欠品率完全ガイド|実務担当者が知るべき計算方法と在庫最適化の秘訣とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:欠品率とは、お客様から注文があったにもかかわらず、在庫が足りずに出荷できなかった割合のことです。この数値が高いと、売上を逃すだけでなく、お客様からの信頼も失ってしまうため、物流において非常に重要なチェック項目となります。
  • 実務への関わり:現場で欠品率を正確に計算し把握することで、どの商品をどれくらい発注すればよいかの基準が明確になります。むやみに在庫を増やして倉庫がパンパンになる過剰在庫を防ぎつつ、必要な時に確実に商品をお届けできる適正な在庫管理が可能になります。
  • トレンド/将来予測:物流の2024年・2026年問題による配送の遅れなどにより、今後はさらに欠品のリスクが高まると予想されています。そのため、AIを使った高精度な需要予測や、最新のシステムを導入してデータをリアルタイムに共有するDX化が不可欠になっています。

物流やサプライチェーン管理(SCM)の領域において、「欠品」は企業収益とブランド信頼度を同時に毀損する最も警戒すべき事象の一つです。しかし、欠品を極度に恐れるあまり過剰な在庫を抱え込めば、今度はキャッシュフローの悪化や倉庫スペースの逼迫という別の経営危機を招くことになります。「いかにして機会損失を最小化しつつ、適正な在庫水準を維持するか」——この永遠の命題を解き明かす鍵となるのが「欠品率」の正確な把握と、戦略的なコントロールです。

本記事では、欠品率とサービス率の表裏一体の関係性から、実務に即した正しい計算方法、過剰在庫とのジレンマ、商品特性に応じた目標値の最適解、そして現代の物流網を脅かす「物流の2024・2026年問題」を踏まえた最新の対策とDX実装まで、在庫最適化の全貌を日本一詳しく、徹底的に解説します。

目次

欠品率とは?基本定義と「サービス率」との表裏一体の関係

物流やサプライチェーン管理(SCM)の現場において、「欠品率」は事業の健康状態を測る最も重要なバイタルサインの一つです。本セクションでは、以後の解説で読者の皆様が計算や施策に迷わないよう、まずは実務的な視点から「欠品率」と、対となる「サービス率」の定義を強固にすり合わせます。計算式や具体的な改善アクションへ進む前に、この「定義の固定」を行うことが、組織内での認識のズレを防ぎ、在庫最適化を実現する第一歩となります。

欠品率の定義と「機会損失」がもたらす経営リスク

欠品率の教科書的な定義は、「顧客からの受注に対して、在庫不足を理由に出荷できなかった割合」です。しかし、物流の「超」実務・現場視点で見ると、欠品とは単に「倉庫全体にモノがない」という単純な状態ではありません。実稼働している現場における欠品は、主に以下の4つのパターンで突発的かつ複合的に発生します。

  • システム欠品(引当エラー):ECサイト等のフロント側では「在庫あり」と表示されているのに、注文データがOMS(受注管理システム)からWMS(倉庫管理システム)へ連携された瞬間に在庫不足で引当不可となるケース。最近ではオムニチャネル化に伴い、実店舗とECの在庫を共通化している企業でタイムラグによる欠品が急増しています。
  • 棚欠品(実在ズレ):WMS上は在庫が存在し、ピッキングリストやハンディターミナルに指示が出たにもかかわらず、作業員がロケーション(棚)に向かうと物理的に商品が存在しないケース。誤出荷や入庫時の計上漏れなど、日々の運用ルーズさが蓄積した結果として現れます。
  • 不良・毀損による欠品:ピッキング時や検品時に外装の破損、商品の汚れ、賞味期限切れなどが発覚し、出荷基準を満たさずに急遽現場判断で「出荷不可」と判定されるケース。
  • 未配・遅配による疑似欠品:倉庫から出荷はされたものの、運送会社のキャパシティオーバーや天候不良等により顧客への指定納期に間に合わず、顧客視点では「使いたい時にモノがない(=欠品と同義)」とみなされるケース。

これらの欠品が引き起こす最大の経営リスクが機会損失です。機会損失は「その1回の売上を逃した」という直接的なダメージに留まりません。BtoCのECサイトであれば、顧客はすぐに競合他社のサイトへ離脱し、二度と戻ってこない(LTV:顧客生涯価値の消失)可能性が高まります。さらに現代のデジタルマーケティングにおいては、Amazonや楽天市場などのプラットフォーム内で欠品を起こすと、検索アルゴリズムからの評価が下がり、商品ページの表示順位が劇的に低下するというデジタルのペナルティまで受けます。

BtoBの卸売物流や製造業向け部品供給であれば事態はより深刻です。部品1つの欠品がクライアントの製造ラインをストップさせ、莫大な損害賠償請求や取引停止という致命的な事態に直面します。

欠品率と「サービス率」は表裏一体(合計100%の法則)

欠品率の議論において、絶対に切り離して考えてはならないのがサービス率という概念です。サービス率とは、「顧客からの要求(注文)に対して、欠品を起こさず希望通りの数量と納期で即座に納品できた割合」を指します。顧客充足率(Fill Rate)と呼ばれることもあります。

概念的に言えば、「欠品率 + サービス率 = 100%」という法則が成り立ちます。欠品率が5%であれば、サービス率は95%ということです。この両者は完全に表裏一体の関係にあります。

実務の現場で頻発するトラブルの多くは、部門間におけるこの指標の「捉え方の違い」から生まれます。経営陣や営業部門は、販売機会を最大化し顧客満足度を高めるために「サービス率100%(=欠品率0%)」を無邪気に強く求めます。しかし、物流部門がこれを真に受けてすべてのSKU(最小管理単位)でサービス率100%を目指せば、理論上、無限に近い在庫を持つ必要が生じ、倉庫は瞬く間にパンクします。この「サービス率をどこまで担保し、欠品をどこまで許容するか」というギリギリの境界線を導き出すために不可欠なのが、後のセクションで解説する安全在庫計算なのです。

比較項目 欠品率 サービス率(充足率)
基本定義 要求に対して在庫不足で応えられなかった割合 要求に対して即座に出荷・納品できた割合
指標のベクトル 低ければ低いほど良い(最小化を目指す) 高ければ高いほど良い(最大化を目指す)
経営陣・営業の視点 機会損失に直結するため、極力0%に近づけたいと考える 顧客満足度と売上の源泉であり、常に100%を要求しがち
物流・現場の視点 ゼロを目指すと過剰在庫になるため、適正な許容値を持ちたい 高く設定しすぎると安全在庫が膨張し、庫内スペースが逼迫する

欠品率の正しい計算方法と実務での使い分け

在庫最適化の第一歩は、現状の数値を正しく把握することから始まります。しかし、物流の現場において「欠品率」を算出する際、どのデータを基準にするかによって結果は大きく異なり、自社に合わない基準を採用すれば対策の方向性そのものを誤る危険性があります。本セクションでは、現場で実際に運用されている「件数ベース」「数量ベース」そして経営指標としての「金額ベース」の3つの計算式について詳細に解説します。

件数ベースでの計算式と具体例

主にBtoCのECサイト運営や、多品種少量出荷の現場で多用される計算方法です。

  • 計算式:(欠品が発生した受注件数 ÷ 総受注件数)× 100 = 欠品率(%)

【具体例】
1日の総受注件数が2,000件あり、そのうち在庫不足により出荷できずバックオーダー(引当待ち)となった受注が10件あった場合、欠品率は「10 ÷ 2,000 × 100 = 0.5%」となります。

【現場運用のリアルと苦労ポイント】
件数ベースの管理は、OMSやWMSの「出荷保留ステータス」の数をカウントするだけで良いため、日次での把握が容易です。しかし実務担当者を最も悩ませるのが「一部欠品(分納)」の扱いです。例えば、1つの注文に5アイテム含まれており、うち1アイテムだけが欠品した場合、これを「1件の欠品」としてカウントするのか、それとも「出荷可能部分だけを先出し(分納)」するのか。実務では、分納による追加送料の二重発生という見えない利益圧迫を防ぐため、件数ベースの欠品率をKPIに設定し、同梱率の維持に努めるケースが多く見られます。

数量ベースでの計算式と実務での使い分け

続いて、BtoB卸売やメーカー物流など、1受注あたりのロットが大きい商材で必須となる計算方法です。

  • 計算式:(欠品となったアイテムの総数量 ÷ 受注されたアイテムの総数量)× 100 = 欠品率(%)

【具体例】
1日の総受注数量が10,000ケースだったとします。受注件数としてはわずか1件の顧客から特売用として500ケースの大口注文が入ったものの、在庫が確保できず全量ショートしてしまいました。件数ベースでは「1件の欠品」と過小評価されますが、数量ベースで計算すると「500 ÷ 10,000 × 100 = 5.0%」という高い欠品率が弾き出されます。

【深掘り】金額ベースの計算式とKPI設定の落とし穴

実務において、件数や数量以上に経営陣が注視すべきなのが「金額ベース」の欠品率です。これは純粋な機会損失額を可視化するための指標です。

  • 計算式:(欠品となったアイテムの販売金額の合計 ÷ 受注された総販売金額)× 100 = 欠品率(%)

単価100円のボールペンが100個欠品するのと、単価10万円のパソコンが1台欠品するのでは、数量ベースの欠品率はボールペンの方が悪く見えますが、金額ベースでのダメージはパソコンの方が圧倒的に甚大です。経営企画や営業部門とS&OP(セールス&オペレーションズ・プランニング)会議を行う際、物流部門は「件数ベース」の改善を誇りがちですが、経営陣が知りたいのは「いくらの売上を取り逃がしたのか」という金額ベースのデータです。

KPIを設定する際の落とし穴は、「全社一律で1つの計算式に絞ってしまうこと」です。現場のピッキング効率やシステム改善を測る際は「件数ベース」、メーカーへの発注ロットや調達スキームを見直す際は「数量ベース」、そして在庫のキャッシュフローや経営インパクトを測る際は「金額ベース」と、目的に応じてダッシュボードを使い分けるのが一流の物流組織の鉄則です。

「機会損失」と「過剰在庫」のジレンマ:欠品率と在庫量のトレードオフ

「いかにして自社の数値をゼロに近づけるか」と思考を巡らせている方も多いかもしれません。しかし、「欠品率0%(サービス率100%)」を盲目的に目指すことは、企業経営を揺るがす極めて危険なアプローチです。ここでは、欠品による機会損失を防ぎたい営業部門と、在庫を極小化したい物流・財務部門の間で永遠の課題となる「在庫最適化」の根幹について解説します。

欠品率を下げると在庫は「指数関数的」に増加する

結論から言えば、欠品率を下げる(=需要に対する充足水準であるサービス率を上げる)ほど、必要となる在庫量は比例ではなく「指数関数的」に急増するという数学的性質があります。この残酷な現実を理解するためには、一般的な安全在庫計算の仕組みを知る必要があります。

安全在庫は「安全係数 × 使用量の標準偏差 × √発注リードタイム」で求められます。ここで重要になるのが、目標とするサービス率に応じて変動する「安全係数」です。統計学上の正規分布に基づくと、係数は以下のように変化します。

  • サービス率90%(欠品率10%)の場合:安全係数 約1.28
  • サービス率95%(欠品率5%)の場合:安全係数 約1.65
  • サービス率99%(欠品率1%)の場合:安全係数 約2.33
  • サービス率99.9%(欠品率0.1%)の場合:安全係数 約3.09

一見すると、サービス率を95%から99%へ「わずか4%」引き上げるだけで顧客満足度は飛躍的に向上するように思えます。しかし、上記の係数を見ると、安全在庫量は約1.4倍(2.33 ÷ 1.65)にも跳ね上がります。欠品率を限りなく0%に近づけようとすれば、この係数は無限大に近づき、天文学的な量の安全在庫を抱えることになります。

担当者の「心理的バイアス」が引き起こすブルウィップ効果

理論値以上に在庫が膨らむ原因は、現場の「恐怖心」にあります。過去に大規模な欠品を起こし、営業や取引先から猛烈なクレームを受けたトラウマを持つ発注担当者は、「欠品で怒られるくらいなら、過剰在庫で倉庫をパンクさせた方がマシだ」という防衛本能(心理的バイアス)を働かせます。

その結果、システムが弾き出した適正な発注量に対し、「念のため」「何があるかわからないから」と独自にExcelでバッファ(ゆとり)を上乗せしてしまう二重管理が横行します。小売店が少し多めに発注し、卸売業者がさらにバッファを積み増し、メーカーがさらに多めに製造するという連鎖によって、サプライチェーンの上流に行くほど需要予測のブレが増幅される現象を「ブルウィップ効果(ムチ打ち効果)」と呼びます。欠品率をゼロにしようとする人間の心理こそが、ブルウィップ効果の最大の引き金なのです。

「在庫回転率」の悪化とキャッシュフローへの致命的影響

理論と現場の不安がないまぜになって膨れ上がった過剰在庫は、企業の血液であるキャッシュフローを容赦なく圧迫します。引き起こされるのが在庫回転率の致命的な悪化です。在庫回転率が低下するということは、仕入れた商品が売上に変わり、現金として回収されるまでの期間(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)が長期化することを意味します。

物流現場のリアルな視点から言えば、過剰在庫の弊害は財務上の数字の悪化だけに留まりません。倉庫内のロケーション(保管スペース)がパンパンに膨れ上がり、本来通路であるはずのスペースにまでパレットが直置きされるようになります。結果としてフォークリフトの動線が塞がれ、ピッキング作業員の歩行距離が伸び、作業生産性が劇的に低下します。つまり、機会損失を防ぐために在庫を積み増したはずが、倉庫現場のキャパシティオーバーを引き起こし、今度は「在庫はあるのに物理的に出荷が間に合わない」という最悪の形でのサービス低下を招くのです。

自社の「妥当な欠品率」をどう設定すべきか? 目標値の考え方

すべての商品で一律のサービス率を維持しようとすると、一部の動きの悪い商品のために巨大な保管スペースとコストを浪費します。自社にとって妥当な欠品率を導き出すためには、商品ごとの特性に応じた「グラデーション」をつけることが不可欠です。

商品特性とABC分析による許容欠品率の目安

商品の重要度に応じて在庫管理の精度を変える「ABC分析」は、許容欠品率を決定するための強力な実務ツールです。売上高や粗利額に基づいて商品をA、B、Cの3つのクラスに分けます。

ランク 商品の特性 目標サービス率(許容欠品率) 実務での対応と現場の課題
Aランク 売上の70〜80%を占める主力商品 98〜99%
(欠品率1〜2%)
最優先で対策を実施。安全在庫計算を週次で見直し、リードタイムのブレを最小限に抑えます。倉庫内でも最もピッキングしやすい一等地(ゴールデンゾーン)に配置します。
Bランク 売上の15〜20%を占める中堅商品 90〜95%
(欠品率5〜10%)
在庫回転率とのバランスを重視。突発的な大口注文が入った際のバックオーダー処理フローや、顧客への納期回答の自動化を確立しておくことが重要です。
Cランク 売上の5%未満のロングテール商品 70〜80%
(欠品率20〜30%)
あえて欠品を許容する勇気が必要です。在庫を持たず「受発注品(メーカー取り寄せ)」や「ドロップシッピング」に切り替えるなど、保管コスト削減を優先します。

ライフサイクルとクロスABC分析を用いた高度な設定

さらに高度な設定として、単なる売上額だけでなく「出荷頻度」を掛け合わせた「クロスABC分析」が有効です。売上は大きいが年に数回しか動かない商品と、単価は安いが毎日コンスタントに売れる商品では、欠品率の捉え方が全く異なります。出荷頻度が高い商品は欠品時の顧客の不満がダイレクトに爆発しやすいため、より厳格なサービス率の設定が求められます。

また、商品の「ライフサイクル(導入期・成長期・成熟期・衰退期)」によっても目標値は変えるべきです。新商品の導入期や成長期はシェア獲得が最優先であるため欠品を絶対に避ける(サービス率99%)べきですが、成熟期から衰退期に入った商品は、余剰在庫がそのまま不良在庫(デッドストック)化するリスクが高いため、意図的に欠品率を緩め(サービス率80〜90%)、売り切る体制へとシフトダウンする必要があります。

利益率と欠品コストから逆算する最適解

適切な欠品率を導き出すための究極のアプローチは、「欠品コスト(品切れによる損失)」と「在庫保持コスト(売れ残るリスク)」を天秤にかけることです。

たとえば、単価・利益率が非常に高い一方で、サイズが小さく保管料がほとんどかからない商品(精密な電子部品、高級化粧品、医療機器など)の場合、在庫保持コストよりも欠品コストが圧倒的に大きくなります。このような商品は安全係数を極限まで高く設定し、サービス率を99.9%に近づけるのが正解です。

一方で、利益率が低く、かつ嵩張るためにパレット単位で莫大な保管スペースを食う商品(一部の日用雑貨、トイレットペーパー、大型の梱包資材など)は、欠品を恐れて在庫を抱えすぎることで、あっという間に物流費(坪単価)が利益を食いつぶします。この場合、意図的に欠品率を10〜15%程度に緩め、倉庫の坪効率を高める方が結果として企業のキャッシュフローは健全に保たれます。

欠品を引き起こす3大原因と「物流の2024・2026年問題」の影響

自社の欠品率の目標値が定まったら、次はその数値を達成するために「なぜ在庫が切れるのか」というメカニズムを実務レベルで解像度高く把握する必要があります。ここでは、欠品を引き起こす「3大原因」を紐解きつつ、昨今物流現場を最も悩ませている外部要因について深く解説します。

需要予測のブレと発注タイミングのミス

欠品を引き起こす原因の1つ目と2つ目は、自社内部で発生する「需要予測のブレ」と「発注タイミングのミス」です。これらは表裏一体の関係にあり、どちらか一方が破綻するだけで致命的な在庫ショートを招きます。

需要予測のブレは、過去の出荷実績や季節変動という静的なデータのみに依存している現場で発生します。営業部門が独断でインフルエンサーを起用したゲリラ的な販促を実施したにもかかわらず、物流・在庫管理側に情報が共有されず、出庫指示データだけが突如WMS(倉庫管理システム)に大量に流れ込み、引当不能のパニックに陥るケースです。

一方の発注タイミングのミスは、発注点方式などの運用が形骸化している現場で頻発します。また、システム連携のタイムラグも致命傷になります。基幹システムとWMS間の在庫同期が「1日1回の夜間バッチ」であるため、日中の急激な出荷による理論在庫と実在庫の乖離に気づけず、発注アクションが丸1日遅れるという事態が多くの企業で起きています。

リードタイムの長期化・不安定化(2024・2026年問題の影響)

欠品を引き起こす3つ目の原因であり、現在SCM推進者が最も頭を抱えているのが「リードタイムの長期化と不安定化」です。これまでは「発注すれば指定日時に確実に入庫される」という前提で在庫管理が行われてきました。しかし、トラックドライバーの時間外労働規制強化に伴う「物流の2024年問題」、さらに労働人口の絶対的減少と多重下請け構造の限界が顕在化する「物流の2026年問題」により、調達・輸送の前提が根底から覆りつつあります。

長距離輸送においてリードタイムが1〜2日延長されるだけでなく、より深刻なのは「到着遅延による納期のブレ(不安定化)」が常態化している点です。これにより、これまでの安全在庫計算の手法が通用しなくなっています。理論上の安全在庫計算では「需要のブレ」だけでなく「リードタイムのブレ(標準偏差)」も掛け合わせて必要なバッファを算出します。調達トラックの到着日が読めなくなると、計算式上の要求値が跳ね上がり、今まで通りのサービス率を維持するためには莫大な安全在庫を抱え込まざるを得なくなります。

さらに近年では、地政学的リスク(紛争や運河の封鎖等)や急激な円安によるグローバルサプライチェーンの分断が起きており、海外から調達する原材料や商品のリードタイムが完全にブラックボックス化しています。国内・国外のインフラの脆弱性が、そのまま自社の欠品リスクへと直結する時代に突入しているのです。

欠品率を最適化するための4つの根本対策とDX実装

ここまで、欠品率の妥当な目標設定や悪化を招く原因について解説してきました。最終的なアンサーとなる対策は、「安全在庫の最適化」「リードタイムの実態把握」「部門間連携」「システムによるDX推進」という4つの根本対策に集約されます。

「安全在庫」の正しい計算と設定(標準偏差と安全係数)

対策の要となるのが、需要のブレとリードタイムのブレを吸収するためのバッファ、すなわち「安全在庫」の適正化です。実務において安全在庫は以下の基本公式を用いて算出します。

  • 安全在庫 計算式 = 安全係数 × 使用量(需要)の標準偏差 × √(発注リードタイム)

前述のABC分析に基づき、A品は安全係数を2.05〜2.33(サービス率98〜99%)に設定して欠品を厳格に防ぎ、C品は安全在庫を持たずに受注生産やリードタイムの延長で対応するといったメリハリをつけます。

実務上の落とし穴として、計算に用いる「標準偏差」を算出する際、過去の特需(TV放映による突発的な爆売れなど)や、過去の「欠品していた期間のゼロ売上」をそのままデータに含めると、予測が大きく歪みます。実務では、これらの外れ値を手動またはシステム側で除外(データクレンジング)する泥臭い作業が適正な計算の精度を左右します。

リードタイムの可視化と部門間(営業・物流)の情報共有

安全在庫計算において「リードタイム」をどう定義するかも重要です。調達部門が認識する「発注からトラックが倉庫に到着するまでの日数(納品LT)」だけで計算すると、必ず機会損失が発生します。荷物が入荷してから検品・棚入れが完了し、システム上で「引当可能」になるまでの「庫内リードタイム」を加算しなければなりません。

また、営業部門と物流部門の「壁」を壊すために、S&OP(セールス&オペレーションズ・プランニング)会議を高度化させます。特売情報や廃盤情報を事前にサプライチェーン全体で共有するだけでなく、ベンダー(供給元)と自社の在庫データを共有し、ベンダー側に発注・補充権限を委譲するVMI(ベンダー主導型在庫管理)の導入も、調達リードタイムを劇的に短縮し欠品を防ぐ有効な手段です。

在庫管理システム(WMS)やAI需要予測ツールの導入・DX推進

人力でのエクセル管理が限界を迎えた際、WMS(倉庫管理システム)やAI需要予測ツールによるDX推進が不可欠となります。WMSを導入することで、ハンディターミナルを用いたリアルタイムな入出荷処理が可能になり、「システム上の理論在庫と、現場の実在庫の乖離(棚卸差異)」に起因する予期せぬ欠品を劇的に減らすことができます。

さらに近年では、気象データやカレンダー情報、過去の販売実績を機械学習させ、より精緻な発注点を自動算出する「AI需要予測ツール」の導入が進んでいます。これにより、属人的な「勘と経験」や「恐怖心」による不要なバッファの発注(ブルウィップ効果)を強制的に排除できます。

DX推進時の組織的課題とチェンジマネジメント

システムを導入すればすべて解決するわけではありません。DX推進時に最も立ちはだかるのは「現場の抵抗感」です。ベテランの購買担当者は、AIが弾き出した発注量に対して「これでは絶対に欠品する」と反発し、結局システムの設定を無視して手動で数値を書き換えてしまう事態が頻発します。

この組織的課題を乗り越えるためには、トップダウンでの強力なチェンジマネジメントが必要です。「AIの予測に従って欠品した場合、その責任は現場担当者ではなく、予測アルゴリズムとそれを導入したマネジメント層が負う」という心理的安全性を担保しなければ、現場は決して新しい発注ロジックを受け入れません。

また、物流の「超」実務視点として絶対に忘れてはならないのが、「システムが止まった時のバックアップ体制」です。完全自動化されたセンターほど、ネットワーク障害やランサムウェア攻撃によってWMSがダウンした瞬間、全商品が実質的な欠品状態に陥ります。プロの現場では、WMS停止時を想定し、「前日時点での在庫リストのローカル保存」「紙ベースでのピッキングリスト出力手順」といったBCP(事業継続計画)をアナログレベルで構築しています。高度なDX実装と、泥臭いアナログのバックアップ体制の両輪こそが、いかなる状況下でも顧客へのサービス率を維持する最強の戦略なのです。

よくある質問(FAQ)

Q. 欠品率とは何ですか?

A. 欠品率とは、顧客からの注文に対して在庫がなく、商品を提供できなかった割合を示す物流用語です。顧客の需要を満たせた割合を示す「サービス率」とは表裏一体の関係にあり、両者を足すと100%になります。欠品は売上の機会損失やブランドへの信頼低下を招くため、経営において非常に重要な指標とされています。

Q. 欠品率の計算方法は?

A. 欠品率の計算方法には、主に「件数ベース」「数量ベース」「金額ベース」の3種類があります。例えば件数ベースの場合、「欠品となった注文件数 ÷ 全注文件数 × 100」で算出します。実務においては、自社のKPIや商品の特性に合わせてこれらの計算式を適切に使い分けることが求められます。

Q. 欠品率の目安や目標値はどのように決めればよいですか?

A. 欠品率の目標値は、全商品一律ではなく、売上貢献度などに基づく「ABC分析」を用いて商品特性ごとに設定します。売れ筋である重要商品(Aランク)は欠品率を極力低く抑え、需要の少ない商品(Cランク)は一定の欠品を許容します。これにより、過剰在庫によるキャッシュフローの悪化を防ぎつつ、適正な在庫水準を維持できます。


監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。