日本物流団体連合会は2026年9月28日、2026年度第1回経営効率化委員会を開催し、Mujin JapanによるフィジカルAIと倉庫実行システムの活用事例に関する講演を実施した。登壇した松本圭太名古屋営業部長は、自動車部品メーカーの三五福田工場で年間2,080便のトラック輸送を削減した実績を基に、単一設備の導入から複数機器の統合制御へ移行する実務を説明した。
2026年度第1回経営効率化委員会における協議内容と三五福田工場の実装実績
2026年9月28日に東京都千代田区の全日通霞が関ビル会議室で開催された本委員会は、物流事業者が直面する労働生産性の向上や国の政策動向への実務対応を検討する場として設けられた。
会合の前半では、2026年6月に創設された第1回「日本物流大賞」で先進技術活用賞を受賞した株式会社Mujin Japanの松本圭太名古屋営業部長が招かれ、製造・物流現場の自動化事例が解説された。後半の委員会審議では、事務局より上期の活動結果と下期の実行計画が諮られ、全会一致で原案通り承認された。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 開催日・場所 | 2026年9月28日、全日通霞が関ビル会議室 |
| 主催組織 | 日本物流団体連合会(経営効率化委員会/脇谷委員長) |
| 第1部 講演テーマ | フィジカルAIを活用した物流・製造現場の自動化とその将来像 |
| 登壇者 | 株式会社Mujin Japan 営業本部 松本圭太 名古屋営業部長 |
| 第2部 報告・承認事項 | AI利活用意識調査の分析報告、官民物流標準化懇談会等への参画承認 |
先進技術活用賞の対象となった三五福田工場における自動化実績
第1部で詳述された取り組みは、Mujin Japanと自動車部品大手の株式会社三五が共同で進めた福田工場(愛知県みよし市)の構内物流改革である。同工場では、知能ロボットと無人搬送車(AGV)を連携させた自動化倉庫を構築し、外部倉庫への輸送工程を廃止した。
公表されている運用実績データは以下の通りである。
| 評価指標 | 導入前後の実績数値 |
|---|---|
| 10tトラック運行便数 | 年間2,080便削減(外部倉庫間の往復輸送を廃止) |
| CO₂排出量 | 年間約11.0t削減 |
| ドライバー荷役・待機時間 | 年間約1,700時間削減 |
| 重量物荷役作業 | 1ケースあたり15kgの荷役を完全自動化 |
同案件では、3Dカメラによる環境認識と動作計画アルゴリズムを組み合わせたフィジカルAIを導入し、事前の教え込み(ティーチング)を行うことなく、荷姿の異なる通い箱の荷下ろしや積み付けを自動処理している。
個別設備の自動化からWESによる全体制御への移行
講演の中で松本部長は、ロボットアームやAGVなどの単体設備を個別に導入する手法では工程間の滞留が解消されず、投資対効果が限定される点を指摘した。
現場全体の処理能力を引き上げる要件として提示されたのが、WES(倉庫実行システム)を中核に据えた制御基盤の構築である。上位の倉庫管理システム(WMS)から届く出荷指示をWESがリアルタイムに分解し、知能ロボットや搬送設備に対してミリ秒単位で指示を最適配分することで、設備間の干渉や待機ロスを抑える仕組みが共有された。
経営効率化委員会における下期活動計画の承認
第2部の委員会では、事務局より「AIの利活用に関する意識調査アンケート」の分析結果が共有された。回答傾向をもとに、加盟各社におけるAIや自動化技術の導入実態と運用上の課題が整理された。
続いて提示された2026年度下期の活動計画案では、以下の3点が承認された。
- 先進技術活用推進情報交換会の開催
- 先進自動化拠点を対象とした施設見学会の実施
- 国土交通省などが主導する「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」および「官民物流標準化懇談会」ならびに各分科会への参画
2026年4月に全面施行された改正物流効率化法では、特定事業者に対する物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の策定が義務付けられている。業界団体として現場の技術導入と国の標準化施策を並行して推進する体制が整えられた。
参考記事: Mujin、日本スタートアップ大賞受賞|フィジカルAIでトラック年2080便削減
倉庫事業者とシステムベンダーに生じる設備投資の転換点
本委員会で示された知見と活動計画は、物流現場を運営する事業者および支援するテクノロジーベンダーの実務に影響を与える。
倉庫事業者・3PLにおける設備選定の基準変更
単一作業の省人化を狙った個別マテハン導入から、入出荷バースと保管エリアを直結する統合制御へのシフトが求められる。従来のパレタイズロボット導入では、荷姿変更に伴うプログラミング修正費用や、前後のコンベヤラインとの速度不一致によるボトルネックの発生が課題となっていた。
三五福田工場の事例が示す通り、AGVと知能ロボットを上位のWESで連動させる構成をとることで、荷役から搬送までの工程間タッチポイントを無人化できる。これにより、改正物流効率化法で削減が求められているドライバーの荷待ち・荷役時間を直接的に短縮し、入出荷バースの回転率を向上させる運用設計が可能になる。
参考記事: 荷待ち・荷役・検品の3大課題から紐解く商慣習の壁打破が物流変革に直結
テクノロジーベンダーに求められる制御インターフェースの標準化
WMSやバース管理システムを提供するソフトウェア事業者にとっては、フィジカルAIを搭載したロボット制御基盤とのAPI連携が必須の開発要件となる。
上位システムが静的な在庫管理や指示出しを行うだけでなく、下位のロボット知能OSがリアルタイムに障害物を回避し、動作計画を変更するアーキテクチャが定着しつつある。ハードウェアのメーカーを問わずに指示を仲介できるオープンなWESの需要が高まるため、特定機器専用の制御盤に縛られたベンダーはシステム更新の選定から外れるリスクが高まる。
参考記事: EXOTECとMujinが8月19日提携、保管荷役の統合でサイロ化打破へ
LogiShiftの視点:個別最適から脱却するためのWES導入とデータ標準化
物流現場の自動化は、単体設備のスペック競争から、WESをハブとした複数設備の統合制御へと力点が移っている。これまで多くの物流センターでは、自動倉庫、デパレタイズロボット、AMRをそれぞれ別々のベンダーから導入した結果、機器間のデータフォーマットが合致せず、中間工程に人手による積み替え作業が残る事態が発生していた。
三五の案件において年間2,080便の輸送削減が達成された要因は、外部倉庫の保管機能を工場内自動化システムへ統合し、入出荷とライン供給を直結させた点にある。これを実現したのは、ロボット単体の速度ではなく、MujinOSのような動作計画AIと上位システムを結合させた制御設計である。
物流連が下期計画に「官民物流標準化懇談会」への参画を盛り込んだ背景には、こうしたシステム統合の前提としてパレット規格やASN(事前出荷情報)データの統一が欠かせないという判断がある。設備導入を検討する企業は、ハードウェアの減価償却期間だけでなく、将来導入する異種マテハンとWESを接続できる拡張性を発注仕様書に盛り込むことが要件となる。
参考記事: 物流標準化推進とは?2024年問題に対応するロードマップと現場での実践手順
自動化統合に向けた拠点管理の実務確認
WESを軸とした全体最適化を進めるにあたり、拠点の設備導入担当者が着手すべき実務項目を整理する。
- 既存設備と基幹システム間のデータ連携方式の洗い出し
通信プロトコルが専用規格でブラックボックス化されていないか、上位WMSや将来導入するWESとAPI連携が可能か仕様書を確認する。
- 入出荷バースにおける手荷役時間とアイドリング要因の定量把握
トラック到着から荷下ろし完了までの工程において、マテハンの処理待ちや一時仮置き作業が何分発生しているかをタイムスタディで測定する。
- 通い箱・パレットの規格統一状況の点検
ロボットハンドによる把持やAGV搬送に対応できるサイズ・重量の許容範囲を算出し、荷主側との取引条件と照合する。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: 株式会社Mujin Japan
出典: 株式会社三五
出典: ロボットダイジェスト



