Skip to content

LogiShift(ロジシフト)

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • 政策動向
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 用語辞典
Home > 輸配送・TMS> トラック適正化2法と2028年適正原価|運送業の手取り減を防ぐ賃金再設計
輸配送・TMS 2026年10月30日

トラック適正化2法と2028年適正原価|運送業の手取り減を防ぐ賃金再設計

トラック適正化2法と2028年適正原価|運送業の手取り減を防ぐ賃金再設計

2024年4月に時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されて以降、労働時間の短縮を進めた運送会社において、歩合給や時間外割増賃金の減少によりドライバーの手取り収入が目減りする課題が発生しています。2025年成立のトラック適正化2法や段階施行されている改正物流効率化法への対応は、運行時間や荷待ちの削減だけでなく、2028年6月までに施行される適正原価制度を見据えた原価管理と賃金体系の再設計を同時に行うことで解決へ導かれます。

2024年問題と法改正が賃金に与える構造的影響

トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が設けられてから2年半が経過しました。全日本トラック協会の調査では、時間外労働の上限規制について64.4%が「全ドライバーが遵守できる」、25.8%が「大多数が遵守できる」と回答し、9割超の事業者が規制基準をクリアしつつあります。しかし、形式的な労働時間の短縮だけを先行させた現場では、運送会社の収益構造とドライバーの処遇に歪みが生じています。

36協定の形骸化と実労働時間の乖離

運送現場における労務管理の根底にあるのは、特別条項付き36協定で定めた延長時間の上限管理です。法定上限である年960時間にとどまらず、労使で締結した届出内容(例:年間720時間など)を1時間でも超過すれば労働基準法違反となります。

労働基準監督署の是正調査では、法定上限の超過有無だけでなく「届出された36協定の協定値とデジタルタコグラフ等の実労働時間データが合致しているか」が厳密に照合されます。ひな形を流用して実態に合わない協定時間を届け出ている場合、行政指導や是正勧告のリスクを抱えることになります。

拘束時間短縮が招く手取り収入の減少リスク

運送業界の給与体系は、走行距離や売上に連動する「運行歩合給」と、月間60〜80時間を超える長時間の「時間外手当」に依存してきた経緯があります。

荷主拠点で長時間の荷待ちや荷役作業が解消され、ドライバーの拘束時間が圧縮されること自体は労働環境の改善です。しかし、運賃単価が据え置かれたまま稼働時間や運行回転数が減少すると、歩合給の総額と時間外割増賃金が直接的に目減りします。その結果、拘束時間は短縮されたもののドライバーの手取り給与が大幅に減少し、他産業や同業他社への人材流出を招く事態に直面します。

【運行効率化と賃金減少の相関図】
荷待ち・拘束時間の短縮(効率化)
  ↓
走行距離・稼働時間の圧縮
  ↓
歩合給 + 残業手当の減少(運賃単価据え置きの場合)
  ↓
ドライバーの手取り給与低下・離職リスク拡大
  ↓
【解決策】:適正原価に基づく運賃収受 + 固定給比率引き上げ等による賃金制度再設計

参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説


2026年から2028年にかけて施行される法制度の連動性

2024年問題以降の法制改革は、個別の労働時間規制から「取引環境の是正」と「適正運賃の収受義務化」へとフェーズを移しています。関連法規のスケジュールと運送会社への実務インパクトは下表の通りです。

時期 根拠法令・施策 主な規制・措置内容 運送会社の実務対応
2024年4月 労働基準法・改善基準告示 時間外労働年960時間上限、拘束時間基準の強化 運行シフト再編、労務管理徹底
2025年4月 改正物流効率化法(一部施行) 全荷主・物流事業者に対する荷待ち・荷役短縮の努力義務化 荷待ち実態記録、荷主への是正要請
2026年4月 改正物流効率化法(全面施行) 特定事業者(荷主・運送150台以上・倉庫70万t以上)の中長期計画・定期報告義務化 計画提出、CLO(物流統括管理者)選任
2026年4月 トラック適正化2法(一部施行) 違法白トラ利用の荷主規制、実運送体制管理簿の作成、再委託2回以内努力義務 多重下請けの是正、書面交付の徹底
2028年6月まで トラック適正化2法(完全施行) 国土交通大臣が定める「適正原価」を下回る運賃取引の禁止 自社原価の算定、下限割れ運賃の改定
2030年度(予定) 貨物自動車運送事業法 5年ごとの事業許可更新審査の本格開始 適正原価割れ継続事業者の免許失効

改正物流効率化法による荷主責任の明確化

改正物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)は、運送事業者だけでなく発荷主・着荷主を物流効率化の直接の当事者として位置づけています。2025年4月からはすべての荷主・物流事業者に荷待ち時間の短縮や積載効率向上の努力義務が課され、2026年4月からは年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主や保有台数150台以上の特定貨物自動車運送事業者を対象に、中長期計画の策定や物流統括管理者(CLO)の選任が義務化されます。

全日本トラック協会の調査によると、労働時間短縮対策として「荷主等との交渉」を実施した運送会社は63.9%に上ります。法規制を背景に荷主側の入出荷時間調整やパレット化が進むことで、ドライバーの待機時間は物理的に短縮できる環境が整いつつあります。

トラック適正化2法と適正原価制度の導入

2025年6月11日に公布されたトラック適正化2法(貨物自動車運送事業法の一部改正等)は、従来の努力目標であった「標準的な運賃」を改め、法的拘束力を持つ「適正原価」を導入します。

国土交通省が検討を進める適正原価は、事業者が法令を遵守して事業を継続するために最低限不可欠なコストライン(利潤を含まない原価フロア)として定義されます。この適正原価は、距離別の固定的な運賃表(タリフ)ではなく、事業者の総稼働時間や総走行距離といった実稼働データを代入する「算定式」として提示される方針です。

2028年6月までに完全施行され、継続して適正原価を下回る運賃で取引を行った事業者は、2030年度から本格導入される「5年ごとの事業許可更新審査」において更新が認められず、運送業免許の失効処分を受ける仕組みとなっています。

参考記事: トラック適正化2法で2028年6月適正原価導入|運賃2割上昇への実務対応

参考記事: 国土交通省がトラック適正原価の算定式提示、稼働データ基準で下限割れ是正へ


3つの制度改革が運送会社の賃金体系につながる理由

労働時間規制、物流効率化法、トラック適正化2法はそれぞれ独立した法制度に見えますが、運送事業者の経営実務においては「ドライバーの適正賃金確保」という単一の結節点で直結しています。

【法制度の統合サイクル】
① 労働時間上限規制(年960時間) ―― ドライバーの健康・安全を担保
  ↓
② 改正物流効率化法 ―― 荷待ち・荷役時間を削減し、稼働の無駄を排除
  ↓
③ トラック適正化2法(適正原価) ―― 削減後の実稼働時間・距離に見合う適正対価を法的に保障
  ↓
④ 賃金制度の再設計 ―― 収受運賃を原資として固定給・評価手当へ還元

効率化の果実を賃金へ還元する仕組みの欠如

荷主側の施設改善によって荷待ち時間が2時間削減された場合、ドライバーの拘束時間はそのまま2時間短縮されます。しかし、現行の賃金規程が「運行時間×時間外割増」や「売上高×固定歩合率」になっている場合、運行効率が上がって労働時間が短くなった分だけ給与総額が落ち込む逆転現象が起こります。

運送会社が収受する運賃が「時間制運賃+距離制運賃+待機時間料・荷役料」として明確に分離・収受されていなければ、効率化によるコスト浮き分は荷主側に吸収され、運送会社とドライバーには減収リスクのみが残ります。

原価管理なき運賃交渉の破綻

適正原価制度が導入されても、自動的に自社の運賃が引き上げられるわけではありません。国土交通省の調査では、中小運送事業者の23%が正確な原価計算を実施できていない実態が明らかになっています。

自社の減価償却費、燃料費、タイヤ消耗費、各種保険料、そして全産業平均に準拠した適正な人件費を把握していなければ、告示される算定式に自社の実績値を代入することができず、荷主に対する運賃改定の立証責任を果たせません。自社の原価構造を可視化することこそが、適正運賃を収受し、ドライバーの賃上げ原資を確保するための絶対条件です。

参考記事: [国土交通省の適正原価タリフ試算は標準比33%減、下限とモデルの二層構造へ](https://logishift.net/2026/10/14/post-9704/)

参考記事: 国土交通省が適正原価の28年6月施行を明言|30年度許可更新に向け段階適用


原価把握と賃金制度の再設計がもたらす経営上の効果

法改正に連動させて原価管理を高度化し、賃金制度を再設計することは、単なるコンプライアンス順守にとどまらず、会社の財務体質と人材定着率の双方に定量・定性の改善をもたらします。

車両別・荷主別採算の可視化による不採算便の排除

走行距離、実拘束時間、燃料消費量をデジタルタコグラフと運行管理システムで連動させ、車両1台・運行1便あたりの正確な実原価を算出することで、長年放置されてきた不採算荷主や赤字路線が明確になります。

改善項目 従来のどんぶり勘定 原価管理・賃金制度連動後
荷主別収支管理 月次の全体売上・燃料費のみで判断 運行単位・荷主別の利益率を可視化
荷待ち時間の扱い 運賃に内包(実質無償サービス) 待機時間料(30分単位等)を別建て請求
運賃交渉の根拠 燃料高騰の窮状訴え(感覚的交渉) デジタコデータと算定式による客観的提示
ドライバー給料 残業時間と歩合給頼み(変動大) 職務給+生産性評価手当(安定性向上)
離職率・採用 手取り減少による若手の流出 拘束時間短縮と固定給保証による定着率改善

不採算取引に対して適正原価を下回らない改定を申し入れるか、改定に応じない荷主から撤退して採算性の高い運行へ車両と人員をシフトさせることで、保有車両あたりの限界利益率を直接的に改善させることが可能になります。

短時間労働で高所得を実現する評価モデルの構築

歩合給の割合を過度に高く設定していると、ドライバーは収入を増やすために長距離・長時間運行を望むようになり、36協定違反や改善基準告示違反の温床となります。

基本給の水準を引き上げて生活安定基盤を確保した上で、削減された荷待ち・運行時間を「安全運転実績」「デジタコ評価点」「エコドライブ達成度」「積載効率の向上」といった定性・定量の生産性評価手当へと振り替えることで、拘束時間を縮小させながら従来と同等以上の給与水準を維持できます。これにより、若手や未経験者にとって魅力的な労働環境が形成され、採用コストの削減と定着率の向上が実現します。

参考記事: 国土交通省の適正原価策定で実車率50%見直しへ!運賃半減を防ぐ経営管理


運送会社が着手すべき賃金制度再設計の4ステップ

運行実態と賃金制度を整合させ、適正原価制度に耐えうる組織体制を構築するための実務手順を解説します。

ステップ1:運行実態データと36協定の突き合わせ点検

最初に着手すべきは、直近1年間のデジタルタコグラフデータ、点呼記録、タイムカード、および所轄労働基準監督署に届け出ている36協定届の突合です。

協定届に記載された特別条項の延長時間限度(月間・年間の時間外労働枠)と、実際のドライバーの時間外労働実績に乖離がないかを全乗務員分検証します。形骸化した協定内容であれば速やかに労使協議を行い、運行実態に即した協定へ再締結・再届出を実施します。

ステップ2:車両別・荷主別の原価計算体制の確立

適正原価算定式の導入に備え、自社の運行コストを精緻に分解・配賦します。

  • 車両固定費: 車両償却費、リース料、自動車税、自動車重量税、任意保険料
  • 人件費(固定・準固定): 基本給、固定諸手当、法定福利費、退職金積立、賞与引当
  • 運行変動費: 燃料費、尿素水代、油脂費、タイヤ消耗費、高速道路・フェリー利用料
  • 安全・管理間接費: デジタコ・ドラレコ通信維持費、点呼機器リース料、運行管理者人件費

これらの総経費を月間総走行キロおよび月間総稼働時間で除し、「1kmあたりの走行原単価」と「1時間あたりの時間原単価」を導き出します。これにより、荷主ごとの運行データ(走行距離・拘束時間・荷待ち時間)と照合した個別原価が即座に算出可能となります。

ステップ3:運賃契約のタリフ分離と契約書面の是正

運送契約を「基礎運賃」「待機時間料」「荷役作業料(附帯作業料)」「燃料サーチャージ」に明確に分離します。

改正物流効率化法およびトラック適正化2法の実運送体制管理簿や書面交付義務に基づき、荷待ちが発生した場合はタイムスタンプ記録を残して荷主へ正規請求します。基本運賃の中に荷役や待機を曖昧に組み込む契約慣行を排除することが、運賃適正化の第一歩です。

ステップ4:就業規則および賃金規程の改定

適正運賃の収受により得られた収益を、ドライバーへ適正に配分するための給与体系の見直しを行います。

  • 基本給の底上げ: 残業代に頼らずとも生活が成り立つ水準へベースアップを実施
  • 定額残業代(固定残業手当)の精査: 実際の時間外労働時間と乖離がある場合は手当枠を適正化し、超過分は1分単位で完全支給する運用を徹底
  • 生産性手当・品質手当の新設: 単なる売上歩合から、無事故無違反、燃費向上、積載率改善、顧客評価などの付加価値創出に応じた評価給へ移行
  • 割増賃金算定基礎の明確化: 各種手当が割増賃金の基礎単価に含まれるか否かを労働基準法に則って再整理し、未払い残業リスクを完全に排除

労働時間短縮を収益改善と待遇向上へ転換するために

時間外労働の規制から始まった一連の物流改革は、改正物流効率化法による荷待ち・荷役短縮を経て、2028年6月のトラック適正化2法に基づく適正原価の法制化へとつながる単一のロードマップを描いています。

労働時間の管理、物流の効率化、運行原価の把握、そしてドライバーの賃金制度改革を別個の課題として切り離して対応することはできません。運行実態を客観データで把握し、正確な原価に基づいて適正な運賃を荷主から収受し、その対価をドライバーの固定給や生産性手当へと再配分する経営サイクルの確立が不可欠です。

まずは自社のデジタコデータから1時間・1kmあたりの実原価を算出し、現行の就業規則・賃金規程が「時間の短縮によって給与が下がらない仕組み」になっているかの総点検に着手することが推奨されます。

参考記事: 国土交通省の適正原価制度、運賃2倍懸念の新聞業界が猶予を要請


出典: マイベストプロ東京
出典: 全日本トラック協会
出典: 経済産業省
出典: 国土交通省
出典: イーエックスエージェント

Share this article:

編集責任者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

関連記事

国土交通省・公取委の適正原価方針|11月18日開催で運行データを武器に
2026年10月26日

国土交通省・公取委の適正原価方針|11月18日開催で運行データを武器に

チルド物流研究会/取適法施行で「トラック荷役のメニュープライシング」など対応
2026年4月26日

チルド物流研究会|取適法施行で「トラック荷役のメニュープライシング」導入の衝撃

行政処分で関東運輸局が延使用停止1万3377日車を科し事業停止リスクが急増
2026年6月17日

行政処分で関東運輸局が延使用停止1万3377日車を科し事業停止リスクが急増

広告枠募集 物流専門メディアLogiShift2万円〜 媒体資料を無料ダウンロード »
表示できるコメントはありません。

LogiShift

物流担当者と経営層のための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • マテハン・ロボット
  • サプライチェーン

もっと探す

  • 政策動向
  • ツール紹介
  • 企業DB
  • 海外トレンド
  • 事例
  • 統計分析
  • 物流用語辞典

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • 媒体資料
  • プライバシーポリシー
  • TechShift
  • ConShift

© 2026 LogiShift. All rights reserved.