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Home > 統計データベース > 港湾運送コスト推移グラフ|港湾+5%、内航+39%の転嫁格差【2026年最新】

港湾運送コスト推移グラフ|港湾+5%、内航+39%の転嫁格差【2026年最新】

レポート更新日: 2026年9月15日

この記事の要点
  • 概要:2026年7月の港湾運送指数は105.1(2020年平均比+5.1%)にとどまり、内航貨物(138.8、港湾運送の約1.32倍)や企業物価総平均(136.4、約1.30倍)に比べ価格転嫁が大きく遅れています。
  • 実務への影響:基本荷役料は低水準ですが、通関基本料の約25%引き上げやCY待機による割増運賃が発生しており、荷主は請求書の内訳精査とCLO主導の滞留短縮が必須です。

港湾運送の価格改定は2020年比+5.1%にとどまる実態

日本銀行が公表している企業向けサービス価格指数(SPPI、2020年平均=100)によると、2026年7月の「港湾運送」は105.1でした。2020年平均からの上昇率はわずか+5.1%にとどまります。

同期間において、モノの価格動向を示す国内企業物価指数(CGPI、2020年平均=100)の総平均は136.4(2020年比+36.4%)まで上昇しています。国内企業物価指数(136.4)は港湾運送(105.1)の約1.30倍の水準に達しており、モノの価格上昇に対して港湾サービスの改定がいかに遅れているかが分かります。

港湾運送と国内企業物価指数の推移:モノの価格上昇に対する開き
出典:日本銀行 企業向けサービス価格指数・企業物価指数

港湾は、輸出入物流で陸上輸送と海上輸送をつなぐ要の拠点です。港の現場では、コンテナ荷役を担う大型クレーンの維持管理費や電力費、燃料費、そして作業員の労務費が高騰を続けています。しかし、公的統計に表れる国内港湾の荷役サービス価格は、こうした原価上昇に連動していません。

特筆すべきは、2020年1月から2023年9月までの45か月間(45期連続)、港湾運送指数が100.0のまま一度も改定されずに据え置かれていた点です。現在確認できる+5.1%の上昇分は、すべて2024年以降に生じたものに過ぎません。

長期間にわたって原価負担が現場に蓄積された結果、2026年に入ってからは大手通関業者が通関基本料を約25%引き上げるなど、硬直的だった料金体系にも見直しの動きが出始めています。輸出入の実務コストを管理するうえでは、公的指数が示す全体像と、現場業務ごとの改定動向を正確に把握しておく必要があります。

港湾と内航海運で生じた約1.32倍の価格転嫁格差

国内企業物価指数および企業向けサービス価格指数の最新データから、港湾運送が置かれている状況を整理しました。すべて2020年平均=100を基準とした指数です。

指標名(2020年平均=100) 2025年7月(前年同月) 2026年6月(前月) 2026年7月(最新値) 前月比(前期比) 前年同月比(トレンド)
港湾運送 104.3 105.1 105.1 0.0% +0.8%
内航貨物輸送 129.5 135.3 138.8 +2.6% +7.2%
道路貨物輸送 108.0 112.5 112.9 +0.4% +4.5%
倉庫 103.4 105.1 105.6 +0.5% +2.1%
運輸・郵便(大類別) 112.4 117.9 119.6 +1.4% +6.4%
企業向けサービス価格指数・総平均 111.1 114.6 115.1 +0.4% +3.6%
国内企業物価指数・総平均 126.7 135.8 136.4 +0.4% +7.7%

※サービス価格との比較を正確に行うため、国内企業物価指数も2026年7月実績で揃えています。詳しくは物流コスト推移グラフ|なぜ物価高に追いつかないのか?荷主対策【2026年最新】もあわせてご確認ください。

物流モード別のサービス価格の推移:港湾運送は2023年9月まで100.0のまま
出典:日本銀行 企業向けサービス価格指数・企業物価指数

他モードとの比較が示す転嫁の遅れ

同じ物流分野の他モードと比べると、港湾運送の立ち遅れはより明確になります。

2026年7月時点で、内航貨物輸送の指数は138.8に達しています。これは港湾運送(105.1)の約1.32倍の水準です。道路貨物輸送も112.9で港湾運送の約1.07倍、物流全体を含む運輸・郵便(大類別)は119.6で港湾運送の約1.14倍となっています。内航海運や陸上輸送では労務費や資材費の価格転嫁が進んでいるのに対し、港湾運送だけが取り残されています。

輸出入物流の実務コスト:港湾運送と倉庫はサービス価格全体に追いついていない
出典:日本銀行 企業向けサービス価格指数・企業物価指数

輸出入の基盤である倉庫保管も同様の課題を抱えています。普通倉庫業の経営指標にも関連しますが、倉庫指数は2026年7月時点で105.6にとどまります。倉庫も2020年11月から2022年9月までの23期連続で100.0のまま据え置かれた経緯があり、サービス価格全体の総平均(115.1)に全く追いついていません。荷役と保管という輸出入の両輪で、コスト転嫁の遅れが長期化しています。

なぜ内航海運と港湾で格差がついたのか

内航貨物輸送と港湾運送で転嫁の進み方に大きな差がついた背景には、輸送構造と取引環境の違いがあります。内航海運の月次輸送動向から読み解くモーダルシフトの現実:トラックとの役割分担と今後の展望で示されている通り、内航海運はトンキロ(輸送トン数×輸送距離)ベースで国内物流の約4割を担う幹線輸送機関です。

長距離輸送を担う内航海運では、燃料油価格の変動や船員の高齢化に伴う確保コスト、船舶の修繕・代替建造費の上昇が船主の存続に直結するため、運賃改定やサーチャージの導入が進みました。

一方の港湾運送は、特定港湾内の閉ざされたエリアで行われる作業です。旧来の料金体系や、船社・大手荷主による価格主導の商慣行が長く続いたことで、現場の原価上昇に見合った値上げを切り出しにくい環境が続いてきました。

荷待ち延伸と通関基本料改定が迫る現場対応

港湾運送指数の上昇が+5.1%にとどまっているからといって、輸出入の実務コストが増えていないわけではありません。

TDB調査、価格転嫁率39.9%へ低下|物流費34.5%の壁と打開策によると、原材料費の価格転嫁率が47.3%に達しているのに対し、物流費の転嫁率は34.5%にとどまります。港湾荷役のような無形サービスの対価は、目に見える形で価格に反映されにくいのが実態です。

船便遅延とターミナル混雑による待機コストの発生

外航コンテナ船のスケジュール乱れは、国内港湾のオペレーションを圧迫しています。船便の遅れによってコンテナヤード(CY)へ搬出入が集中し、主要港のゲート前で深刻な混雑が発生しています。

東京港で最長4時間55分待機が発生|全工程での情報同期が必須対応にあるように、大井ふ頭などでは平均70〜80分、長いときには約5時間近い待機を余儀なくされています。コンテナを運ぶドレージ輸送では運行回転数が落ち、ドライバーの拘束時間が伸びるため、事業者側が待機料を請求したり、混雑が著しいターミナルを経由する案件の引き受けを見合わせたりする動きが出ています。

通関・保税手続きにおける約20〜25%の料金改定

港湾運送の基本荷役料が据え置かれる一方で、手続きに関わる費用では大幅な値上げが実行されています。

大手物流会社各社は、1995年以来据え置かれてきた旧標準料金の是正と専門人材の確保を目的に、通関・保税関連の料金を改定しました。2026年1月に日本通運が平均約25%引き上げたのを皮切りに、上組が約20%の引き上げを実施しました。さらに三菱倉庫が2026年6月に通関申告基本料を約25%増額(輸出申告1件あたり7,400円)し、三井倉庫ホールディングスも同年7月より平均約25%引き上げています。

荷主企業にとっては、公的な港湾運送指数が静かに見えても、通関基本料やターミナル周辺の待機料・附帯作業料を含めた「支払総額」は確実に増加しています。

今後の影響・予測とウォッチすべき指標

短期〜中期の影響予測(3〜12ヶ月)

港湾運送コストの先行きについては、以下の2つのシナリオを想定しておく必要があります。

  • 適正化シナリオ: 国土交通省の「港湾運送事業における適正取引推進のためのガイドライン」が浸透し、原価割れ運賃の是正や待機料・横持ち料の収受が広がります。港湾運送指数は年1回の改定に合わせて段階的に引き上げられ、2027年春に向けて108〜110前後の水準へ向かうことで、港湾作業員の処遇改善と人手不足の緩和が進みます。
  • 停滞シナリオ: ガイドラインの運用が進まず、価格交渉が停滞します。労務費の増加に耐えかねた事業者が事業を縮小し、休日荷役の休止(北九州港太刀浦ターミナル等で実施された日曜日の完休日設定など)が他の港にも拡大します。港湾の処理能力が落ち、荷役遅延が常態化する恐れがあります。

ウォッチすべき指標・政策・スケジュール

輸出入実務において毎月確認しておくべき指標と公的動向は以下の通りです。

指標・政策名 確認元 確認頻度 実務上の着眼点
企業向けサービス価格指数(港湾運送・倉庫) 日本銀行 毎月下旬 港湾運送(2026年7月:105.1)の階段状改定の有無と、倉庫(105.6)の転嫁動向
国内企業物価指数(CGPI) 日本銀行 毎月中旬 物価総平均(2026年7月:136.4)と港湾運送指数の開き(現在は約1.30倍)の推移
港湾運送事業適正取引推進ガイドライン 国土交通省 随時 船舶遅延時の待機料請求、附帯作業の有償化、ヤード長期滞留の是正状況
改正物流効率化法の運用実態 国土交通省 半年〜年次 特定荷主に義務付けられたCLO(物流統括管理者)選任と港湾待機削減計画の進捗

政策面では、2026年4月より「改正物流効率化法」が施行され、特定荷主に対して物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の策定が義務付けられました。港湾ターミナル周辺の待機時間短縮に向けた実務対応が荷主側にも強く求められています。

まとめ:輸出入物流のコスト見直しと現場対策

2026年7月の港湾運送指数は105.1にとどまり、2020年平均からの上昇率は+5.1%と、内航貨物輸送(138.8、港湾運送の約1.32倍)や企業物価総平均(136.4、約1.30倍)に比べて改定が遅れています。しかし現場では、通関基本料の約25%引き上げやターミナル待機に伴う運行効率低下など、実質的なコスト負担が確実に増えています。

荷主企業と物流事業者は、それぞれ以下の対策を進めることが重要です。

荷主企業が取り組むべきこと

  • 輸出入付帯費用の棚卸し: 基本荷役料だけでなく、通関料、CY保管料、待機料の実額を精査し、貿易原価を正確に再計算する。
  • コンテナ滞留の削減: コンテナヤードを保管場所代わりに使う長期滞留を改め、外部倉庫への速やかなデバンニング計画を立てる。
  • CLO主導の港湾待機短縮: 改正物流効率化法に基づき、ドレージの待機時間を把握し、搬出入予約システムの活用や配車調整を進める。

物流事業者が取り組むべきこと

  • 附帯作業の契約書面化: 適正取引ガイドラインに沿って、待機料やコンテナ横持ち作業の料金を契約書へ明記する。
  • 運行実績データの荷主共有: ドレージの待機時間を客観的なデータとして提示し、適正な手待料を収受する。
  • 補助金を活用したルート分散: 東京都港湾局の物流効率化補助金(はしけ・フィーダー輸送支援)などを活用し、混雑エリアを回避する輸送手段を整える。

最初の一歩として、直近半年分の輸出入請求書を精査し、「通関料・待機料・附帯作業料」の改定状況と待機の実態を確認してください。 指数の表面的な数字に惑わされず、手元の請求内訳を点検することが適正なコスト管理の第一歩となります。


出典: 日本銀行 時系列統計データ(企業向けサービス価格指数・企業物価指数) / 統計最終更新: 2026年8月

よくある質問(FAQ)

Q. 港湾運送のサービス価格指数がほとんど上がっていないのはなぜですか?

A. 港湾運送は2020年1月から2023年9月まで45期連続で100.0(2020年平均=100)のまま据え置かれていました。船社や大手荷主主導の価格決定慣行が根強く、人件費や施設維持費の上昇を転嫁しにくい構造があるためです。年1回程度の契約改定で段階的に動くものの、2026年7月時点で105.1(+5.1%)と改定幅は限定的です。

Q. 港湾運送の指数が低いなら、輸出入の物流コスト負担は増えていないのですか?

A. 基本荷役料は抑えられていますが、付帯費用は大幅に増加しています。2026年に入り大手通関業者が通関基本料を約20〜25%引き上げたほか、コンテナ船の遅延に伴う港湾混雑でドレージ待機料や時間外割増が発生しています。統計上の港湾運送指数に表れない手続き費用や待機コストが、荷主企業の実質的な負担となっています。

Q. 同じ物流の中で、なぜ内航海運と港湾運送で転嫁の差がついたのですか?

A. 2026年7月の指数で内航貨物輸送(138.8)は港湾運送(105.1)の約1.32倍に達しています。内航海運は長距離大量輸送を担っており、燃料高や船員不足による代替建造費・労務費の上昇を運賃に転嫁する仕組みが浸透しました。一方、港湾運送は特定区域内の作業で価格交渉力が働きにくく、転嫁の遅れにつながっています。

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この統計レポートは、官公庁・日本銀行・業界団体などが公表する統計データをもとに、LogiShift が独自に集計・解析したものです。各データの出典は本文中に記載しています。

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