- キーワードの概要:TC(トランスファーセンター)は、入荷した商品を倉庫に保管せず、すぐに仕分けて出荷する「通過型」の物流拠点です。在庫を抱えないため保管スペースを最小限に抑えられ、スピーディーな配送を実現します。
- 実務への関わり:現場ではクロスドッキングという手法を使い、店舗やエンドユーザーへ素早く商品を届けます。保管コストが削減できる反面、遅延や欠品を防ぐための厳密なスケジュール管理や、システム間の正確な情報連携が不可欠です。
- トレンド/将来予測:ECの拡大や多頻度小ロット化の波を受け、TCのニーズは急増しています。今後は自動仕分け機などの最新設備や、事前出荷情報と連動した物流DXによる「待機時間ゼロ」を目指すシステム化がさらに進むと予測されます。
現代のサプライチェーンにおいて、物流拠点の最適化は企業の経営に直結する最重要課題です。その中で、拠点戦略の中核的な選択肢として急速に存在感を高めているのが「TC(トランスファーセンター)」の活用です。在庫を持たずに商品を右から左へ流す「通過型」の物流拠点は、究極のリードタイム短縮を実現する一方で、現場には「時間の制約」「情報連携の壁」といった極めてシビアな実務課題を突きつけます。
本記事では、TCの基本的な定義やDC(在庫型センター)との決定的な違いから、実務の根幹を成す「クロスドッキング」の仕組み、導入によるメリット・デメリット、そして最先端の物流DXを活用した運用最適化のノウハウまで、現場の実務担当者から経営層までが納得できる深い知見を交えて徹底的に解説します。
- TC(トランスファーセンター)とは?通過型センターの基礎知識
- TC(トランスファーセンター)の定義とサプライチェーンにおける役割
- なぜ今、TCが再評価されているのか?(時代背景と多頻度小ロット化)
- 「TC」と「DC(ディストリビューションセンター)」の決定的な違い
- 【比較表】機能・コスト・重要KPIの4大相違点
- 高度化する派生モデル「PDC」「FC」との違いと役割分担
- TCの心臓部「クロスドッキング」の仕組みと1型・2型の徹底比較
- クロスドッキング1型(事前仕分・通過型)の実務と課題
- クロスドッキング2型(総量納品・拠点仕分型)の実務と課題
- 1型・2型のハイブリッド運用と庫内動線設計の極意
- TC(通過型センター)を導入する3つのメリットと経営インパクト
- 在庫リスクの最小化と保管スペース・コストの劇的削減
- エンドユーザー・店舗へのリードタイム極小化による売上向上
- サプライチェーン全体の物流拠点最適化と積載率の向上
- TC導入のデメリットと「在庫を持たない」ことによる現場のリアルなリスク
- バッファゼロが生み出す「欠品・納品遅延」への恐怖の連鎖
- 異常時のパニック:システム障害(WMS停止)への耐性問題
- 輸配送頻度の増加に伴うチャーター費高騰とトラック確保難
- 自社の商材に最適な解は?TC・DC導入の判断基準とハイブリッド戦略
- TC(通過型)の導入が圧倒的に向いている商材・業態
- DC(在庫型)を維持・強化すべき商材・業態
- TCとDCを併設する「ハイブリッド型運用(マージ)」の設計論
- TC運用を成功に導く実務マネジメントと「物流DX」戦略
- モノと情報の完全同期:ASN(事前出荷情報)とWMSの高度連携
- マテハン機器(自動仕分け機・ソーター)活用によるスループット最大化
- バース予約システムと動態管理による「待機時間ゼロ」の実現
- DX推進時の組織的課題と、成功のための重要指標(KPI)
TC(トランスファーセンター)とは?通過型センターの基礎知識
近年のサプライチェーンにおいて、物流拠点の在り方を見直すことは、コスト削減だけでなく企業価値そのものを左右します。その中で中核的な選択肢となるのが「TC(トランスファーセンター)」の活用です。TCは、入荷した商品をそのまま、あるいは即座に仕分けて出荷する「通過型」の物流拠点です。本セクションでは、TCの基本的な定義と、なぜ今その重要性が増しているのかを解説します。
TC(トランスファーセンター)の定義とサプライチェーンにおける役割
TC(通過型センター)とは、施設内に長期保管用の在庫(ラックやネステナーを用いた保管エリア)を原則として持たず、商品の「仕分け」と「積み替え」に特化した物流施設です。商品がセンター内に滞留する時間は数時間から長くても半日〜1日程度であり、究極のリードタイム短縮を実現する物流網の結節点として機能します。
TCの最大の役割は、複数ベンダー(サプライヤー)からバラバラに持ち込まれる商品を一箇所に集約し、配送方面別・店舗別に再編成して出荷することです。これにより、各店舗への納品車両数を劇的に減らし、店舗側の荷受け作業の負担を軽減するとともに、幹線輸送の積載率を向上させる「ハブ」として機能します。
なぜ今、TCが再評価されているのか?(時代背景と多頻度小ロット化)
かつての物流は「大量に作って、巨大な倉庫(DC)に保管し、徐々に出荷する」というモデルが主流でした。しかし、消費者ニーズの多様化による商品のライフサイクルの短期化、そしてEC市場の拡大に伴い、小売業の現場では「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」納品する多頻度小ロット物流が求められるようになりました。
大量の在庫を自社で抱えることは、莫大な保管コスト(不動産賃料)の発生だけでなく、売れ残りによる陳腐化リスクやキャッシュフローの悪化という深刻な経営リスクを招きます。また、昨今の「物流の2024年問題」に代表されるトラックドライバー不足を背景に、長距離の直接配送(直納)が困難になる中、中間地点で荷物を積み替える「クロスドック拠点」としてのTCの価値が歴史的にも再評価されているのです。
「TC」と「DC(ディストリビューションセンター)」の決定的な違い
物流拠点最適化のプロジェクトにおいて、経営層や実務担当者が最初に直面するのが「在庫型センター(DC)と通過型センター(TC)の違い」の明確化です。拠点の機能設計を誤れば、過剰在庫によるスペースの圧迫や、逆に欠品による販売機会の損失といった致命的なダメージを招きます。ここでは、両者の客観的な仕様や現場管理の違いを徹底的に分解します。
【比較表】機能・コスト・重要KPIの4大相違点
TCとDCは、同じ「物流センター」という箱であっても、内部で流れる時間軸とコスト構造が全く異なります。以下の比較表で、両者の決定的な違いを視覚的に把握してください。
| 比較項目 | TC(トランスファーセンター) | DC(ディストリビューションセンター) |
|---|---|---|
| 1. 役割と在庫の有無 | 商品の仕分け・積み替えに特化。原則として在庫を持たない。 | 需要変動を吸収するためのバッファ機能。安全在庫を中〜長期間保管する。 |
| 2. 庫内スペースの配分 | 広大な荷捌きスペース(入出荷バース)と自動仕分け機(ソーター等)が面積の大半を占める。 | 高層ラック、ネステナー、メザニン(中二階)を用いた保管スペース(ロケーション)が面積の大部分を占める。 |
| 3. コスト構造 | 保管料は発生しない。設備投資(マテハン)の減価償却費と、短時間で一気に処理するための変動的な作業人件費率が高い。 | 賃料・保管料(固定費)がコストの大部分を占める。不動在庫化による陳腐化・廃棄リスクが伴う。 |
| 4. 現場の重要管理指標(KPI) | 時間当たりの通過量(スループット)、バース回転率、ASN(事前出荷情報)とのデータ一致率。 | 在庫精度(棚卸差異率)、坪当たり保管量、ピッキング生産性(行/人時)。 |
高度化する派生モデル「PDC」「FC」との違いと役割分担
TCとDCの基本構造を押さえた上で、高度化する現代の物流ネットワークにおいて頻出する「PDC」と「FC」についても定義を整理しておきます。これらは特定のビジネス要件に合わせて進化した派生型の拠点です。
- PDC(プロセスディストリビューションセンター):
単なる保管や仕分けを超え、高度な流通加工を最大の付加価値とする拠点です。例えば、鮮魚や精肉のカット・パッキングを行う食品スーパーのプロセスセンターや、アパレル商品の検針・タグ付け・プレス加工を行う拠点が該当します。DCやTCに「工場機能」が合体したものであり、厳密な温度・衛生管理と、加工工程を含めたシビアなリードタイム管理が要求されます。 - FC(フルフィルメントセンター):
主にEC(BtoC)事業において、受注データの取り込みからピッキング、梱包、発送、さらには返品対応やカスタマーサポート機能までを包括的に担う拠点です。DCの一種ですが、BtoB向けのDCが「ケースやパレット単位」で動くのに対し、FCは「バラ(ピース)単位」の超多品種少量出荷に特化しています。チラシの同梱制御やギフトラッピングなど、消費者への直接的なマーケティング機能も担うため、AMR(自律走行搬送ロボット)や自動梱包機など、物流DXの導入が最も積極的に進められている領域です。
TCの心臓部「クロスドッキング」の仕組みと1型・2型の徹底比較
TCの本質は、在庫を持たずに拠点を回す「クロスドッキング」というオペレーションにあります。入荷用のプラットフォームから出荷用のプラットフォームへと、商品が十字(クロス)に交差するように仕分け・搬送されることからこの名がついています。
実務設計のフェーズにおいて、クロスドッキングは大きく「1型」と「2型」の2つの運用手法に分類されます。どちらを採用するか、あるいはどう混在させるかが拠点設計の明暗を分けます。
クロスドッキング1型(事前仕分・通過型)の実務と課題
1型は、ベンダー(サプライヤー)の段階であらかじめ店舗別・納品先別に梱包・ラベリングされた状態でTCへ納入され、TC側では「開梱せず、外装バーコードをスキャンしてそのまま方面別に出荷する」モデルです。
- 現場の実務メリット: TC内での仕分け作業が極めてシンプルであり、広大な荷捌きスペースさえあれば、大掛かりな仕分け設備がなくても高速で処理が可能です。TC側の作業コストとリードタイムは最小化されます。
- 実務上の落とし穴と課題: 最大のネックはサプライヤー側の協力(店別ピッキング・専用ラベルの貼付)を得るハードルが極めて高い点です。また、TC内では「外装箱の検品」しか行わないため、店舗到着後に「中身が破損していた」「数が足りない」といったトラブル(いわゆるブラインドスルーの弊害)が発生しやすく、ベンダーのピッキングミスなのかTCでの積み込みミスなのか、責任の切り分けが難航します。
クロスドッキング2型(総量納品・拠点仕分型)の実務と課題
2型は、ベンダーからは「商品ごと」に総量(一括)で納入され、TC内で外装箱を開梱し、店舗・納品先ごとにバラ(ピース)単位で仕分け(アソート)を行うモデルです。現代の小売業向けTCの多くがこの形式を採用しています。
- 現場の実務要件: 猛スピードで店別仕分けを行うため、デジタルアソートシステム(DAS)やクロスベルトソーターなどのマテハン設備への多額の初期投資が必要です。
- 実務上の落とし穴と課題: 在庫を持たないため「当日入ってきたものを当日中に出す」というシビアな時間との戦いになります。最も現場が青ざめるのは、ベンダーからの納入数が発注数より少なかった(ショートした)場合です。在庫がないためカバーできず、「どの店舗を優先し、どの店舗を欠品させるか」という欠品配分ルールをWMS上で瞬時に処理し、現場へ指示を下す高度なロジックが求められます。また、日々の物量波動(特売日など)をダイレクトに受けるため、適正な人員配置の予測が極めて困難です。
1型・2型のハイブリッド運用と庫内動線設計の極意
昨今の物流拠点最適化のトレンドは、すべてを1型・2型に振り切るのではなく、自社商材の特性に合わせて両者を混在させる「ハイブリッド型運用」です。
しかし、ハイブリッド運用において現場が最も頭を抱えるのが庫内動線の交錯です。1型の大型スルー貨物(パレットやカゴ車)が大量に高速移動している真横で、2型の総量仕分け用カートや段ボールの開梱作業者が入り乱れる状態は、接触事故や誤出荷の温床となります。
これを防ぐため、TCのレイアウト設計では「I型動線(片側から入荷し、反対側へ一直線に出荷)」や「U型動線(入出荷バースを同じ面に配置し、奥で仕分けて戻ってくる)」を建物の形状に合わせて厳密に定義する必要があります。プロの設計担当者は、単なるCAD上の静的なレイアウトを描くのではなく、時間帯別の「荷物と人が占有する面積」を3D・4Dでシミュレーションし、絶対に交わらないクリアな動線を確保しなければなりません。
TC(通過型センター)を導入する3つのメリットと経営インパクト
在庫を持たずに商品を右から左へ流す。このTCの特性は、単なる倉庫作業の省略ではなく、経営上の強力な武器となります。ここでは、TCを導入することによる企業側の3つの決定的なメリットを、実務現場のリアルな運用とあわせて論理的に解説します。
在庫リスクの最小化と保管スペース・コストの劇的削減
TCの最大のメリットは、長期保管を行わないことによる圧倒的な固定費削減です。例えば、坪単価5,000円の倉庫で1,000坪の保管エリアを削減できれば、月間500万円、年間で6,000万円もの直接的な不動産コスト削減に直結します。高価な自動倉庫(AS/RS)やネステナーへの投資も不要です。
加えて、在庫を持たないことは「滞留在庫による陳腐化リスク」「季節終わりの一斉値下げロス」「それに伴う廃棄コスト」を完全に排除できることを意味し、企業のキャッシュフローを劇的に改善します。
エンドユーザー・店舗へのリードタイム極小化による売上向上
二つ目のメリットは、驚異的なリードタイムの短縮です。DCのように「棚入れ」「保管」「棚卸し」「ピッキング」というプロセスを一切踏まないため、商品はセンター到着後、数時間以内に次の配送網へと乗ります。
生鮮食品や惣菜といった「鮮度が命」となる商材や、SNSの流行で需要が急激に変動するアパレル商材において、この速度は直接的な売上向上と顧客満足度に直結します。「昨日製造・収穫されたものが、今日の午前中には店舗の棚に並ぶ」という体制は、競合他社に対する最大の差別化要因となります。
サプライチェーン全体の物流拠点最適化と積載率の向上
最後のメリットは、個別のセンター運営に留まらない、輸配送ネットワーク全体の最適化です。複数のベンダーがそれぞれ個別に店舗へ納品(直納)を行えば、店舗の駐車場はトラックで溢れかえり、各トラックの荷台はスカスカ(積載率低下)になります。
TCをハブとして配置し、納品先(方面)ごとに荷物を合流・集約させることで、店舗へ向かう幹線輸送・ルート配送トラックの積載率を飛躍的に向上させることができます。また、ベンダーの工場を巡回して集荷する「ミルクラン方式」とTCを組み合わせることで、トータルの配送費用とCO2排出量を大幅に削減することが可能です。
TC導入のデメリットと「在庫を持たない」ことによる現場のリアルなリスク
圧倒的なメリットの一方で、「在庫を持たない」ことは、現場の物流実務者にとって最大のプレッシャーとなります。バッファ機能の欠如がもたらす実務上のリアルなリスクと、運用設計における落とし穴について解説します。表面的なコスト削減だけを狙ってTCを導入すると、現場は疲弊し、最悪の場合は物流網全体が麻痺します。
バッファゼロが生み出す「欠品・納品遅延」への恐怖の連鎖
TCの現場で最も恐れられているのが、ベンダーからの「入荷遅延」です。DCであれば数日分の安全在庫があるため、トラックの到着が遅れてもセンター内の在庫を引き当てて予定通りに出荷できます。しかしTCにはその余裕が一切ありません。
例えば、ベンダーの車両が渋滞で2時間遅延した場合、後続のクロスドッキング作業は完全にストップします。センター長は「店舗配送トラックの出発時間を遅らせて待つか」「当該商品を欠品扱いとしてトラックを定時出発させるか」という苦渋の決断を迫られます。特売品やキャンペーン商材の欠品は、単なる納品遅延では済まされず、荷主企業からの重いペナルティ対象となるケースも珍しくありません。
異常時のパニック:システム障害(WMS停止)への耐性問題
TCの中核であるクロスドッキングは、WMS(倉庫管理システム)とマテハン機器のネットワークに完全に依存しています。DCであれば「システムが復旧するまでピッキングを止め、庫内整理や清掃に時間を充てる」という運用が可能ですが、次々と入荷トラックが押し寄せるTCでは、作業を止めることは即座にバースのパンクを意味します。
もし通信障害でWMSがダウンすれば、目の前にある荷物の行き先が完全にブラックボックス化します。実務に強い現場では、システムへの過信を捨て、有事に備えた泥臭いBCP(事業継続計画)を構築しています。例えば「1時間ごとに仕分け予定データのCSVをローカルPCに自動退避させる」「無停電電源装置(UPS)に繋がったプリンターで即座に紙の配分リスト(クロスドックリスト)を出力し、目視と手作業による『ペーパーフォールバック(縮退運転)』に切り替える」といった訓練を定期的に実施しているかどうかが、物流品質の真の差となります。
輸配送頻度の増加に伴うチャーター費高騰とトラック確保難
TCを導入して店舗のバックヤード在庫をゼロにしようとすると、必然的に「多頻度小ロットでの納品」が要求されます。従来、DCへ週2回・大型トラックで納品していたベンダーに対し、「TCへ毎日・時間指定で納品」を要求することになります。
「物流の2024年問題」や深刻なドライバー不足の中、厳しい時間指定を伴うTC向けのトラックを手配することは至難の業です。積載率の低下による輸送単価(チャーター費)の高騰は避けられず、センター内の保管コストを削減できても、トータルの物流費が大幅な赤字に転落するケースが後を絶ちません。単なる拠点設計ではなく、輸配送ダイヤの全体再構築が不可欠です。
自社の商材に最適な解は?TC・DC導入の判断基準とハイブリッド戦略
ここまでの特性を踏まえ、「自社の商材やサプライチェーンに対して、どちらの機能を適応させるべきか」という実務上の判断基準を深掘りします。すべての商品をTC化、あるいはDC化するという極端な判断は危険です。
TC(通過型)の導入が圧倒的に向いている商材・業態
TCの「高速通過・在庫ゼロ」のメリットを最大限に享受できるのは、以下のような商材・業態です。
- 鮮度が絶対的価値となる食品・日配品: 牛乳、パン、惣菜、生鮮野菜など。
- 販売期間が極端に短い商品: チラシ掲載の特売品、季節限定のキャンペーン商品、トレンドサイクルが早いファストファッション。
- 多店舗展開を行う小売業: コンビニエンスストアやドラッグストアなど、店舗側にバックヤード(在庫保管スペース)を持たない業態。
これらの商材は、そもそも長期保管すること自体が価値の毀損(賞味期限切れ、トレンド遅れ)に直結するため、TCの特性と完全に合致しています。
DC(在庫型)を維持・強化すべき商材・業態
一方で、顧客の要求に対して即座に出荷を行うための「戦略的在庫」として、DCを活用すべき商材もあります。
- 海外からの輸入リードタイムが長い商品: 輸入雑貨やワインなど、一度在庫を切らすと数ヶ月入荷しないリスクがある商材。
- 欠品が許されないBtoB向け部品: 工場の製造ライン用部品や、インフラ設備の保守パーツなど、即納体制が求められるもの。
- 季節波動が大きく一括調達が必要なもの: 夏物のエアコン、冬物のダウンジャケットなど。
TCとDCを併設する「ハイブリッド型運用(マージ)」の設計論
現在の先進的なSCM(サプライチェーンマネジメント)において主流となっているのが、同一拠点内に通過型と在庫型の機能を併せ持つ「ハイブリッド型運用」です。
例えば、大手総合スーパーの物流センターでは、毎日安定して売れる定番の日用品やグロサリー類は「DCエリア」でパレット保管し、鮮度が求められる生鮮食品やその日の特売品は「TCエリア」でクロスドッキング処理を行います。
この運用における最大の難所は、出荷バースの直前で両エリアからの荷物を合流させる「マージ(合流)作業」です。DC側のピッキング完了タイミングと、TC側へのベンダー納品・仕分け完了タイミングを、1台のトラックの出発時間(例えば14:00発)に向けて秒単位で同期させなければなりません。どちらか一方が遅れればトラックは出発できず、早すぎれば狭い出荷バースが荷物で溢れかえります。これを実現するには、次章で解説する「物流DX」による高度な全体制御が必須となります。
TC運用を成功に導く実務マネジメントと「物流DX」戦略
時間の制約が極めてシビアなTC運用において、リスクを最小化しメリットを最大化するためには、「人間の気合いと根性」に依存する運用からの脱却が必要です。ここでは、TC運用を安定化させ、物流拠点最適化を実現するための最新の「物流DX」を用いた解決策とマネジメント手法を深掘りします。
モノと情報の完全同期:ASN(事前出荷情報)とWMSの高度連携
TC運用の成否を分ける最大の肝は「モノが届く前に、情報が届いていること」です。ベンダーから送信されるASN(事前出荷情報)を受信し、即座にWMS(倉庫管理システム)へ反映させる体制が不可欠です。
トラックが接車する前に「何番バースに、どの商品が何個入り、それをどのシュートへ流し、どの方面のトラックに乗せるか」という事前計画(リソースの割り当て)が完了していなければなりません。ASNデータの精度向上こそがTCの生命線であり、ベンダー側とのEDI(電子データ交換)連携やAPI連携の強化が、システム構築の第一歩となります。
マテハン機器(自動仕分け機・ソーター)活用によるスループット最大化
クロスドッキング2型を運用する場合、人海戦術による仕分けには限界があり、クロスベルトソーターやシューソーターなどのマテハン機器の導入が不可欠です。
しかし、現場の実務担当者が直面する壁は「機械の処理速度に、裏方の人間が追いつかない」という現象です。ソーターの仕分け先シュートが商品で満杯になれば、センサーが検知してライン全体が緊急停止します。これを防ぐためには、出荷ボリュームの多い大型店舗のシュートを複数に分散させるアルゴリズムの調整や、満杯になったカゴ車を瞬時に引き抜いて空きカゴ車を補充する「動線専任スタッフ」の配置など、ハードウェアの性能を最大限に引き出すための緻密な運用チューニングが求められます。
バース予約システムと動態管理による「待機時間ゼロ」の実現
TC運用における最大の敵は「トラックの待機時間(荷待ち時間)」です。これが長引けば、リードタイム短縮効果が相殺されるだけでなく、運送会社からの契約打ち切りのリスクすら生じます。
これを解決するのが、「バース予約システム(トラック予約受付システム)」とGPSを用いた「動態管理システム」の導入です。納品車両が渋滞等で遅延した場合、GPS連動によりシステムが異常を検知し、WMS側で後続のクロスドッキング対象品の処理順序を自動で組み替えます。これにより、手持ち無沙汰な待機時間を現場作業員・ドライバー双方から排除し、限られたバースを最大限の回転率で回すことが可能になります。
DX推進時の組織的課題と、成功のための重要指標(KPI)
TCのDX化を推進する上で最も困難なのは、自社内のシステム導入ではなく「ベンダー(外部)の協力体制の構築」という組織的課題です。店別ラベルの貼付や高精度なASN送信をベンダーに要求することは、相手の業務負荷を増大させます。単なる押し付けではなく、荷受け時間の短縮などベンダー側にもメリットを提示するウィンウィンの交渉力が物流部門には求められます。
最後に、TC運用を成功に導くための重要管理指標(KPI)を掲げます。
単なるコストだけでなく、入荷から出荷までの総所要時間を測る「ドック・トゥ・ドックタイム」、時間当たりの仕分けピース数を示す「スループット生産性」、そして「ASNデータと実際の入荷数の一致率」を日々モニタリングし、改善のサイクルを回し続けること。
システム(物流DX)、ハード(マテハン)、そして現場の運用ルール(BCPやパートナーシップ)の3つが高次元で噛み合って初めて、TC(通過型センター)は最強の物流拠点として機能するのです。
よくある質問(FAQ)
Q. 物流のTC(トランスファーセンター)とは何ですか?
A. TC(トランスファーセンター)とは、在庫を持たずに商品を右から左へ流す「通過型」の物流拠点のことです。入荷した商品を保管することなく、店舗や配送先ごとに仕分けて即座に出荷する仕組みを持っています。究極のリードタイム短縮を実現する一方で、シビアな時間管理や精度の高い情報連携が求められます。
Q. 物流のTCとDCの違いは何ですか?
A. 最大の違いは「在庫を持つか持たないか」です。DC(ディストリビューションセンター)は商品を一定期間保管し、注文に応じて出荷する「在庫型」の拠点です。一方、TCは在庫を持たずに入荷した商品をすぐに仕分けて出荷する「通過型」の拠点であるため、機能やコスト、重要となるKPIが大きく異なります。
Q. TC(トランスファーセンター)を導入するメリットは何ですか?
A. 主なメリットは、在庫リスクの最小化と保管スペース・コストの劇的な削減です。商品を長期間保管しないため、倉庫面積を小さく抑えることができます。また、入荷から出荷までの時間が短縮されることで、店舗やエンドユーザーへのリードタイムが極小化され、売上向上につながるという大きなインパクトがあります。