包装材大手のレンゴーと東京大学松尾研究室発のAIスタートアップであるUnityStep AIは、2026年10月23日、段ボール原紙の出荷における製品置場を最適化する現場実証実験を開始した。本実証はレンゴー利根川事業所を対象とし、過去の出荷実績データと数理最適化技術を用いてトラックへの積み込み作業時間を短縮する取り組みである。
利根川事業所で進む製品置場最適化実証の詳細
本実証実験は、段ボール原紙の出荷拠点におけるトラック待機や積み込み作業の遅延を抑えるため、製品置場のレイアウトをデータに基づいて再設計する取り組みである。
実証実験の体制と骨子
レンゴーは国内の段ボール原紙生産において約22%のシェアを占める大手製紙・包装材メーカーである。同社利根川事業所(茨城県坂東市)では、日々大量の重量物である原紙ロールが出荷されている。今回の取り組みでは、現場運用を担うレンゴーの知見と、2025年12月に東京大学松尾研発スタートアップとして認定されたUnityStep AIの解析技術を組み合わせ、現場配置の最適解を検証する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年10月23日 |
| 実施主体 | レンゴー株式会社、株式会社UnityStep AI |
| 対象拠点 | レンゴー 利根川事業所 |
| 対象製品 | 段ボール原紙 |
| 活用技術 | 需要予測モデル、数理最適化アルゴリズム |
| 検証目的 | 積み込み時間の短縮、荷待ち・荷役時間の削減 |
出荷実績データと数理最適化の連携プロセス
段ボール原紙の出荷現場では、重量や寸法の異なる多種多様な原紙が保管ヤードに配置されている。従来は入庫順や担当者の経験則に基づいて空きスペースへ配置されるケースが多く、出荷指示がかかった際に目的の原紙が奥に積まれていたり、出荷バースから遠い位置に置かれていたりすることで、フォークリフトによる搬出動線が長くなる課題が存在していた。
本実証では、WMS(倉庫管理システム)や基幹システムに蓄積された過去の出荷実績データをUnityStep AIの需要予測モデルに投入する。どの規格の原紙が、どの周期・ロットで出荷されるかの傾向を分析し、出荷頻度や同時出荷の組み合わせを算出する。その予測結果をインプットとして数理最適化アルゴリズムを走らせ、出荷バースへの移動距離やリハンドリング(荷の積み替え・段落とし)回数を最小化する配置案を自動生成する。
現場では、策定された配置案に従って原紙を蔵置し、実際の積み込み作業にかかる時間やフォークリフトの走行ログを収集して、従来の配置運用との効果比較を行う。
原紙物流における効率化の経緯
レンゴーにおける出荷現場の効率化は、段階的な改善が進められてきた。同社は2021年9月、淀川流通センターなどにRFIDを活用した出荷管理システムを導入し、原紙ロールの個体識別と検品作業の自動化に着手した実績がある。
| 年月 | 実施内容 |
|---|---|
| 2021年9月 | 淀川流通センター等でRFIDによる原紙出荷管理システムを導入 |
| 2025年12月 | UnityStep AIが東京大学「松尾研発スタートアップ」に正式認定 |
| 2026年10月 | 利根川事業所にて出荷実績データを活用した置場最適化の実証を開始 |
RFIDによる現品識別の基盤が整った上で、今回の実証では「どの番地にどの原紙を置くか」というレイアウト設計そのものに数理最適化モデルを適用した。実証結果が良好であれば、対象製品の拡大や他工場・流通センターへの水平展開、さらには生産ラインの製造計画やトラックの配車計画と連動させた統合運用の検討が予定されている。
参考記事: 三菱食品、AIがスーパーの売り場提案 作業時間5日→15分に短縮 – 日本経済新聞に学ぶ物流現場改善
サプライチェーン各層への直接的な波及効果
荷主企業による製品置場の数理最適化は、製造拠点内の作業改善にとどまらず、輸送を担う運送事業者やドライバーの拘束時間管理に直接影響を与える。
製造業者・メーカー:経験則から脱却した配置計画の自動更新
製造業の出荷ヤードでは、ベテラン作業者の勘と経験に頼って保管位置を決める運用が常態化しやすく、担当者の不在や交代によって作業効率が乱れるリスクを抱えていた。原紙ロールのような重量物は、一度配置した後に移動させる作業負荷が極めて高いため、入庫時の初期配置ミスが出荷遅延に直結する。
需要予測と数理最適化を組み合わせることで、出荷波動に応じた最適な配置パターンを自動で割り出せるようになる。作業指示が標準化されるため、現場管理者が毎日のレイアウト検討に割く工数が削減される。また、出荷動線が最短化されることでフォークリフトの空車走行距離が短縮され、場内搬送に伴う燃料消費やバッテリー消費の抑制、構内接触事故のリスク低下にも直結する。
運送事業者:荷待ち・荷役時間の圧縮による運行計画の遵守
段ボール原紙は重量貨物であり、大型車への平積みや多段積み作業にはフォークリフト作業者との連携が欠かせない。ヤード側で荷繰り(奥にある荷物を出すための移動)が発生すると、車両がバースに着車しても積み込み作業を開始できず、長時間の荷役手待ちが発生していた。
製品置場が最適化され、トラックの接車前に出荷対象の原紙が出荷バース至近に整流化されていれば、着車から荷締め完了・出発までの荷役時間が大幅に短縮される。1運行あたりの所要時間が計算可能になることで、運送会社は配車表どおりの運行を維持しやすくなり、遅延に伴う後続便の調整や庸車の追加手配といった運行管理コストを削減できる。
ドライバー:拘束時間の削減と改善基準告示の遵守
2024年4月に施行された改正改善基準告示により、トラックドライバーの拘束時間は原則年間3,300時間、1日あたりの拘束時間は原則13時間(上限15時間)に制限されている。国土交通省の調査ではトラック1運行あたりの平均荷待ち時間は約1時間30分に達しており、この待機時間の長さがドライバーの拘束時間を圧迫する最大の要因であった。
利根川事業所のような大規模出荷拠点で積み込み時間が短縮されると、ドライバーの物理的な拘束時間が直接削られる。積み込み順に沿って荷が並んでいる状態が作られれば、手待ち時間だけでなく荷崩れ防止のラッシングやシート掛け作業への移行もスムーズになる。労働時間の超過リスクが低減し、休息期間(勤務間インターバル)を安定して確保できるようになる。
参考記事: キリンビールに学ぶ!荷待ち1万時間を削減するピッキング刷新3ステップ
LogiShiftの視点:荷主企業が自ら動く構造改革の必然性
流通業務総合効率化法および貨物自動車運送事業法の改正により、年間貨物取扱量9万トン以上の特定事業者には荷待ち・荷役時間の削減や物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられた。荷主企業にとって、出荷ヤードにおけるトラック待機の解消は、努力義務ではなく法的なコンプライアンス要件となっている。
従来の現場改善では、運送会社側にバース予約システムの利用を促すなど、外部の車両側をコントロールする手法が先行していた。しかし、どれほど正確にトラックが予約時間どおりに到着しても、荷主側の倉庫やヤード内でピッキングや荷揃えが遅れていれば待機は解消されない。キリンビールが全国9工場で輸配送計画と連動させた事前荷揃え(前取り)を確立して荷待ち時間を1万時間超削減した事例が示すように、ボトルネックの根源は荷主側の保管・荷役オペレーションにある。
レンゴーがUnityStep AIと取り組む製品置場の最適化は、荷主自身が保有する出荷実績データを用い、自社の保管ロジックを外科手術的に見直すアプローチである。国内シェア2割を超える原紙メーカーが置場配置を数理モデル化し、将来的に生産計画や配車計画と連動させる動きは、荷主起点の物流データ統合が現場の実効性を持つ段階に入ったことを示している。
参考記事: 改正物流効率化法を統合AIで攻略!CLOが実践すべき3大対策
明日から意識すべきこと
荷待ち・荷役時間の短縮を実現するためには、外部の運送事業者への要求を見直す前に、自社ヤードの運用データを把握する必要がある。
- 自社WMSに記録されている出荷実績データを抽出し、出荷頻度が高いSKUの保管位置が出荷バースから離れていないかをABC分析で検証する
- トラックの着車時刻から荷積み完了・退出までのタイムスタディを実施し、遅延の原因が車両の集中か庫内の荷繰り・探索作業かを特定する
- 保管スペースの番地管理(ロケーション管理)ルールを点検し、作業者の経験に依存した仮置き運用を排してシステム指示に基づく定位置管理へ移行する
これら3点の現状把握を行うことが、数理モデルやAIを活用した置場最適化へステップアップするための土台となる。
出典: 物流ニュース LNEWS
出典: PR TIMES



