公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は2026年9月10日、東京ビッグサイトにて「第1回 物流統括管理者連携推進会議(J-CLOP)」を開催した。2026年4月に全面施行された改正物流効率化法で物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられた特定荷主をはじめ、荷主企業や物流事業者など計152名が参加した。
J-CLOP初会合の概要と法規制施行までの経緯
「物流統括管理者連携推進会議(JILS CLO Partnership、略称:J-CLOP)」は、CLO選任義務を負う特定荷主企業と、物流事業者やシステムベンダーなどのパートナー企業が業種の枠を越えて連携するために発足した枠組みである。2026年8月10日にメンバー募集が開始され、今回の第1回会議が初の対面会合となった。参加費用はJILS会員企業が無料、非会員企業は年額132,000円(税込)に設定されている。
会場には荷主企業から95名、物流事業者やソリューションベンダーなどの共働メンバーから57名が集まり、関係省庁を含め126社から計157名規模での参加となった。当日のプログラムは二部構成で進行した。
第1部では、JILS副会長を務める株式会社ファミリーマート執行役員物流本部長(CLO)の大野泰氏が開会メッセージを述べ、国土交通省、経済産業省、農林水産省の担当課長がCLOへの期待を表明した。続いてJILSより、CLOに求められる経営管理視点と企業価値向上に関する講演が行われた。
第2部の情報交換ラウンドテーブルでは、参加者がグループに分かれ、物流効率化法への対応状況や自社の輸送課題、共同配送の可能性について討議した。事後アンケート(回答者105名)では、会合全体に対して91.4%が「大変満足」または「満足」と回答し、設置が検討されている自主研究部会に対しても90.5%が参加意欲を示した。
以下の表は、物流効率化法の制定から本会議開催、および直近の計画提出期日までの経緯をまとめたものである。
| 年月日 | 主体 | 決定事項・出来事 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|
| 2024年5月 | 国会 | 改正物流関連2法の成立・公布 | 荷主企業への規制導入が確定 |
| 2025年4月1日 | 国土交通省・経済産業省 | 判断基準(努力義務規定)の施行 | 全荷主に荷待ち・荷役短縮の努力義務 |
| 2026年4月1日 | 国土交通省・経済産業省等 | 改正物流効率化法の規制的措置施行 | 年間9万トン以上の特定荷主にCLO選任義務化 |
| 2026年8月10日 | JILS | J-CLOPの活動開始を公表 | 企業間連携プラットフォームの立ち上げ |
| 2026年9月10日 | JILS | 第1回 物流統括管理者連携推進会議の開催 | 荷主95名・共働57名が参加し課題共有 |
| 2026年10月末 | 特定荷主各社 | 初回中長期計画およびCLO選任届出の提出期日 | 国への数値目標と行動計画の提出 |
国土交通省が2026年7月10日に発表した2025年度調査によると、トラック1運行あたりの平均拘束時間は10時間13分、荷待ち・荷役等時間は2時間2分(荷待ち1時間00分、荷役41分、附帯作業21分)となっている。国の基本方針ではドライバー1人あたり年間125時間の拘束時間短縮と積載効率44%の達成が目標に掲げられており、J-CLOPはこうした公的指標の実務運用を協議する受け皿として機能している。
参考記事: 改正物流効率化法で2000人超のCLO誕生|特定荷主の選任義務と罰則
サプライチェーン関係者に生じる構造的影響
法改正により選任されたCLOの活動が個社単位から業界横断へと広がることで、サプライチェーン各層に生じる具体的な影響を整理する。
製造業者・メーカー:自社都合の出荷制限から業種間連携へ
発荷主および着荷主となるメーカーでは、CLOが経営陣として営業部門の取引条件や製造部門の生産計画に介入する動きが進んでいる。これまでは自社倉庫内の効率化や運賃交渉によるコスト抑制が主眼であったが、単独の取り組みではトラックの積載率向上に限界がある。
J-CLOPのラウンドテーブルにおいて共同配送やデータ連携に関する関心が9割を超えたことは、競合他社や異業種との協調領域を広げなければ、法定目標である積載率や待機時間削減を達成できない現実を示している。製品仕様やパレット規格の標準化、共通配送網の構築に向け、他社CLOとの直接交渉が本格化する。
参考記事: 共同配送とは?仕組みと混載便との違い・導入メリットをわかりやすく解説
運送事業者:現場データに基づく荷主CLOへの直接是正要求
運送事業者にとっては、従来の荷主物流担当者だけでなく、役員クラスのCLOと直接対話できる回路が開かれつつある。特定荷主側には1運行あたりの荷待ち・荷役時間を2時間以内、1回の受渡しを1時間以内とする国の目標順守が課されている。
運行管理システムやデジタコから得られる実測待機時間データをCLOに提示することで、倉庫側の受入体制改善や付帯作業の費用請求、リードタイム延長に関する交渉が制度的に通りやすくなる。待機時間の長い荷主拠点の改善が遅れた場合、運送事業者が輸送引き受けを断る判断基準も明確化している。
SaaS・テクノロジーベンダー:企業間データ連携とダッシュボード需要の伸長
J-CLOPに57名の共働メンバーが参加した背景には、法対応に伴うシステム需要の変質がある。特定荷主は毎年度の定期報告書類の作成と進捗管理が義務付けられており、手書き管理や推計値では行政指導の対象となるリスクを抱える。
バース予約受付システムや動態管理SaaSは、単一拠点の車両誘導ツールから、複数企業間での共同配送マッチングや、CLOが経営会議に提出するKPIダッシュボードの基盤データとしての正確性が問われる。企業をまたいだ積載データや運行ステータスのAPI連携機能が選定の要件となっている。
参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた選任基準と企業が備えるべき実務対策
LogiShiftの視点:中長期計画提出を控えたCLO横連携の実効性と課題
J-CLOPの立ち上げは、特定荷主3,000社超が直面する2026年10月末の初回到達目標(中長期計画およびCLO選任届出の提出)に直結した動きである。届出怠りには20万円以下の過料、命令違反には最大100万円の罰金や社名公表が規定されており、各社CLOには実効性のある計画策定が迫られている。
JILS副会長の大野泰氏が示した通り、物流インフラの維持には個社最適を超えた「協調領域の改革」が不可欠である。しかし、情報交換ラウンドテーブルで共有された問題意識を実際のオペレーションに落とし込むには、明確なハードルが存在する。異なる荷主同士での配送拠点の統合や納品ルートの一元化は、発注締め時間や納品リードタイムといった営業上の商慣習のすり合わせを伴うためである。
今後は、J-CLOPが計画している自主研究部会などの場を通じて、守秘義務契約や独占禁止法上の配慮を担保しつつ、同一納品先を持つ荷主間でのルートシェアリングや容積換算データの標準化といった具体的な共同化案件を成立させられるかが、本枠組みの実効性を決定づける。
今後の実務で着手すべき3つのアクション
- 自社が関与する主要輸送ルートの積載率と待機時間の正確な計測
国への定期報告書類に耐えうる客観的数値を把握するため、運行管理データやバース予約記録を統合し、目標値(待機時間2時間以内・積載率44%)に対する拠点ごとの乖離を特定する。
- 同一納品先を持つ他社との共同配送可能性の検討
J-CLOPなどの外部プラットフォームや業界別ワーキンググループを活用し、納品頻度や温度帯、配送エリアが重複する他社CLOとの協調領域を洗い出し、実証運行の可否を協議する。
- CLO直下のサプライチェーン協議会による取引条件の改定
営業部門による無理な当日納品指定や製造部門のロット設定に対し、CLOが持つ是正権限を行使できる規程を運用し、取引先との契約条件の見直しを組織的に推進する。
出典: プレスリリース・ニュースリリー
出典: LNEWS
出典: 国土交通省ポータルサイト


