滋賀配送センターに対する約176億円の投資は、同グループの商流コントロールにとどまらず、ファニチャー事業における物理的インフラの抜本的刷新に踏み込んだ事例である。
地上2階建てという低層構造を選択し、大型トラック用スロープを外付けする設計は、容積率を極限まで使う多層階型倉庫と比較して建築コストや敷地効率の面で割り切りを必要とする。しかし、垂直搬送設備のキャパシティ不足による待機発生をハードウェア設計の段階で排除し、トラックの構内滞在時間を物理的に削り込むアプローチは、輸送能力不足が常態化する市場環境において確実な車両確保を担保する条件となる。
参考記事: カウネット、当日配送36%を翌日へ移行し社長直轄で進める物流改革
明日から意識すべきこと
荷主企業および物流事業者の実務担当者が自社の拠点計画や運行計画を見直すためのポイントは以下の通りである。
- 自社拠点の待機要因を「構内動線・バース構造」のハード面から再点検する
トラックの入場から退出までの動線において、交差や切り返し、垂直搬送機のボトルネックが発生していないかを測定し、構内レイアウト変更やバース予約システムの導入によって改善可能な余地を特定する。
- 改正物流効率化法に基づく「荷待ち・荷役時間2時間以内」の達成度を把握する
実運送事業者とのデータ連携を通じて、発着拠点ごとの平均待機時間と作業時間を分単位で可視化し、法定報告や中長期計画の削減目標に沿った是正措置を進める。
- 複数拠点に分散した在庫と輸送網の統合余地を試算する
エリア内に散在する保管拠点を集約した場合の賃料、安全在庫の削減幅、同一納品先への混載配送による配送ルート削減率を算出し、輸送キャパシティの圧縮に向けたSCM再設計に着手する。
参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: コクヨ株式会社 公式リリース
出典: 国土交通省 トラック運送業の適正取引推進



