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Home > 物流用語辞典 > 環境・サステナビリティ> SDGs(持続可能な開発目標)

SDGs(持続可能な開発目標)とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年までに地球環境を守りながら、世界中の人々が豊かに暮らし続けられる社会を作るための17の国際目標です。「誰一人取り残さない」を理念とし、環境保全だけでなく格差改善や適切な労働環境の整備など、持続可能な社会作りに向けた幅広い課題を網羅しています。
  • 実務への関わり:物流や製造業の現場では、二酸化炭素の排出削減を目指す「グリーンサプライチェーン」の構築や、労働環境を改善する「ホワイト物流」の推進が急務となっています。これらは、取引先からの排除リスク(市場リスク)を回避し、企業としての社会的責任を果たす上で必要不可欠な取り組みです。
  • トレンド/将来予測:今後は投資家が企業の社会的姿勢を評価する「ESG投資」がさらに重視されます。これに伴い、サプライチェーン全体を通じた人権尊重や、DX技術(配送ルート最適化システムなど)を活用した業務の効率化と環境負荷軽減を同時に実現するサステナビリティ経営が業界のスタンダードになります。

国連加盟193カ国の合意のもと、2030年までに達成すべき「17の目標」と169のターゲットを定めたSDGs(持続可能な開発目標)。この国際目標は、単なる環境保護運動の域を超え、現代の企業活動やサプライチェーン全体の存続を揺るがす重大なルールとして定着しています。本稿では、前身であるMDGsからの歴史的転換、ウェディングケーキモデルをベースにした本質的理解、さらには物流・製造業における具体的なDX実装手順までを、専門メディアの視点で徹底解説します。

目次
  • SDGs(持続可能な開発目標)の基本定義とMDGsからの歴史的転換
  • SDGsの基礎知識と「誰一人取り残さない」が意味すること
  • MDGs(ミレニアム開発目標)とSDGsの決定的な3つの違い
  • 17の目標を分類する「ウェディングケーキモデル」とESDの役割
  • 17の目標の相互関係を示す「ウェディングケーキモデル」の構造
  • 地域社会と教育現場で進むESD(持続可能な開発のための教育)の実践
  • なぜ今、企業にSDGsが求められるのか:ESG投資と市場リスクへの対応
  • 投資家が注目する「ESG評価」とサステナビリティ経営の関係性
  • サプライチェーン全体で求められる社会的責任と取引排除リスク
  • 物流・製造業の実務に落とし込むSDGsアクションとDX実装手順
  • 「つくる責任・つかう責任」を果たすグリーンサプライチェーン of 構築
  • 労働規制強化に対応する「ホワイト物流」とDX推進
  • 明日から始める「企業・自治体向けSDGs導入5ステップ・チェックリスト」
  • 国連が推奨する行動指針「SDG Compass」の5ステップ
  • 自社の現在地を測定する「サステナビリティ度実践チェックリスト」

SDGs(持続可能な開発目標)の基本定義とMDGsからの歴史的転換

SDGsの基礎知識と「誰一人取り残さない」が意味すること

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットにおいて加盟193カ国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた国際目標です。2030年までに達成すべき「SDGs 17の目標」と、それらをより具体化した169のターゲットで構成されています。

「SDGs わかりやすく」表現すると、「地球の環境を壊さずに守りながら、世界中のすべての人が豊かに暮らし続けられる社会をつくるための共通の約束事」と言えます。貧困や飢餓の解決といった社会的な課題から、気候変動への具体的な対策、働きがいのある労働環境の整備まで、現代社会が直面する広範な領域を網羅している点が特徴です。

このSDGsの根底にある最も重要な基本理念が「誰一人取り残さない(leave no one behind)」です。これは、開発途上国の最貧困層を支援するだけでなく、先進国内の格差、女性、子ども、障害者、高齢者、移民といった、あらゆる社会的に排除されやすい人々を包摂することを意味します。教育現場においては、この理念を学ぶために「ESD(持続可能な開発のための教育)」が導入され、持続可能な社会の担い手を育てる学習活動が推進されています。企業の経済活動においても、自社の調達網全体を点検し、労働者の権利を守る「人権デューデリジェンス」の実施が具体的な行動として求められます。例えば、自社製品の原材料を生産する海外の一次農家において、児童労働や不当な低賃金労働が行われていないかを監査し、改善を促す取り組みがこれに該当します。

また、これら17の目標の相互関係を示す概念として「SDGsウェディングケーキモデル」が提唱されています。これは目標を「生物圏(環境)」「社会」「経済」の3つの階層に分類したもので、最下層の環境という強固な土台があって初めて社会が成り立ち、その上で持続可能な経済活動が営めることを視覚的に示したモデルです。例えば、深刻な労働力不足への対応が迫られる道路貨物運送業の労働環境是正においても、このモデルの考え方が当てはまります。ドライバーの安全や健康を守る労働環境(社会)と、温室効果ガスの排出削減(環境)という土台を整えることなしには、持続可能な配送ビジネス(経済)を維持することはできないという構造を示しています。

MDGs(ミレニアム開発目標)とSDGsの決定的な3つの違い

SDGsには、その前身となる目標が存在します。それが、2000年の国連ミレニアム・サミットで採択され、2015年までの達成を目指した「MDGs(ミレニアム開発目標)」です。

「MDGs SDGs 違い」を正しく理解することは、なぜ現代のビジネスや行政においてSDGsがここまで重要視されているのか、その歴史的背景を掴むために欠かせません。両者には、以下の表に示す決定的な3つの違いがあります。

比較項目 MDGs(ミレニアム開発目標) SDGs(持続可能な開発目標)
対象国 主に開発途上国の課題解決(極度の貧困や飢餓の撲滅など) 先進国を含むすべての国(国内の格差や気候変動も対象)
行動の主体 政府、国際機関、NGOなどの公的セクターが中心 政府に加え、民間企業、市民社会、地方自治体などの多様な主体
基本理念 分野別の個別課題へのアプローチ(開発支援が主軸) 「誰一人取り残さない」を掲げ、環境・社会・経済を統合的に解決

MDGsからSDGsへの移行は、単なる目標の追加ではなく、国際社会の構造変化を反映したものです。支援する国とされる国という二分法から脱却し、先進国内の格差(目標10)や気候変動(目標13)も当事者として解決する仕組みへと進化しました。また、資金面においては、公的支援のみならず、企業のサステナビリティ(持続可能性)を評価して投資を決定するESG投資の拡大が、この転換を強く後押ししています。原材料の調達から製造、消費、そして廃棄に至る「サプライチェーン」全体において環境や人権に配慮することが、市場における評価に直結しています。

17の目標を分類する「ウェディングケーキモデル」とESDの役割

17 of 目標の相互関係を示す「ウェディングケーキモデル」の構造

SDGsウェディングケーキモデルは、17の目標を「生物圏(環境)」「社会圏」「経済圏」という3つの階層に分類し、それらを目標17の「パートナーシップ」が垂直に貫く構造として表現したものです。このモデルは、地球環境という基盤(生物圏)が維持されて初めて、安定した社会(社会圏)が成り立ち、その上で持続可能な経済活動(経済圏)が発展するという不可逆な依存関係を示しています。

階層 該当する目標 具体的な意味と役割
最上層:経済(Economy) 目標8, 9, 10, 12 持続可能な生産と消費、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保、産業と技術革新の基盤づくりなど、社会の持続可能性を支える経済活動。
中層:社会(Society) 目標1, 2, 3, 4, 5, 7, 11, 16 貧困や飢餓の撲滅、教育・ジェンダー平等の実現、住み続けられるまちづくりなど、「誰一人取り残さない」社会システムの構築。
最下層:生物圏(Biosphere) 目標6, 13, 14, 15 気候変動対策、海洋資源・陸上資源の保全、安全な水とトイレの普及など、すべての人間活動と経済活動の土台となる地球環境の維持。

この構造を理解することは、「SDGs 企業 取り組み」の方向性を定めるうえで極めて実践的なアプローチとなります。例えば、年間数万トンの貨物を動かす物流事業者において、労働力不足への対応(目標8)や配送網の効率化(目標9)を進める場合、それらは単なる経済活動にとどまりません。配送車両のEV化(目標13)や、下請け企業を含む「サプライチェーン」全体での適正取引と「人権デューデリジェンス」の徹底(目標5、目標16)など、社会圏や生物圏の課題と連動した取り組みとして位置づけられます。土台となる環境や社会の健全性を損なう事業活動は、中長期的にESG投資の市場から排除されるリスクをはらんでいます。

地域社会と教育現場で進むESD(持続可能な開発のための教育)の実践

SDGsウェディングケーキモデルが示す3層の相互関係を理解し、実際に社会へ変化を起こす原動力となるのが「ESD(持続可能な開発のための教育)」です。ESDは、環境、社会、経済の多様な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む態度を養う教育活動を指します。SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」のターゲット4.7にも、持続可能な開発を促進するための知識・スキル習得が明記されています。

地域社会と教育現場が連携したESDの先駆的事例として、岡山県岡山市の「岡山ESDプロジェクト」が挙げられます。岡山市は2005年に国連大学から「ESDに関する地域拠点(RCE)」に認定されて以来、産官学民が一体となった取り組みを展開してきました。具体的には、市内の公民館を中心とした地域住民による環境保全学習や、ユネスコスクールに加盟する小中学校での地域課題解決型学習(PBL)などが挙げられます。こうした活動により、子供から高齢者までが「地域の持続可能性」という共通のテーマに向けて自発的に行動する土壌が形成されています。

ESDの実践は、社会や地域におけるSDGsへの理解を深め、一人ひとりが自発的な行動を起こすための不可欠なプロセスです。単なる知識の習得にとどまらず、ウェディングケーキモデルが示す環境・社会・経済のつながりを自律的に考える力を養うことが、持続可能な社会づくりの重要な第一歩となります。

なぜ今、企業にSDGsが求められるのか:ESG投資と市場リスクへの対応

投資家が注目する「ESG評価」とサステナビリティ経営の関係性

SDGsは、ボランティアや社会貢献活動としての側面だけでなく、現代の企業経営において「市場から退場しないための生存戦略」という側面を持っています。ウェディングケーキモデルが示すように、経済活動は健全な社会と持続可能な地球環境という土台があって初めて成り立ちます。この「社会と環境の土台が崩れれば、企業活動も存続できない」という現実が、現在のビジネス市場においてルール化されています。

これを背景に、機関投資家の間で急速に普及したのが「ESG投資」です。これは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの非財務要素を考慮して投資先を評価する手法です。2006年に国連が提唱した「責任投資原則(PRI)」への署名機関は、2023年時点で世界で5,000社を超え、その運用資産残高は120兆ドル規模に達しています。

ESG投資の拡大を背景に、企業がSDGsを経営戦略に統合するための指針として活用されているのが「SDG Compass(SDGコンパス)」です。これは、自社の事業が社会・環境に及ぼす影響を理解し、優先課題(マテリアリティ)を特定して目標を設定するためのプロセスを5つのステップで示した行動指針です。このステップに沿って本業にサステナビリティを組み込むことが、機関投資家からの評価や調達コスト低減(サステナビリティ・リンク・ローンなどにおける金利優遇)へと直結する仕組みが確立されています。

サプライチェーン全体で求められる社会的責任と取引排除リスク

「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念は、自社内だけのクローズドな環境に留まりません。現在、大企業を中心に、自社の「サプライチェーン」全体における人権侵害や環境破壊を防止・是正するための「人権デューデリジェンス」の導入が義務化されつつあります。

例えば、欧州連合(EU)で2024年に可決された「企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)」では、対象となる大企業に対して、自社のみならず、子会社やサプライチェーン上の取引先における人権侵害(児童労働や強制労働など)および環境汚染を特定・評価・防止・緩和することを義務づけています。この規制の波は日本企業にも波及しており、経済産業省が策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に基づき、元請企業が下請・孫請企業に対して、労働環境の監査や改善報告を求める動きが日常化しています。

ここで、日本の物流部門における具体的な課題を考えてみましょう。年間100万トンの貨物を輸送委託する製造業の荷主企業の場合、自社のCO2排出量削減目標を達成するためには、委託先である物流事業者のトラックが排出するCO2(スコープ3)を測定・削減する必要があります。さらに、いわゆる「物流2024年問題」に直面する中で、ドライバーの長時間労働や不適切な拘束時間を放置している物流事業者と取引を継続することは、荷主企業側の人権デューデリジェンスにおける重大なリスクとみなされます。

以下に、サプライチェーン管理において企業が直面する具体的な「取引排除リスク」をまとめます。

  • 調達段階におけるリスク:調達先の原材料抽出において、現地住民の人権を侵害している、または違法伐採に関与していることが判明した場合、エンドユーザー向けの製品販売が停止される。
  • 製造・外注段階におけるリスク:製造委託先工場が、不当な低賃金労働や強制労働を行っている場合、世界的なNGOからの告発を受け、グローバルなECプラットフォームから製品が強制的に出品取り消し処分を受ける。
  • 輸送・配送段階におけるリスク:過酷な運行計画を強いる物流事業者を利用し続けた結果、委託先で重大な労災事故が発生し、荷主企業としての社会的信用が失墜する。

経済活動は社会と環境のうえに成り立つという前提を無視し、人権や労働環境への配慮を怠る企業は、サプライチェーンから排除され、新規顧客の獲得や既存取引の継続が極めて困難になります。SDGsへの取り組みは、社会貢献の域を超え、市場で生き残るためのリスクマネジメントそのものなのです。

物流・製造業の実務に落とし込むSDGsアクションとDX実装手順

「つくる責任・つかう責任」を果たすグリーンサプライチェーンの構築

製造業・物流業が優先的に取り組むべきテーマが、SDGs 17の目標の1つである目標12「つくる責任 つかう責任」と目標13「気候変動に具体的な対策を」です。これらは、原材料の調達から製造、配送、消費、そして廃棄・リサイクルに至るサプライチェーン全体での環境負荷低減を求めています。

近年、機関投資家が企業の非財務情報を評価するESG投資の潮流が加速しており、企業評価の基準としてサプライチェーン全体における環境対応や人権デューデリジェンスの実施状況が厳しく問われるようになりました。これに対応するため、企業は自社単独での取り組みを超え、取引先と連携したグリーンサプライチェーンの構築を進める必要があります。これが重要な理由は、企業の社会的責任を果たすだけでなく、サプライチェーンの途絶リスクを回避し、持続的な取引関係を維持するために不可欠なプロセスだからです。

具体的な実践アプローチとして、国土交通省が推奨する「モーダルシフト」と「共同配送」の2点があげられます。トラック輸送から鉄道や船舶へのシフト(モーダルシフト)は、1トンキロあたりのCO2排出量をトラックの約11分の1(鉄道)、約6分の1(船舶)に削減する効果があります(国土交通省「環境負荷の小さい貨物輸送の推進」より)。

例えば、年間5,000トンの貨物を長距離(500km以上)トラックで輸送しているメーカーが、その一部を鉄道のコンテナ輸送に切り替えた場合、年間約300トンのCO2排出削減を達成できます。さらに、同業他社や異業種との「共同配送」により、配送車両の実車率を向上させ、不要な運行を削減することも有効なSDGs 企業 取り組みです。

労働規制強化に対応する「ホワイト物流」とDX推進

物流業界における持続可能性の追求は、環境問題にとどまりません。自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限規制に伴う輸送能力の低下や、将来的な労働規制の変化に対応するためには、労働環境を改善する「ホワイト物流」の推進が必要です。労働時間を適正に管理し、ドライバーの健康と安全を守ることは、事業の継続性を確保するための前提条件です。

これは、SDGsの根本精神である「誰一人取り残さない」社会の実現や、目標8「働きがいも経済成長も」に直結する取り組みです。SDGsの構造を視覚的に示した「SDGsウェディングケーキモデル」において、社会の基盤が安定していなければ、その上の経済は成り立ちません。社会インフラである物流の持続可能性を確保することは、経済を支える社会基盤そのものを守る活動です。

この点を踏まえ、企業は実務レベルでのDXを実装し、具体的なホワイト物流を推進する必要があります。配車ルートの最適化と在庫管理の適正化は、以下の手順で進めます。

ステップ1:配車管理システム(TMS)によるルート最適化
配送ルートが属人化している中堅3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)企業を想定します。これまで運行管理者が手作業で組んでいた1日50台の配車ルートを、クラウド型TMSに置き換えます。実走行データを基にAIが巡回ルートや荷積みの順序を自動計算することで、総走行距離を平均15%削減し、ドライバーの拘束時間を1台あたり毎日約1.2時間削減します。これにより、二酸化炭素排出量の削減と労働時間の短縮を同時に達成します。

ステップ2:倉庫管理システム(WMS)による在庫適正化と廃棄ロス削減
複数の拠点で食品や資材を管理する倉庫において、リアルタイムの在庫データを可視化します。需要予測データとWMSを連携させることで、過剰在庫による長期滞留を防ぎ、製品の廃棄ロスを最小化します。また、入出荷作業の標準化により現場の労働負荷を均等にし、無理のない人員配置を可能にします。

ステップ3:システムの定着を支える従業員教育の実施
ITツールを導入するだけでなく、現場のオペレーターやドライバーが「なぜこの業務効率化が必要なのか」という背景を理解するための社内研修を行います。自らの労働環境改善や、CO2排出削減という環境目標とのつながりを理解することで、現場から主体的な改善提案が生まれる土壌を育みます。

明日から始める「企業・自治体向けSDGs導入5ステップ・チェックリスト」

SDGs(持続可能な開発目標)は、地球規模の課題を解決し「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す世界共通の指針です。かつてのMDGs(ミレニアム開発目標)が主に発展途上国における極度の貧困や飢餓の撲滅を目指していたのに対し、両者の違いは「先進国を含む地球上のすべての国、企業、自治体などの組織が主体となって取り組むこと」にあります。企業活動においても、環境、社会、経済を階層構造で捉えるSDGsウェディングケーキモデルの考え方が定着し、健全な自然・社会基盤なしには経済活動そのものが存続できないという共通認識が広がっています。企業の社会的価値を測るESG投資の普及や、サプライチェーン全体を通じた人権デューデリジェンスの要請など、現代の組織運営において実質的なSDGsへの取り組みは不可欠なプロセスとなっています。

国連が推奨する行動指針「SDG Compass」の5ステップ

企業や自治体が自組織の活動にSDGsを組み込むための世界的なデファクトスタンダードとして、国連グローバル・コンパクトなどが共同で策定した行動指針「SDG Compass」が存在します。この指針は、抽象的な概念を日々の実務や事業戦略に統合するための具体的なフレームワークを提供しています。以下に示す5つのステップに沿って進めることで、取り組みの形骸化を防ぎ、実効性のある活動へと繋げることができます。

ステップ1:SDGsの理解
まずは、SDGs 17の目標と169のターゲットに関する基礎知識を組織内に広く周知します。単に言葉を覚えるだけでなく、それぞれの目標が自社の事業活動とどのように相関しているかを、わかりやすく図示された資料や学習会を通じて、役員から現場職員にいたるまで共通の理解を形成します。理解不足のまま施策を急ぐと、事業と乖離したパフォーマンスの低い活動に終始する傾向があります。

ステップ2:優先課題の決定
サプライチェーン全体の事業活動を、原材料の調達、製造、物流、廃棄にいたるライフサイクルごとに棚卸しします。自社が社会や環境に与える正負の影響をマッピングし、取り組むべき優先課題(マテリアリティ)を特定します。この段階を経ることで、注力すべき領域が明確化されます。

ステップ3:目標の設定
特定した優先課題に対して、具体的な達成時期と数値を伴う目標を定めます。ここでは、現状の延長線上で目標を立てるのではなく、将来の理想像から逆算して現在の施策を決める「バックキャスティング」の手法が適しています。例えば、自社の温室効果ガス排出量を2030年までに2020年度比で46%削減するといった、具体的かつ挑戦的な目標を設計します。

ステップ4:経営への統合
設定した目標を事業戦略や日常の実務プロセスに落とし込みます。持続可能性を追求する取り組みが一部のサステナビリティ専任部門だけの活動にとどまらないよう、各事業部門や購買・物流部門の業務目標(例えば梱包資材のプラスチック削減や、配送効率の向上など)に具体的な数値を設定して連携させます。

ステップ5:報告とコミュニケーション
実行した取り組みの進捗や成果を、Webサイトやサステナビリティレポートなどを通じて社内外へ定期的に公開します。客観的な測定データを開示することにより、機関投資家からのESG投資の獲得や、調達基準を重視する大手取引先との継続的な取引、地域社会における信頼構築に貢献します。

自社の現在地を測定する「サステナビリティ度実践チェックリスト」

SDGsの導入ステップは組織ごとに進行状況が異なります。例えば、月間1,000件の出荷を処理するサード・パーティー・ロジスティクス事業者のように現場の稼働負荷が高い状況下では、実務とサステナビリティ目標とのバランスを保ちながら進める必要があります。以下に、SDG Compassの5ステップを元にした自己診断用の「サステナビリティ度実践チェックリスト」を掲載します。自組織の現在地を客観的に評価し、次に取り組むべきアクションの策定に活用してください。

導入ステップ チェック項目 具体的な確認基準
ステップ1:SDGsの理解 ・SDGsの理念(誰一人取り残さないなど)や17の目標に関する知識が組織内に共有されているか。 ・全従業員を対象としたサステナビリティ研修や勉強会を実施し、受講率が80%以上を達成している。
・SDGsウェディングケーキモデルの考え方をベースにした基本方針が社内に掲示されている。
ステップ2:優先課題の決定 ・自社のバリューチェーン(サプライチェーン全体)に潜む、環境および社会的な正負の影響を特定しているか。 ・製造から輸配送(ドライバーの労働時間抑制や労働環境への配慮を含む)にわたるバリューチェーンマップを作成している。
・主要取引先を対象とした人権デューデリジェンスの基本方針を定め、アンケート等の一次調査を開始している。
ステップ3:目標の設定 ・バックキャスティング思考に基づき、測定可能な期限付きの目標を定めているか。 ・「2030年までに梱包用資材のプラスチック使用量を30%削減する」「配送にかかる燃料使用量を前年比3%削減する」といった、具体的な数値目標がある。
ステップ4:経営への統合 ・SDGsの目標が各実務部門の日常業務や計画に統合されているか。 ・荷主や物流会社との共同配送の実施、段ボールサイズの最適化など、現場が実行可能なアクションが部門目標として評価制度に組み込まれている。
ステップ5:報告とコミュニケーション ・取り組みの成果やプロセス、データを定期的に公表し、改善に向けた対話を行っているか。 ・自社Webサイト上にサステナビリティ特設ページを設け、削減できたCO2排出量や廃棄物量などのデータを毎年更新して公開している。
・取引先や投資家に対応した開示情報を準備している。

このチェックリストで「未着手」または「進行中」と判定された項目が、自社が次に注力すべき課題です。例えば、ステップ2における「サプライチェーン全体における人権デューデリジェンスの対応」が未着手であれば、まずは調達基準の見直しやサプライヤー向け行動規範の作成から取り組む必要があります。ステップの段階を一つずつ確実に踏み進めることで、事業としての競争力維持と持続可能な社会づくりを両立させることが可能となります。

よくある質問(FAQ)

Q. 「SDGs(持続可能な開発目標)」と前身の「MDGs」の決定的な違いは何ですか?

A. 最大の決定的な違いは、支援対象と主体の広さです。MDGsが「途上国の開発」を主眼としていたのに対し、SDGsは先進国を含むすべての国が対象となり、民間企業の参画を強く促しています。また、環境・社会・経済を統合的に解決する「ウェディングケーキモデル」の視点を取り入れている点も特徴です。

Q. 物流やサプライチェーンにおいて、なぜSDGsへの対応が必要なのですか?

A. 対応を怠ると、投資家からのESG評価が低下するだけでなく、取引先からサプライチェーン全体での排除リスクを課されるためです。現代の物流・製造業においては、労働環境を改善する「ホワイト物流」や、環境負荷を抑える「グリーンサプライチェーン」の構築が事業継続の必須条件となっています。

Q. 企業がSDGsを導入する際の基準となる「SDG Compass(SDGコンパス)」とは何ですか?

A. 国連が公表している企業向けの行動指針で、①理解、②優先課題の決定、③目標設定、④経営への統合、⑤報告の5ステップで構成されています。これに沿って自社のサステナビリティ度を現状分析し、DX実装などの具体的な実務アクションへと落とし込んでいきます。

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