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温度帯管理とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:温度帯管理とは、食品や医薬品などの品質を維持するため、生産地から消費者に至るサプライチェーン全体で荷物の特性に合わせた最適な温度を維持・管理することです。
  • 実務への関わり:現場では「常温・冷蔵・冷凍」といった3温度帯や、これに定温や超冷凍を加えた5温度帯が使われます。正しい温度帯の選定と厳格な管理を行うことで、商品の劣化や廃棄リスクを防ぎ、顧客の信頼確保につながります。
  • トレンド/将来予測:HACCPの義務化や医薬品GDPの適用により、温度管理の厳格化が求められています。今後はIoTセンサーや自動温度監視システムを活用し、手書き記録からリアルタイムな自動管理・データ化への移行がさらに加速する見込みです。

食品衛生法に基づくHACCP(ハサップ)の完全義務化や医薬品GDP(適正流通基準)の適用により、サプライチェーン全体で厳格な温度管理を行う「コールドチェーン物流」の重要性が増しています。物流実務においては、商習慣として用いられる「3温度帯」「5温度帯」という区分と、倉庫業法などの公的基準に基づく区分が存在します。これらの定義を正確に把握することは、適切な保管・輸送環境の選定において不可欠な前提知識となります。

目次
  • 物流における温度帯の定義と違い(3温度帯・5温度帯・冷蔵倉庫の区分一覧)
  • 3温度帯・5温度帯の温度設定と具体的な対象商品リスト
  • 倉庫業法施行規則に基づく冷蔵倉庫の級別区分(C級・F級)
  • EC・食品・医薬品物流で発生する温度管理の具体的リスクと対策
  • EC通販で直面する「配送費用の重複」と「同梱不可」の回避策
  • 食品・医薬品物流におけるHACCP対応と品質・衛生管理のプロセス
  • 自社商品に最適な委託先・倉庫を見極める温度帯選定フロー
  • 常温・定温・チルド・冷凍を見極める商品の適正基準
  • 複数温度帯の一元管理とWMS(倉庫管理システム)選定の要点
  • IoTと自動化で実現するコールドチェーン(低温物流)のDX手順
  • 手書き記録からの脱却:リアルタイム「自動温度監視・異常検知」のメリット
  • コールドチェーンを維持するパレット・容器とIoTセンサーの連携
  • 失敗しない温度帯物流の導入手順とコスト最適化チェックリスト
  • 委託先選定・契約時に合意すべきSLA(サービス品質基準)の確認項目
  • トラックドライバー不足に対応するための共同配送とコスト削減策

物流における温度帯の定義と違い(3温度帯・5温度帯・冷蔵倉庫の区分一覧)

食品や医薬品をはじめとする多様な荷物を、品質を維持したまま消費者に届ける「コールドチェーン物流」。その基盤となるのが、厳格な温度管理です。物流実務においては、商習慣として用いられる「3温度帯」「5温度帯」という区分と、倉庫業法などの公的基準に基づく区分が存在します。これらの定義を正確に把握することは、HACCPに沿った衛生管理や、適切な保管・輸送環境の選定において不可欠な前提知識となります。

3温度帯・5温度帯の温度設定と具体的な対象商品リスト

実務で最も広く使われる「3温度帯」と「5温度帯」の違いを整理します。一般的な3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)に、温度変化に極めて敏感な商品に対応する「定温」と、超低温保管が必要な「超冷凍」を加えたものが5温度帯です。各温度帯の定義と対象商品は以下の通りです。

温度帯区分 基準温度(目安) 主な対象商品 管理上の定義・特徴
常温(ドライ) 外気温(規定なし) 缶詰、スナック菓子、段ボール資材 空調管理を行わず、季節による外気温の変化をそのまま受ける。
定温 10℃〜20℃(一定) チョコレート、ワイン、精密機器、医薬品 定温倉庫の温度設定は一般に10℃〜20℃。急激な温度変化を防ぎ結露防止を図る。
冷蔵(チルド) 10℃以下(5℃〜-5℃等) 乳製品、練り製品、生麺、水産加工品 チルドと冷凍の温度の境界線であり、対象物を凍結させずに鮮度を維持する。
冷凍 -18℃以下 冷凍食品、冷凍肉、アイスクリーム 食品衛生法等の基準に準拠し、微生物の繁殖を完全に停止させる温度帯。
超冷凍 -50℃以下 マグロ、高級水産物 生体組織の破壊や酸化(ドリップの発生)を極限まで防ぐための極低温帯。

実務上、異なる温度帯の製品を混在させることは、品質劣化に直結するため原則として「同梱不可」となります。例えば、冷凍品(-18℃以下)とチルド品(5℃前後)を同じ空間に梱包すると、チルド品の凍結や冷凍品の解凍が発生します。また、温度差のある空間への移動時には、空気中の水分が液化する現象を防ぐ「結露防止」のための調温管理が仕様として定義されています。輸送中や保管中に適正温度が維持されているかをリアルタイムで追跡するため、温度センサーを内蔵した「IoT」デバイスによる常時監視・記録を導入する企業が増えています。

倉庫業法施行規則に基づく冷蔵倉庫の級別区分(C級・F級)

物流業界の実務的な呼称である「3温度帯」「5温度帯」とは別に、法律(倉庫業法施行規則)および日本冷蔵倉庫協会の基準に基づき、冷蔵倉庫には「C級(Cool)」と「F級(Frigid)」という明確な区分が定められています。営業倉庫として登録・運用するためには、以下の基準値を満たす必要があります。

級別区分 呼称 規定温度の範囲 主な保管品目
C3級 クール3級 10℃以上 青果物、生花、化粧品
C2級 クール2級 -2℃以上 10℃未満 練り製品、乳製品、卵、生鮮野菜
C1級 クール1級 -20℃以上 -2℃未満 塩干物、不凍食品、燻製品
F1級 フリーザー1級 -30℃以上 -20℃未満 一般冷凍食品、冷凍肉、冷凍魚介類
F2級 フリーザー2級 -40℃以上 -30℃未満 長期保管用の冷凍肉、冷凍水産加工品
F3級・F4級 フリーザー3・4級 -40℃未満(-50℃以下等) マグロ、カツオ、超低温冷凍が必要な特殊食材

「C級・F級」の区分において、C級は主に「冷蔵」領域、F級は「冷凍」領域に対応しています。HACCPに基づく衛生管理計画を策定する際や、委託先倉庫の選定基準を設ける際には、この公的な温度区分に照らし合わせ、自社製品がどの級別に該当するかを厳密に指定する必要があります。

EC・食品・医薬品物流で発生する温度管理の具体的リスクと対策

多品種を扱うEC事業において、温度帯が異なる商品の混在は物流コストを押し上げる主要因です。例えば、常温保存のチョコレートと冷凍のケーキを同時に受注した場合、温度帯の異なる「同梱不可」の状態となり、別々の便で発送せざるを得ません。ここで必要となるのが、3温度帯や5温度帯の温度設定の違いに対する正確な理解と、それに基づいたシステム設計です。

EC通販で直面する「配送費用の重複」と「同梱不可」の回避策

月間3,000件の出荷を処理する食品ECの場合、同梱不可による配送費の重複を防ぐためには、以下のような実務的なシステムおよび運用的アプローチが効果的です。

  • 温度帯の統合ルールの策定:商品の品質に影響を及ぼさない範囲で、チルド(冷蔵)と常温(または定温)を一本化します。例えば、常温の商品をチルド便に同梱して配送する運用です。この際、外気温との差によって生じる結露を防ぐため、ダンボール内部に吸湿性の高い緩衝材や二重のOPP袋を配置する梱包仕様を標準化します。
  • 定温倉庫の温度設定の活用:ワインやチョコレートなど、急激な温度変化や高温を嫌うものの、冷凍・冷蔵するほどではない商品は、年間を通じて一定に保たれた「定温倉庫(一般的に10℃〜20℃)」を活用します。これにより、夏季の高温による劣化を防ぎつつ、冬季は常温帯と同じ通常の配送スキームに載せることが可能になります。
  • 配送キャリア選定の自動化:WMS(倉庫管理システム)において、受注データの「商品マスタ」に登録された温度帯属性に基づき、最適な配送キャリア(冷凍・冷蔵便)を自動選定するロジックを組み込みます。キャリアごとのチルド・冷凍の適用温度基準(ヤマト運輸:冷蔵0℃〜10℃・冷凍-15℃以下、佐川急便:冷蔵2℃〜10℃・冷凍-18℃以下など)をシステムに反映し、不必要な個口割れを防ぐルールを設定します。

食品・医薬品物流におけるHACCP対応と品質・衛生管理のプロセス

食品の安全性を担保するHACCPの義務化や、医薬品のGDP(適正流通基準)の浸透により、サプライチェーン全体を低温に保つコールドチェーン物流の構築とトレーサビリティの確保は、荷主企業にとって避けて通れないプロセスです。保管・輸送時に基準値から温度が逸脱した場合、製品廃棄やブランドイメージ失墜といった重大な損害に直結します。

具体的な管理プロセスとして、保管段階における「冷蔵倉庫区分(C級・F級)」の正しい選定が挙げられます。倉庫業法等で定義されるこれらの区分に照らし合わせ、自社製品がどの級別に該当するかを厳密に指定しなければなりません。その上で、実務上の運用不備を防ぐために、以下のシステム的対策を導入します。

  • IoTデバイスを活用したリアルタイム温度監視:倉庫内および配送車両の荷室に、温度センサーを内蔵したIoTロガーを設置します。5分〜10分間隔で温度データをクラウドへ自動送信し、あらかじめ設定した温度の上限・下限を超えた場合に即座に管理者のスマートフォンへアラートを通知する仕組みを構築します。これにより、手書きの温度記録簿による改ざんリスクを排除し、HACCPが求める「連続的な記録保持」を省力化して実現します。
  • ロット管理と先入れ先出し(FIFO)の自動化:賞味期限が短いチルド品や、使用期限のある医薬品は、WMS上でロット番号と入庫日を紐付け管理します。期限が迫った製品から優先的に引当・出荷指示を出すシステムを運用することで、倉庫内での滞留と廃棄リスクを最小限に抑えます。

自社商品に最適な委託先・倉庫を見極める温度帯選定フロー

商品の品質を維持し、消費者に安全な状態で届けるためには、自社商品の特性に合わせた正確な温度管理が欠かせません。物流における温度帯には「3温度帯」や、より細分化した「5温度帯」などの違いがあり、それぞれの特性を理解した上で委託先を選定する必要があります。自社商品がどの区分に該当し、どのような設備・システムを備えた倉庫に委託すべきか、具体的な判断基準を解説します。

常温・定温・チルド・冷凍を見極める商品の適正基準

まずは、自社商品に最適な温度帯を特定します。特に「常温」と「定温」、「チルド」と「冷凍」は混同されやすく、誤った選定は結露の発生や商品の劣化を招きます。

常温と定温の使い分けにおける重要な判断基準は、結露防止と熱による変質防止です。例えば、チョコレートやサプリメント、特定の化粧品は、定温倉庫の温度設定を15℃〜18℃、湿度50%以下に保つことで、油脂分の分離(ファットブルーム現象)や外装の結露によるカビ発生を防ぎます。夏場に空調のない常温倉庫で保管すると、室温が40℃近くまで上昇して商品が溶ける・変質するリスクが極めて高くなります。

チルドと冷凍の温度閾値を見極める際は、食品衛生法などの法的な規定や、商品の凍結点(氷点)を基準にします。チルドは食品が凍らないギリギリの温度帯(-5℃〜5℃程度)で保管し、風味や食感を保ちます。一方、冷凍は食品内の水分を完全に結晶化させ、微生物の繁殖を完全に抑えるために-18℃以下での管理が求められます。冷蔵倉庫の区分においては、-20℃以上が「C級(クーラー級)」、-20℃以下が「F級(フリーザー級)」に分類されており、冷凍保管を委託する場合はF級の設備を備えた倉庫を選ぶ必要があります。

複数温度帯の一元管理とWMS(倉庫管理システム)選定の要点

3温度帯や5温度帯の製品を複数取り扱う場合、単にそれぞれの温度設定の部屋があるというだけでは不十分です。物流委託先を選定する際は、日々の運用ミスを防ぎ、コールドチェーン物流を途切れさせない「システム連携」と「現場体制」が評価ポイントになります。

1. WMSによる「同梱不可」の自動制御と出荷処理
複数の温度帯の商品を扱うECサイトなどでは、常温商品と冷凍商品が同時に注文されるケースが多発します。この際、システムが自動的に「同梱不可」を判定し、出荷指示を温度帯ごとに分割できなければなりません。月間3,000件の注文を処理する現場において、スタッフが目視と手作業で出荷データを分割していると、常温品を冷凍便に混ぜて発送してしまうなどの誤出荷率が0.5%以上に跳ね上がります。委託先のWMSが、商品の温度帯属性に基づいて出荷指示を自動で分割・結合できるか確認が必要です。

2. HACCPに準拠した衛生管理とIoTによる温度自動監視
食品を取り扱う物流では、HACCPに沿った衛生管理への対応が必須です。1日数回、スタッフが温度計を目視して手書きで日誌に記録するアナログな運用では、夜間や休日における冷凍機の故障や一時的な温度上昇を見落とす危険があります。そのため、倉庫内にIoT温度センサーが設置され、24時間リアルタイムで温度が自動記録される体制が整備されているかを確認してください。設定温度の許容範囲を逸脱した際に、管理者のスマートフォンやPCに即座にアラートが通知される仕組みがあれば、製品の品質劣化を未然に防ぐことができます。

3. 結露を防ぐドックシェルターと前室の有無
冷凍・冷蔵エリア(F級・C級)から外気に直接触れる場所へ荷物を搬出すると、急激な温度差によって商品の外箱や表面に結露が発生します。結露は段ボールの強度低下や、カビの発生原因になります。これを防ぐため、トラックと倉庫の隙間を密閉するドックシェルターが完備されているか、また、保管庫と外部の間に5℃〜10℃程度にコントロールされた「前室(荷捌きスペース)」が存在するかどうかが、物理的な品質管理体制を評価する上で極めて重要な要素です。

IoTと自動化で実現するコールドチェーン(低温物流)のDX手順

温度帯管理は、コールドチェーン物流を機能させるための基盤です。食品衛生管理基準であるHACCPの完全義務化や、医薬品のGDP(適正流通基準)ガイドラインの適用に伴い、サプライチェーン全体を通じた厳格な温度追跡(トレーサビリティ)が不可欠となっています。従来の属人的な管理から、IoT技術を活用したデジタル管理へと移行する具体的な実務手順を解説します。

手書き記録からの脱却:リアルタイム「自動温度監視・異常検知」のメリット

従来の冷蔵倉庫区分(C級・F級)や定温倉庫での管理現場では、担当者が定時に温度計を目視確認し、管理表に手書きで記録する手法が主流でした。しかし、このアナログな手法には、夜間や休日における記録漏れ、一時的な温度変化の看過、さらには記入ミスといったヒューマンエラーのリスクが常に潜んでいます。特に、チルド(約-5℃〜5℃)や冷凍(-15℃以下)といった厳密な温度管理が求められる製品において、数時間の温度逸脱は商品価値の完全な喪失に直結します。

IoTを活用した温度監視システムへの移行は、こうしたリスクを排除するための最も確実なアプローチです。倉庫内や配送トラックの荷室にIoT対応の無線温度センサーを配置し、データをゲートウェイ経由でクラウドに自動転送・自動保存します。このリアルタイム監視システムを導入することで、以下のメリットが生まれます。

  • 常時記録の自動化:1分から10分間隔など、任意の頻度で24時間365日の温度データが蓄積されます。手書きによる記録作業がゼロになり、HACCPが求める温度管理の証跡を容易に担保できます。
  • 異常時の即時アラート:あらかじめ設定した管理温度(例:定温15℃以下)や冷蔵・冷凍の温度閾値を超えた場合、担当者のスマートフォンやPCに警告通知が即時に届きます。これにより、冷却設備の故障やドアの閉め忘れに対して、商品が劣化する前に対応措置を取ることが可能です。
管理項目 手動管理(従来型) IoT自動監視 導入による効果・リスク変化
データ取得頻度 1日に数回(目視) 数分単位(自動・常時) 異常値の早期検知と原因特定が容易
記録・保存方法 紙の帳票、タコグラフ クラウドに自動保存 記入ミス・紛失を防止、HACCP監査対応の迅速化
異常発生時の検知 次回巡回時まで未検知 アラートでリアルタイム通知 温度逸脱による廃棄・回収リスクの最小化
作業工数(倉庫内) 担当者の巡回・記帳業務 システムによる自動集計 管理工数の削減による他実務への人員配置化

この自動化は、多温度帯を扱う倉庫での「C級(チルド・冷蔵:10℃〜-20℃未満)」および「F級(冷凍:-20℃以下)」の厳格な区分、また常温・定温・冷蔵・チルド・冷凍などの範囲設定に基づいた複雑な在庫管理におけるオペレーション工数を劇的に低減します。

コールドチェーンを維持するパレット・容器とIoTセンサーの連携

倉庫内での温度管理が万全であっても、出荷から配送先へ届くまでの輸送中に温度管理が途切れてはコールドチェーン物流は成立しません。特にトラックへの積み下ろし時(ドックシェルター外での荷役作業時)や、外気温との差によって発生する結露は、商品のパッケージ破損やカビ発生、品質劣化を引き起こす要因となります。これを防ぐためには適切な結露防止対策が必要です。

輸送中の「ブラックボックス化」を防ぐために、断熱容器や輸送用パレット、コンテナそのものにIoTセンサー(Bluetooth Low Energy、RFID、またはLTE回線付きセンサー)を直接取り付ける手法が実用化されています。例えば、医薬品や高級生鮮食品など、異なる温度設定が必要な製品を同じ混載便で輸送する場合を想定します。冷凍が必要な商品と定温で管理すべき商品が混在し、かつ相互の影響を避けるために「同梱不可」と指定されている場合、断熱ボックス(保冷コンテナ)ごとにIoTセンサーを同梱して個別に温度管理を行います。

仕組みは以下の手順で機能します。

  • 容器の梱包とセンサー起動:断熱ボックスへ梱包する際、IoT温度ロガーを同梱します。ボックスごとに目標温度(チルド、冷凍、定温など)をIDと紐付けして登録します。
  • 運行中の継続モニタリング:輸送中、センサーが箱内部の温度変化を計測。車載のゲートウェイやスマートフォンのアプリケーションを経由し、クラウドを通じてリアルタイムの位置情報と温度データが運行管理者へ送信されます。
  • 結露防止および異常値の早期対策:トラックのドア開閉による一時的な温度上昇や、高湿度環境による結露の兆候を感知した際、ドライバーにアラートを発し、荷崩れの修正や空調温度の微調整を促します。
  • 納品時のデータ確認:納品先での荷受け時に、リーダーやスマートフォンでロガーのデータを読み取り、輸送中の温度推移が規定内であったことを確認した上で受け渡しを行います。

このように、ハードウェア(断熱容器やパレット)とデジタル技術(IoTセンサー・クラウド)を連携させることで、冷蔵倉庫内だけにとどまらず、ラストワンマイルを含むサプライチェーン全体で継ぎ目のないコールドチェーンが担保されます。また、輸送効率向上のために「同梱不可」の制限がある混載便においても、容器単位での緻密な温度保証ができるようになるため、配送コストの最適化にも寄与します。

失敗しない温度帯物流の導入手順とコスト最適化チェックリスト

自社でコールドチェーン物流を構築するか、あるいは3PL(物流一元受託)企業にアウトソーシングするか。この選択は、初期投資額とランニングコスト、そして品質管理体制に直結します。自社で常温・冷蔵・冷凍の「3温度帯」や、定温や超冷凍を加えた「5温度帯」の設備を自前で用意する場合、倉庫の断熱工事や冷却設備の導入に数千万円規模の投資が必要です。さらに、保管する物品の性質によって適切な冷蔵倉庫区分(主にC3級〜F4級)を設計する必要があります。

以下に、自社構築と3PL委託の比較をまとめました。自社の月間出荷件数や投資回収期間を考慮して、最適な手法を選択してください。

比較項目 自社構築(インハウス) 3PL(外部委託) 判断の目安
初期投資(設備・システム) 数千万円〜億単位(冷却設備、断熱工事、温度監視システム等) 数十万〜数百万円(システム連携費用、初期登録費等) 初期投資の予算枠、自社保有アセットの有無で判断。
固定費と変動費の比率 固定費比率が高い(倉庫賃料、人件費、設備の減価償却費) 変動費比率が高い(保管坪数や出荷件数に応じた従量課金) 月間出荷数が1万件未満で、物量波動が大きい場合は3PLが有利。
管理・運用の柔軟性 自社で定温倉庫の温度設定などを任意に、即座に変更可能 事業者の対応範囲(3温度帯、5温度帯の違いなど)に依存 特殊な「チルド・冷凍」の温度組み合わせが必要な場合は要確認。

自社でゼロから構築する場合、保管温度を一定に保つためのハードウェア投資だけでなく、結露を防ぐための前室設置など、食品衛生や品質保持の観点から高度なノウハウが求められます。そのため、特に立ち上げ期や月間出荷数が数千件規模の段階では、アセットライトな3PLへの委託が現実的な選択肢となります。

委託先選定・契約時に合意すべきSLA(サービス品質基準)の確認項目

3PL企業に温度帯管理を委託する場合、契約時に合意するSLA(サービス品質合意書)に具体的な温度管理条件を明記しなければ、万が一の品質劣化時に責任の所在が曖昧になります。特に、F級(冷凍、マイナス20度以下)やC級(冷蔵、10度以下〜マイナス2度など)の正確な区分の指定と、輸送・保管時の適用温度基準の策定は必須です。

契約交渉および委託先選定時に合意すべきSLA項目と確認の手順は以下の通りです。

  • 入出庫時の温度許容範囲と測定手順の明記:
    トラックから倉庫、または倉庫からトラックへの荷卸し・積込み時、一時的に外気に触れることで結露が発生するリスクがあります。ドックシェルターの有無に加え、「入庫時に商品表面温度が5度を超えていた場合の受取拒否ルール」のように、具体的な温度閾値と測定方法(赤外線温度計による測定など)を合意します。
  • HACCPに準拠した衛生・清掃・温度記録:
    食品を扱う場合、食品衛生管理基準である「HACCP」に基づく管理体制が敷かれているかを確認します。1日2回の手動検温ではなく、デジタル機器を用いた24時間自動検温体制が整備されているか、異常警報(アラート)が発報した際のリカバリー手順が文書化されているかを監査します。
  • IoTを活用したトレーサビリティの確保:
    倉庫内だけでなく、配送中のトラック荷台の温度もIoTセンサーを用いてリアルタイムに監視できるかを定義します。5分間隔で温度ログをクラウドに保存し、荷主側がいつでもダッシュボードで輸送中のコールドチェーンが維持されているか確認できる仕組みを合意項目に含めます。
  • 「同梱不可」商品のハンドリングルール:
    冷凍食品と常温調味料を同じEC注文で受託した際、配送箱を分ける「同梱不可」のルールと、それぞれの梱包資材(発泡スチロール、保冷剤の数量・仕様)の基準を定めます。不適切な同梱による商品の解凍や凍結を防ぐため、WMS上での自動引き当てルールまでSLAに落とし込みます。

トラックドライバー不足に対応するための共同配送とコスト削減策

働き方改革関連法の適用に伴うトラックドライバー不足や労働時間制限(いわゆる2024年問題)は、特に積載効率の低下を招きやすい温度帯物流において、コスト増や車両手配難に直結します。冷凍・冷蔵車は常温車に比べて車両台数が少なく、帰り便の確保が難しいため、1台あたりのチャーター料金が高騰しがちです。このコストと配送効率のトレードオフを乗り越えるためには、従来の自社単独配送から、他社との「共同配送」へのシフトが実効性の高い手段となります。

具体的なコスト削減と効率化に向けたチェックリストは以下の通りです。

  • 同一温度帯の共同配送ネットワークへの参加:
    競合他社や近隣の荷主と同じ温度帯の共同配送(プラットフォーム)を利用することで、積載率を向上させます。例えば、同一エリア向けの配送において、自社単体では積載率40%で運行していた10トントラックを、同業3社でシェアすることで積載率を85%まで高め、1パレットあたりの配送運賃を20%以上削減する運用が可能です。
  • 商品の特性に応じた配送モードの最適化:
    すべての商品を一律に冷凍車で運ぶのではなく、商品の特性に合わせて「定温(15〜20度程度)」で済むもの、C級・F級などの厳密な管理が必要なものを厳格に仕分けます。常温トラックに遮熱カバーや保冷ボックスを組み合わせた簡易的なコールドチェーンを活用することで、高価な冷凍冷蔵車の使用頻度を抑え、車両手配の難易度を下げます。
  • リードタイムの緩和と配送頻度の見直し:
    「毎日午前中着」といった厳しい配送条件を「中1日配送」や「午後着」に緩和することで、運賃交渉における優位性を確保できます。例えば、配送頻度を週6日から週3日に削減して1回あたりの配送量をまとめる手法により、車両調達コストを年間で最大15%程度削減することが可能です。

温度帯管理におけるコスト増は、適切な設備運用と運送会社との協調によって抑制可能です。まずは自社の取り扱い商品の温度帯定義を見直し、過剰な温度管理(例:定温で足りる商品を冷蔵で保管・輸送している等)が生じていないかを棚卸しすることから始めてください。現在の自社物流における温度区分と配送コストのデータを抽出し、無駄の削減に向けた具体的な一歩を踏み出しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 物流の「3温度帯」とは何ですか?具体的な区分も教えてください。

A. 物流における3温度帯とは、商品の品質を守るために設定された「常温(ドライ)」「冷蔵(チルド:一般的に5℃〜-5℃程度)」「冷凍(フローズン:-15℃以下)」の3つの管理区分のことです。これらは食品や医薬品の適切な輸送・保管に欠かせない基本の商習慣であり、近年ではさらに細分化した「5温度帯」や、倉庫業法に基づく公的な温度区分も活用されています。

Q. 冷蔵倉庫の「C級」と「F級」の違いは何ですか?

A. 倉庫業法施行規則に基づく冷蔵倉庫の級別区分の違いです。C級(クーラー級)は10℃以下から-20℃未満の温度帯を指し、主に乳製品やチルド食品、農水産物の保管に適しています。一方、F級(フローズン級)は-20℃以下の温度帯を指し、冷凍食品や冷凍肉・魚介類などの長期保管に用いられます。取扱商品の適正基準に合わせて選定する必要があります。

Q. EC通販の物流における「同梱不可」の課題と対策は何ですか?

A. 常温・冷蔵・冷凍など温度帯が異なる商品を同時に注文された際、一緒に梱包して発送できない(同梱不可)ため、配送費用が二重に発生する課題です。対策として、複数温度帯を一元管理できるWMS(倉庫管理システム)を導入し、温度帯をまたぐ配送ルートの最適化や、専用の保冷容器・資材を活用して配送おまとめ配送を行うことで、コスト削減を図ります。

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