鉄道輸送とは?実務担当者が知るべき基礎知識とモーダルシフト成功戦略とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:鉄道輸送とは、機関車とコンテナなどを使って大量の荷物を長距離にわたって決まった時間に運ぶ輸送方法です。かつては物流の主役でしたが、現在はトラックドライバー不足や環境問題への対策として再び大きな注目を集めています。
  • 実務への関わり:鉄道輸送を利用する際は、直接鉄道会社に依頼するのではなく、通運と呼ばれる専門業者を通じてトラックの集荷から配達までを一貫して手配します。ただし、分単位の厳格なダイヤに従う必要があるため、工場や倉庫での出荷作業を前倒しするなどの現場の工夫が求められます。
  • トレンド/将来予測:残業規制が厳しくなる2024年問題や2026年問題への対策として、長距離のトラック輸送から鉄道への切り替えが急速に進んでいます。また、二酸化炭素の排出量を大幅に減らせるため、環境保全を重視する企業の重要な戦略として今後も導入が拡大する見通しです。

日本の物流インフラは今、かつてない歴史的な転換期を迎えています。トラックドライバーの時間外労働規制に伴う「2024年問題」、そして労働力不足と法規制のさらなる厳格化が予測される「2026年問題」を背景に、長距離幹線輸送の維持は極めて困難な状況に陥っています。この国家的なサプライチェーンの危機を救う切り札として、劇的な再評価を受けているのが「鉄道輸送」へのモーダルシフトです。

しかし、長年トラック輸送のみに依存してきた荷主企業が、単なる思いつきで輸送モードを切り替えても成功することはありません。鉄道輸送には特有の「ダイヤ至上主義」や「積載の物理的制約」「複雑な手配フロー」が存在し、これらを理解せずに導入を進めれば、サプライチェーンの断絶という致命的な事態を招きます。本記事では、鉄道輸送の基礎知識から、トラック輸送との緻密な比較、ミリ単位での最適なコンテナ選び、そして複雑な手配フローやDX推進に至るまで、現場実務者が直面するあらゆる課題と解決策を網羅し、日本一詳しい実務の指南書として徹底解説します。

鉄道輸送とは?基礎知識と現在の物流における役割

「鉄道輸送」とは、機関車が牽引するコンテナ貨車や専用貨車を用いて、大量の貨物を長距離かつ定時に運ぶ輸送モードです。明治時代の鉄道開業から続く長い歴史を持ち、かつては日本の産業と物流を支える絶対的な主役でした。その後、モータリゼーションの進展に伴い、機動性に優れるトラック輸送へ主役の座を譲りましたが、現代においてその位置づけは劇的な再評価を受けています。深刻なドライバー不足を背景に、長距離の幹線輸送をトラックから鉄道へ転換する「モーダルシフト」が、荷主企業のサプライチェーン維持における最重要課題となっています。また、トラック比で約11分の1と言われる高いCO2削減効果は、Scope3(サプライチェーン排出量)の削減を急務とするESG経営において不可欠な要素です。

鉄道輸送の定義と日本の物流における重要性

鉄道輸送の最大の特長は、国内ネットワークを網羅するJR貨物のインフラを活用した大量・長距離輸送にあります。しかし、実務において荷主企業が直接JR貨物と輸送契約を結ぶことは原則としてありません。実際の輸送手配は、貨物利用運送事業法に基づく「利用運送事業者(通運)」と呼ばれる専門業者が担います。通運会社が、荷主の拠点から貨物ターミナル駅までのトラック集荷(ドレージ)、鉄道区間のコンテナ枠の確保、そして到着駅から最終納品先への配達までを一貫して請け負うことで、シームレスなドア・ツー・ドア輸送が成立しています。

【現場視点】導入時に直面する「ダイヤ至上主義」と社内コンフリクト
鉄道輸送を導入する際、物流センター(DC)の現場が最も苦労するのが「時間の厳格さ」への適応です。トラック輸送であれば「積み込みが遅れているから15分待って」という現場の融通が利く場面もありますが、鉄道は秒単位で管理される「ダイヤ至上主義」です。発駅ターミナルへの持ち込みリミットに1分でも遅れれば、予定していた列車には乗れず、納品遅延が確定します。
ここで発生する組織的課題が「営業部門や製造部門とのコンフリクト(対立)」です。従来、夕方ギリギリまで製造した製品をトラックに詰め込んで翌朝納品していた体制から、列車の締め切り時間に合わせて「14時には出荷作業を完了させる」といった大幅な前倒しが必要になります。鉄道輸送の導入は、単なる物流部門のモード変更にとどまらず、全社的な生産計画や受注締め時間の抜本的な見直しを伴う全社プロジェクトなのです。

主な輸送方式の違い(コンテナ輸送と車扱輸送)

鉄道輸送には、大きく分けて「コンテナ輸送」と「車扱(しゃあつかい)輸送」の2つの方式が存在します。自社の商材がどちらの方式に適合するか、基礎的な仕様と実務上の定義を把握しておくことが、導入を成功させる第一歩です。

  • コンテナ輸送:
    現在、日本の鉄道輸送の絶対的な主流であり、全体の約9割を占めます。標準的な12ftコンテナ(約5トンの積載が可能)をはじめ、大型の20ftや31ftコンテナを使用して、日用消費財、食品、電子部品から建材まで多種多様な貨物を運びます。荷物を入れたコンテナごとトラックから貨車へ積み替えるため、積替え時の貨物ダメージリスクが低いのが特徴です。
    現場のリアル: トラックの荷台と同じ感覚で積もうとすると失敗します。コンテナサイズの内寸(特にドアの開口幅)をミリ単位で把握し、使用するパレットの割付プランを綿密に設計しなければ、積載効率が大幅に低下します。また、重心の偏りを防ぐ「偏荷重対策」が必須であり、重量バランスが崩れていると駅のゲートで積載を拒否される厳しい実態があります。
  • 車扱輸送(しゃあつかいゆそう):
    石油、セメント、石灰石、化学薬品など、特定の大量物資を専用のタンク車やホッパ車に直接積み込んで輸送する方式です。特定の荷主専用にダイヤが組まれることが多く、一度に数百トンから千トン規模を運ぶため、圧倒的なスケールメリットを発揮します。
    現場のリアル: 荷主自身の工場や製油所に「専用線(引き込み線)」と呼ばれる独自の鉄道路線や専用の荷役設備が必要となるケースが大半です。そのため、莫大な初期投資と維持費、老朽化した専用線の修繕コストがかさむという課題があり、新規参入のハードルは極めて高い(事実上不可能に近い)という特徴を持っています。

このように、一口に「鉄道輸送」と言っても、実務におけるアプローチや現場で求められるノウハウは方式によって異なります。現在最も導入ニーズが高い「コンテナ輸送」に焦点を絞り、次章以降でさらに深く掘り下げていきます。

トラック輸送との徹底比較!鉄道輸送のメリット・デメリット

ビジネスの現場において「鉄道輸送」と「トラック輸送」の比較は避けて通れません。ここでは、荷主企業のSCM担当者や現場の物流実務者が実際にモーダルシフトの可否を判断するために不可欠な、メリットとデメリットのリアルな実態を徹底解剖します。

鉄道輸送のメリット(環境負荷低減・長距離輸送・定時性)

荷主企業が鉄道輸送へのモーダルシフトを決定する際、最大の推進力となるメリットは以下の3点に集約されます。

  • 圧倒的なCO2削減とESG経営への直結:
    国土交通省の統計によれば、鉄道輸送における1トンキロあたりのCO2排出量は営業用トラックの約11分の1(約20g-CO2/t-km)です。近年、プライム市場上場企業を中心にScope3の開示義務化が進む中、改良トンキロ法等の精緻な計算式を用いて算出される鉄道のCO2削減実績は、ステークホルダーへの強力なアピール材料となります。
  • 「2024年問題」「2026年問題」の特効薬と大量輸送:
    トラックドライバーの時間外労働上限規制により、関東〜関西(約500km)や関東〜九州(約1,000km)の長距離ツーマン運行・中継輸送は限界を迎えています。一度に10トントラック数十台分の貨物を数名の乗務員で運ぶことができる鉄道輸送は、長距離区間において車両手配リスクを劇的にヘッジし、安定供給を担保する最強のソリューションです。
  • 高度な定時性と庫内作業の最適化:
    鉄道は道路渋滞や交通事故による突発的な渋滞に巻き込まれることがなく、緻密なダイヤに従って運行されます。到着時刻のブレが最小限に抑えられるため、物流センター側のWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)と連動した人員配置、トラックバースの予約システムを最適化しやすくなります。

鉄道輸送のデメリット(リードタイム・品質リスク・柔軟性の欠如)

一方で、実務への導入時に現場が直面し、対策を講じなければ致命傷となる特有のデメリットや落とし穴が存在します。

  • 積替の手間によるリードタイムの延長:
    集荷先から納品先まで直行するドア・ツー・ドアのトラック輸送とは異なり、鉄道輸送では「発駅までのドレージ」「貨車の編成組み替え・積載待機」「着駅での荷降ろしと配達手配」という複数の結節点を経由します。そのため、トータルのリードタイムはトラック直行便より1〜2日延びるのが一般的であり、在庫日数のバッファ(安全在庫)の見直しが必須となります。
  • 前後衝動による貨物ダメージ(スレ傷・荷崩れ):
    トラック輸送しか経験のない担当者が最も陥りやすい落とし穴が「振動と衝撃」の違いです。列車は発進・停止時や車両の連結・解放時に、最大で数Gという強い「前後衝動(ピッチング)」が発生します。隙間を埋めるエアー緩衝材(ダンネージ)や強固なラッシングボードを使用しないと、商品パッケージ同士が擦れて傷がついたり、段ボールが潰れたりする品質事故が多発します。
  • 柔軟性の欠如と途中変更の不可:
    一度貨物列車に積載してしまうと、走行途中での納品先変更や荷下ろしは不可能です。また、コンテナの到着日時に合わせて着駅のトラックを手配しておく必要がありますが、近年は着地側のドレージ不足により「コンテナは駅に着いているのに運ぶトラックが捕まらない」という事態も発生しており、通運会社との強固なパートナーシップが不可欠です。

【比較表】トラック輸送と鉄道輸送の特性比較

現場でのモーダルシフト判断基準として、以下の特性比較表をご活用ください。特に損益分岐点となる「輸送距離」や、積載効率の概念を事前に把握することが重要です。

比較項目 トラック輸送 鉄道輸送(コンテナ)
輸送コストの分岐点 500km未満の短・中距離でコスト優位 500km以上の長距離でコストメリット大
リードタイム 短い(直行便による翌日納品等が可能) 長い(結節点での積替やダイヤ待ちで+1〜2日)
環境負荷(CO2排出量) 相対的に高い(約216g-CO2/t-km) 極めて低い(約20g-CO2/t-km、トラックの約1/11)
貨物への衝撃特性 上下の振動が中心(エアサス車で緩和可能) 前後方向の強い衝動(ピッチング)に注意が必要
イレギュラーへの柔軟性 高い(ルート変更、時間指定の融通が利く) 低い(ダイヤ制約あり、途中経路変更不可)

【実務編①】利用可能なコンテナサイズと仕様スペック詳細

モーダルシフトの成功を左右する最大の物理的要因が「コンテナサイズと積付の制約」です。本セクションでは、JR貨物が提供する主力コンテナの一次情報に基づくスペックと、現場で「本当に使える」超実務的な積載・品質管理ノウハウを徹底解説します。

12ftコンテナ(国内鉄道輸送のスタンダード)

国内の鉄道輸送において、流通量の約8割を占める最もポピュラーな規格が12ftコンテナ(V19C型など)です。全国すべての貨物ターミナルで取り扱いがあり、汎用性が極めて高いのが特徴です。

コンテナ種類 外寸(長さ×幅×高さ) 内寸(長さ×幅×高さ) 内容積 最大積載重量
12ftコンテナ(汎用) 3,715 × 2,450 × 2,500 mm 3,642 × 2,275 × 2,252 mm 約18.7㎥ 5,000kg(5トン)

【現場運用のリアル:クリアランスの罠】
スペック上は5トン積載可能ですが、現場が最も苦労するのは「パレット積載時のクリアランス(隙間)」です。標準的なT11型パレット(1,100×1,100mm)を使用する場合、12ftコンテナには平置きでちょうど6枚(2列×3列)が収まります。しかし、内寸の幅が2,275mmであるため、パレット2枚(2,200mm)を並べると横の余裕はわずか75mmしかありません。商品の胴膨れ、ストレッチフィルムの巻き方の乱れ、パレットのわずかな歪みがあるだけで扉が閉まらなくなるため、荷役作業には高い精度が求められます。

20ftコンテナ・31ftコンテナ(大型・特殊貨物向け)

12ftでは容積が足りない軽量長尺物や、10トントラックからの完全な「載せ替え」を狙う場合は、20ftまたは31ftコンテナを選択します。

コンテナ種類 外寸(長さ×幅×高さ) 内寸(長さ×幅×高さ) 内容積 最大積載重量
20ftコンテナ 6,058 × 2,490 × 2,500 mm 5,950 × 2,350 × 2,250 mm 約31.5㎥ 約10,000kg(10トン)※仕様による
31ftコンテナ 9,410 × 2,490 × 2,600 mm 9,280 × 2,350 × 2,360 mm 約51.0㎥ 約13,800〜14,000kg

【現場運用のリアル:31ftコンテナの利点とハードル】
特に注目すべきは31ftコンテナ(U48A型等のウイングコンテナ)です。内寸長が9.2mを超え、内容積は10トン大型トラックのウイング車とほぼ同等です。T11型パレットを16枚積載できるため、荷主側は「普段の大型トラック向けに出荷手配するのと同じ感覚」でピッキング指示を出せるという圧倒的なメリットがあり、現在確保の競争が激化しています。
しかし、導入時のハードルとなるのが集配時のアクセスです。31ftコンテナを運ぶには専用の大型トレーラーが必要となり、工場や物流センターへの進入ルートの確認、オーバーハングを考慮した旋回スペースの確保が不可欠です。敷地が狭い拠点では物理的に集荷できないケースも多発するため、事前の現地調査が必須となります。

商材別の最適なコンテナ選びと品質管理のポイント

単なるコンテナのスペック比較だけでなく、商材の特性(重量勝ちか、容積勝ちか)と品質要件を見極めた選定が、輸送コストと積載効率の最適化に直結します。

  • 重量勝ち商材(飲料・米・建材など):
    容積よりも先に重量制限に達してしまうため、基本的には12ftコンテナが推奨されます。5トンという制限に対し、いかに無駄なくパレットを組むかが重要です。コンテナの積載率(重量)を常に90%以上に保つことが、コストダウンの重要KPIとなります。
  • 容積勝ち商材(アパレル・日用雑貨・家電など):
    重量に余裕があるもののスペースを食う商材は、迷わず31ftコンテナによる大ロット輸送が適しています。長距離の幹線輸送を31ftで一気に運び、着地のターミナルから各納品先へ小口配送するスキームが王道です。
  • 実務上の落とし穴:夏場の庫内温度上昇リスク:
    鉄道コンテナは金属製であり、夏場に長時間駅構内で直射日光に曝されると、庫内温度が50度〜60度に達することがあります。食品、化粧品、精密機器などを運ぶ場合、熱による品質劣化が深刻な問題となります。これを防ぐため、通風スリットが設けられた「通風コンテナ(V型)」や、断熱材が施された「保冷コンテナ(UR型)」を適切に選定することが、品質管理部門の重要タスクとなります。

【実務編②】鉄道輸送の導入ステップと依頼方法(ドア・ツー・ドア輸送)

トラック輸送しか経験のない荷主企業の物流担当者が、いざ鉄道輸送を導入しようとした際、最初につまずくのが「誰に、どうやって依頼すればよいのか」という契約と手配のフローです。本セクションでは、ドア・ツー・ドアの輸送手配における実務的なステップを解説します。

JR貨物と利用運送事業者(通運)の役割の違い

鉄道輸送の導入において、最も多くの荷主が誤解しているのが「契約の窓口」です。「直接JR貨物の営業所に連絡しよう」というのは、実務上よくある失敗パターンです。インフラを提供する企業と、窓口となる企業は明確に分かれています。

項目 JR貨物(日本貨物鉄道株式会社) 利用運送事業者(通運会社)
主な役割 駅間のインフラ提供(機関車・貨車の運行、駅構内におけるトップリフター等での荷役作業) 荷主の窓口、集配トラック(ドレージ)の手配、列車の枠(コンテナスペース)の予約手配
契約対象 利用運送事業者(荷主企業との直接的な運送契約は原則なし) 荷主企業(メーカー、卸売業者、小売業者など)
実務上の権限 列車の運行ダイヤ作成、異常気象時・災害時の運行可否判断 コンテナの予約(枠取り)、ドア・ツー・ドアのスケジュール・品質管理

物流実務の現場で最も苦労するのは、「列車の枠の確保」です。通運会社は、独自のネットワークや過去の取引実績に基づき、特定路線の枠(スペース)を押さえています。特に年末や年度末、北海道の農産物収穫期(秋口)などは枠の争奪戦となります。全国ネットワークを持つ大手通運を選ぶか、特定地域に強い地場密着型の通運を選ぶか、自社の輸送ルートに合わせたパートナー選定が重要です。

依頼から集荷・列車輸送・配達までの流れ(フロー解説)

荷主が依頼してから納品先へ配達されるまでの「ドア・ツー・ドア」のフローは以下の通りです。

  • ステップ1:通運会社への見積もり・枠取り依頼
    発着地、希望リードタイム、品名、物量を伝えます。ここで通運会社は、発駅までの集荷トラック(ファーストマイル)、鉄道区間の枠、着駅からの配達トラック(ラストマイル)を一気通貫で手配します。
  • ステップ2:集荷(ファーストマイルの現場対応)
    通運会社が手配したコンテナ専用トラックが荷主の倉庫に到着します。ここで現場が直面するハードルが「荷役作業の変更」です。プラットフォームの高さが合わない場合、トラックの荷台に乗ったままのコンテナへフォークリフトで積み込む「横積み作業」が発生します。現場作業員の安全確保やスロープの準備など、運用ルールの見直しが必須となります。
  • ステップ3:発駅への搬入と情報連携の壁(DXの遅れ)
    集荷されたコンテナは貨物ターミナル駅へ搬入されます。実務上、ここでDXの壁が立ちはだかります。荷主側のWMSと通運会社のシステムがAPI連携されていない場合、コンテナ貨物輸送状(送り状)の作成が手書きやFAXに頼る属人的な作業となり、ヒューマンエラーの温床となります。導入の際は、いかにEDIやAPI連携でシームレスなデータ転送を行うかが業務効率化の鍵です。
  • ステップ4:列車による幹線輸送とトラッキング
    駅構内でトップリフターにより貨車に積み込まれ、幹線輸送が始まります。実務担当者は、JR貨物が提供するIT-FRENS&TRACEシステムや通運独自の動態管理システムを利用して現在位置をモニタリングし、到着予定日をリアルタイムで把握します。
  • ステップ5:着駅での荷降ろし・留置と配達(ラストマイル)
    着駅に到着したコンテナは、配達トラックに載せ替えられ最終納品先へ向かいます。近年注目されている実務テクニックとして、コンテナを数日間駅に置いたままにする「留置(りゅうち)」制度の活用があります。駅を一時的な在庫拠点(仮想倉庫)として利用し、納品先の指定時間に合わせてジャストインタイムで配達することで、荷受け側のトラックバースの混雑を緩和する高度なソリューションです。

モーダルシフトを成功に導く戦略と最新動向(2024年・2026年問題対応)

物流業界はいま、慢性的な労働力不足と厳格化する法規制の波に直面しており、鉄道輸送へのモーダルシフトは、単なる「コスト削減の検討事項」から「企業の生存戦略」へとフェーズを移しています。表面的な理想論を脱し、現場の荷役作業から情報システムの連携に至るまで、具体的な解決へのロードマップを紐解きます。

物流の2024年・2026年問題とモーダルシフト加速の必然性

2024年問題により、トラックドライバーの拘束時間が厳格に管理される中、物流関連2法の改正本格施行に伴う「2026年問題」が迫っています。これは、荷主企業に対する「物流統括管理者の選任義務」や、非効率な荷待ち・荷役作業を放置した際の「法的な是正勧告・社名公表ペナルティ」が強化されることを意味します。もはや協力会社任せの物流改善は許されません。

モーダルシフトを成功させるための重要KPIとして、経営層がモニタリングすべきは「実車率(無駄な空走がないか)」「積載率(重量・容積ともに限界まで使い切っているか)」「CO2削減量(t-CO2)」の3点です。発着駅と拠点間のドレージを担う通運事業者と早期に協議し、これらのKPIを改善し続ける中継輸送ネットワークを再構築することこそが、荷主企業自身の絶対的な義務となります。

鉄道輸送におけるDX化と組織的課題の克服

鉄道輸送のデメリットとして現場から必ず挙がるのが、荷役作業の煩雑さと情報連携のタイムラグです。これらを克服する鍵が、物流データのDX化と、パレット輸送への完全移行です。

比較項目 手荷役(直積み・バラ積み) パレット輸送(T11型 6枚使用時)
積載・荷卸し時間 約1.5時間〜2時間 / コンテナ 約15分〜20分 / コンテナ(フォークリフト)
積載効率(庫内容積) 約90%以上(隙間なく積載可能) 約70〜80%(デッドスペースが発生)
現場作業員の疲労度 大(特に夏場は苛酷、離職の直接的原因) 小(機械化・省力化により大幅改善)

表から分かる通り、パレット化により容積上の積載効率は若干落ちるものの、荷役時間の圧倒的な短縮(2時間から15分への短縮)と作業員の負担軽減は、現代の物流現場において必須のトレードオフです。生じたデッドスペースには前述の通り緩衝材を充填し、ピッチング対策を行います。
さらに、スマート物流の推進により、各コンテナの現在地や温度情報、返送時の空き枠(帰り荷)の可視化が進んでいます。自社のWMSと通運のシステムを統合し、リアルタイムでのサプライチェーン可視化を実現することが求められます。

導入時の実務的課題と失敗しないためのBCP対策

鉄道輸送最大の弱点は「自然災害に対する脆弱性」です。台風、豪雨、大雪による鉄路の寸断や数日間の運休は、荷主のSCM担当者にとって最大の懸念事項です。また、自社や通運のシステム障害というデジタル上のリスクも存在します。現場がパニックに陥らないため、以下の強靭なBCP(事業継続計画)をあらかじめ構築しておくことが不可欠です。

  • システムダウン時のアナログ運用手順化:
    万が一DX基盤や自社のWMSが停止し、API連携が切断された場合でも列車の発車時刻は待ってくれません。システム障害時には即座にExcelを用いたCSV出力や、ホワイトボード・FAXを活用したアナログな手動運用へ切り替え、通運事業者と電話で連携を取りながら指定時刻までにコンテナを駅へ搬入する訓練(エマージェンシードリル)を平時から積んでおくことが、プロの現場に求められます。
  • 代替輸送ネットワーク(ハイブリッド手配)の事前契約:
    大規模な計画運休が発表された際、即座に長距離トラック輸送や内航フェリー輸送へ切り替えられるよう、通運事業者との間で「有事の際のリレー輸送・代替輸送枠の確保」に関する特約やSLA(サービスレベル合意書)を締結しておく必要があります。
  • 在庫のバッファリングと拠点再編:
    異常事態による数日の遅延を吸収するため、調達物流や工場間輸送においては、納品先拠点の安全在庫日数をあらかじめ再設定し、特急便の発生を抑えるよう発注サイクルと倉庫の保管キャパシティを最適化します。

モーダルシフトの成功は、経営陣の「環境対応」という号令だけで成し得るものではありません。現場のフォークリフトオペレーターから配車担当、システムエンジニアに至るまでが、鉄道輸送のリアルな特性を深く理解し、イレギュラー発生時の柔軟な対応力と組織的なマニュアルを磨き上げることでのみ、真に強靭で持続可能なサプライチェーンが実現するのです。

よくある質問(FAQ)

Q. 鉄道輸送のメリット・デメリットは何ですか?

A. メリットは、環境負荷の低減、長距離輸送への適性、そして列車の運行に基づく高い定時性です。一方でデメリットとして、トラック輸送と比較してリードタイムが長くなる点や、ダイヤ至上主義による柔軟性の欠如、複数回の荷役に伴う品質リスクなどが挙げられます。

Q. 鉄道輸送とトラック輸送の違いは何ですか?

A. トラック輸送が柔軟な手配でドア・ツー・ドアの配送を得意とするのに対し、鉄道輸送はコンテナを用いて大量の貨物を長距離かつ定時に運ぶ点に違いがあります。鉄道輸送は環境に優しい反面、積載の物理的制約や複雑な手配フローが存在するため、商材に合わせた緻密な輸送計画が求められます。

Q. 物流の「2024年問題」で鉄道輸送が注目されるのはなぜですか?

A. トラックドライバーの労働時間規制による「2024年問題」や労働力不足により、従来のトラック依存による長距離幹線輸送の維持が困難になっているからです。サプライチェーンの危機を回避するため、長距離輸送をトラックから鉄道に切り替える「モーダルシフト」が解決の切り札として再評価されています。


監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。