SHEINは2026年9月、大阪府内に自社販売商品専用の返品倉庫を新設し、埼玉倉庫との東西2拠点による返品物流体制の運用を開始した。新拠点の稼働によって西日本エリアの輸送距離が圧縮され、集荷から返品処理完了までの全工程にかかる所要時間が前週比で約8時間短縮された。
大阪返品拠点の稼働と東西2拠点体制の運用体制
埼玉・大阪の担当エリア分割とヤマト運輸の回収網
SHEINの日本市場における返品物流は、シンガポール法人であるROADGET BUSINESS PTE. LTD.が日本の現地倉庫パートナーとの協業を通じて運営している。同社は2022年3月に埼玉県へ国内初となる自社販売商品向けの返品倉庫を開設し、検品や返金手続きを一括して処理してきた。今回の大阪拠点の追加稼働により、配送担当エリアを明確に東西へ分割する体制が整った。
| 拠点名 | 開設時期 | 担当エリア | 運用形態 |
|---|---|---|---|
| 埼玉返品倉庫 | 2022年3月 | 関東、東北、信越、北陸、東海、北海道、沖縄 | 現地倉庫パートナー協業 |
| 大阪返品倉庫 | 2026年9月 | 関西、山陽・山陰、四国、九州 | 現地倉庫パートナー協業 |
返品配送のラストワンマイルおよび幹線輸送はヤマト運輸が担当している。消費者は自宅での指定集荷に加え、ヤマト運輸の営業所、ファミリーマート店頭、オープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」への持ち込みを選択できる。西日本発の荷物が大阪倉庫へ直接搬入されることで長距離輸送が削減され、セール等の注文急増期でも処理能力の分散が可能になった。
参考記事: 逆物流(リバースロジスティクス)とは?動脈・静脈物流との違いと導入メリット・業務効率化の手順
日本市場におけるSHEINの返品オペレーション強化の歩み
SHEINは国内での購入ハードルを下げる施策として、配送網だけでなく返品ポリシーやシステムUIの改修を段階的に進めてきた。
| 年月 | 実施内容 | オペレーション上の変化・効果 |
|---|---|---|
| 2022年3月 | 埼玉県に国内初の返品倉庫を開設 | 海外返送を排除し国内集約による検品フローを確立 |
| 2023年9月 | 返品ポリシー変更(40日以内・初回無料) | 購入者の返品心理的ハードルを低減 |
| 2024年8月 | 日本サイトの返品ページUIを全面刷新 | 申請から梱包指示までの案内を簡素化し誤返送を抑制 |
| 2026年9月 | 大阪返品倉庫の正式運営を開始 | 西日本発の荷物を集約、全工程で約8時間の短縮を記録 |
| 2026年10月 | 東西2拠点体制の本格稼働を公式発表 | 繁忙期の処理負荷平準化と返金速度の安定運用へ移行 |
参考記事: 返品処理の標準フローと効率化手法|検品自動化から返金・再販まで徹底解説
サプライチェーン各プレイヤーに生じる影響
EC事業者:リバース物流の高速化と在庫回転の改善
アパレルECにおいて、返品受付から検品、返金、再販可否の判断に至るリードタイムはキャッシュフローと在庫回転率を左右する要素である。SHEINが東西2拠点で輸送日数を削り、全工程で約8時間の短縮を実証した動きは、他社にとっても返品拠点の分散配置を検討する基準値となる。
返品完了までの日数が長引くと、季節商材の再販売機会が失われるだけでなく、返金の遅れによる顧客からの問い合わせがカスタマーサポート(CS)へ集中する。地域ごとに返品先を最短ルートで結ぶインフラ設計は、CSコストの抑制と在庫の早期再販化という直接的な収益改善効果をもたらす。
参考記事: Recustomerとヤマト運輸連携、国内7割超の返品を伝票レス化へ
運送事業者:拠点集約とPUDO・コンビニ活用による個別集荷の抑制
運送事業者にとって、個宅への返品集荷は再配達や時間指定の制約が多く、配送生産性を落とす要因になりやすい。本件ではヤマト運輸の営業所持ち込みやファミリーマート、PUDOステーションを活用した店頭受け渡しルートが組み込まれている。
消費者が持ち込み拠点を自ら利用することで、ドライバーの個別訪問回数を抑えつつ、まとまった単位で返品貨物を回収できる。西日本発の貨物が大阪拠点へ直接流入する運行計画へ切り替わることで、長距離の幹線輸送トラックの積載効率も維持される。
参考記事: ムービング、8月21日からホワイト急便4店でZOZO返品受付を開始
倉庫事業者・3PL:静脈物流に特化した検品・再流通拠点の重要性
大阪拠点が「現地倉庫パートナーとの協業」で立ち上げられた点は、倉庫事業者や3PLにとって新たな需要領域を示す。返品倉庫の業務は、開梱、タグ確認、汚れや破損のチェック、採寸、再包装といった高度に個別化された作業が中心となる。
出荷専用のメガディストリビューションセンター(DC)とは異なり、返品処理に特化した拠点ではリバース専属の作業員配置やWMS設定が求められる。東西での拠点分散を志向する越境ECや大手流通企業に対し、返品検品から再流通までを一括受託できる倉庫ネットワークの提示が差別化要因となる。
LogiShiftの視点:返品リードタイム8時間短縮が示す競争軸の転換
SHEINが埼玉1拠点から大阪を追加した最大の物理的成果は、稼働第1週で実証された「集荷から処理完了まで約8時間の短縮」という数値である。越境EC発の事業者が国内の静脈物流網に投資を集中させている事実は、EC競争の主戦場が「出荷スピード」から「返品・返金完了までのスピード」へ移行したことを裏付けている。
西日本エリアの荷物を大阪で受け止める構造は、長距離トラックの拘束時間を削ると同時に、セール時における特定拠点のパンクを防ぐBCP(事業継続計画)としても機能する。単一拠点での一括処理は規模の経済が働く反面、繁忙期の検品滞留が返金遅延を招き、ブランド価値の毀損に直結する。
今後、自社販売比率の高いEC事業者は、出荷倉庫の分散だけでなく「リバース拠点をどこに配置し、どの配送キャリアの持ち込み網と連携させるか」をフォワード物流と同等の優先度で設計する必要がある。
まとめ:EC事業者が明日から意識すべき返品物流の要点
EC運営やロジスティクスを統括する実務担当者は、以下の要点を自社オペレーションへ反映することが求められる。
- 返品リードタイムの工程別分解
自社の返品フローにおいて「集荷依頼から発送」「輸送」「倉庫内検品」「返金完了」の各工程に何時間要しているかを計測し、ボトルネックが輸送距離にあるのか倉庫内処理にあるのかを特定する。
- 持ち込みチャネルを活用した集荷負荷の低減
個宅集荷に依存した返送手順を改め、PUDOステーションやコンビニ店頭からの持ち込みに対応した伝票レス・QRコード連携を導入し、集荷コストと回収リードタイムを圧縮する。
- 西日本拠点の追加による輸送距離の最適化
返品データの中で西日本エリア(関西・中国・四国・九州)からの返送比率を算出し、東日本1拠点体制で発生している長距離輸送コストおよび時間的ロスが、東西2拠点化による在庫早期化メリットを上回っていないかを試算する。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: LOGISTICS TODAY



