- 概要:大手21社の営業倉庫実績(2016〜2025年12月末)では、保管重量が8.5%増にとどまる一方、所管面積は27.1%増、保管金額は59.6%増となり、在貨面積1㎡あたり保管トンは16.6%低下しました。
- 実務への影響:電気機械や非鉄金属など高額品の増加と一次産品の減少に伴い、荷主・倉庫事業者は保管能力の管理指標を重量(トン)から使用床面積(㎡)や容積、貨物価値へ再構築する必要があります。
10年で面積27%増・価値60%増、倉庫需要の質的転換が進む
この10年間で、貨物の重さを示す保管残高数量は468.9万tから508.7万tへと 8.5%増 にとどまり、ほぼ横ばいで推移しています。一方で、設備規模を示す所管面積(1〜3類)は749.8万㎡から952.8万㎡へ 27.1%増、倉庫内に置かれている貨物の名目価格を示す保管残高金額は2兆2,084億円から3兆5,255億円へと 59.6%増 を記録しました。
※本記事では国土交通省が公表する「営業普通倉庫の実績(主要21社)」に基づき、2016年末から2025年末までの各年12月末時点の数値を10年間にわたり定点観測し、営業倉庫における利用指標を分析。
※対象は日本通運や三菱倉庫、住友倉庫といった大手21社の集計値であり、普通倉庫業の経営指標を含む営業倉庫業界全体の数値ではありません。また、品目別の数値は1社の大口荷主の出入りで大きく動く可能性がある点にご留意ください。
2016年12月末を100とした指数で見ると、各指標の伸びの違いは明確です。
- 保管残高数量(重さ):108.5
- 所管面積(床):127.1
- 保管残高金額(価値):159.6
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重さの指標だけを見ると倉庫需要は成熟しているように見えます。しかし、床面積の拡張と保管貨物の高付加価値化という2つの視点を合わせると、市場の質的な拡大が進んでいる状況がうかがえます。
保管重量は横ばいも在貨面積1㎡あたり保管トンは16.6%低下
10年間の主要指標推移
主要21社における2016年12月末と2025年12月末の指標推移は下表の通りです。
| 指標 | 2016年12月末 | 2025年12月末 | 増減(率・ポイント) |
|---|---|---|---|
| 入庫数量(12月) | 230.4万t | 253.5万t | +10.0% |
| 保管残高数量 | 468.9万t | 508.7万t | +8.5% |
| 保管残高金額 | 2兆2,084億円 | 3兆5,255億円 | +59.6% |
| 1トンあたり預かり価値 | 47.1万円/t | 69.3万円/t | +47.1% |
| 所管面積(1〜3類) | 749.8万㎡ | 952.8万㎡ | +27.1% |
| 利用率(1〜3類) | 80.0% | 82.0% | +2.0ポイント |
| 在貨面積1㎡あたり保管トン | 0.752t/㎡ | 0.627t/㎡ | -16.6% |
| 貨物回転率(1〜3類) | 49.7% | 50.3% | +0.6ポイント |
※保管残高金額は倉庫が預かる貨物の価額(名目)であり、倉庫会社の売上高や保管料収入ではありません。物価や素材相場の上昇によっても増加します。
※利用率は「在貨面積÷所管面積」、貨物回転率は「(入庫高+出庫高)÷(前月末残高+当月末残高)×100」の国土交通省定義に基づきます。
直近1年間の金額増と利用指標の構造
直近の2024年12月末から2025年12月末の1年間を見ると、所管面積は957.9万㎡から952.8万㎡へ0.5%減少し、利用率は81.6%から82.0%へ0.4ポイント上昇しました。保管残高数量は494.4万tから508.7万tへ2.9%増加したのに対し、保管残高金額は2兆9,304億円から3兆5,255億円へ 20.3%増 と大きく伸びています。これに伴い、全品目の1トンあたり預かり価値も59.3万円/tから69.3万円/tへと16.9%上昇しました。
10年間の推移で特に注目すべき点は、床面積と保管重量の伸びの乖離です。
利用率は80.0%から82.0%へと2.0ポイント上昇しており、床の利用水準は維持されています。しかし、実際に貨物が置かれている床面積である「在貨面積(所管面積×利用率)」の1㎡あたりに保管されている重量(在貨面積1㎡あたり保管トン)は、2016年末の0.752t/㎡から2025年末には0.627t/㎡へと 16.6%低下 しました(2016年12月末を100とした指数では83.4)。
一方、倉庫内での貨物の入れ替わり速度を示す貨物回転率は49.7%から50.3%と0.6ポイントの微増にとどまり、ほぼ横ばいで推移しています。貨物が倉庫内に滞留する期間が長期化したわけではなく、床1㎡あたりに置かれる貨物が軽くなったと解釈できる数値の動きです。
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なお、所管面積の推移を見ると、2020年末に前年末比+9.2%(787.5万㎡から859.8万㎡)と大きく増加し、これに伴い利用率が一時的に81.7%から77.0%へ4.7ポイント低下しました。倉庫業法に基づく大型倉庫の新設、あるいは計上方法の変更が行われた可能性がありますが、どちらであるかは断定できません。2022年末以降の利用率は82%前後の水準へ戻っています。
一次産品の減少と高付加価値品集中による保管構成の変容
重量ベースにおける品目の入れ替わり
保管残高数量(重さ)の内訳を見ると、10年間で保管されている品目構成が大きく入れ替わっています。
主要産業別・品目別の荷動き分析とも関連しますが、重量が増加した主な品目は以下の通りです。
- その他の日用品:24.6万t → 43.0万t(+75.0%)
- その他の機械:19.7万t → 29.7万t(+50.4%)
- 染・顔・塗料:4.3万t → 13.1万t(約3倍)
対照的に、以下の品目などは減少傾向を示しました。
- 動植物性飼・肥料:6.0万t → 3.2万t(-46.5%)
- 米:26.0万t → 14.7万t(-43.6%)
- 織物製品:3.7万t → 1.5万t(-60.5%)
- 缶詰・びん詰:2.9万t → 1.5万t(-49.0%)
- その他の農産品:12.8万t → 10.6万t(-17.1%)
- 紙・パルプ:18.3万t → 16.6万t(-9.2%)
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容積あたりの重量が大きく高く積み上げやすい一次産品や素材が減少し、比較的かさばりやすい最終製品や加工品が増加した構図となっており、前述した「在貨面積1㎡あたり保管トンの低下」と整合的な傾向といえます。
米の保管残高数量は、2016年末の26.0万tから減少し続け、2023年末に13.5万t、2024年末には12.9万tまで縮小して底を打ちました。2025年末には14.7万t(前年比+14.0%)へと転じ、10年間で初めて対前年比の増加を記録しています。
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金額ベースの伸びを牽引する電気機械と非鉄金属
保管残高金額は10年間で1兆3,172億円増加(2兆2,084億円から3兆5,255億円)しましたが、その増加額のうち 約53%が電気機械(+4,028億円)と非鉄金属(+2,924億円)の2品目 によるものです。2024年末から2025年末にかけての1年間の増加(2兆9,304億円から3兆5,255億円、+20.3%)についても、ほぼこの2品目で説明できます。
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それぞれの推移と特徴は以下の通りです。
- 非鉄金属:保管残高数量は2016年末の16.7万tから2025年末は15.5万t(-7.5%)とほぼ横ばいで推移しています。一方、保管残高金額は995億円から3,919億円へと約3.9倍に拡大しました。この結果、1トンあたり預かり価値は 59.5万円/tから253.4万円/tへと4倍超 に上昇しています。非鉄金属の代表格である電気銅の国内建値(月平均)が2016年12月の70.5万円/tから2025年12月には186.6万円/tへ上昇しており、金属相場の上昇傾向と方向が一致しています。
- 電気機械:保管残高数量は2024年末の27.8万tから2025年末に38.8万t(前年比+40.0%)へ増加し、保管残高金額は2,070億円から5,683億円へと前年比+174.6%の大幅増となりました。これに伴い、1トンあたり預かり価値は 2024年末の74.6万円/tから2025年末には146.3万円/tへと1年で約2倍 に跳ね上がっています。2025年に単価の高い貨物がまとまって入庫した可能性があります。
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2つのシナリオと定点観測すべきモニタリング項目
将来動向に関する2つのシナリオ
今後の営業倉庫における利用指標の推移については、足元の質的変化の定着度合いに応じて以下の2つのシナリオが想定されます。
- シナリオA(高付加価値化と品目転換の継続)
日用品や機械類などの製品保管需要が底堅く推移し、一次産品から加工品へのシフトが定着する場合です。在貨面積1㎡あたり保管トンは0.60〜0.65t/㎡前後の水準で定着し、床面積の需要が高い状態が継続する可能性があります。預かり価値の単価も高水準を維持し、貨物価額に応じた管理体制の重要性が高まる可能性があります。 - シナリオB(特定品目の変動による一時的拡大の調整)
2025年に見られた電気機械の入庫増や非鉄金属の評価額上昇が一過性であった場合です。高額貨物の出庫や市況の変動に伴い、保管残高金額および1トンあたり預かり価値が2023〜2024年当時の水準(全品目単価で55〜60万円/t前後)へ軟化する可能性があります。ただし、長期的な品目構成の変化自体が反転しない限り、在貨面積1㎡あたり保管トンが2016年水準(0.75t/㎡台)へ戻る可能性は低いと考えられます。
年末定点でウォッチすべき指標
倉庫の利用実態と貨物の質的変化を把握するため、実務担当者が定期的に確認すべき指標は以下の通りです。
| 指標名 | 確認元 | 確認頻度 |
|---|---|---|
| 電気機械の保管残高金額 | 国土交通省「営業普通倉庫の実績(主要21社)」 | 年1回(各年12月末の値) |
| 非鉄金属の1トンあたり預かり価値 | 国土交通省「営業普通倉庫の実績(主要21社)」 | 年1回(各年12月末の値) |
| 在貨面積1㎡あたり保管トン | 国土交通省「営業普通倉庫の実績(主要21社)」 | 年1回(各年12月末の値) |
| 米の保管残高数量 | 国土交通省「営業普通倉庫の実績(主要21社)」 | 年1回(各年12月末の値) |
| 所管面積および利用率(1〜3類) | 国土交通省「営業普通倉庫の実績(主要21社)」 | 年1回(各年12月末の値) |
保管効率の評価軸を重量から面積・容積・貨物価値へ再構築
大手21社の倉庫実績において、10年間で保管重量が+8.5%にとどまる一方、所管面積は+27.1%、保管貨物の名目価値は+59.6%拡大し、在貨面積1㎡あたり保管トンは16.6%低下しました。
重量ベースの指標と床面積・預かり価値の指標との乖離が進んでおり、従来のトン数中心の捉え方を見直す局面を迎えています。この利用構造の変化を踏まえ、荷主企業および倉庫事業者が取り組むべき実務対応を整理します。
荷主企業の実務アクション
- 自社貨物の保管需要を重量(トン)だけでなく、パレット枚数、所要床面積、容積(CBM)で把握・提示する。
- 預け入れ貨物の1点あたり・容積あたりの製品価値を把握し、貨物特性に見合った保管管理要件(温湿度・防塵・防犯設備等)を倉庫側と整理する。
- 季節変動や市況変動に伴う保管残高の増減を、重量計画ではなく在貨面積ベースの所要スペースとして算定する。
倉庫事業者の実務アクション
- 物流センターなどの拠点運用において、需給動向の把握や保管能力の算定基準をトン数管理から在貨面積および容積充填率へ移行する。
- 電気機械や非鉄金属をはじめとする高額貨物の入出庫変動が保管残高全体に与える影響を品目別にモニタリングする。
- 一次産品の減少と加工品・日用品の増加に合わせ、平置き中心のレイアウトから中軽量ラックやネステナー等の立体保管設備への転換を検討する。
荷主・倉庫事業者の双方が、保管需要予測とキャパシティ管理の主軸を「重量(トン)」から「使用床面積(㎡)および容積」へ切り替えていくことが、実態に即した物流計画を立てるための土台となります。
出典: 国土交通省「営業普通倉庫の実績(主要21社)」 / 統計最終更新: 2025年12月末
よくある質問(FAQ)
Q. 営業普通倉庫の利用率はどのように算出されますか?
A. 国土交通省の定義に基づき、「在貨面積(実際に貨物が置かれている床面積)÷所管面積」で算出されます。主要21社実績では、2016年12月末の80.0%から2025年12月末には82.0%へと2.0ポイント上昇しています。
Q. 在貨面積1㎡あたり保管トンが低下している要因は何ですか?
A. 米(43.6%減)や動植物性飼・肥料(46.5%減)など重く積める品目が減少した一方、その他の日用品(75.0%増)などが増加した変化と整合的です。回転率は約50%で横ばいのため、床1㎡あたりに置かれる貨物が軽くなったと解釈できます。
Q. 保管残高金額が10年で約60%増加した主な内訳は何ですか?
A. 全体の増加額1兆3,172億円のうち約53%を電気機械(+4,028億円)と非鉄金属(+2,924億円)の2品目が占めています。非鉄金属は金属相場上昇と方向が一致し、電気機械は2025年に高額貨物のまとまった入庫があった可能性があります。